自来也に心境を吐き出したことで、幾ばくか安定を取り戻したシャナ。戻ってきた自来也がボルトに対してナルトの九尾について説明すると言い、彼女は残ったサスケに話があると連れ出された。
自来也とボルトから離れた場所で木に靠れながらサスケは、シャナの青い写輪眼を見つめる。
「お前、万華鏡写輪眼は、何時から使ってるんだ?」
腕を組みながら質問してくるサスケ。写輪眼についてサスケから問い詰められることはよくあったため、別の世界かつ年齢が違っても根っこは同じかと笑いそうになる。
だが笑えば機嫌を悪くするだろうと、素直に答えてやることにした。
流石に3歳から開眼していると答えた時のサスケの顔は、笑えたという。
そして、強敵相手に使用してきたと答える。流石に両目に備わった瞳術までは説明しないが。特に須佐能乎について聞かれた為、それも3歳の時に発現したと答える。
「九尾か」とサスケは何か思い当たったらしい。
「それほど長い時間、万華鏡写輪眼を使用していて、視力に問題はないのか?」
「視力? 別に」
シャナの答えにサスケは酷く納得のいかなそうな顔をした。通常、万華鏡写輪眼は強力な瞳術の対価に、視力を失う諸刃の剣。なのにシャナは万華鏡写輪眼を十数年使ってきたが視力の低下がないという。万華鏡写輪眼の視力の低下を無くすには、肉親などの万華鏡写輪眼を移植した永遠の万華鏡写輪眼を開眼するしかない。
となれば、シャナの万華鏡は永遠の万華鏡写輪眼だという可能性がある。だがシャナは目を移植したこともないという。そして、永遠の万華鏡写輪眼であれば須佐能乎のダメージは発生しない筈。
「妙だな。青い写輪眼、えらく中途半端だ」
失明と言うデメリットがない代わりに、須佐能乎の凄まじいダメージは残っている。元の世界にはない新しい写輪眼の存在に興味は湧く。だが全てが終われば元の世界に帰る身。深入りしてはいけないと思いながらも、助言をしない選択肢はない。
「お前の須佐能乎だが、使わない方がいい」
「無理だと分かって言ってるってばね」
シャナの術で一番の防御であり、切り札である須佐能乎を使えなくなれば、戦闘能力は一気に低下する。だがシャナとしても強敵相手に須佐能乎を使い過ぎている自覚はある。そして、戦闘中や戦闘後に襲い掛かる苦痛に、いつも苦しめられている。
「使えば使うだけ、お前の寿命を縮める事になってもか?」
「長生きしたいとは思ってないってばね」
善意からの忠告だと理解している。だがシャナは一つでも戦う手段を増やしたい。だから素直に聞いてあげる事は出来ない。
長生きしたいと思わないというのも本心だ。死ねない理由は多いため、生きるために足搔くことはやめない。だが生きたい理由はシャナにはなかった。
ナルトを育て、両親から貰った想いをナルトにも与えてあげたい。ナルトを守り、彼を狙うものを退ける。
そして、憎き九尾の妖狐を殺す事。それが終わった後をシャナは考えていない。
友達や好きな人と生きていくという未来もあるだろう。けれど、全てを失ったシャナに、そんな人生が歩める自信がない。自分の気持ちに素直になっても、その不安だけは拭えない。
「お前の動きは上出来だ。だが、もう少し無駄を省けば、劇的に変わるだろう」
自分より上に領域にいる人間のアドバイス。シャナにとっては珍しい体験だった。幼少期からずば抜けた才能を持っていたシャナにアドバイスできる人間は僅かだった。瞬身の術を教えたシスイが一番シャナを見ていたと言える。
強すぎたが故に師に恵まれなかった。師になれる人材が木ノ葉にはいない。唯一自来也のみが術を教える立場だったが、シャナは教わるというよりも盗んでしまった。
「無駄って何だってばね」
「お前は動きが早いが、太刀筋に関しては、自己流で癖が強い。首だけを狙うのは効率的かもしれないが、いい目を持つ相手なら、簡単に見切られる。剣の型が少なく、慣れてしまえばカウンターがしやすい」
剣など学んだことがない。実際、剣術においてラビリンスの足元にも及ばなかった。サスケの指摘通り、カウンターで何度首を切り落とされそうになった事か。
「剣なら教えてやれる。ウラシキが来るまでに時間もあるだろう。時間があれば来い」
自分の弟子の未来の姿に教えられるのはどうなんだと思ったが、修行を見てくれる相手がいる事が少なかったシャナは、了承した。実際問題、力不足と成長の停滞を感じていた彼女にとっては、渡りに船だった。
謝礼は、腰のポーチに入っているカタスキへのチャクラの充電で払うことにした。