ソードアート・オンライン パラダイス・シフト 作:hirotani
《ジーゼックの剣》
いやあ結構激しい戦いだったな。よくお互い死ななかったもんだ。
なんだ落ち込んでるのか? 卑屈になることないじゃないか。
確かに奴を仕留めたのは俺だけど、お前の援護があったから倒せたんだ。
ちゃんと皇帝陛下にも報告するさ。お前にも功績があるって。
にしても褒美を弾んでくれないとな。ダークテリトリーの魔物を倒しんだからさ。
爵位なんて貰えたりしてな。俺たち貴族の仲間入りだぜ。
俺もなれるかって? 当たり前じゃんかお前だって戦ったんだから。
きっと三等か四等くらいにはなれるぜ。央都に屋敷が建てられる。
家名が貰えるとしたらお前どんな姓にする?
え、自分の名前をそのまま家名に? いいねえそれ。俺もそうしよ。
子どもや孫が俺たちの名前を名乗るって浪漫だよな。
なあ、俺たちの子孫同士も仲良くできるよな?
どんなに時間が経っても、俺たちが友達なのは変わらないよな。
俺は絶対にお前を裏切らないさ。俺の子孫もだ。
約束するよ、ジーゼック。
1
急降下してくるその影は、あの赤い飛竜と思った。でもすぐに違うと分かる。色があの燃えるような赤ではなく、くすんだ鈍色だった。
真っ直ぐ頭をこちらへと向けて降下――というより落下してくるそれは、全容がはっきりと分かるほど地上に近付くと腹ばいのような恰好に身を翻した。
その姿を何と形容するべきか、初めて見るものにわたしは最適な言葉を当てはめられない。
減速したようだが、まだ勢いを抑えられていないのは傍目から見ても分かった。斜めに身を降ろしたそれは、地面に触れた瞬間に轟音と共に身を跳ねさせる。また地面に腹を触れさせ、今度は弾かれこそしなかったものの土を穿ちながら地面を滑る。
どれほどの距離を滑ったのか、正確に測ることはできなかったけど村の通りに長い轍が作られたのは確かだ。村の入口に差し掛かる前に着地して、中央広場にまで食い込むほど。
頭が、まるで頭蓋骨を綺麗に割ったかのように開いた。中から出てきたのは脳味噌ではなく、人だ。
「だから機竜は嫌なんだ」
女の声だ。ぶつくさ言いながら軽い身のこなしで頭から出てきた女が地面に降りると、身に着けている鎧が重苦しい音を立てる。
まだ少女の面影がある若い女だった。容姿に似合わない鎧を打ち鳴らしながら歩く彼女は、所々に死体が転がる村を見渡して眉を潜める。
「これはどういう状況だ?」
誰にともなく向けられた質問に答えられる者はいなかった。オーク達もわたし達も憔悴していたから。
女の目が留まったのは、頭蓋から未だ血を流し続けているイーの死体だった。次に視線が向けられるのは、死体の傍に立っているセツナだ。
「見ない顔だな。これは貴様がやったのか?」
険のこもった質問に、セツナは逡巡したように辺りの死体を見渡した。イーも、すぐ傍にある元暗黒騎士もセツナが殺したわけだが、他の死体についてどう説明したらいいのか迷っているようにも見えた。
痺れを切らした女が、背中に背負っていた身の丈ほどある槍を掴み、切っ先をセツナへと向けた。何というか、騎士然とした恰好の割に原始的な印象を受ける槍だった。まるで動物の骨を削って尖らせたかのよう。
「人界統一会議整合騎士ユーリィ・シンセシス・トゥエニワンの名の下に回答を命じる。罪人ならば、私には貴様の天命を7割まで奪う権限を与えられている」
「ははは」とアーウィンが乾いた笑いを漏らした。
「7割か。それはかなり大きな権限だな」
「何がおかしい?」
「その男の権限は整合騎士様以上だと思ってね。何しろ天命を全て奪うことができる」
「全て?」
信じられない、というような怪訝な目を整合騎士は向ける。
整合騎士。直に見るのは初めてだった。人界最強の騎士団で、異界戦争の際には文字通り一騎当千に暗黒界の兵士たちを屠ったという。暗黒界側が名将と謳われたギルドの頭目や幹部を多く失ったのに対し、人界の整合騎士はたった3人の戦死者しか出さなかったという。
勿論、貴族や衛士で構成された兵士たちは多くの戦死者が出たそうだが、戦力の多くを整合騎士に依存していたことを考えたらその強さもある程度は想像できる。
そんな怪物じみた強さを持つとされる整合騎士が目の前に立っていたわけだが、彼女の容姿はお世辞にも歴戦の猛者には見えなかった。美しいとは思うけど素朴な町娘といった顔をしている。槍を構えているその姿は、どうにも子どもが騎士の真似事をしているようにしか見えず滑稽でもあった。
異界戦争の頃にはまだ少女だっただろう騎士は、大きな声で訊いた。
「そこにある亡骸は、貴様の手によるものか?」
「ああ」
「そうか、言質は取った。ならばこれより貴様を殺人罪で拘束し央都へ連行する」
瞬間、騎士が地面を蹴った。あんな重そうな鎧と長い武器だから、わたしの目で追えるほどの速さでしかない。
当然、セツナは突き出された槍の切っ先を剣で受け止める。だが、槍の勢いを抑えきれず、セツナの足が地面を擦りながら後退した。受け止める剣が震えている。無表情だった目が僅かに見開かれた。
騎士は自らの獲物を構え直し、上段へと振り上げる。槍が弧を描くと同時に、セツナの身体も追従するように持ち上げられる。細身とはいえ、成人した男を軽々と持ち上げる力があの騎士のどこから出てきたのか。
「まさか防ぐとは」
着地してみせたセツナに騎士は感心したように嘆息する。
「天命の半分くらいは減らすつもりだったが、侮っていたようだな。全て奪うつもりでいくぞ」
再び騎士が地面を蹴る。今度は速かった。手加減していたというのは嘘ではなかったらしい。
突き出された槍の切っ先をセツナは受け止めず、今度は紙一重で避ける。すれ違いざま、自身のすぐ横を貫く槍の中腹に橙色に輝く剣を振り下ろした。
凄まじい轟音が響く。金属を打ち鳴らしたものじゃなく、巨大な岩をぶつけ合ったような音だった。わたしが咄嗟に耳を押さえているなか、音源の渦中にいたふたりは音など意に介さないとばかりに武器の競り合いを拮抗させていた。
セツナの剣から輝きが失せていく。刃が直撃したにも関わらず、騎士の槍は亀裂など入らず磨かれたばかりのような輝きを保っていた。
騎士は勝ち誇ったように微笑し、
「そんな細剣でこの
両者はすぐに武器を引いた。セツナの剣が、今度は水色の光を放つ。まるで槍のように真っ直ぐな突きだった。咄嗟に掲げられた槍に防がれたが、一撃に終わらず更に2連続の突きが一瞬のうちに放たれる。
最後の一撃を防ぎきった騎士は、1歩を踏み込んで肉迫し鍔迫り合いへと持ち込んでくる。決して不利ではないはずなのだが、騎士の顔には焦りが浮かんでいた。
「貴様その剣はアインクラッド流か!」
「知るか」
気のせいか、セツナの声に苛立ちが乗っていたように感じられる。彼はつい先日まで秘奥義を知らないまま行使していた。どんな技が使えるのか忘れているのに肉体のほうは覚えている。
何故秘奥義が使えるのか、何故法に縛られず殺せるのか。それに最も戸惑っていたのは彼自身だったのだろうか。
耳に触る甲高い音が響いた。セツナの剣が中腹から真っ二つに折れている。秘奥義を連発したせいで天命も限界だったのだろう。騎士は好機とばかりに「恨むなよ」と呟き、
「システム・コール!」
至近距離で神聖術の詠唱を始めた敵を警戒してか、セツナは咄嗟に右足を突き出した。不意打ちの蹴りを胸当てに受けながらも、大した攻撃にはならなかったらしく騎士は後退したのみで詠唱は止まっていない。
長い式句だったが、早口でまくし立てるから殆ど聞き取れない。辛うじて聞こえたのは、最後の一句だけだった。
「エンハンス・アーマメント!」
槍の切っ先で、つむじ風のように空気が渦を巻いているのが肉眼でも見ることができた。空気と共に稲光が生じ、灯のように槍の穂先で球を形作る。
騎士が切っ先をセツナへと突き出した。距離があるせいでまったく届いてはいないのだが、ただ突くための動作じゃないことは、わたしの目から見ても容易に判断できた。
切っ先にあった光の球が、文字通り光の速さで打ち出される。ほぼ一瞬と言うべき速さで球は咄嗟に折れた剣を構えたセツナに直撃し、彼の身体に稲妻が纏わりつくように走りながらその細身な身体を吹っ飛ばした。
「セツナ!」
彼のもとへ走ろうとしたわたしを、騎士が槍を向けて「動くな!」と制す。
「貴様も奴と共に尋問させてもらう。怪しい動きをしたら天命を半分にまで減らすぞ」
「そこの女もだ」とアーウィンにも槍を向けてから、騎士は倒れたセツナへと歩いて行く。
「大丈夫だ」
とか細い声をアーウィンが漏らした。根拠はないが、妙な説得力があった。いや、アーウィンじゃなくわたしが大丈夫と言っても信じられただろう。セツナはあんな程度では殺せない。その点に関してだけ彼は信用できる。
騎士が見下ろすセツナの身体からは白煙が立ち昇っている。アーウィンと初めて会ったときもあんな風にされたっけ、と不謹慎にも思ってしまった。
動く気配はない。骸のように沈黙する彼の左胸に騎士は槍を向ける。ほんの少し力を込めただけで貫いてしまいそうな距離だ。
瞬間、槍が弾かれた。
次にわたしの目に映ったのは、振り上げられたセツナの右足と、そこから突き出した細い刃だった。即座にうつ伏せになり、セツナは腕を軸にして身体を回転させる。騎士の頬に一筋の線が入り、そこから血が滴る。
傷を付けられたことに驚愕してか、騎士の動きがほんの一瞬だけ緩慢になった。地面を蹴って跳びかからんとばかりに肉迫したセツナは騎士の顔面を掌で覆い視界を奪う。その勢いのまま、騎士の身体を頭から地面に叩きつけた。
聞くだけで痛々しい鈍い音だった。常人なら意識が飛んでもおかしくはないが、そこは流石整合騎士。まだ手足をばたつかせるほどの余力が残っているらしい。だがセツナが金属の手甲に覆われた左手でこめかみを殴ると沈黙した。防具に仕込んだナイフを使わなかったのは彼なりの優しさだろうか。
「気絶に留めたのは懸命な判断だよ。この整合騎士には訊きたいことがあったからね」
白眼を剥く騎士の顔を覗き込みながら、アーウィンが嘆息交じりに言った。「俺もだ」とセツナも眉間にしわを寄せながら騎士を見下ろす。
「気になることを言っていた」
わたしもまじまじと見つめてみるが、見るほど鎧や槍が似合わない娘だ。「気を付けたほうが良い」とアーウィンが言った。
「この者は秘術で天命を永遠に保つ不死者だ。見た目こそ小娘だが恐らく何十年以上も生きている」
「それって、死なないってこと?」
「いや、老いがないだけで殺せば死ぬと聞いたな。異界戦争で整合騎士長がベクタに殺されたそうだから」
「それでも歳を取らないなんて………」
「ああ、それだけでも十分気味が悪いな。まあ、これと同じくらい不死身な者もいるが」
そう言ってセツナに向けるアーウィンの眼差しには心なしか呆れが混じっているように見えた。服は少し焦げ付いてこそいるけど、顔は殆ど傷や火傷らしきものがない。
「整合騎士の完全武装支配術を受けて無事とは、君は本当に化け物じみてるな。戦争で何百何千という軍勢が一網打尽にされたのに」
「完全武……、何だそれは?」というセツナの問いも予想通りとばかりにアーウィンは即答する。
「秘奥義の上位技みたいなものだ。それで、一体どんなからくりを使った?」
セツナは周囲に視線をくべる。少し離れたところに落ちていた、折れてしまった剣を掴んだ。
「これに身代わりになってもらった。巻き添えは食ったが」
僅かに残っていた天命も尽きたらしく、半分あった刀身も柄も粉々に砕けてセツナの手から零れた。
2
悲劇があったことなんて関係ないとばかりに、鉢植えの若草は瑞々しく揺れている。それを風呂敷に大切に包むオークの司祭は、悲しそうに眼を伏せていた。
祀られる神体というものは不変であり不動だ。たとえ悲劇があってどれだけの死人が出ようとそこに在り続ける。神が宿ると言い伝えられているのに、救いを求められているのに在るだけで何もしてはくれない。
救いが必要なときに神の奇跡なんて起こらなくて、初めて人は気付くのだ。神などいないと。
それでも今度こそは、と神を信じ続ける心を愚かと断じるべきか信心深さに感銘を受けるかは、これを読む諸氏に委ねよう。
「これからどうするの?」
意地悪な質問とは分かっていたけど、訊かずにはいられなかった。僅か数人しかいなくなってしまった子ども達を伴った老オークがしゃがれ声で答えてくれる。
「一族の里を目指し、長に受け入れを頼むづもりだ」
「この村のことは言うの?」
「いえ、そのつもりはありません」と司祭がかぶりを振る。
「言えば、我らが一族はかつて人族に虐げられていた怒りを再び燃やしてしまうかもしれません。それは長も、リーファ様も望まぬことでしょう」
「あなた達を救ってくれなかったのに、まだ緑の剣士を信じられる?」
「私が信じなければ誰が信じるというのです。それに、アーウィンさんといいましたか。あなたのお仲間は私たちのために涙を流してくださいました。それだけで、まだ人族にも清い心を持った方がいると希望が持てるのですよ」
「希望――」
「ええ、まだ世の中捨てたものじゃない、とね」
司祭はにっこりと笑った。ほんの一時の奇跡のために長い苦しみに耐えるのは、果たして割に合っているのだろうか。奇跡とは、それまでの苦しみを帳消しにしてくれるものだろうか。神なんてものを根本から信じられないわたしには分からない。
「そう、元気でね」
わたしは彼らの旅路が無事であることを祈るだけだ。それしかできない。少年オークの頭を撫でると、彼は恥ずかしそうに老オークの背中に隠れてしまった。
「あなた方も幸運を」
厩舎にいた馬たちと共に村を去る彼らを、わたしは見えなくなるまで見送った。虐げられてきた者が抵抗する勇気を持てない気持ちは、近しい立場にいたわたしにも理解できる。抵抗して殺されるか、いつか戯れで殺されるか。過程が異なるだけで、結局のところ末路が死というのは変わらない。ならば考える事をやめ、穏やかに最期を迎えたいというのが唯一の救いだったのか。
ならば、セツナは彼らがいずれ辿る運命から解放してやったことになるだろうか。この村だけじゃない。商工ギルドに奴隷として捕らえられていた子どもたち。そしてわたし。
分からない。だってわたしは、まだ救済を実感できるほど生きていないのだから。
「ん……」という吐息が聞こえて、わたしは傍に横たわる鎧姿の女を見下ろす。薄く目蓋が開かれると、わたしの姿を認めてか一気に目を剥いた。
「っ!」
起き上がろうとしたのだろうが、それは叶わないことだ。何故なら彼女が気を失っている間、セツナとアーウィンが縄で手足を縛っておいたのだから。
「これは何の真似だ!」
「暴れられたら困るからって」
「蛮族が! このような仕打ちが許されるとでも――」
「説明しようとしたら、あなたいきなり攻撃してきたじゃない」
「それは、あの男が殺人を犯したなどと――」
「お目覚めか」とアーウィンとセツナがやって来る。結構大きな声だったから分かりやすかっただろう。
「殺したければ殺せ」
「随分と潔いな」
「大方、異界戦争で散った者たちの仇討ちだろう。私ひとりの天命で貴様らの気が済むのなら安いものだ」
「あー、何だか話が飛躍している気もするが」
この崇高な騎士様に何と言ったらいいのかアーウィンは困ったように頬を掻いた。
「別に君を殺すつもりはない。ただ訊きたいことがあるだけだ」
「拷問にでもかけ統一会議の情報を引き出すつもりか?」
「いや、それも気にはなるが――」
とうとうアーウィンは盛大な溜め息を零した。騎士はそれを見逃すことなく噛みついてくる。
「何だ!」
「あまりにも的外れでね。これじゃ話が進まない」
会話の噛み合わなさに呆れかえっていたわたしも溜め息交じりに言う。
「まずは落ち着いて、人の話を聞いたら?」
明らか年下であるわたしに諭されたのが屈辱だったのか、騎士はそこでようやく口を引き結んだ。整合騎士も案外間抜けなところがあるんだ、とはここでは口に出さないほうが良いだろう。
やっとか、とばかりにまた大きな溜め息をつきアーウィンは質問をする。
「この村には月に1度整合騎士が来ると聞いたが、それは君のことか?」
「そうだ。私は統一会議より視察大使としてこの村の管轄を任ぜられた」
「視察か……、その任務を君はこなしていたのか?」
「当然だ。貴様は私を愚弄するのか!」
「だから落ち着け。別に喧嘩を売ってるわけじゃない」
どうやら熱くなりやすい性分らしい。騎士らしく誇り高いといえば聞こえは良いけど、この場だとただ血気盛んなだけ、という印象に見えてしまう。
「私のほうからも訊きたい」
騎士が言った。「何だ?」とアーウィンが促すと騎士はセツナを睨み、
「その男、さっき人を殺めたと認めたな。一体何者だ。見たところ人界人のようだが、禁忌目録を知らないはずがない」
「知らないわ」とわたしが答える。
「ベクタの迷子だから」
そのベクタの迷子が珍しく、自らの口で質問をした。
「あんた俺の剣をアインクラッド流と言ったが、それは何だ?」
「我らが代表剣士と副代表剣士が使う剣技だ。貴様の剣はよく似ていた」
「アインクラッド………」
初めて聞くはずの言葉を反芻し、セツナは虚空を見つめる。「覚えがあるのか?」とアーウィンが尋ねてみるけど、彼は無言のままかぶりを振った。こんどはアーウィンが質問を飛ばす。
「代表剣士とは、ベクタを討った英雄だな」
「ああ、そうだ」
「その者と副代表剣士だったか、ふたりの出自は知っているか? 故郷や家柄は?」
「リアルワールドと聞いている。それ以上のことは知らん」
「使えない騎士様だ」というアーウィンの皮肉に騎士は「何だと!」と斬りかかる勢いだったが、ろくに動けないから身じろぎするだけで終わった。そんな彼女を尻目にアーウィンはセツナへと向き、
「どうする? 人界に行って代表剣士と会えば、君の過去が分かるかもしれない」
しばし逡巡するように、セツナは僅かに目を伏せた。気乗りしないことはわたしにも察しがつく。禁忌目録に縛られず、躊躇なく殺人を犯せるこの男の過去が真っ当なはずがないのだ。
「まあ、今すぐ決めることじゃない。手掛かりは見つかったんだ」
心中を察してアーウィンはセツナの肩を叩いた。そこに騎士が横槍を入れてくる。
「この縄を解けば私が会わせてやる。罪人としてな」
「あーそれなんだが」
アーウィンは気まずそうに騎士が乗っていた鋼の竜を指さし、
「君の機竜とかいうのはもう使えないみたいだ」
「は⁉」
遠くで昇っている黒煙は、一見すれば村のどこかの家が燃えているかのように錯覚してしまうかもしれない。でも煙は機竜と呼ばれる乗り物の尻から立っていた。
もっとも、セツナが適当に計器をいじっているうちに後部が爆発したのだが。
機竜を間近で観察していたセツナは、あの代物を知っているようだった。戦闘機とか、騎士が乗っていた部分をコクピットとか初めて聞く用語を並べ立てていた。
騎士の言っていたアインクラッド流剣技といい、セツナは人界統一会議と関係しているのかもしれない。そんな可能性がわたしの中で大きくなっていた。
「それに罰ならば、君も受けるべきと私は思うけどね」
アーウィンの険のこもった言葉に、騎士は「何のことだ?」と苛立ちを隠さない。その態度にアーウィンのほうも苛立って、
「君はこの村で起こっていたことを知らなかったのか?」
「何をとぼけている。村人たちを殺したのは貴様らだろう?」
「確かに何人かの死体は私たちがやったが、殆どは同じ村の者が手に掛けた」
「馬鹿なことを。村人同士で殺し合いをしたとでも? ダークテリトリーでも法整備はされている。私は何度も視察に来て確認していたのだ」
「だとしたら職務怠慢だな。君の確認漏れのせいでとんでもないことが起きた」
「だから何の話だ!」
「百聞は一見に如かず、か………」
アーウィンは呟くと、騎士の足を縛っていた縄を剣で斬った。斬る時も騎士が「何の真似だ!」と騒いでいたが、もはやアーウィンも説明するのが面倒になったのか「少しは大人しくしてくれ」となだめるに留まった。それでも騎士は喚くのを止めなかったのだが、セツナが剣を首元に当てたことで自らの立場を理解したらしく口を閉じた。
ふたりを両脇にして向かっていくのは、ついさっきわたしが目の当たりにしたこの村の現実。未だに悪夢と信じたい事実をアーウィンとセツナは再び見に行くことになる。
それを思うと、わたしは自分ひとりここで待っているのが卑怯と感じられた。知っていながら目を背けるのは赦されない。そう自身に言い聞かせ、わたしは3人を追う足を急がせた。
そーどあーと・おふらいん えぴそーど14
キリト=キ
アスナ=ア
ア「こんにちは、そーどあーと・おふらいんの時間です。司会のアスナです」
キ「解説のキリトです。まずは新キャラのキャラデザのために更新が大幅に遅れたことを、遅筆な作者に代わってお詫び申し上げます」
ア「今回はその新キャラの紹介をするわよ。それでは皆さんお待ちかね――待ってねーよという声は無視します!――ユーリィ・シンセシス・トゥエニワンのキャラクタービジュアルです!」
【挿絵表示】
キ「まあ整合騎士だからやっぱり鎧着てるよな」
ア「作者曰くフルアーマーな衣装は描いていてもの凄く面倒くさかったそうです。因みに色が赤とシルバーなのは、作者が『シン・ウルトラマン』を観に行って頭パーンてなったからだとか」
キ「ノリで色決めてたのかよ………」
ア「まあそもそもの話として作者は赤が好きなのと、本作のイメージカラーがモノクロに血を垂らした赤だからとか」
キ「分かり辛い例えだな。要は作者の好みってことだろ。あーあと今入った裏設定だけどデュソルバートの弟子らしい。多分色が同系統だからって理由だろうけど」
ア「因みにプロフィールですが――」
キ「どうせ体型はラブライブのキャラなんだろ」
ア「もう何でネタバレしちゃうのよ盛り下がるじゃない」
キ「こちとら作者がラブライブで頭パーンなの知ってるんだよ」
ア「はあ……、それじゃプロフィールね。ユーリィは身長158センチ、スリーサイズはバスト85ウエスト60ヒップ86。『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』に登場する
【挿絵表示】
キ「お、おお………。結構スタイル良いんだな」
ア「彼方ちゃんのボリュームあるボディを何とか世に広めたいという作者の方針です」
キ「いや体型同じだけどキャラはあくまで近江さんじゃなくてユーリィだからねこれ」
ア「あと年齢だけど外見は童顔でも27歳くらいらしいわ」
キ「メインキャラの中じゃ最年長なんだな。とはいえ整合騎士で天命凍結されてるわけだからもっと長生きしてるよな」
ア「そう、ファナティオさんほどじゃないけど実はBBAです!」
キ「おい言い方! てか本作の設定上俺たちだって三十路くらいだしあと190年くらいは生きるんだぞ」
ア「でも多分見た目変わってないわよわたし達イレギュラーユニットだし」
キ「星王と王妃になった俺たちのビジュアルが公式から出てない以上はその辺りもはっきりとは言えないしなあ」
ア「話が脱線しましたがユーリィとの初バトルについての解説よ!」
キ「やっと解説コーナーらしい話ができるよ。ユーリィの神器は
ア「作中でもまんま骨って言われてたけど頑丈よね。セツナの技食らっても何ともなかったわけだし」
キ「そこは神器だからな。あと槍を折ろうとしたときセツナが放ったソードスキルは《ソニックリープ》だ。原作アインクラッド編で俺がクラディールの剣をへし折った技だな」
ア「作者的にはオマージュとして入れた場面みたいだけど、原作通りには折れなかったわねえ」
キ「武器破壊ってかなり難しいんだよ。原作でも武器を当てる位置とか耐久値とかのパラメータ関係で滅多に起こらない現象らしいからな。俺が原作でやれたのはクラディールの剣が見た目重視で脆かったのもあるけど、セツナが不発になったのは俺ほどソードスキルの扱いに精通していないっていう演出らしい」
ア「その後もソードスキルやってたわね。確か3連続の突き技」
キ「あれは細剣スキルの《トライアンギュラー》で、アスナがよく使ってた技だな。ユーリィが知っていたのは副代表剣士のアスナから見せてもらったことがあるからなんだ」
ア「だからユーリィはセツナの剣がアインクラッド流だって見抜けたのね」
キ「このバトルの演出から、作者は読者さんがセツナの過去について何となく想像がつくようにしたみたいだな」
ア「え、どゆこと?」
キ「えーおバカさんはスルーします。あとユーリィの完全武装支配術を食らっても平気だったトリックについて、作中のナミエ視点じゃ説明不足だったからここで解説するぞ」
ア「作者曰く地の文で説明し過ぎると興醒めしちゃうっていうのと、ナミエの手記という文章の設定上知り過ぎていると不自然だから必然的に説明不足な場面が出ちゃうので、ご容赦ください」
キ「ユーリィの完全武装支配術は所謂サンダーボルトなんだが、それを察したセツナが咄嗟に剣を放り投げて、それが避雷針になって電撃を受けてくれたおかげでセツナへの直撃は免れたんだ。それでも近くにいたから感電はしたんだけどな」
ア「ふーん。あ、作者から新情報よ。ユーリィは同じ槍使いということでネルギウスの弟子って設定にする予定だったんだけど、さっき話したカラーリングの関係とムーン・クレイドル編を知らない読者さんだとネルギウスを知らないだろうということで急遽デュソルバートさんの弟子に変わったそうです」
キ「ネギオ、ドンマイ………」
ア「いやー、久々に解説らしいことしたから疲れたわね!」
キ「ようやく本来の仕事ができたはずなんだけどな俺たち」
ア「新キャラも登場したことだし、これからどんなカオスへと突入していくのか、こうご期待です!」
キ「それじゃあ、また次回!」
ア「あ、最後にひとつ。本作はジャンルとしてはハーレムものらしいわよ」
キ「え⁉」