魔法少女大乱Online   作:八虚空

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第9話 進化デーモン

 土下座するコボルト見学の後。トレントの苗木に今日の分の魔素を与えに行って昼の仕事を予定通り終わらせた。日が落ちて太陽結晶が夕方の空模様を再現し始めたのでログハウスの家へと帰る。ギシッと受け止めてくれる高級ベッドが安らぎの空間を演出してくれてて良い感じだ。買って良かった。

 こうなると余暇を潰すテレビやパソコンが欲しくなってくる。娯楽の分野でデーモンは不遇だ。この世界、現代社会に住むミュータントが当然のように享受してる娯楽だけじゃなく、SFに登場するVRゲームなんかもあって、インベーダー社会で広く普及している。田舎で辺境の太陽系に住むインベーダーでも遊ぶ事が出来る程にだ。超恵まれてると思う。凄い羨ましい。

 

 大抵の問題が魔素ひとつで片付くデーモンを羨ましがるインベーダーやミュータントは多いけど、デーモンの娯楽って食う寝る暴れるセックスなんだぞ? 現代人が満足できるとでも?

 まあ、肥料・水撒き・農薬など菜園に必要な一切を魔素の注入だけで代用できるのは凄い楽だけども。それに、水やりをしたくても僕の箱庭には水源となる場所が地下水を含めて存在しないから不可能というね。魔素がなきゃこんな豊かな森林は維持できない。ゴブリンもコボルトも水分は果実を食べて補給している。

 

 僕の飲み水や生活用水はショップ経由で購入してるけど、ニンフになってから不思議と喉が渇いたような感覚を感じた事がない。魔素で誤魔化してるんじゃなく、ニンフの種族にとって飲食は不要なんだろうと思う。

 何せ食べ物を飲み食いしてもトイレにすら行きたくならない。睡眠も人間の頃の名残として取っているけど、寝なくても問題はないんだろう。太陽の光が唯一、ニンフになってから僕が欲した物だった。気分的にね。

 

「でもトイレに行かないなら、何でニンフには肛門があるんだろうか」

 

 まさかマジでセックスする為だけの穴? 魔法少女大乱の種族なんだし、あり得る。流石はエロゲ世界。

 僕にそういう趣向はないんだけどな。入れられる側になるのは無理。鳥肌物だ。ましてや子供を産むとかもっと無理。

 

「だけど現状は何かヤバい気がする」

 

 魔素は日々増えていくし神秘もトレント繁殖事業で蓄えられていくから十分だと思っていたけど、モンスター達の覚悟が決まりすぎてて怖い。あのトレント。死ぬかもしれないって分かってて僕を騙してきたよね。説明が本当なら僕の寵愛でトレントの神秘は上がり続けていくのに。

 ここまで僕と眷属に意識の差があるとは思わなかった。

 

「…………」

 

 ひとつ。ひとつだけ、現状を変えられる方法に心当たりがある。

 

 

【交流用】総合雑談スレpart2

 

759:名無しの転移者

ところで、>>338で言ってたモンスターのランクアップはどうやるの?

Nランクモンスターに精液を与えてみても進化しないんだけど

 

760:名無しの転移者

お前、マジでやったのか(戦慄

 

761:名無しの転移者

だって簡単にしかも無料で戦力アップを可能とか最高じゃん

売れば魔素も稼げる。うちはカツカツなんだよ

 

762:名無しの転移者

ガセネタだぞ。ソースは俺

 

763:名無しの転移者

お前もやったのか(震え声

 

764:名無しの転移者

思ったより狂人が多くて草

 

765:>>338

ちゃんと同一種のNランクカードだったか? 別種じゃ駄目だぞ

 

766:名無しの転移者

俺は魚人。アイツはイルカ。そこに何の違いもありゃしねぇだろうが

 

767:名無しの転移者

違うのだ!!

 

768:名無しの転移者

イルカちゃん可哀想(小並感

 

769:名無しの転移者

>>766 お前は魚類。イルカは哺乳類

 

770:名無しの転移者

転移者の方が魚に近いとか、これもうわかんねぇな

 

771:>>338

うーん。実際どうなんだろう。俺も借金取りの言うがままに犯ってるだけだからな

あ、でも一つ変だなって思ったのはランクアップしてもモンスターはNランクのままだった事

 

772:名無しの転移者

それ進化してなくね?

 

773:>>338

いや、間違いなく進化はした。性能も値段もダンチ

 

774:名無しの転移者

つまりこういう事か?

Nランクカードの中でも最弱のNランクモンスターは同一種の高位デーモンの精で進化する

 

775:名無しの転移者

あーなる、それっぽい

 

776:名無しの転移者

面倒くせーな

その最低ランクモンスターを特定して買わなきゃ資金繰りできねーじゃねぇか

 

777:名無しの転移者

何か思ったより奥が深い世界だな

雑談スレとは別に個別スレを立てて情報収集しようぜ

 

778:>>338

おっけ。俺の情報も個別スレで詳しく話すわ

 

779:名無しの転移者

切羽詰まったデーモンも多いから虚偽報告は厳禁な

後、心当たりのある奴は向こうに可能な限り書き込んでくれ

 

780:名無しの転移者

俺、他のスレにも拡散して住人集めてくるわ

 

 

 魔素不足に喘いで苦しんでいるデーモンは多い。一致団結した彼らは検証し続け、一定の成果をもたらした。

 今じゃ精液で進化する最低ランクモンスターは進化デーモンと呼ばれ、デーモンプレイヤーの大事な資金源となっている。

 

 それで話は変わるけど僕はニンフ。精霊およびギリシャの女神属性を持つ伝承存在だ。

 その事を踏まえて、このモンスターを見て欲しい。

 

 

◆◆◆

 

Nスライム(1/10)

有利特徴:繁殖++

不利特徴:意志薄弱-、肉体脆弱-

 

透明な水溜まりのようにも見えるゼラチン状の生物。

空中に漂う微精霊が物質化した粘液生命体であり全ての生き物の母。

 

◆◆◆

 

 

「僕の進化デーモン。絶対コイツじゃん」

 

 しかもスライムは精霊種。進化すれば魔素を箱庭に放出してくれる。ニンフを自己妊娠して産まなくても良くなる訳だ。

 良い事ばかりだ。ちょっと精液をスライムにかければ皆が笑顔になる。

 

 問題なのはニンフとスライムの組み合わせの種族進化の報告が、デーモン進化スレに今までされたことがないって事だ。

 今となってはデーモン界隈でかなり有名なスレであるデーモン進化スレ。魔素欠乏状態に陥った数多くのデーモンがこのスレに救われてきた。

 故に、進化デーモンの情報を持ってて秘匿するのはちょっとしたスキャンダルだ。虚偽の書き込みをしたデーモンが何人も晒し上げられている。もし秘匿が発覚すればデーモン界隈で村八分になりかねない。

 

 その恐ろしさはURカードを課金ガチャで手に入れたのに破滅した黒羊事件のデーモンを見たら分かる。

 直接の面識はないから秘密がバレっこないなんて楽観は出来ない。実際に何人ものプレイヤーが掲示板で口を滑らせている。この掲示板は暇つぶしに遊びで書き込むような類いの物じゃないんだ。繋がりが絶たれたら場合によっては命すら失いかねない。僕が箱庭の外と繋がれる唯一の窓口。

 

「でもだけど。精液を出せるニンフなんて僕しかいない訳で……」

 

 他にもいるかもしれないけど、わざわざケダモノの巣窟で美味しい獲物だって主張するような馬鹿はいない。

 なんで僕はふたなりだって自己紹介してんだ! んなぁー!!

 

 ゴロゴロと床を転がる僕を3匹のスライムがベッドから見てる。そう、最初にカードから解放してペットにしたスライム達だ。

 それをベッドの上へと運んだって事はつまり、そういう事だ。

 

「無心。無心になるんだ。恥ずかしいと思うから恥ずかしいんだ。そう、これは皆がやってる事で何もおかしくはない。デーモンの多くが堂々とスレにおシコリ報告をしてるじゃないか」

 

 ハッキリ言って正気の沙汰じゃないと思うけどね。

 ああ、どういう反応されるか、だいたい想像できるっ! 何でアイツらは写真も絵もないデーモンに欲情できるんだ。最近はスレに書き込む度にセクハラされてる気がするし! 馬鹿ばぁーか変態! にゅああぁーーっっ!!

 

「おち、おちち、落ち着けっ」

 

 深呼吸だ。大丈夫。自慰なんて誰でもやってる。

 これは人工呼吸的なもので恥ずかしく何てない。露出プレイとかそういう、いかがわしいアレじゃない。

 

 画面が必要だ。テレビやネット越しにエロゲを見てるような雰囲気を出そう。

 

「確かインベーダーのコピー商会から鏡を買ってたはず」

 

 たいした値段もしなかったから全身鏡を購入して寝室の隅に設置した。キャラクリした自身の姿が気になって思わず衝動買いした奴だ。買った事に満足してあんま使ってない。

 ガラガラとキャスターの車輪を引きずってベッドに鏡を近付けた。スライムが興味深そうに鏡を見てる気がする。みょみょんと伸びてる。

 

「………………」

 

 鏡には顔を真っ赤にした緑髪の女の子が映っている。低身長で胸の大きさが際立った可愛い子だ。

 押し殺しきれない羞恥の感情で潤む翠の瞳が光を反射している。これ、本当に僕か? どう見ても女の子にしか見えない。

 

 シュルシュルと衣擦れをさせながら浅緑色のワンピースと純白の下着を外したら、男のモノがあそこにちゃんとある。

 でも、肌の白さと胸の大きさに注目がいってあまり気にならない。ベッドに座ってソワソワと手持ち無沙汰にしてると揺れる胸とピンクに染まった首筋の方が目立つくらいだ。

 

「みゅ?」

「ごめん。ちょっとそのままでね」

 

 蠢くスライムに謝ると僕は鏡を見ながら手をアソコに伸ばした。う、伝わってくる手の感触が男の物じゃない。女の子の手だ。

 逆側の手で胸を触ると驚く程、敏感でヤバい。力を込めたら指が簡単に沈む。柔らかいのに弾力があって暖かい。なんかもう下の方でクチュクチュ音がしてる。

 

「ふぅー。う……んぅっ……っんん」

 

 あ、駄目だ。これ。癖になる。

 

「ぁっ」

 

 

 

 翌日。スライムは3匹ともちゃんと進化してました。

 以上です。

 

 コバルト鉱石の情報。一日早く知ってたら、もう少し後回しにしてたのに……。


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