魔法少女大乱Online   作:八虚空

24 / 104
第14話 検索『デーモン 給料 好待遇』

 人間。魔法少女大乱の原作で大量にナレ死したり浚われたりする弱小種族でありながら、インベーダーのSF戦艦や数千年は生きたデーモンの王侯すら打倒しうる魔法少女を生み出す種族。魔法少女が本当に人間なのかは議論の余地があるけど、それは置いておこう。

 今は何故、地球の人間がデーモンに狙われるかを語ろうと思う。

 

 人間が美味しい獲物だと見做される最も大きな理由は、生存に魔素を必要としない知的種族な点だ。

 デーモン国家でバイトをして暮してるプレイヤーからの情報で詳細が判明したんだけど、デーモンは階級毎に必要な魔素が増えていく種族なんだ。

 

 NとRランクは日に1魔素以下。Rのトップ付近が日に1魔素の補給が必要になって、ようやく群れじゃなく個体として認められる。

 こういう下層デーモンは月30魔素くらいの低賃金で雇われて雑に死んでいくらしい。基本、使い捨て。収入は食費の3倍くらいが目安なんだそうだ。

 

 SRランクが生存するには日に最低3魔素の補給を必要とする。そこに魔法費用や強化費用が加算されていく感じかな。プレイヤーはここ。

 この位階に到達すると次元転移の魔法を使用する事が出来るのでバイトでも好待遇だ。一時間3魔素の高給料で雇われる。フルタイム休みなしで働いたデーモンプレイヤーが半月で450魔素を手に入れて得意げな顔で自慢し、箱庭の値段を聞いて崩れ落ちた。

 

 SSRランクは雇われる側じゃなく雇う側。商会のオーナークラスとなる。生存には最低でも50魔素は必要だという。

 本来ならこの位階の長く生きたデーモンこそが箱庭を持つに至るらしい。自らの領土を得て新たな王に成り上がろうと野心を燃やしている。箱庭を売りたいプレイヤーにとっては有り難い存在だろうけど、真面に運営しようと頑張ってるデーモンプレイヤーにとっては身近な脅威だ。

 

 URランクになると大国の王侯クラスの存在になるので一般デーモンに情報は下りてこない。生存に消費する魔素を知る事が出来れば大まかな戦力に目安を付けられるからね。デーモン国家の最高機密レベルの話だ。

 同種を気軽に売買するデーモンでもURは扱わない。この位階になると魔素なんて単なる数字。無意味な領域に突入するからだ。

 

 SR黒き仔山羊を一夜で1000匹産み落としたURシュブ=ニグラスを思い出して欲しい。

 彼女は殺害に成功すれば箱庭の初期魔素に匹敵する程の魔素を放出する黒き仔山羊達を無から生成してみせた。流石はクトゥルフ神話の豊穣神。僕みたいな精霊系種族の最高峰に位置するデーモンだったんだろう。

 

 地母神、豊穣神は各神話に必ず存在する。つまり大国に一人は必ずそういう存在がいる訳だ。

 その上でデーモン国家は箱庭内の魔素に魔術的な制約を施し、箱庭のデーモンが自由に魔素を補給する事を阻害した。魔素を大量に放出するニンフを国家奴隷として隔離・管理した。野良デーモンが容易くは生息できないような環境を整えて経済活動を通じて自らの意に沿うよう支配してるんだ。デーモンの財産権を認めていないにもかかわらず。

 

 上手い手法だと思う。デーモンは生きたければ王を崇めて暮すしかない。誰だって苦労して確保した財産を理不尽に奪われたくはない。

 うん。黒羊の親デーモン。どっちにしろ長くは生きられなかっただろうね。色んな意味でアウトな眷属だ。

 

 実はこの点にも人間がデーモンに狙われている理由がある。人間は子を産むのに魔素を必要としない。

 逆に言うとデーモンの繁殖には魔素が必須なんだ。普段は精霊種として魔素を放出しているトレントですら、急な繁殖には100魔素の成長促進を望んでいた。普通のデーモンは成長促進を用いなくても魔素を消費するんだろう。

 

 これは自らの箱庭を持つに至ったSSRデーモンにとっては死活問題だ。ニンフを何とかして手に入れられれば良いが、そうでないならトレントのような商品作物を大量搬入して解決するしかない。魔石の貯蓄は一組織としてなら兎も角、国家として考えればまるで足らない。それに防衛の観点から箱庭が大きくなるまでは次元座標を知られる訳にはいかないのに大量の人手がいる。Nランクデーモンは頭が足りない。Rランクは手足としてなら我慢できるが自己判断できる程じゃない。SRまで行くと次元転移が可能になるから眷属以外は箱庭に招けない。

 

 だが、おっと。ここに繁殖に魔素がいらず、生存に魔素がいらず、頭が良くて気が利き、Rランク並の神秘を捧げてくるのにNランク並の力しか持たない変わった種族がいるぞ?

 

 もうね。狩られない訳がないよね。

 長生きしたSSRデーモンは魔法少女と敵対してもワンチャンある私兵軍を持ってるし。魔法少女を眷属に出来たら戦力アップ間違いなし。おまけに人間は神秘で強化されないから眷属にせず野良のまま飼っていても反逆の心配がない。

 人間牧場を運営する上層部に一部の人間を子飼いの眷属として取り立ててやるだけで何故か神秘も進んで捧げてくるようになった。ヨシッ!

 

「駄目だ。そりゃデーモンが侵略して来るよ。僕だって欲しいくらいだもの」

 

 精霊種は生存と繁殖に必要な魔素は少ないけどゴブリンとコボルトを見たら分かるように神秘の面でマズ味だからな。長い調教が必要。

 品種改良で調整されたトレントは魔素も神秘もプラスだけど代わりに世話が必要になった。まあ、成功の部類か。

 

 小精霊も僕の進化デーモンだから神秘を捧げてくれてるけど、野良だと訳の分からない言動しかしない典型的な頭Nランクらしいしね。

 

「人間の有用性が凄いな」

 

 こういう理由でデーモンは人間を地球から浚おうとしてるんだけど、何故か一部のデーモンは人間を直接、魔素へと還元しようと動いている。

 たぶんSSRの高位デーモンが重用してるのを見て下っ端が形だけ真似たんだろうな。仕様を理解しないで適当に真似する奴、前世でもよく居たし。

 

「つまり……ここで僕がショップに出品された彼らを見逃すと、魔素に還元されるかモンスターの苗床になるかか」

 

 いよっし買おう。

 うん、良心を宥める為の単なる理論武装だ。ショップは僕と同じプレイヤーしか買えないし。そこまで非道な事はされないと思う。

 でも人間が欲しくて購入するんだと、僕も所詮は単なるデーモンの一人なのだと認めたくない。人身売買なんてデーモンなら普通だって感想しか浮かばなくなっていても、それでも、僕はまだ人間なんだ。

 

 後、時たまドン引きするようなプレイヤーもガチでいるからな。万が一はある。

 

「値段は日本円で計算すると3万円か。地球の紙幣って事は販売したのはミュータントだな」

 

 概要欄を見ると紛争地帯で傭兵をしているミュータントでクライアントから給料として渡されたと書いてある。

 いや、状況的には餌として支給されたっぽい。ミュータントが人間を捕食すりゃ強化されるのは広く認知されてるからね。

 

 俺は傭兵プレイがしたかっただけで人食いの化物になりたかった訳じゃないって愚痴が延々と書かれている。

 

「んー、ついでに食料も送ってあげようか。戦地では貴重な物だろうし」

 

 一月足らずで戦場に適応した真面な倫理感が残ってるミュータントなんてレアだと思うし支援してあげよう。

 購入画面に進んで手続きを終えて、彼のショップアカウントのメール宛てに食料支援の用意があると書き込む。

 

 本当かっとすぐさま反応があった所を見ると中々飢えてるみたいだね。良いよ、直ぐに送ってあげよう。

 このアイテムボックスに眠っていた100房のバナナを!

 

「良い事をしたな」

 

 御礼は要らないよっと書き添えてバナナを送りつけた。まだまだ箱庭に一杯生い茂っているから貧乏くじミュータントにも送ってあげよう。きっと喜ぶぞ。

 

「でも人間の値段が一人1万円か」

 

 あまりにも安い。というか、わざわざ危険を冒してまで浚う必要なくない?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。