魔法少女大乱Online   作:八虚空

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第31話 デーモントレード

――――――――

 

〇両性ニンフ

 そういう訳で、ゴブリンの精霊種を箱庭内から除外するって事になったんだ。

 

〇肥満オーク

 なる程な。やはり精霊種だろうがゴブリンはゴブリンだった訳か。

 

〇両性ニンフ

 そっちの魔獣種のゴブリンはどんな感じ?

 

〇肥満オーク

 ぶん殴れば素直に従うから問題にはなってないな。

 卑屈な目でずっと隙を窺ってんのは気になるが。

 

〇両性ニンフ

 確か亜人種のゴブリンはもっと理性的なんだよね。

 自ら望んで他種族と共存してる箱庭もあるらしいし。

 

〇肥満オーク

 正直その区分にそこまで意味はないと思うがな。

 所詮、遙か昔それぞれの神話体系に帰属する際、どんな主の眷属になったかを示す出身地表明でしかないだろ。俺らの眷属と化しても元の種族を引き継ぐのは、身体に流れる血筋の歴史を塗り替えられる程の神秘が俺らにはないってだけなんじゃねえのか。

 

〇両性ニンフ

 つまり、人間が白人や黒人って風に肌の色が違ってても同じホモ・サピエンスであるようにゴブリンはゴブリンって種族だって言いたい訳?

 

〇肥満オーク

 まあな。あーいや、人類で例えなら現世人類の亜種だと言われてるネアンデルタール人とホモ・サピエンスも大した違いがあるとは思えねえんだが。普通に2種族同士で交配可能だったというか、ネアンデルタール人の血が流れてる現代人もいるらしいしな。つーか、こういう分類分けはお前にとっちゃ不都合なんじゃねーのか?

 

〇両性ニンフ

 なんで?

 

〇肥満オーク

 お前が黒人を眷属にした結果、生まれたのがダークエルフだ。

 じゃあ、白人を眷属にしたら生まれるのはエルフだろ。

 人間だった頃の因縁を持ち込まれたいか?

 

〇両性ニンフ

 うっ。めっちゃトラブルになりそうな気がする。

 

〇肥満オーク

 そうだろ。細かい分類分けでデーモンを軽率に判断しようとするな。

 後で間違いなく火種になるぞ。

 

〇両性ニンフ

 はーい。

 ああ、それで話の続きなんだけど、肥満オークさんとこのNイノシシを分けて欲しいんだ。

 肉にしてじゃなく丸ごと。生きたまま。

 

〇肥満オーク

 ああん? 何でだ?

 

〇両性ニンフ

 そっちじゃNイノシシ同士を命令で戦わせて勝ち残った奴を肉として出荷するってキチガイ染みた、いや凄い理に適った品質向上方法を実行してるでしょ。

 一回限界まで鍛え上げたNランクデーモンの強さを確認しときたいんだよね。逸話の積み重ねってのが何処まで意味あるのか知りたいんだ。

 

〇肥満オーク

 言葉を選ばなくて良いぞ。端から見たら頭がおかしいのは自覚してるから。

 でもな、俺の開催する闘技会で優勝した奴の頭部をぶった切って再眷属化すると高確率でRランクデーモンになるんだよ。

 主神の前で行われる名誉を賭けた決闘と死の踏破っつー儀式は逸話的に高度な物なんだ。肉の売却はオマケに過ぎん。

 

〇両性ニンフ

 そのオマケで売り払ってる肉がNランクデーモンにも関わらず1頭500魔素もしてんだよなぁ。

 確か500魔素もありゃNランクなんて群れで買えたでしょ。

 ボロい商売なんじゃない?

 

〇肥満オーク

 百は生る果実1つが300魔素で売買される金の生る木を持ってるお前が言うな。

 

〇両性ニンフ

 その分、売り捌くのが手間だけどね。

 偽装しなくても堂々と食品を扱える東勝神州は良いなぁ。

 

〇肥満オーク

 こっちはこっちで面倒くせぇぞ。

 屋台で肉の串焼きを売るのにだって戦闘力が必要なんだ。

 弱かったら代金なんて払わず食い逃げされるからな。

 俺が直々に出向いて見張ってないと商売にならん。

 

〇両性ニンフ

 うちのラミアもオリュンポス帝国以外での食品売買は反対してたっけ。

 勝手が分からないから無用なトラブルを招く確率が高いって。

 

〇肥満オーク

 ニンフ種族は東勝神州でも貴重で売却される事は少ないし配下のラミアだって珍しい。

 用心した方が良いだろうな。

 

〇両性ニンフ

 うん、気を付けるよ。

 それでイノシシの件なんだけどOK?

 

〇肥満オーク

 あー、魔素じゃなくデーモン同士でのトレードなら構わないぞ。

 トレントじゃあ価値が釣り合わないからコボルトでどうだ?

 

〇両性ニンフ

 ういうい。それじゃ明日になったら送るから。

 

〇肥満オーク

 おう。大会優勝こそ逃したがトップ4に入った奴らをオスとメスの組み合わせで送ろう。

 

〇両性ニンフ

 おお、太っ腹! じゃあ、こっちは子供が5人いる一家族を丸ごとプレゼントするよ。

 

〇肥満オーク

 2対7の比率になるが良いのか?

 

〇両性ニンフ

 うん。それだけの価値があると思うからね。

 

――――――――

 

 

「よしよし上手く行った」

 

 ベッドで寝転がりながら肥満オークさんとメールで商談して、お互い良い感じにウィンウィンの取引きに持っていく事が出来て満足。

 こっちじゃコボルトなんて100匹以上いる有り触れたデーモンに過ぎないんだけど、肥満オークさんにとってコバルト鉱石の糞をする精霊種のコボルトはショップに出品されない希少種なんだ。最近になって地球の文明が恋しくなって現金を欲しがっていたからね。コボルトを欲しがると思ってた。

 

 僕にとっては箱庭にちょうど欲しかった雑食の野生動物だし、肥満オークさんの特殊な儀式を経験した貴重なデーモンだ。

 概要を多少聞いただけでも異文化に感じる奇妙な闘技会。だけど、この大会を実行する事で肥満オークさんはRランクデーモンの量産に成功している。そんな事はデーモンプレイヤー界隈でも上澄みの極一部にしか出来てない。性交で高ランクデーモンを増やしてるプレイヤーの数だったらもっともっと多いけど、神秘的な意味があるだろう儀式なんて実行してる人は珍しい。

 もしデーモンプレイヤーのランキングなんかがあれば肥満オークさんは結構な上位陣だと思う。ランカーって言うのかな。思考回路が一般人とは何処か違う。

 

「あの女神様、よろしいでしょうか」

「うん、良いよ。入ってきて」

 

 コンコンと寝室のドアを叩くナフィーサの声にベッドから起き上がって部屋に招く。

 もうネグリジェ姿だけど、まあ良いか。多少、肌が透けて見えてもあんま気にならないし。デーモンになったからっていうより毎晩、羞恥プレイしてたからかな。アハハ。

 

 ギィっと軋むドアを開けて枕を抱えたナフィーサがソワソワしながら寝室に入ってきた。

 頬が薄ら赤く染まってて何処となく色っぽい。

 

「その。厚かましいのですが一緒に寝て頂けませんでしょうか。昼間の事を思い出して寝付けなくて」

「アミールやアルマと一緒でも不安?」

「不安というかその。羨ましくなって。今になって震えが止まらなくなったアルマをアミールが抱きしめて眠ってて。良いなぁって……」

 

 動揺して視線が彷徨ってるナフィーサに何となく察して僕は言った。

 

「僕に抱いて欲しい?」

「ぁぅ」

 

 暫く無言で立っていたナフィーサは小さくコクリと頷いて赤く染まった顔を枕で隠した。


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