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〇虫系デーモンhg4ya2-8ftさん
・N小蜘蛛３０匹セット ３００魔素
小型犬ほどの大きさの可愛らしい蜘蛛型デーモンです。
網を張って獲物を待ち構えるタイプではなく徘徊して自ら襲い掛かります。
・N兵隊蟻２０匹セット ４００魔素
人と同じくらいの大きさの二足歩行の直立した凜々しい蟻型デーモンです。
命令には忠実で指導次第では戦術や武術すら理解する賢く武闘派な子達になります。
・N働き蜂３０匹セット ３００魔素
人の頭ほどの大きさの働き者な蜂型デーモンです。
周囲に花畑を用意すれば美味しい蜂蜜を作ってくれます。
ですが、他から仕入れたN女王蜂を眷属にして養蜂の規模を大きくする事はお勧めしません。
採取に行く度に一斉に襲い掛かってきます。たとえ一部の蜂を眷属にした所で状況は変わりません。次に採取に行った時には人員が入れ替わっていて再び襲い掛かってきます。安易な気持ちで養蜂に手を出さないのが賢明です。手を出すならRクイーンホーネットかR蜂娘を入手してからにしましょう。
※基本的に動物タイプより繁殖スピードが速いので気を付けてくださいね。
返品は受け付けておりません。たとえ箱庭が虫デーモンオンリーになったとしても当方は責任を取りかねますのでご了承ください。
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「う、うーん。求めていた物と何か違う……」
虫デーモンを専門に扱っている希少なPLを発見したので、彼女のショップを覗いてみたんだけど、思ったよりNランクでも虫デーモンが強そうで僕の当初の想定通りには行かなそうだった。
まあ、そうだよね。小動物に虫が捕食されるのは絶対的な大きさ、戦力の差が故なんだ。弱肉強食のデーモン社会で虫デーモンが大人しく食われるかというとそんな訳がないんだよ。それで食物連鎖の下層に行くほど数は多いんだよね。上層の肉食動物よりも圧倒的に繁殖スピードが高くなければ生き残れない訳だし。その性質が少しでも残ったまま肉食動物を逆に食い殺すような獰猛さと力が備わったら……まあ、そうだね。虫デーモンに箱庭を乗っ取られてもおかしくはないか。
彼女のショップを見付けて良かった。
何の考えもなしにNランクの虫デーモンをリリースして放置していたら後悔していたかも。売り上げが落ちるだろうに誠実に注意書きを残してくれているおかげで危機を事前に避けられたんだ。虫デーモンを箱庭に導入するなら餌としてじゃなく同じ同胞を招くつもりで上位のRランクに管理させて、他種の数が十分に揃っている状態じゃないと駄目なんだな。勉強になった。
「虫デーモンは生態系が整っていない今は逆に導入しちゃいけないのか。地球の知識を参照するのは良いけど、鵜呑みにしてしまうのは駄目だね。何て罠だ」
でも、地球の食物連鎖の生態系は何とか箱庭に取り入れたいんだよな。頑張ったウルフへのご褒美ってだけじゃなく、彼らを繁殖させて何千匹と増やしていくつもりなら維持魔素が膨大な事になっちゃうからね。ウルフは精霊種と魔獣種のハイブリッドだから純粋な精霊種である他のデーモンよりも大食らいなんだ。
ウルフより更に維持魔素が多いNイノシシの場合は雑食だから、そこらに生えてるキノコを食べれば地面に含まれた内包魔素を間接的に取り込めるから問題ないんだけどさ。肉食のウルフの場合、口に出来る餌がないから空中に漂ってる利用価値の高い魔石化可能な魔素で養う事になってしまう。それはお互いにベストな状態じゃない。
「あ、イノシシを経由してウルフに魔素を補給する事なら可能なのか。戦力的に無理だって点に目をつぶれば理論的には問題ないはず」
魔獣種と精霊種の立場を逆転させても食物連鎖は成り立つのか。
じゃあ、僕の箱庭の場合、虫や小動物である事や精霊種である事に拘らなくても良いんだな。
「そう本当に必要なのは草食動物なんだ。弱くて繁殖力が高い奴を何種類か買えば……それで良いよね？ もう穴はないよね？」
うーん。閉じられた箱庭ってちょっとした問題が大きくなっちゃうから油断できないなぁ。
逆に考えてみよう。食物連鎖を整えると何か問題はあるのか。
養えるデーモンが増えるから箱庭の戦力は上がるね。野良デーモンも増えるから反乱の可能性も上がるけど。ああ、箱庭内で食事の問題を完全解決しちゃうと地母神や豊穣神は神秘を得づらくなるかもしれないな。普通のデーモン国家はどうしてるんだっけ。そう、確か魔術で空中の魔素に細工をして容易には魔素の補給を出来なくした上で魔石での貨幣経済を導入してるんだった。
「ん？ 地母神の面が強いニンフが神秘を得づらくなって野良デーモンが増えて反乱の可能性が上がってしまう？」
これってもしかして、ニンフが下克上されて奴隷階級に甘んじている状況を作り出した根本的な原因なんじゃ。
僕が最初、アウルムをリリースせず長らく放置していたのは信仰を高ランクデーモンに横取りされての下克上を恐れたからだ。もし、この因果が逆だったのなら？ 高ランクデーモンが信仰を獲得したのではなく、ニンフが信仰されなくなった結果、箱庭内にいた野良デーモンが台頭したのだと仮定すると。
「食物連鎖を整え終わった時が創造者の役目の終わり。次世代の神が台頭して創造者階級のデーモンは単なる舞台装置化する」
そういう事なんじゃないだろうか。だから地母神であるガイアが曲がりなりにも敬われ、恐れられているオリュンポス帝国では食料の価値が非常に高い。そういう状態にわざと持って行った訳だ。
他のデーモン国家の場合、トップはだいたい武闘派の色を帯びている。ああケルト神話勢力なんて分かり易いね。続々と現れる侵略者に対抗する為、神々が一丸となって抗い強き者が上に立つ構造になっている。弱ければ駆逐され、新たな神族が限られた土地で繁栄していく訳だ。
ガイアに誘導されて指導者となったゼウスとは話がまるで違う。ギリシャ神話ではガイアこそがキングメーカーなんだ。彼女の意向こそが権威の確立に大きく影響していた。
「地母神の影響力が強いデーモン国家の割に同じ創造者階級であるニンフを奴隷として扱き使ってるけど。これも同類に信仰のリソースを渡さない為だって考えると腑に落ちる」
他のデーモン国家とオリュンポス帝国じゃ何が違うんだ。どうしてそんな差異が生まれた？
妖魔が武力で世界を支配した東勝神州。世界崩壊から建て直してる最中の北欧神話勢力、侵略者との飽くなき戦いを続けるケルト神話勢力、内乱中のエジプト神話勢力、魔素が国家単位で不足しているアステカ帝国。そして歪な秩序で国家を運営しているオリュンポス帝国。
そう。アステカを除いた他の神話体系では食物連鎖が既に整っている段階から主神による政権は始まっている。変わった太陽偏重の信仰を作り上げたアステカ神話とギリシャ神話のみ先に主神が存在していて、後から食物連鎖が整えられていった訳だ。
「あ、なる程。そうか。先に文明を。自分を敬う高ランクデーモンによる支配体制を盤石にして、その後に食物連鎖を整えているのか」
食物連鎖があって初めて文明を構築できる人間の常識から抜け出せていなかったな。魔素で生存可能なデーモンは食物連鎖が破綻してても文明を構築できるんだ。むしろ上位者が存在しないと成り立たない状況は神秘獲得を考えると都合が良い。食物連鎖を整えるのは下層階級の住人を増やして神秘をより多く獲得する為。信仰ありきの話なんだ。
それは唯一神の支配するアブラハム系神話でも同じ。神は天使の後に人間を作っている。神の友という名を与えられた高位の天使ラグエルに人間と他の天使を監視させ、信仰が途絶えた終末にはラッパを吹き鳴らし地上に過激な天罰を与えるよう指示しておく念の入れようだ。
「つまり、僕が本当に優先すべきなのは……箱庭の食物連鎖を整える事ではなく外貨を稼ぐ為の事業投資って訳か。一周して最初の地点に戻ってきちゃったな」
でもトレントは高い。もうちょっとショップを見回ってみるか。
「「メェェ」」
「わ、可愛い。もこもこしてる。これが羊？」
「角があって羊の割には体毛が少ない。アルマ、恐らくこの動物は山羊だ」
ショップから購入したデーモンを見て嬉々としてはしゃぐアルマにアミールが解説をしている。
そう、僕が買ったのはNランクデーモンの山羊だ。草食動物であり乳製品と毛皮の入手が期待できる家畜タイプのデーモン。１０頭で３００魔素とお安い値段で入手できた。
最下層だけど山羊デーモンは悪魔の一種でもあり、長生きして進化をすれば高等な魔術を行使する別文明圏のデーモンを入手可能だ。おまけにウルフ達に牧羊犬としての仕事を頼む事でペットに餌を与えるのではなく仕事の報酬として食肉を支給する事も可能。うん。新たな事業として牧場経営を始めれば増えた人手を有効活用できるし一石三鳥だね。
こうやって仕事を創出してジャンジャン人手を増やしていくのが正解っぽいな。
今は経済圏構築の時だったか。