魔法少女大乱Online   作:八虚空

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第57話 一般通報デーモン

 ライトエルフのニーナが僕が入浴中のお風呂に背中を流しに来て、ちょっとした事故を切っ掛けに一線を越えた。

 僕自身も予想してないまさかの事態だったからニーナはもう泣きそうになってたけど、嫌だった訳じゃなかったらしいのが唯一の救いかな。同人誌並のラッキースケベって現実にガチで起こり得たんだね。湯船で転けた拍子に合体するとかギャグ漫画やエロゲですら今日日見ないのに我が身に起こるとは……。

 うん。ニーナには悪いけど凄い良かった。処女相手に思わず我を忘れてしまった。

 

「ポータブルバスタブの水は一旦、カード化してアイテムボックスに仕舞って新しい淡水を投下っと。入浴剤はお湯が沸いたら入れるよう言って手渡しするかな。ニーナ、タオルで身体を拭いたらこのバスローブを着て。身体は大丈夫?」

「は、はい。まだ身体の中に杭を打ち込まれたような感じが消えないですけど」

「あーゴメンね」

「いえ。女神さまが悪い訳じゃないですから」

「今日は冷えないよう身体を温めて。あ、いっそ一緒に寝る?」

「………いえ。その。他の娘に悪い気がしますので」

 

 モジモジと顔を赤らめて僕の誘いを断ったニーナは最高に可愛かった。この世界に来てから人の縁に関しては最高峰のガチャ結果を引き当て続けてると思う。

 でも、中に出してしまったけど万一の際は大丈夫かな。僕は地母神だし子供をドンドン増やすのは大正義なんだけど、医療が未発達だと母子共に危険だ。いや、デーモンの身体は人間とは比較にならないほど丈夫だし再眷属化で治せば瀕死だろうが持ち直すか。ん? 体内に子供がいる時に再眷属化したらどうなるんだ? うーん、やっぱ現状の設備で大丈夫か一応アウルムに確認しておこう。ラミア薬師のアウルムが居てくれて本当に良かった。

 

「ああ、そうだ。名前」

 

 今の所、ナフィーサしか呼んでないけど性的な関係を結んだ相手に僕は名を呼ぶ許可を与えている。

 単なる領民ではなく僕の身内になった証としてね。アウルムやアミールは遠慮して未だに敬称で呼ぶけれどさ。ニーナにも許可しないとね。

 

「エッチしたのに何時までも女神さまじゃ他人行儀な気がするし、僕の名前を呼んで良いよ。敬称は付けて欲しいけどさ」

「さるま様? で、良いでしょうか」

「うん。ニーナ」

「サルマ様」

「ふふ」

「えへへ」

 

 凄い甘酸っぱい空気が流れてる気がするな。

 こういう事後の何とも言えない空気、結構好き。凄い心が通じ合っている気がして。イチャイチャと身体を引っ付け合うんだ。

 今はベッドの時みたいに腕枕とか出来ないから手を恋人繋ぎをしようかな。こう手の指と指を絡め合う奴。腕を交差して指を絡め合うから自然と密着して歩くようになる。歩きづらい事すらも楽しくて不思議だ。湯船を上がったばかりのホカホカした体温が伝わり合って心にジーンと来る。絡み合う視線が艶っぽくてドキドキした。

 

 

 

 そういうホッコリした気持ちの余韻は寝室で精神ブラクラを直視してしまったせいで台無しになったけどね!

 

「こ、こわうぃ。魔女ヤバい」

 

 僕の書き込みを最後にズラッと並ぶ『わたしのことみた?』攻勢にガリガリとSAN値を削られていった気がする。

 最後に綴られた『わたしはみたよ』の言葉にもう気を失うかと思った。これ僕に言ったんじゃないよね? 翻訳作業をしたせいで名前が浮き上がって来ちゃった可哀想な解析班に対しての言葉だよね? ああ、運営。お願いだから対応を間違えたら地獄に堕ちそうな悪意ある行為をする利用者は垢BANしてぇ。絶対、この【魔女】ミルベカラズ【危険】ってタイトルのスレ罠だって。平和ボケして安易に開くんじゃなかった。

 

「うう……普通のネット越しだったら呪術や洗脳は貫通するって情報を得られたのは僥倖だったけどさ。鈴原やミュータント傭兵に警告しなきゃ。多分、魔法少女支援組織の電脳対策班が頑張って対策してるんだろうけど漏れはあるだろうし。呪いと精神防護のマジックアイテムでも買って知り合いに配ろうかな」

 

 でも、魔法少女はこんなの相手に人知れず戦ってたんだなぁ。絶対、厄い相手でしょこれ。

 魔法少女の死因ナンバーワンがウィッチだと言われるだけはある。圧倒的な存在感があるな。

 

「うん。魔法少女は労らないと駄目だね。精神的に追い詰めるとか百害あって一利なしだよ」

 

 そうポチポチと地味ライダー2号の灯さんにメールを書き込みながら僕は思った。

 第二の人生だろうと命は惜しいからね。前世で死んだ記憶もないしさ。

 

 

――――――――

 

〇両性ニンフ

 助けて! やばい!

 魔女が出た!

 

〇両性ニンフ

 詳細は【魔女】ミルベカラズ【危険】を見れば分かるけど、もしかしたら見るだけでも危険かもしれないから事実を列挙するよ!

 冒頭に意味不明な英単語の羅列が書いてあって解析したら翻訳結果に自分の名前が出るみたい。ウィッチの書き込みは『わたしのことみた?』と『わたしはみたよ』の二つ。最低でも2人の犠牲者が出てる。

 該当プレイヤーは何処からか視線を感じると怯えてる。スレを傍観して書き込んだ僕は今の所平気だから解析するとアウトっぽい。

 

〇両性ニンフ

 上の事をフルマ5か魔法少女支援組織に伝えて欲しい。

 少なくとも中継機として一人のPLが魔女に協力してるはず。それがデーモンだったら最悪、次元転移で地球外に逃亡する恐れすらある。

 能力的に遠距離タイプだろうし。マズい。一方的に嬲られかねない。

 

〇地味ライダー2号

 うっわ、何この厄いスレ。やばい匂いがプンプンする。

 マッハで伝えて来るね!

 

――――――――

 

 

「よし。これで僕に出来る事は終わったな」

 

 地球じゃ雑魚のように大量に死ぬSR程度の戦力じゃ魔法少女と魔女なんて超常戦力への介入なんて不可能だ。

 こうやって情報提供して魔法少女が勝つ事を祈るしか出来ない。多分、魔女と相性の良い魔法少女へ支援組織が依頼して対処するはず。

 

 パラノイアが新たな侵略者の可能性があるからって魔女を故意に放置するなんてないよな……?

 うん。大丈夫。もし魔女が勢力を構築するタイプだったら逆に早めに叩かないと怖いからね。パラノイアとどんな化学反応をするのか分からないから放置は出来ないだろう。魔法少女時代のデータはあるだろうからウィッチの異能も丸裸のはずだし対処法の予測も可能だ。

 

「はぁ……。何か静かだな」

 

 箱庭内にはまだ生き物の数が少ないから基本、無音だ。虫の声すら聞こえない。

 シーンとした静けさが異様な程、際立つ。何時もは当たり前の事として流していた事が嫌に気になる。

 

「うん」

 

 今日はエルフの皆と一緒に寝ようか。あと、スマホも地球から取り寄せて買わないとね。箱庭じゃろくに使えないだろうけど音楽くらいは聞けるでしょ。


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