魔法少女大乱Online   作:八虚空

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第60話 スキルレベルが上昇しました

 最初は無駄遣いかもなって思ったSSR黄金の腕輪ドラウプニル。

 このマジックアイテムが実は果樹トレント事業を軌道に乗せる為の最後のキーアイテムだった。

 

 

 フルーツマジックの生み出した果実は魔法少女の力を利用している為か僕には再現不可能な上、魔法果実の生態や効能を把握する事すら難しい。アナフィラキシーフルーツがミュータントに効果のある蜂毒のような物だってのは見抜けても毒性の強さが何処までなのかは微妙に分からなかったようにね。難解な論文を辞書片手に読んでるような気分。

 逆にフルーツマジックは果樹の生成や改良は簡単に出来るけど継続して育成する事が地球の魔素枯渇環境のせいで難しい状態。僕の箱庭なら環境的な問題はクリア出来るけど、どんな効能を発揮するかよく理解できてない植物を繁殖させる気には余りならなかった。フルマ5にはアナフィラキシーフルーツって前科があるからね。どうしても警戒してしまう。

 

 その問題を解決するのがトレントの再眷属化による品種改良な訳。

 トレントはRデーモンに過ぎないから神秘格差で僕以上に魔法果実の正体は見抜けないだろうけど、取り込んで存在を寄せた後の状態から逆算して性質を理解する事は出来る。そうやって安全確認と生産性向上を行うつもりで地球への魔法果実輸出計画を立てた。

 

 でも存在を寄せる以上、どうしても取り込む植物にトレントは影響されてしまう。

 毎年新たな実を付けるリンゴは気軽に試せたけど、多年草の一種で生涯に一度しか実を付けないバナナなんてフルーツもあるし二の足を踏んで中々挑戦できなかった。トレントの生成は神秘的な格が足りなくて僕には無理だからね。9回の試行錯誤で形にしなきゃいけないから、まずは改良したリンゴトレントの生態調査をしてたんだ。

 差し木をしなくてもリンゴの種から新しいトレントが生まれるのかとか、魔素不足の土地で生きられるのかとか、逆に魔素の過剰な土地で枯れたりしないのかとかさ。バニラやチョコの生産の合間にちょこちょこ調べてたんだ。病気で全滅した時の事も考えて枝葉を大量にアイテムボックスに確保したりしながらね。

 

 結果、ほぼ普通のトレントと変わらないって結論になった。魔素を放出せず実に溜め込むようになっただけだね。残念ながら種から発芽もしない。

 本デーモンからの聞き込みも合わせて考えると、どうやら魔素のない地球の果実ではトレントの存在を揺るがせる程の影響力はなかったみたいなんだ。うん。神秘値によるんだ。つまり魔法果実の同化はマズいかもしれない訳だね。

 

 この調査結果に頭を抱えながらもラミア一族から新たに10体のトレントを贈って貰った事だし、一気に魔素濃縮フルーツの品種を増やす事にしたんだ。

 安定のバナナにソースにも活用できるイチゴ。単体で美味しいメロンにスイカ。お酒に出来るブドウ。神聖な果物だって有名な桃。お風呂に浮かべてリラックス出来るミカン。最初の果樹トレントに用いたリンゴを合わせれば合計8品種。

 

 いやー、イチゴなら兎も角、デカいメロンやスイカが1本の木に大量にぶら下がってるのを見た時は大丈夫か心配になったね。

 ま、Rデーモンのトレントにその程度の負荷が問題になる訳がないんだけどさ。凄い光景だった。

 

 うん。この高級フルーツをオリュンポス帝国に納めたらアウルムの推測じゃ24万魔素の儲けになるって言うんだ。別の意味で震えてくるね。

 まさに金の実る木だ。地球産果樹+箱庭+トレントの組み合わせはチートと言うしかない。

 

 更にここで僕という森精ニンフのブーストが入る。

 

 魔法少女のフルーツサンドイッチを食べて正気度を減らしながらもトレントの果実を魔素から生成できるようになった件を思い出して欲しい。そう、つまり果樹トレントの個体数による生産限界なんて僕の箱庭には存在しない訳だ。魔素が更なる魔素を生む。うーん。ニンフを国家奴隷として管理するオリュンポス帝国は正しかったかもしれない。調子に乗って生産し過ぎないようにしないと。売りすぎるとブランド価値が減って逆効果になる。

 

「そして、更にここで精神防護のSSRアーティファクトを装備!」

 

 フルマ5にアナフィラキシーフルーツの大量生産をチラつかせる空手形を発行し、ミュータント傭兵の魔素強化果実生産依頼を却下した事で発生した後ろめたさを突く事により入手した、魔法少女の生成した単なる果物を口にイン! 最低神秘値の魔法果実を解析する精神強化されたSRニンフの歴史ラーニングが始まる!

 これで魔法少女の力の正体を解明すれば僕だってフルマ5の魔法果実を好きなだけ生成できる様になる訳だ。勝ったな、ガハハ。

 

「あっあっあっあっあっあっあっあっ」

 

 

 深淵なんて覗き込むものじゃないね。酷い目に遭った。

 魔法少女の力が何処から湧いて来たのか、魔法少女の正体は何か、何故そんなにも強いのかを探ろうとすると口にした果実の神秘値がどれくらいだろうと即座にSAN値チェックが挟まる。これはもう仕様だね。クトゥルフの絵姿はどんなに低クォリティだろうと正気度を削るようなもんだ。

 

 でも、挑戦した甲斐はあった。ターゲットを魔法少女の生成した単なる果物にした事で前回のアナフィラキシーフルーツの設計データをより深く理解できた。後一種、魔法少女の生産した魔法効果のある果物と比較をすれば何処が手を出しては駄目なブラックボックスかが分かる。SSR黄金の腕輪ドラウプニルのおかげで深淵の大魔道書の解読に一部成功する訳だ。

 

「そしてここに、フルマ5によって品種改良された魔素で育つ万能バナナがあります」

 

 砂漠のカラッカラに渇いた砂地だろうと、水上だろうと、何の支えもない空中だろうと最低限の魔素さえ有れば実を付けるスーパーフルーツだ。

 生命力に極振りされた味が良いだけの食物品種。ある意味で起源種へ回帰した感じかもしれないね。種で増えるしさ。

 このバナナに関して出した僕の要望は二つ。上記の生命力と食べやすいようバナナの根元に種が来る事。最初は巨大化させて可食部を増やす方向にしようとしてたらしいグレープさんには文句を言われたけど、ここは譲れない。細長いからこそのバナナ。丸くてスイカみたいに沢山の種があるバナナとか駄目。受け付けない。

 

「内包魔素はそこそこかな。Rトレントの魔素濃縮フルーツ程じゃないけど箱庭に最初から実ってた起源種よりは上。懐かしの山菜果物の詰め合わせを凝縮したぐらいだからNランクフルーツ?」

 

 うん。これなら例えラーニングに失敗しても箱庭内で自然繁殖させられるな。

 まだまだ僕の箱庭は地球エリアのように有効活用できてる土地は少ないんだよね。ゴブリンやコボルトどころか万を超えるスライムが大量繁殖してるにも関わらず生命力に乏しいなって印象が強い。木々が生い茂ってるだけの無人の地な訳だ。

 だから起源種のように勝手に増えて尚且つ美味しい果物が欲しいとフルマ5に依頼した。これなら後々、人手が余って仕方ないって状況になっても周辺で果物を採取させるって仕事を作れる。

 

 豊穣神としての僕の価値は薄れるかもしれないけど、そこは別にもう良い。起源種を大量に実らせた段階で手遅れだし地球から料理文化を導入したいしね。

 高級料理しか存在しないオリュンポス帝国は確かに美食の国だろうけど、大衆料理を端から切り捨てたのは僕的には微妙。手掴みで大勢で騒ぎながら貪るジャンクフードだって良いもんだ。時々ハンバーガーを無性に食べたくなるもの。

 

「それでは実食」

 

 パクッとバナナを口にした事で僕は新たな境地に立った。

 

 

 

「アナフィラキシーフルーツはNランクの最低魔素で構築された果物だけど一種の芸術品ってくらいに繊細なマジックフルーツだから気を付けてね。一度の再眷属化じゃ模倣仕切れないと思うから、何回か繰り返すよ。お願いだから出来るだけ早めに結果を出して」

「URの御業を模倣しろとは無茶を仰る」

「大丈夫。どういう理論で構築した生成魔術かは何となく分かった。僕の方で先導するから合わせて」

 

 結局、万能バナナを自力で生成する事は出来ず食べ終わった種を急成長させて箱庭内に繁殖させる事にした。

 アナフィラキシーフルーツもトレントの協力がなければ僕には生み出せない。

 

 だけど。

 ブラックボックス以外の術式は解析仕切った。

 

 果樹トレントの生み出した実を介する事でアナフィラキシーフルーツの新規生成方法のラーニングは可能だ。

 万能バナナも箱庭中に繁殖していく過程を経る事で僕の世界の物だと魔術的に定義付けが出来る。

 

 届いたぞ。魔法少女。

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