PERSONA5:Masses In The Wonderland.   作:キナコもち

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某ドラマはあまり関係ありません。

ニイジマ編なげぇぇぇぇぇぇ!!!!


120:99.9%

 

 

 11月19日 土曜日 晴れ

 

 

 先日辿り着いた最奥はもぬけの殻。

 オタカラ…真が言う所の【警察手帳】。姉妹の父の形見の形を模した欲望の核も何処かへ消えた。

 

 

『まずは褒めてあげるわ』

 

 

 とパレスの主であるニイジマの声が響いた瞬間、誰もが罠だと直感する。

 ここに飾ってあったオタカラは怪盗団をおびき寄せる為のレプリカで、決着のフィールドは別にあると。

 

 そして導かれるまま辿り着いたのがこの屋上。巨大なモニターに見下ろされた円盤の上。

 

 

「まんまとおびき出されたって感じ」

 

 

 ウィッチがそう呟いた瞬間、答え合わせをするかの様にモニターにはニイジマの姿が映る。

 

 

「今度はどんな勝負です?」

 

 

 何を出してきても勝ちますけどね。

 そうクロウは強気の姿勢を崩さない。

 

 ここに至るまで、様々な勝負を仕掛けられてきた。

 イカサマありきのポーカー、スロット。多勢に無勢のコロシアム、一方的に五感を奪うラビリンス……。どれもこちらに不利な状況下ではあったが、覆せないものでは無かった。

 

 

『私を追い詰めたなどと考えているのなら、それは大きな誤り。ここなら思う存分、暴れられるから、案内してあげただけのこと』

 

 

 そんなこちらの態度をニイジマは嘲笑う。

 追い詰められたのはコチラだと。

 

 

『正義は悪に屈してはならない! 私は勝たなければならないの!』

 

 

 彼女が勝ちに固執しているのはパレスを見れば明らか。そして固執している理由も。

 口では自分のキャリアとか、今までの苦労とか言っているが、恐らく根底は父の無念。父を討った悪に対する強烈な嫌悪感と復讐心。それが彼女を奮い立たせているのであろう。

 

 現実世界であれば説得も可能だったかもしれない。

 しかし、生憎ここはパレス。相手は暴走する彼女のシャドウ。検事としての勝ちに固執する彼女を止めるには───

 

 

『どちらが正しいかは…戦って決めればいい』

 

 

 彼女のフィールドで勝つしかない。

 

 

『じゃあ、はじめましょうか』

 

 

 パチン。とニイジマが指を鳴らせば、地面が振動し始める。

 自然災害の類ではない。僅かに鳴り響くモーターの音から、機械仕掛けのギミックだという事が分かる。

 

 

「これは……」

 

 

 脳内で結論を出すよりも早く、答えは現れた。

 クレーターの如く、中心が沈んだ円盤の縁には、赤と黒で彩られた数字の数々……そう巨大なルーレット盤だ。

 

 

『ただ力をぶつけ合うなんて、この場に相応しく無いわ』

 

 

 ふと、後ろから声がした。

 振り返ればモニター越しに居た筈のニイジマサエが優雅に微笑んでいた。

 

 

「マジシャンの方がお似合いね」

 

 

 驚きの色も見せず、戦闘の空気を感じ取ったウィッチが真っ先に構える。

 

 

「もうコインなんて関係ねぇ! ルールなんざ付き合うかよ!」 

 

 

 今度はスカルが声をあげ、前へ一歩踏み出す。怪盗団切っての特効部隊の2人を見て、他のメンバーも覚悟を決める。

 ここで失敗する訳にはいかないのだ。どんなに不利であっても、相手の手札が分からなくても、勝つしかない。

 

 

『いいえ、貴方達は従うしかない……。すぐに理解することになるわ』

 

「お姉ちゃん……」

 

 

 開戦も秒読みのタイミングで、最後まで踏ん切りをつけられずにいるのはやはりクイーンだ。

 無理も無いだろう。残された唯一の肉親であり、今は敵。改心したとて、本人にどう影響があるかは未知数。

 

 だったら怖気づくか?

 答えはNOだ。今の彼女は間違っている。正義を執行しようとするが余り、手を汚すことすら躊躇いが無いのだから。それに彼女は今、()()()()()()()に囚われている。そこから解き放たなければ、どの道、待っているのは破滅だ。

 

 

「救うんだろ?」

 

 

 クイーンの肩を優しく叩き、奮い立たせる。

 そう、これは救う為の戦いでもある。今一度、弱者に手を差し伸べる義賊として抗うのだ。

 

 

『さぁ…来なさい』

 

 

 誘うように指を数回折り曲げれば、それに誘われる様に飛び出す2人。

 

 

「先手必勝」

 

「ったりめーだ!」

 

 

 片や刃を、片や鈍器を。各々の得物を持ってニイジマに迫る。

 

 

『聞き分けのない子たち……』

 

 

 変わらず余裕の笑みを崩さないニイジマは、あろうことか抵抗する素振りも見せず、ただ眺めるばかり。

 

 そして、弐撃。

 確かに2人の放った攻撃は対象を捉えた筈だったが。

 

 

(っ!)

 

「んだとぉ!?」

 

 

 攻撃を受けてもニイジマは微動だにせず、ただただ微笑むばかりだ。

 スカルの鉄パイプは腹に、ウィッチの大鎌は首に。軌道は間違いなくそれぞれの急所を捉えているが、ニイジマの身体に触れた瞬間に攻撃がピタリと止まってしまった。

 

 感覚的には物理を無効にするシャドウに攻撃した時に近い。

 

 

『攻撃、したわね』

 

 

 ニイジマが余裕たっぷりで口を開く。さも裏があるかの様な、そんな口振り。

 

 

「やらせるかよっ! キッド!!」

 

 

 だが黙って見過ごす様な2人ではない。

 過去のパレスの主との戦闘経験が、自然と次の取るべき行動へ導く。

 

 やられる前にやる。

 手数で相手の反撃を封じる。

 

 攻撃こそ最大の防御ってやつだ。

 

 

「ジオダイン!」

 

 

 頭上に暗雲が発生し、それを確認したウィッチはすかさず後退。

 スカルが持つ魔法において、現状最高火力の雷撃がニイジマを裂く。

 

 

「物理がダメなら」

 

 

 地は焦げ、黒煙が視界を遮る。

 が、ウィッチからすれば些末な問題だ。視界は見えなくとも、感覚で対象がまだ健在という事が分かる。

 

 

「こっちはどう?」

 

 

 破裂音と硝煙の匂い。

 黒煙の中心を正確に狙って、ウィッチのピストルが一発、二発、三発────。

 

 

「………っ! スカル!」

 

 

 ダメだ、効いてない。

 

 そう気付いた時、既にスカルはウィッチの真横を通り過ぎ、遥か後方へ吹き飛ばされていた。

 

 

『坊やは二回……、お嬢ちゃんは……四回…かしら?』

 

 

 黒煙からぬっとニイジマの手が伸び、パチンと指を鳴らす。

 

 

「ジャンヌ!」

 

 

 ウィッチの頭上に、どこからともなく現れたカジノチップが雨の様に降り注ぐ。

 ふざけた見た目ではあるが、その一つ一つはしっかりとした質量を持ち、まるで鉛のように重い。

 

 

「空間殺法」

 

 

 そんな攻撃から主を守るのは聖女の剣。

 ウィッチを中心に、空間をも切り裂く聖女の剣戟が、鉛を全て切り伏せる。

 

 

『あら、防がれちゃった』

 

 

 字面では驚嘆。しかし声音にはソレが伴っていない。

 

 

『でも、ペナルティは絶対。防げると思わないでよね』

 

 

 ジャンヌが繰り出す剣戟は、ウィッチを中心に絶え間なく迸る。本来であればシャドウ一匹、入り込む余地も無いが────。

 

 

「───なっ」

 

 

 ニイジマが伸ばした細腕が、一瞬ブレて見えた。

 それは途轍もなく無機質な鎧の様で、その手には身の丈合わない大剣の様なものがあって───。

 

 

「う゛っ゛」 

 

 

 距離は取っていた。入り込む余地が無いほどの攻撃を展開していた。

 だと言うのに、ニイジマの腕は……幻視した無骨な大剣はウィッチの腹をお返しと言わんばかりに捉え、力のまま吹き飛ばす。

 

 

「ウィッチ!」

 

 

 不可解な現象に眉を顰めるクロウのその横で、クイーンは声を荒げ、力無く横たわる彼女を抱えた。

 

 

「ウィッチ! 大丈夫なの!? ちょっと!」

 

 

 遠目ではあるが、確かに腹を抉られていた。普通であれば致命傷。すかさず回復魔法を……とヨハンナを出した所でストップが掛かった。

 

 

「待つんだクイーン。傷がおかしい」

 

 

 冷静に、見方を変えれば冷徹。興味深そうに傷を負ったウィッチを観察するクロウに睨みを返す。

 が、やはりクロウは態度を改める様子も無く、ウィッチの腹を注視した。

 

 

「喰らったのは確か一発だ。しかも大剣のようなもので……。少なくとも、銃ではない」

 

「何を言って───」

 

「おかしいとは思わないかい? なぜウィッチの腹に銃創がある? しかも2つもだ」

 

 

 そう言われてクイーンは咄嗟に腹部を注視する。

 白い腹部には稲妻が走った様な細ぼったい腫れが2つ。そう、まさしく銃創だ。付け加えるなら、出来たばかりではなく治った後の。

 

 

「なるほど、ペナルティ」

 

 

 途端、閉ざされていた瞼が開き、黄金色の瞳がクイーンを捉えた。

 

 

「せ、雪雫……」

 

 

 オロオロと心配するクイーンを余所に、自身の剥き出しの腹を注視し「1、2……」と数え始めた。

 

 

「ジョーカー、スカルは?」

 

「…いくらかもらった様だが、問題無い」

 

「ふぅん」

 

 

 何やら考え込む素振りを見せながら、今度は胸部を守るインナーを上へ上げた。

 

 

「ちょ……! クロウ、ジョーカー!!」

 

「「見てない見てない」」

 

 

 どうやら男性陣はすかさず顔をそむけたらしい。

 突然のウィッチの奇行に一瞬、戦闘中とは思えない程の空気感が漂うが、ウィッチは至って真面目に自身の身体を観察している。

 

 

「3……4…」

 

 

 白い肌に走る、腹と同じ形状の銃創。左胸の上の方に一つ、丁度胸の間にもう一つ。どちらも出血した様子も無ければ、痛みもあまり無い。

 

 

「私の攻撃した回数と一致する」

 

「な、何言って………」

 

 

 

 服を戻し、ゆらりと立ち上がる。

 一瞬、足元から這い出た影のようなモノがウィッチの腹を撫でたと思えば、すでにそこには銃創は無くなっていた。

 

 

(……今のって…………)

 

 

 通常の回復魔法とは少し毛色が違うような。

 目の前に敵が居るにも関わらず、別の方向へ思考が引っ張られそうになるが。

 

 

『ルールを守らないものには容赦はしない。それが社会というものよ』

 

「暴力行為は禁止…ね」

 

『えぇ。さぁこの勝負、運命に委ねましょう』

 

 

 パチン。とニイジマが指を鳴らす。

 ほどなくして、周りのルーレット盤が勢い良く回転し、カジノチップの様に亜空間からはピンボールが生み出される。

 

 

「なるほど、カジノらしく公平に勝敗を決めようと」

 

「従わなければスカル達の二の舞……ってコト!?」

 

 

 内容的には通常のルーレットと大差無いだろう。

 色を指定するか、数字を指定するか。プレイヤー……つまり怪盗団側が選ばなかった択がゲームマスターの勝ち札。そして当たる確率が低ければ低いほどリターンが大きく、外した時のリスクも高い。

 

 

「……どう思う」

 

「今までの冴さんを見るに、普通にしてては勝てないだろうね」

 

 

 ジョーカーの問い掛けにクロウが肩をすくめる。

 

 

「刑事裁判における日本の有罪率は99.9%。つまり、冴さんは普段から勝って当たり前の世界に居る。勿論、法律というルールに則った上で、だ。いや寧ろ、ルールは私達…なんて認知もあるかもしれない」

 

「…さっき防げなかったのも納得。法律(ルール)破れば100%有罪だもの。いくら抗おうとも、結果は覆せない」

 

「ルールを破った時点でペナルティを受ける未来は確定している。攻撃手段は関係無く、ある種の概念的な攻撃だという事か」

 

「そして負けても一緒。言ってたでしょ? 勝った方が正義って」

 

 

 はぁ。と溜息を吐いてウィッチは腰を下ろした。

 その時、ウィッチの影が揺らいだかと思えば、湧き出た影は椅子の形を作り、彼女を支える。

 

 

「…………そんな使い方出来るんだ…」

 

「魔力の扱いを練習すれば簡単」

 

 

 敵の眼前で優雅に脚を組んで座るウィッチに、ノワールは唖然とした表情を浮かべている。

 この場にいる誰しもが、お前も似たようなことするだろうと思っただろう。

 

 

「主導権があっちにあるなら私がやれる事も少ない。イカサマ無しなら運勝ち粘る。イカサマあるなら早々に見破る。それでいい?」

 

「…あぁ。仕方ない」

 

 

 ウィッチの言う通り、無駄に攻撃してもかえって危険を晒すだけ。

 ならば0.1%の勝ちを掴み取るしかない。

 

 

『話は決まったかしら? 何処に賭けるか…選んで頂戴!』

 

 




思ったより長くなったので分割します。

そろそろR18の方書きたくなってきたけどどうしよう。
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