PERSONA5:Masses In The Wonderland.   作:キナコもち

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少し書き方を変えてみました


122:A quarrel between sisters.

 

 

 「第2ラウンド開始ってところ?」

 

 

 火蓋は切って落とされた。

 ウィッチの言葉を皮切りに、ニイジマが飛び出す。

 

 疾走ですら生温い。その見た目通りの圧倒的な質量は最早打ち出されたミサイルだ。変身前の姿では想像出来ない程の運動性能。数十メートル離れた怪盗団にすら、空を裂く音が届く程。

 

 

「……!」

 

 

 本来の姿からはとても想像出来ない圧倒的な運動性能。その様はウィッチですら僅かに目を見開き、他の者は驚愕を吐露する。

 怪盗団の驚愕をも置き去りにして、ニイジマは迫る。数十メートル離れていた両者は程なく一桁へ。それは暗にこの空間の全てに切っ先が届くことと同意。

 

 巨大な弾丸は勢いを殺す事を知らず、己の大剣を悪を滅ぼさんと振り下ろす。

 轟音とともに巻き上がる土煙。ニイジマの巨体をも覆ってしまう程のソレは、威力の高さを物語っている。

 

 当たれば一撃必死。

 ひとたまりも無い。

 

 

「ヨハンナ!」

 

 

 轟音と共に舞った土煙から唸りと共に飛び出すヨハンナ。背にクイーンとジョーカーを乗せ、瞬く間に大剣の範囲外へ。このような手合いにはやはり機動力がモノを言う。

 

 ニイジマはすかさず照準をロック。片手のガトリングで撃ち殺さんと構える。咄嗟の判断で狙いはブレていた。

 しかし問題無いとニイジマはほくそ笑む。なぜなら弾数が欠点をカバーするから。

 

 

「なんとも面妖な出で立ちよ」

 

「だけど、かえってやりやすい」

 

 

 照射する寸前、ニイジマの注意は声鳴る方へ。叩きつけられた大剣を挟む形で、彼女を射抜かんとする眼差しを送る二組の影。

 欠点をカバーするのは何もニイジマだけでは無い。寧ろ、怪盗団の専売特許とも言える。各々の得意手、苦手。それを理解し、語らずとも補う。それが怪盗団・ファントム。 

 

 ウィッチとフォックス。既に2人は臨戦態勢。考える間も与えず、対応する暇も与えない。

 

 

「手心は不要、でしょう?」

 

 

 刹那、無数の剣戟がニイジマの全身を切り刻んだ。

 

 ───見えなかった。

 武器を振るう動作はおろか、その行動さえも。瞬きの間に、既に2人は攻撃の動作を終えていたのだ。まるで映画をコマ送りで見ているような感覚。

 

 

「遅い」

 

 

 

 後ろによろめく隙を、見逃さない。

 

 一歩後退すれば一歩詰め、また刹那の攻撃が繰り出される。

 一撃一撃の威力は大したことは無い。あくまでもペルソナを介さない、純粋な技量と身体能力から繰り出される攻撃。

 

 致命傷にはなり得ない。

 だが致命的な攻撃である事は代わりない。

 

 

「ノルン!」

 

「ここはペルソナで!」

 

 

 頭上に現れる核熱の塊、周囲に吹き荒れる突風。現状、怪盗団が有している最大火力の魔法。

 連撃の裏で、周到に。注意の外で用意された致命的な攻撃。

 

 

『鬱陶しい!』

 

 

 苛立ちを表すが如く、大剣でガトリングを()()()()()

 

 その時、もう役目を終えたかと思われていたルーレットが再び動き出す。ナビの言葉で言う所のクソボスたる由縁のギミック。

 転がるピンボールを横目に、一瞬だけウィッチの動きが鈍る。共に流れる軽快なBGMが警鐘の様に思えたから。

 

 しかし様子を見る時間も無い。

 間も無く、頭上の2種の魔法は降り立ち、爆ぜる。

 

 

 吹きすさぶ嵐と膨大な熱量。

 直撃の寸前で後退はしたものの、一歩遅ければ自分達もひとたまりも無かっただろう。そう感じざるを得ない程のエネルギーがフォックスの頬を撫でる。

 

 

「やった……?」

 

 

 ほどなくして、ペルソナに乗ったジョーカーとクイーンが合流。未だ視界が晴れぬ爆心地を見て、心配半分安堵半分と言った様子で呟いた。

 

 クイーンの問いに対して明確な答えを返せるものは居ない。

 ナビが居ればサーチでも出来ただろうが、生憎彼女は足止め組の方に付いている。

 

 

「直撃はしたと思うけど」

 

 

 鎌をクルクルと遊びながら、煮え切らぬ答えをウィッチが返す。

 曰く、後退の寸前。フォックスの氷属性の魔法。そして彼女自身のアリスの魔法で足止めを施したらしい。

 攻撃とは言えないほどの小規模のモノ。だが、だからと言って簡単に拘束を振りほどけるかと言えば、そうでもない。少なくとも、あの短期間。時間にして5秒にも満たない状況下で抜け出せるものでは無かった。

 

 

「ただ、唯一の懸念点は──」

 

 

 突如鳴り響くファンファーレ。同時に打ち上がる花火。

 それら二つはウィッチの言葉を上書きをし、怪盗団に困惑をもたらす。

 

 そして───

 

 

『ペナルティの時間よ!』

 

 

 その爆心地から4つの核熱の塊が飛来する。

 正しく、寸分の狂い無く、4人を狙って。

 

 

「なに!?」

 

「くっ……!」

 

 

 不意打ちに近い形でまず2人。ジョーカーとフォックスが喰らう。

 それを見て、ウィッチが駆けだす。集団で固まっていても仕方が無い。巻き添えになるだけだと、判断した為だ。

 

 

(二人の回復は真が出来る。核熱ならクイーンの得意手)

 

 

 ならばあの場はクイーンが抑えられる。

 それに一人の方がかえって動きやすい。

 

 

(攻撃をいなしつつ、注意を引く…!)

 

 

 後ろにチラリと視線をやる。

 放たれた魔法攻撃は、しっかりこちらを追尾しており、止まる事を知らない様子。

 ならば。と踵を返して、正面に見据える。追尾式なら逃げても無駄。根源を絶つ方が遥かに効率的。

 

 姿勢を低く、鎌を構える。

 

 アリスから供給される呪怨属性の魔法が、切っ先へ集中する。

 本来、武器を用いた攻撃を得意とするペルソナでは無い。寧ろそっちの方面が得意なのはジャンヌの方だ、が。手数の多さと応用性。その二点でアリスは勝る。

 

 

「疾っ」

 

 

 一度振るえば、一文字。

 二度振るえば、十文字。

 

 切っ先に込められた魔力が斬撃に変わり、飛ぶ。鋭利な切っ先に込められたそれは密度が高い。反撃の苦し紛れに放たれた魔法などいとも簡単に。

 

 

「消滅する」

 

 

 消滅の余波をも置き去りに、よろよろと立ち上がるニイジマを見据える。

 

 

(さっきのファンファーレはルーレットが止まった音。そして同時に行われた魔法による反撃)

 

 

 ならば導き出される答えは明白。

 ニイジマが近接での攻撃を仕掛けている裏で、ニイジマの行動を介さない魔法攻撃がランダムで発生する。要はニイジマばかりを注視していると足を掬われるという事。それがさっきのジョーカーでありフォックス。

 

 

「意趣返しってこと? はっ……笑えない」

 

 

 さしたる問題は無い。カジノらしく演出が目立つ分、目を向けていなくても、ソレが起こるタイミングは耳で分かる。タイミングさえ分かれば、後は今みたいに対応すれば───。

 

 突如、頭上に感じる夥しい熱量。

 見るまでも無く、それがさっきと同一の威力を持つ核熱属性の魔法だと、確信する。

 

 まさか。と嫌な予感が過ぎる。さっきニイジマが言った【ペナルティ】という言葉。四人分均等に放たれた魔法。打ち消した筈の魔法が、再度現れた理由。

 

 徐々に落ちていく熱の塊。

 

 予感が確信へと変わる頃、核熱はウィッチを巻き込み、爆ぜた。

 

 

『……だから言ったでしょう? ペナルティって』

 

 

 後方の爆発を一瞥。

 鎧の奥に隠された顔を優越感に浸らせながら、ニイジマは正面の残る三人を見据える。

 

 

「必中……って事か」

 

『理解が早くて助かるわ』

 

 

 人間形態時のルーレット。負けた方が生命力や精神力を失うペナルティ。概念的な攻撃。ルールにのっとり正しく負けた代償として、成すすべなく奪われるもの。

 代償が魔法攻撃に置き換わっただけで、最初と仕組み自体は変わっていない、という事。

 しかし、厄介なのが常にこちらが敗者であり、ルーレット自体はただただ敗者に与えるペナルティを選ぶものとしか使われていないという事。つまり、こちらに有利に働く事は決してない。

 

 

「ううん。それだけじゃない」

 

 

 ルーレットに応じた耐性も付与されている。そうクイーンは言う。確かに、二種の魔法が直撃した割には効果が薄い様に見える。要はルーレットの出目に応じて相手の行動と耐性がそれぞれ一個増えるという事。

 

 

『言ったでしょう?』

 

 

 再び両手の武器を打ち鳴らす。さすれば走り出すルーレット。

 

 

『この世界においては私がルール……貴方達に勝ち目は無いのよ』

 

 

 ニイジマはニタリと鎧の奥で笑みを浮かべる。

 最初から怪盗団に勝利の二文字は無い。このゲームにしている時点で…いや、このパレスに入ってきた時点で敗北は既定ルートだ。なぜなら私は検事で、常勝が当たり前で、勝者の私が正しいのだから───

 

 

「いいえ」

 

 

 ふと、クイーンの言葉がニイジマの思考を遮った。

 拳を硬く握り、きつく目を細め、ニイジマを見上げる。

 

 ニイジマは僅かに困惑を示す。

 だってクイーンの…妹の瞳は決して敗者のものではなく、未だに勝利を掴もうとする世間知らずで泥臭いもの。

 

 有り得ない。

 引き際を間違える妹では無い筈だ。負け戦を好んでする様なバカでは無い。

 

 

「勝ち目はあるわ」

 

 

 その言葉を聞き、ニイジマはハッとなった。

 ただ醜く足掻いている訳では無い。まだ勝ち筋があると、本気でそう信じているのだ。

 

 

『何を言って……』

 

「前に現実世界で傍聴に行った事があったでしょう? その時のお姉ちゃんは明らかに苛立っていて、余裕が無い感じだった。ええ、そうよね。怪盗団事件の陣頭指揮の合間にやっていたんだから。でも、私の知る正しい検事の姿だった。冒頭陳述も、証人尋問も、求刑をする姿も、ルールに従っていて」

 

『はっ…何を今更。当たり前じゃない。私は検事。この国の安全と秩序を実現する法の番人で──』

 

「そう。結局、認知が歪んでいても、パレスを持とうと。お姉ちゃんは検事。それも優秀な。───だから私達は勝てる。そうでしょう、雪雫!!!!」

 

 

 音も無く、それは現れた。

 焼き切れたコートは最早、服としての機能を為していない。特徴的な帽子は無く、目にかかる白髪が風に揺れ、隙間から見える黄金の瞳が怪しく光っている。

 

 ニイジマはハッと視線を上に向ける。いつに間に。そう、言葉にならない声を吐露した。

 気付かず接近されるのはまだいい。瞬間移動じみた芸当を何度かしているのを目にしていたから。しかし、ここまで……自らの肩の上まで接近を許すとはどういう事か。

 

 肩を土台に、魔女は無感動な瞳でニイジマを見下ろす。顔色一つ変えず、そっと切っ先を喉元へ突きつけ──掻っ切る。

 

 鎧と刃先がぶつかり、甲高い金属音が鳴り響く。

 

 衝撃でニイジマはのけぞり、魔女…というより死神の様な風貌のウィッチは飛び降り、再びニイジマを正面に据えた。

 

 

(決めきれてない)

 

 

 喉元に手を当て、悶えるニイジマ。効いている。しかし、やはり致命傷には至らない。彼女が纏う鎧はそうぞう以上に硬く、またニイジマ自身も相当タフだ。

 内心で舌を打ちながら、チラリと転がるピンボールを見る。あと数十秒ほどで次の出目が確定しそうだ。

 

 

(当たりが悪ければ、全滅も有り得る……か)

 

 

 なら

 

 

(ルーレットを止めなければいい)

 

 

 クイーン。と声をあげれば、頷きが返って来る。どうやら考えている事は同じらしい。結構。思う存分駆け回れる。

 

 脱兎の如く、駆けだす。

 片手に大鎌を携えて。当然、ニイジマは抵抗する。残った4人の中で最も接近したのはウィッチであるから、その警戒心の大部分は彼女に向いていた。

 

 ガトリングを構え、照射。狙いは絞らない。ただ素早いウィッチの軌道を絞れれば良かった。

 ほら、予想通り彼女は弾丸の雨を突っ切らず、合間を縫うように迂回する。弾幕が薄い所を瞬時に判断して動いているのだろう。凄まじい動体視力だ。だが、予測は容易い。

 

 今度は狙いを済まして、大剣を一振り、二振り。

 

 弾幕が薄い所に被せる様に、ウィッチの軌道を先読みして、空を切る剣戟を飛ばす。

 

 

「!」

 

 

 それは先程よりも鋭利で、素早い。

 ペルソナを出そうにも、間に合わない。顕現したころには既に真っ二つなのは目に見えている。

 だから、ウィッチは地上を離れ、跳躍した。唯一攻撃が及んでない範囲へ。

 

 

『あら』

 

 

 だがそれすらニイジマの狙い通り。影に潜航する暇を与えない程の弾幕を地上に張れば、上へと逃げる。しかし賢い選択に見えて大きな過ち。だって空中には何もない。逃げ場も、影も。ただひたすら、重力に従って落ちるだけ。

 

 

『逃げ場は無いわよ』

 

 

 いくら相手が素早いとは言え、空ならば軌道の予測も容易い。落下の軌道に沿って、再び射撃をしようと構え───弾かれた。

 大鎌だ。大鎌が、ブーメランの如く空中の彼女から飛んで来た。正確無比な軌道で、少ない力でもガトリングの軌道が己から逸れる様に投擲してきた。

 

 斜め後ろの地面に刺さった大鎌を見て、「器用な子ね」と舌打ちする。でも、とうとう武器すら無くなった。銃弾を弾く術も無くなった。このタイミングならペルソナもまた間に合わない。

 

 しかし、空中のウィッチは焦った様子も見せない。冷たい銃口を再び向けられようと、寧ろ余裕すら見える。

 それもその筈、彼女は1人では無い。

 

 

「ゴエモン!」

 

 

 右腕が急に重量を増し、ガクンと下がる。

 見ればガトリングごと凍結されていた。下手人は当然、怪盗団の狐面の男。

 

 

『邪魔よ!』

 

 

 羽虫を振り払うように一薙ぎすれば、そそくさと退散。なるほど、彼女を囮にヒット&アウェイを繰り返す気か。

 なんて周囲を警戒すれば、今度はウィッチがアクションを起こす。

 

 ボロボロの布切れになったコートを脱ぎ、己を覆うように頭上へ投げる。何を。とニイジマは思った。しかしすぐにその疑問は払拭される。

 

 

(影が、出来ている)

 

 

 空を舞うコートがウィッチの身体を覆う程の影を作っている。

 

 

(また瞬間移動か!)

 

 

 咄嗟に己の足元を注視。出現を予測し、お得意の闇討ちを封じようとする…が、待てど待てど影から現れる様子は無い。

 

 そう、そもそもその為に影を作った訳では無い。

 影の中を探るが如く、手を翳す。暗海の境界が揺れ、中からソレは現れる。

 

 ────スナイパーライフルだ。

 

 

「狙い撃つぜ──なんてね」

 

 

 一発、二発とニイジマに向けて引き金を引く。

 しかし、ソレらは鎧によってそのまま弾かれる。そう、ウィッチが出したのは先程、イカサマを打ち破ったものよりも一回り小さく、その代わり取り回しが良くなったもの。手数で上回るが、ニイジマにとっては豆鉄砲のような火力しか持たない。

 

 

『咄嗟に出したのがソレ?』

 

 

 警戒して損したと、ニイジマは嘲笑う。

 しかしウィッチは彼女に変わらず影で形成された銃口を向ける。地面に着地し、その強大な敵を真正面に捉えても尚、だ。

 

 また一発。それもまた鎧によって弾かれる。

 鬱陶しくはあるが、ダメージは無い。ニイジマに取って、ウィッチのその行動は隙でしかない。

 

 そこからは同じことの繰り返しであった。

 ニイジマが大剣を振るい、ウィッチが寸前で避ける。回避行動の最中で射撃という芸当を見せてはいたが、やはりダメージには繋がらない。

 

 

『無駄よ、無駄なのよ!』

 

 

 一撃で仕留められないからと言って、手数勝負できても無駄。

 ウィッチの豆鉄砲のような銃弾も、合間合間に入るフォックスの剣戟も、鎧を打ち破る事は叶わない。

 

 

『そら! 貴女達が手をこまねいている間にペナルティが!!』

 

 

 そろそろピンボールが止まる頃合いだ

 怪盗団全員を襲う回避不能の攻撃。そして()()()()()()()している。それは怪盗団を一撃で屠る最大火力の───。

 

 

『なに?』

 

 

 ルーレットは止まっている。しかし待てどもピンボールが止まらない。それは通常ではありえない不可解な軌道を繰り返していた。円を描く様な軌道では無く、不規則に。まるで外部的な干渉を受けている様な。

 

 

『…まさか』

 

 

 ニイジマの視線を受けてウィッチがニヤリと口角を上げた。

 もう隠す必要は無いわね。とニイジマに向けていた銃口を明後日の方向──ピンボールの方へ向け、引き金を引く。再び、ピンボールは不規則な軌道を描き、確定している未来を引き延ばす。

 

 

『跳弾を利用して──』

 

 

 信じられないような目でウィッチを見つめる。

 攻撃にもならない攻撃をひたすら繰り返していた理由。やけになった訳でも、囮になった訳でも無い──。

 

 

『出目を確定しないようにしていた……!?』

 

「……貴女の脅威は回避不能のペナルティ。それに尽きる」

 

 

 数十秒毎に繰り出されるペナルティは非常に厄介だ。まず対策しようにも、どの属性のペナルティが来るかは、いざ確定しないと分からない。分かったとしても、こちらに着弾する前に対策をするのには余りにも時間が無く、そして場合によっては不可能。そして攻撃が中断されるのもまた厄介極まりない。攻撃に転じていても、強制的にペナルティによって打ち切られ、ニイジマが体勢を整える時間を与えてしまう。 

 

 

「それに、出目はきっと貴女が決めている」

 

『……へぇ?』

 

「クイーン……真の攻撃が効かなかったのもたまたまじゃない。それに高い攻撃性能を持ちながら、たらたらと私と打ち合ってたのが何よりの証拠。ペナルティをあてにしている様にしか見えない。真のお姉ちゃんなんだもの。きっと優秀。そして合理的。必中の攻撃で、一撃でこっちを倒せるなら、当然それを待つ。分かるよ。私だってきっと同じことをするから」

 

 

 しっかりニイジマを据えながら、ライフルの引き金を引く。 

 また一発、ピンボールが弾かれる。

 

 

「つまり、貴女の勝ち筋はルーレット(ルール)前提で組まれている」

 

『……貴女が法界に居なくて良かったわ』

 

 

 きっと厄介な相手になったでしょう。とニイジマは笑う。

 

 

『だけど甘いわね。勝ちが確定するまで手の内は晒さないものよ? それを聞いた私が、出目が確定するのを待つと思って?』

 

「……勝ちが確定するまで手の内は晒さない………その通りだと思うわ」

 

 

 ズズッ。

 ニイジマの後ろで影が揺れた。

 鎌だ。地面に刺さった大鎌が影を造っている。

 

 アリス。と冷たい少女の声が響いた。

 

 

『「死んでくれる?」』

 

 

 ゆらゆらと、うごめく影の海から、ふたつのものが顔を出す。

 それは、きらきらと銀色に光る、フォークとナイフ。

 

 それはニイジマ目掛けて、とくべつなごちそうにありつく子どもの様に───突き刺す。

 

 

『がっ……!』

 

「これでも致命傷にならないのは分かってる。でも致命的な脆弱性は付与出来る」

 

 

 影が蝕むように鎧にヒビを入れる。

 それは攻撃では無く、一種のデバフ。強固な耐性を内側から瓦解させる為の種まき。

 

 

「貴女の鎧はとても強固。それこそ矮小な攻撃じゃ傷にすらならない。だけど鎧を砕く強大な一撃を用意するには、時間が必要」

 

 

 だけど、ペナルティが時間を与えてくれなかった。

 

 

「ルーレットの仕組みを理解するのに時間が掛かった。でも分かってしまえば。この通り」

 

 

 再びライフルを構え、射撃。

 

 

「後はウィッチがボールの停止を送らせつつ、俺が注意を引く。ともすれば──反撃の準備は整う!」

 

 

 影が再び揺れた。

 這い出るのはフォークやナイフなど言った小さい物では無く、そこそこの質量を持つモノ。

 

 

「ヨハンナ!!!!!!」

 

 

 高らかな声と共に影の中から飛び出したのはクイーン、そして彼女のペルソナ。

 飛び出す間際、ニイジマに対し、核熱属性の魔法を放った後、彼女達は跳躍した。それも優に数十メートルは飛んだであろう遥か上空。影の中の様子は分からぬが、最大出力…フルスロットルで駆け抜けてきた事が分かる。

 

 

「……人のなかで随分乱暴な…………」 

 

 

 地上から恨めしそうに睨むウィッチの視線など露知らず。ニイジマを…自らの姉を真下に据えたクイーンはギュッと己の拳を握る。

 

 

(ジョーカーの補助、自分の魔法……そして、ウィッチの魔力*1!)

 

 

 ウィッチとフォックスが囮になっている間、貯めに貯め、練り込んだ力を、拳に一極集中。

 

──喧嘩しても良い。姉妹だもの。

 

 ウィッチの言葉がリフレインする。

 思えば、親代わりの姉に気を使って言いたい事も言えて無かった。家族をもう失いたくない一心で、(家族)よりもキャリアを優先したお姉ちゃんに、間違っているなんて言う勇気は無かった。

 

 でも───。

 

 

「喧嘩上等! やってやるわよ!!」

 

 

 それは間違いだって、やっと気付けた!!

 

 

「お姉ちゃんの……バカァァァァァァァ!!!」

 

 

 クイーンは…真は冴を目掛けて落下する。

 キュっと握り占めた拳。そこに集められ、練られた魔力はさながら隕石の如く質量で───。

 

 

『グッ…ガァッッ!』

 

 

 ひび割れたニイジマの鎧を打ち砕き…巨大な爆発を起こした。 

*1
無断で取った

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