PERSONA5:Masses In The Wonderland.   作:キナコもち

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久しぶりなので短めです


傲慢の皇帝
129:Noah's ark.


 

 

<独占インタビュー>

 

■ スターダムを駆ける天才歌手の素顔

 

 

 天城雪雫。

 

 膨大なコンテンツに埋め尽くされた大手動画共有サイトでひっそりと産声を上げた彼女は、ほんの数年でトップアーティストとしての地位を確立させた。そしてついに今秋に初のライブイベントの実施。極めつけは陰陽の出場と話題に事欠かさない。当時中学生の、しかも事務所にも所属していない一般人であった少女が、どの様な軌跡で今の人気を築き上げたのか。今回、当雑誌として初めてのインタビューを敢行した────。

 

 

 という書き出しから始まったインタビュー記事が載った雑誌は発売数日で重版が決まるほど人気を博していた。

 

 天城雪雫に関して囁かれる噂の1つに【メディア嫌い】というものがある。外部への露出が少ない訳では無く、話題性と反比例するように決まった筋から来る仕事しか受けないからだ。人気にあやかろうと擦り寄り、そのままノーと一刀両断された会社は数知れず。

 そんな彼女が全く接点が無かった、それでいて超大手メディアのインタビューを引き受けたというものだから、もう業界内はお祭り騒ぎ。陰陽出場直前という美味しすぎる要素も相まって、その熱量は大衆にも広がったのだ。

 

 

 

11月23日 火曜日 晴れ

 

 

 

「───鎖国解禁?」

 

 

 ぐでっと、まるで自宅の様にソファに寝転んでいる双葉が、雑誌を捲りながら呟いた。

 

 

「そんなつもりは無い。ただ自分の活動に向き合ってみようと思っただけ」

 

「つまり無関心から関心へ、意識が変わった、と」

 

 

 過去はアリババとして、今は仲間として。長らく雪雫を見てきた双葉にして言えば、その一言に尽きる。ここ数か月で随分と活動も前のめりになった様に感じる。

 今までは正直に言うと片手間に仕事をしている感が凄かった。活動ペースも気分で上がり下がりあったし、世に出すコンテンツのジャンルも統一感はあまり無かった。趣味でやってます、久慈川りせとの接点になればそれで十分です。そんな腹が見え隠れしていた。

 

 当時、天城雪雫という原石に目を付けた双葉としては、そんな気分でこの才能に蓋をするのは勿体無い! 本人にその気が無いのなら大成するまで磨いてやる!という心持ちでマネージャー業に乗り出した訳だが。

 

 

「もう私が仕事を選別する必要も無さそうだなー」

 

 

 彼女のここ数か月間の彼女の活動は非常に勢いづいている。学園祭とは言え初めてのライブを行い、陰陽の出場も決定した。そしてとうとう自身のみで雑誌インタビューの仕事を完結させた。無関心故の危うさは無く、正しく一人のプロとして自分で取捨選択出来るようになったという証拠。

 

 インタビュー記事の横に添えられた宣材写真も心無しかプロ特有の覇気のようなものを感じる。

 何となく寂しさと、嬉しさを同時に覚える。アマチュア時代から応援していたバンドがメジャーデビューしてしまったような、或いは子が独り立ちした母親の心境だ。…………子ども居ないけども。

 

 

「まぁそのお陰でワガハイ達は自由に動ける訳だが……」

 

 

 怪盗団一色だった世間は、怪盗団リーダー逮捕のニュースを皮切りにすっかり風化した。その後、脱獄したという真実は無用な混乱を防ぐためにか、蓋をするつもりらしく、この件に関してはそれ以降の情報の更新は無い。今の話題は専ら、アンチ怪盗団の主張を貫き偽りの平穏をもたらした総理候補【獅童正義】、そして陰陽出場を直前に控えた【天城雪雫】で二極化している。

 

 

雪雫(この子)が活動すればするほど当然、大衆の興味は雪雫に向く。ただでさえ一挙手一投足、全てが話題になる様な状況。獅童ほどの権力があったとしても、秘密裏に対処するのは難しい」

 

「ああ。こんだけ世間に注目されてる中、不慮の事故など起きようものなら大衆が騒ぎ出すのは必然。嗅ぎ回れるのは避けたいだろう」

 

「そん中で雪雫にくっついて行動してりゃ、俺らも安全……って事だな」

 

 

 だからこうして怪盗団は雪雫の家に集まっている。

 

 

「皆様の読み通りですね。この家を中心としておおよそ半径150mに複数の監視の目はありますが、襲撃の様子はありません」

 

 

 一機のSPと共に。

 

 

「………把握しているのなら対応するのがSPの役目じゃないの? アイギス」

 

「ウィ。仰る通り。ですので今絶賛職質中であります。私の他に建物外に5名、内部に清掃員として3名配置しているゆえ」

 

 

 ふふん。と勝ち誇った様な笑みを浮かべるアイギスは、普段の装甲剥き出しの姿では無く、キッチリとした黒スーツを身に纏っている。初見でロボットとは見抜くのは不可能と言わざるを得ないほど、その姿は人間そのもの。

 

 

「ねぇ雪雫……」

 

 

 そんなアイギスを横目に、真はそっと雪雫の耳を打つ。

 

 

アイギスさんって一応、警察の人間でしょ? 堂々と貴女の警護についていたら目立つんじゃ………

 

「ノン。ご心配には及びません。今の私は桐条有するとある警備会社の主任……。書類上、既に公務からは退いているが故」

 

「天下りってヤツか?」

 

「いいえ。セカンドキャリアです」

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「開票日の12月18日。ここに改心を合わせるべき」

 

 

 卓上のカレンダーを指差して、雪雫は静かに告げる。

 

 

「……お言葉ですが、やや緩慢では無いでしょうか?」

 

「えぇ、そうね。こちらは獅童一派の全貌は未だに掴めていない…。それに対して向こうはある程度の事は把握している。これ以上、後手に回る必要は無いわ」

 

 

 アイギスの言葉を、遅れて合流した冴が同意する様に補強する。

 確かに、こちらの手の内が割れている以上、一か月相当の期間設定は遅いと言われても仕方がないだろう。その分、向こうに猶予を与える訳だから。

 だけど、それ以上のリターンがあるのもまた事実。

 

 

「獅童の改心だけが目的なら、確かに早い方が良い。けどそうじゃない。私達の本当の目的は()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「今まで獅童がやってきた事のスケールを考えると、一人の力でやれたとは思えないの。きっと色々な汚い大人達の利害や利権が絡み合って、一つの組織を成している。けど意志は一つじゃない。そこまでの統制は、出来ていない。明智君が良い例ね。獅童に従うフリをして、その実は寝首を狙っていた」

 

「つまりはトカゲの尻尾切り。獅童が倒れても、彼に代わる誰かが大衆の前に立つ。本質は何も変わらない」

 

 

 雪雫、真、春が続けて言う。

 怪盗団が危惧していること。それは第二、第三の獅童の存在。仮に今日、獅童が改心したとしても、きっと明日にはまた別の誰かが表に立つ。獅童と同じような耳障りの良い言葉と「志半ばで倒れた英雄の意志を継ぐ」とドラマを引っ下げて。

 

 

「だから重要なのは頭を挿げ替えさせる隙を与えない事。このまま行けば、順当に獅童は当選する。────だからその瞬間を狙って、彼の罪を白日の下に晒す」

 

 

 

 

 

 

 暗雲の隙間から降り注ぐ光はただただ紅い。見慣れた街並みは水底に沈み、見えるのは傾いた摩天楼。

 おおよそ、絵に描いたような終末だ。四十日と四十夜、大洪水が地上の全てを洗い流す。古来から言い伝えられる一つの結末(おしまい)

 

 

「───────」

 

 

 絶句。とは正にこの事を言うのだろう。

 この世界を見て、私は発するべき言葉を見失った。

 

 なんて醜い世界。

 

 沈没した都市を進む箱舟。一体誰の許可を得て、この船首は水を切る?

 大洪水は罰である。地上に蔓延る罪を清算するが為、主が下した決定である。生存が許された者も居るが、生憎この世界の主はそれに当て嵌まらない。当て嵌まる訳が無い。

 

 それをあの男は、まるで自身が選ばれたとでも言う様に。いや、自らが選ぶ側だと言う様に───。

 

 

「傲慢です、ね」

 

 

 大洪水は神からの賜物である。滅亡も存続も、全ては主が決めること。そこに人の意志は無く、介入の余地も無い。

 

 

Leave it to the will of God.(全ては神の御心のままに)

 

 

 だがしかし、それでも威光が届かぬ地ならば、私が代弁者となろう。

 

 

 

11月24日 水曜日 シドウパレス

 

 

 

 ■■■■まであと 30 日  

 

 

 

 




すみません。
リアルが忙しくて気付いたら歳の瀬でした。
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