PERSONA5:Masses In The Wonderland. 作:キナコもち
―――怪盗団。
それは悪い大人の心を盗むと自称する現代の義賊。
元五輪選手の体育教師「鴨志田卓」
日本美術界の巨匠「斑目一流斎」
世間に見せる顔のその裏で、理不尽に弱者を虐げていた彼らを、予告通りに改心させた。
怪盗団の名前が知れ渡ったのは、斑目の事件からであり、その存在を眉唾ものと吐き捨てる者が大多数を占めていた。
しかし、鴨志田事件の当事者達…、つまりは秀尽学園の生徒に関しては世論とは真逆。つまりは怪盗団の存在を信じる者が殆どだった。
「次はどうする?」
そう仲間達に問いかけるのは怪盗団のリーダー。
今年の春に秀尽学園に転入してきた伊達メガネを掛けた黒髪の青年、雨宮蓮。
「未だに俺達の存在を信じない奴ら多いからなー。次はもっとガツンと行きたいよなぁ」
自身あり気に答える金髪の青年、坂本竜司。
蓮とたまたま居合わせたのを切っ掛けに、力に目覚め、共に世の直しをしようと誓った蓮にとっての相棒。
「と言っても、そう簡単に見つからないよね…。というか、簡単に見つかったら私達戦う必要無いし」
少し癖毛気味のブロンドの髪の毛をクルクルと指で遊ぶ、高巻杏。
鴨志田事件の当事者であり、虐げられていた己と決別し、世の悪に牙を向けた女豹。
―――女豹じゃないから!
「斑目が言っていた黒い仮面も気になるな。俺達の様なペルソナ使いがまだ他に居るということだろう?」
その端正な顔を曇らせながら呟く、喜多川祐介。
怪盗団の2人目のターゲット、斑目の一番弟子であった彼は、度々意見の食い違いから衝突していたが、己の信念を突き通す為、怪盗団への参加をした。
「ユースケの言う通りだ。しかも認知世界のマダラメと面識があるという事は、パレスの存在を知っていて放置していたということになる。ワガハイ達の敵である可能性が高い」
何処からどう見ても猫…、もといモルガナ。
鴨志田のパレスで出会った人語を喋る謎の存在。
何も知らない蓮達を鴨志田の改心まで導き、その後は己の正体を知る為に行動を共にしている。
「もし向こうで会ったら、どうすればいいのかな…? やっぱり…、戦う?」
「正直分からないな……。ワガハイだって自分以外のペルソナ使いに会うのはお前達で初めてだったんだから」
ペルソナ。
それは心に秘めたもう1人の自分が具現化した存在。
怪盗団の面々は、このペルソナ能力と、異世界を自由に行き来することが出来る、イセカイナビを用い、心を盗んでいる。
一歩間違えれば命を落としてしまう程の危険な世界であり、使いようでは人を意のままに操る事が出来る世界でもある。
話に上がっている「黒い仮面」の存在。
敵であるにしろ、味方であるにしろ、放置するには危険過ぎる存在だ。
「あー、わっかんねぇ…。一体誰なんだろうなぁ…、そいつ」
「あの…、その事なんだけど……」
仲間達の会話を静観していた蓮が、竜司の言葉に続く様に呟く。
「何か心当たりがあるのか?」
「……うん。…いや、確証は無いんだが……」
「蓮にしては歯切れ悪いわね。どうしたのよ」
見た目に反して意志が強く、異世界においても強気な態度を崩さない蓮だが、今日は珍しく歯切れが悪い。
「黒い仮面の奴について、レンとワガハイで話し合ったんだ。…それで、お前達の周りに怪しい奴が1人居た」
「え、俺達に?」
3人は顔を見合わせて、目をぱちくりとさせる。
全く覚えが無い。全員そんな顔をしていた。
「認知世界……、パレスやメメントスがどういう世界かは話したよな」
「えーっと、パレスが大きな欲望を持った人が持つ歪んだ世界で―――」
「メメントスがそれの大衆版だろ」
モルガナは満足げな表情を浮かべて、教師の様に首を縦に振る。
「じゃあ、現実世界の出来事は、認知世界にどう影響が出る?」
「認知世界はもう1つの現実だから…、その出来事に合わせて変化が起きる……、だよね?」
「流石だ、アン殿。―――では、最後に聞くぞ。認知世界から現実世界への影響は?」
「その世界に存在するオタカラ、つまりは欲望の核を奪えば、その人間の欲は消え、心が入れ替わる……。つまりは改心させることが出来る。………いや、それだけじゃないか。俺達が現実でモルガナと会話出来る様に、人間の認知そのものが変わることもある」
その通りだユースケ。とモルガナは嬉しそうに呟く。
「つまり、それぞれの世界で起きた出来事は、それぞれの世界で影響が出るということだ」
「それがどうしたんだよ、モルガナ?」
「仮に、仮にだぞ。メメントス…、集合無意識に存在するニンゲン達の認知をまとめて変える事が出来たらどうなると思う?」
「んなの、簡単な話じゃねぇか。それが現実になるってことだろ?」
「そう、それなんだよ、リュージ」
ドユコト?と口をポカンと開けて、杏と祐介に視線を送る竜司。
送られた2人も憶えが無いと、首を横に振った。
「1人だけ、おかしい奴が居るだろ。顔も隠す事無く活動している有名人なのにも関わらず、学校で一切話題になる事が無い奴が」
「………天城、雪雫」
予想もしていなかった名前に、3人は目を見開く。
「俺もモルガナに言われるまで気にもしていなかった。でも改めて考えると、確かに不可解なんだ。俺も竜司も杏も、天城雪雫というアーティストの存在も顔も知っていたのに、最初は本人だと気付けなかった。ペルソナ能力が目覚めて、改めて彼女が天城雪雫というアーティストであると認知して初めて、彼女を正しく認識することが出来た」
「認知世界の影響に左右されないのは、ワガハイ達が確立した自我を持つペルソナ使いだからだ。逆に言えば、ペルソナ使いで無い人間達は、天城雪雫を正しく認識する事が出来ない」
「…………」
納得は出来ない、でも言い分は理解出来る。
そういった表情で杏は黙り込む。
「だが、彼女が斑目達の様な悪人だとは俺には思えん」
「ああ、それはワガハイも蓮も同じ意見だ。だが、無関係とは言い切れないだろ? ……方法は分からないがな」
「それは、そうだが…」
調べてみる価値はあると思う。
蓮は静かにそう呟いた。