PERSONA5:Masses In The Wonderland.   作:キナコもち

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Epilogue:Wake Myself Again.

 

 

 12月25日 日曜日 雪

 

 18時過ぎ頃。

 

 

 世界はそれほど変わっていない。

 

 

「このままだと、総理不在で年明けだろ…? この国、大丈夫か?」

 

 

「誰でも良いから救ってくんねぇかなぁ」

 

 

 相変わらず大衆は自分勝手で人任せ。

 昨日の事なんてちっとも憶えていない。

 

 

「あーあ。怪盗団がもう総理やってくねぇかなぁ」

 

 

「バカ。怪盗団なんて居るワケないだろ。迷信だよ、迷信」

 

 

 でもほんのちょっぴりの変化はあったかな?

 

 

 怪盗団の存在を信じている人は半々くらい。

 存在は知っているけど、信じてない。なんて人も居る位だ。

 

 

『いよいよ間近に迫った陰陽歌合戦! 大注目のアーティストは天城──』

 

 

 私の方も、少しだけ取り巻く環境が変わった。

 相変わらずファンは居てくれるが、批評的な意見も出てきた。

 

 見た目全振りのアーティスト、だとか。

 持ち上げられすぎ、とか。

 歌としてはありきたりで平凡、だとか。

 

 

「いやぁ。一息つく暇もないねぇ」

 

 

 ルブランの一階。皆で打ち上げをしている最中。

 ご馳走を両手に持った、杏が同情する様に言った。

 

 

「問題無い。忙しいのはもう慣れた」

 

 

 私にとって今日が最後の休み。

 明日以降は陰陽に向けた調整をしないとだし、色んな音楽特番に呼ばれている。全部生放送だから、一瞬の気も抜けない。

 

 

「まぁでも年明けたら雪雫も国民的アーティストかぁ」

 

 

 真が感慨深そうに私の頭を撫でる。

 

 

「どうかな。ここからが本番な気がするけど」

 

 

 もうメメントスは無い。あったとしても、どうこうするつもりも無いけども、もう器としての力も無いらしい。

 つまりここからは純粋な実力勝負だし、認知改変による注目逸らしも出来ない。

 

 りせの言っていた、芸能界の大変なところって言うのが、押し寄せる訳だ。

 

 

「まぁ心配すんな! どうなってもワガハイ達が付いててやるからさ!」

 

 

 自信満々にモルガナ…今はもう喋るだけのただの猫が、笑顔を浮かべる。

 蓮の案内役として役目を終えた彼。彼もまたイゴールを主とする身。ベルベットルームに帰るのだと誰もがそう考えたけど、存外あの長鼻は寛大らしい。

 割とアットホームな職場なのかもしれない。

 

 

「美鶴さん達も来ればよかったのにね」

 

 

 春が残念そうに眉を下げる。

 

 

「そうね。でも無理も無いわよ。渋谷での後始末もそうだし、警察内部のごたごたとかも片付けなきゃいけないんでしょ?」

 

 

 お姉ちゃんだって、明智と獅童の件で来れないって言っていたし。と真は続ける。

 

 これから大変なのは何も私だけでは無い。

 今回の騒動で警察の偉い人…公安のトップ?が獅童一派だったらしく、失脚したらしい。頭を失った組織はもうカオス。そもそも公安自体が一枚岩では無く、結構な人数が獅童の関係者。その事態の収拾をシャドウワーカーがするっていうのだから。

 それに加えて明智、獅童が起こした事件の立証のために、美鶴自身が裁判にまで出るというのだから、正に火中の栗を拾うを体現していた。

 因みに冴はその事件の担当検事らしい。

 

 

「でもお陰で蓮の無実が立証されそうだぜ!」

 

「その点は明智に感謝だな~!」

 

 

 竜司と双葉が、蓮を挟んで嬉しそうに肩を叩く。

 明智は存外にも協力的らしい。きっと獅童を貶めたいという気持ちからだと思うけど、結果として怪盗団への容疑。そして過去に獅童が起こした事件の立証…つまり蓮の暴行事件も含めて再捜査の動きがあるとか。

 だからこうしてまた皆で一緒にいられるのも、これもまたシャドウワーカーに助けられた形にはなるけど。表としても警察関係者であった裸マント…そして旧知の中である黒沢だとか言う刑事の口添えが大きいとか。

 

 

「でもお前ら、警察には未だに目付けられてんだろ? あんまし調子乗んなよ?」

 

 

 マスターがぶっきらぼうな言葉と裏腹に、口角を上げながら食器を拭いていた。

 

 

「まぁ、殺しの疑いは無くなったとは言え、色々してきましたから」

 

 

 祐介が感慨深そうに言った。

 

 結果的に良い方向には転がったが、今までの旅路を法律に当て嵌めるとグレーなところばっかりだ。

 

 例えば、悪人の改心なんかは見方によれば私的制裁。

 例えば、イセカイ前に武器を持って集まるのは凶器準備集合罪。

 例えば、予告状は脅迫罪。

 例えば───。

 

 と、まぁ色々ある。

 

 警察内部には私達の能力やイセカイなんかも知っている人も居るし、なんならその件含めて一般には公開されずとも、裁判で陽の下には出るだろう。

 法治国家として、見過ごせない集団…というのはこれからも変わらなそう。

 

 ともあれ。

 

 

「ほらよ。お待ちかねのデザートだ」

 

「おぉ! これがホールケーキという奴か!? ご主人!」

 

 

 今は純粋にお互いの無事を祝うとしよう。

 

 

「おいこら、祐介! てめぇっ、取りすぎだっつーの! 雪雫もしれっと2キレ分持ってってんじゃねぇ!!」

 

「五月蠅い、竜司」

 

 

 こんなに心が穏やかなのは初めてかもしれない。

 

 

「じゃあ…もっかいいっちゃう?」

 

 

 杏がニタリと笑みを浮かべて皆の顔を見る。

 そしてせーの。って続ければ。

 

 

「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」

 

 

 賑やかな声が聖夜の雪の下で響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 12月31日 土曜日 晴れ

 

 

 真冬の空。

 年の末の雰囲気。

 

 人で賑わう街並は、今日ばかりは違った。

 

 時代の移ろいは人の動きをも変える。

 一通りは少なく、オフィスが入ったビルの明かりも今日は数える程しかついていない。

 真冬の澄んだ空気が、人の居ない街を通り、余計に肌寒さを感じさせる。

 

 そんな中、白髪の少女…天城雪雫は渋谷スクランブル交差点の中央で深呼吸をする。

 ツンとする様な空気が鼻腔を突き、肺に当たる部分を循環する。

 

 雪雫はシンプルな真っ白なドレスを着ていた。

 肌と髪と同色の、溶け合ってしまいそうな程の透き取った白。肩が出てるタイプで、身体のラインに対しては少しゆとりをもって作られている。丈はくるぶしよりちょっと上くらいまでで、またも白色のハイヒールの形がハッキリ見える様なデザインであった。

 

 屋内ならまだしも、屋外で着るには寒すぎるデザイン。

 だと言うのにも、雪雫は顔色変えず、淡々と己の出番を待つ。

 

 

「雪雫さん、MC後すぐです!」

 

 

 カメラを構えた陰陽のスタッフが言う。

 防寒着は着ているが鼻は赤く、吐く息は白い。

 

 

「───はい」

 

 

 会場外での歌唱は雪雫のワガママであった。

 これには終わった後、すぐにりせの所に行きたいとか言うエゴも多少はある。だが、大部分は己に対する自信の無さ。今回の事件を経て、多少なりとも客観視を覚えた雪雫は、どうもあの煌びやかな本会場に居る自分を想像出来なかった。

 

 周囲のカメラが一斉に雪雫を捉える。

 雪雫の片耳のインカムから聞こえるMCの声。話が長いで有名な方ではあるが、そろそろ話が切り替わりそう。

 

 雪雫の歌唱パートはダンサーや演者はおらず、完全一人。

 気持ち新たに、何の飾りつけもせずに歌いたいというこれも雪雫本人のワガママであった。

 

 

(もう、呼ばれないかもなぁ)

 

 

 陰陽は結構厳しい。

 そうりせから聞いた。守らなければいけないルールやモラル…暗黙のものからオープンのものまで…あったり、思わぬ行動がNGだったりと、複数回出場しているアーティストでも把握しきれないとか。

 これまでの打ち合わせの中や、その他の全ての活動に関連した行動や言動…全てにおいて大丈夫と言えるかと言えば自信は無い。

 

 

(まぁ、でもいいか)

 

 

 少女はほくそ笑む。

 耳からはちょうど、自分を紹介する声が流れ始めた。

 

 

(どうせ、一回限り)

 

 

 今日という日は二度と来ない。

 仮に来年同じステージに立ったとて、それは今日の自分では無い。

 

 

『それでは…天城雪雫さんで──』

 

 

 だって人は変わる。時代も変わる。

 見た目は一緒でも、全く変化しないはあり得ない。

 

 ───一年前の私と、現在の自分が違う様に。

 

 

 

『───Wake Myself Again』

 

 

 

──Waste my time I’m drowning in my head

(自分の思考に溺れ、時間を無駄にしている)

 

 

──Trying to suit the pain inside me

(自分の中に痛みを閉じ込めようとしている)

 

 

 

 果てして世界は良い方向に進んだのだろうか。

 変わらず争いは絶えず、大衆は人任せ。

 

 

 

──Another try try to settle the vain

(自分の虚栄心を落ち着かせようとする)

 

 

──But it seems to not work and I’m putting it away again.

(うまくいかないようで、またそれを外に追いやる)

 

 

 

 自信持ってこれが最善と言えるか、と問われればノーと突き立てる。

 きっともっといい結末もあっただろう。

 これはもしかしたら、皆の想像とは違った結末かもしれない。

 

 

 

──Not anymore will I bear this world

(もうこの世界には我慢できないんだ)

 

 

──Cause we all just wanna find get to know what we are one day

(私達はただ、自分がいつどうにかなるのかを理解したいんだ)

 

 

 

 でもじゃあ皆が望む結末が良いかと言われればそれもノーだ。

 だってそれを認めてしまえば、今までの私…そして怪盗団の皆やりせや美鶴達……沢山の人達の営みを否定する事になる。

 そもそも、誰もが求めるハッピーエンドを引き寄せられるほど、自分に大層な力があるとは思えない。

 

 

 

──ただの気休めの希望はいらない

 

──軋む世界の上

 

 

 

 身の丈にあった終わりだと思う。

 色々あった私だけど、結局のところ、何処までも矮小な存在なのだ。

 

 迷いに迷った旅路だったけど、やっとたどり着いたその出口。

 

 これが私にとっての最良の結末。 

 

 ほんの少しの変化が、小さな幸せを産む様な。

 

 

 

 

──I wake myself again.

 

 

 

 これはそんな小さな変化の物語。

 

 

 

 

PERSONA5:Masses In The Wonderland. 

-完-

 





ということで無事に完結です。
まず最初に言っておきます。

最後の歌唱パートは

MAN WITH A MISSION様の
【Wake Myself Again】
という曲をお借りしました。

こういう描写は何処まで許されるか分かりませんが、初期構想段階から既存曲の何曲からテーマを得ており、最後は主人公歌手だしこれで締めたい!と決めていたのです。
まぁじでかっこいいから原曲みんな聴いて。聴けって♡


そして改めて連載初めて5年以上、長期にわたりありがとうございました。
更新止まった期間も沢山ありましたが、ここまで書き切れたのはステキな原作の存在は勿論のこと、温かいお言葉をくれた皆様のお陰です。
またその中でもたくさんの誤字報告、そして毎話感想を投稿してくれたお二人方。
本当に感謝しています。

今後の更新についてですがアンケートをとった複読本の様なものを1~3話分。
プラスして書いてて思い付いた外伝を1個投稿しようと思っています。
その他の更新については思い付き次第…ということで。

またこことは別作品にする予定ですが
天城雪雫の過去編(P3~P4U2多分に含む)を投稿しようと思っています。
ペルソナ5からは本筋が離れる為、別作品です(初見の方でも読めるようにはします)

その過去編が終わったらP5S……かなぁ。
需要次第ですがP5Sの更新の際は地続きの話になるのでこちらで更新します。

今後はあまり長く待たせない様に、ちゃんと完結しきってから投稿します。
遅筆なので結局待たせてしまいますが、投稿されたからにはきちんと完結させます。
(ギアスも更新します)

長々と失礼いたしました。
一先ず、こちらの作品は完結とさせていただきます。

最後に…
皆もマンウィズ聴こう!
あとP4R楽しみ!P6早よ!!!
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