PERSONA5:Masses In The Wonderland. 作:キナコもち
「こんどウチのバレー部の対戦相手が、元オリンピック選手がコーチするとこなんだって~~(意訳)」
みたいなことを言っていた事により生まれた思い付き短編
例の如くガバガバです。
どうぞ。
【真・女神転生VV】The Stranger.
放課後の生徒会室。
夕日が差し込む室内で、真と雪雫は向き合って座っていた。卒業を間近に控えた生徒会長・新島真の引継ぎを兼ねての会合であった。
机には来期の部活予算案に関する書類が散らばっており、それを前にした雪雫は「なんで私が」という顔で眉を寄せている。
そんな彼女などお構いなしに真はテニス部…サッカー部……と矢継ぎ早で進行を進めていたが、バレー部に差し掛かった途端、「そういえば……」と呟いた。
「じょーいん?」
プラスチック製のスプーンを咥えた雪雫がその瞳を丸くして真に聞き返す。
彼女の手元には空になったプリンの容器が既に三つ。書類に向き合う時間よりも甘味に耽る時間の方が長い雪雫であったが、真からその名前が出た以後は無限の食欲に待ったがかかかった様だ。
「そう、縄印。縄印学園」
知ってる?と真が小首を傾げれば、雪雫は眼を細め「知ってるも何も……」と返す。
「品川にあるミッションスクールでしょ。制服に桔梗の花の刺繍があるとこ」
「……意外、詳しいのね」
「一応、進学の候補に入っていたから」
高校一年生にして独り暮らし。しかも老舗旅館の娘で家事壊滅、世間知らず、コミュ障ともなれば、当然周りも放っておけない。姉である雪子、母親は当然として、りせや千枝、旅館の中居達まで巻き込み、「ああでもない」「こうでもない」と学校選びが行われた。その中の候補には桐条グループが運営する【月光館学園】、祐介や一二三が通う【恍星高校】などがあり、【縄印学園】もその一つであった。
「そういえば何で秀尽にしたのよ?」
「みんなの意見が纏まらないからダーツで決めた。でも縄印は矢を投げる前に候補から外れたよ」
「そうなの? 結構いいとこじゃない」
「全寮制だから」
「あぁ…納得」
一般的に学校選びのポイントとして当然進学、就職の実績、校風、授業内容などが挙げられるが、雪雫の場合はそれと同じくらい「私生活とのバランス」も重要視された。ただでさえ特殊な生い立ち、取っつきにくい性格をしているのに、それに加えて特殊な活動もしている訳で、ある程度はプライベートの時間が必要…という事で、全寮制の縄印は候補から外れたのだ。
『雪雫に寮生活なんてぜっっっっったいむり!!!!』
とNGを出した某アイドルの姿が浮かぶ。
※自分が部屋に上がり込めないのもある。
「それで、縄印がウチのバレー部と相手してくれるの?」
「えぇ、そうみたい」
鴨志田の件以降、秀尽バレー部は他校との練習試合、大会への出場は控えている。当時の秀尽はバレー部以外にも何かと注目を集めていた為、世間体を気にした校長が活動を校内に留めていたというのもあるが、周りの学校がいわくつきの高校と関わりを持ちたくなかったというのが大きい。
「部活だって学校生活の一部。勉学以上に部活に打ち込む生徒も多いし、蔑ろには出来ないわ」
真は窓の外、校庭を見る様に視線を促す。雪雫は誘われる様に校庭に視線をやると、そこには元気に走り回る竜司の姿があった。
「まずは練習試合や大会で外部での活躍の場を設ける。部活をする上でのモチベーションにもなるし、健全な部活動をしてもらうには外部との関りは大事だわ」
「………それって生徒会の考えることなの?」
今更ではあるが生徒会長というポジションを差し引いても視野が広いし、視座も高い。
そりゃあ、誰も真の後任なんてやりたくないわけだ。そう、雪雫は溜息を吐いた。
▼
生徒会の仕事も程々にして、真と別れた雪雫は品川へと向かっていた。
特に目的は無く、何となく気の向くまま……というやつだった。今日は同居人のりせも仕事が詰まっていて帰ってこないから、時間だけは十分にあった。
秀尽のある蒼山一丁目から電車で約25分。電車で行ってしまおうか。と雪雫は一瞬迷ったが、結局タクシーの移動を取った。
メメントスが無くなって以降、周囲から自分自身への認知改変が出来なくなった為だった。陰陽効果……そして何よりその目立つ見た目から一歩でも外に出れば好奇の視線に晒される。当然と言えば当然で、雪雫もそれを割り切って受け入れてはいるものの、やはり自分が原因で学校や実家などの周囲の人間にまで影響が及ぶのは避けたいのだ。
だから最近の雪雫は、登校する時でさえもタクシーの移動かりせの車での送迎が多くなっているし、レンズが真ん丸の形をした変装用のサングラスも手放せなくなっていた。
……前者は校内の生徒にとっては【学校の前で止まる車=雪雫関係】とシンボル化して注目を集めているし、後者はその特徴的な白い髪をどうにかしない限りは何の意味も無いのだが。
最も、今のところはそれで問題は起きていない為、雪雫はこれで良しと薄い胸を張っていて、これ以上の改善の兆候はない。だから世間からは【それで変装した気になってる雪雫可愛い】と温かい目で見られているのも知らない
兎も角、殆ど機能していない有名人リテラシーに呼ばれたタクシーに乗った雪雫は、その道中で品川という土地の情報収集に耽る。
そういえば水族館なんてあったね。
2020年のオリンピックに合わせて新しい駅を造ってるんだ。
進学先の候補地という認識程度しかなく、ゆかりの無い土地である品川。一般的に誰でも知ってそうな情報すら、雪雫にとっては新鮮だった。
「………ふわぁ」
しかし、目を輝かせていたのも最初の数十分程度。
品川で有名な美味しいスイーツ……なんて検索しかけた所で、脳には靄がかかり始め、瞼は重くなっていく。
本来、雪雫にとって睡眠は不要だ。意味が無い訳でも無いが、少なくとも日常を謳歌している現状は『しなくてもいい行為』だった。
だけど長年行ってきたルーティンは中々抜けないもので。脳で不要と分かっていても、何処か身体が求めているのだ。
自分の身体の仕組みを知ったあとも、基本的には雪雫の生活は変わらなかった。
欲に忠実であり、食べたいから食べる。寝たいから寝る。という風に。
だから今回もその様に。
スムーズに行けばあと15分ほどの距離ではあるが。
雪雫はゆっくり瞳を閉じた。
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一般的な感覚から言わせれば、十分過ぎるほど大きい寝室。
ベルベット素材で出来た壁に囲まれた青い部屋。
「おや……」
そんな寝室の中央の机の上で、ドライバーや工具を広げて自前のチェンソーのメンテナンスに更けていた金髪の少女…ラヴェンツァが声を漏らした。
この部屋には扉があった。
ここの客人は勿論、力を司る者達、長鼻の主でさえも。こちらからは決して開ける事の出来ない開かずの扉。
「開いています…ね」
その扉の先に広がるのは宇宙だ。
こことは別の時空、決して交わる事の無い外宇宙へと繋がる扉。
「……存在する以上、無意味ということは決してない………」
この部屋はそういう場所だった。
存在するもの全てに、何かしらの意味がある。
だからこの扉も例には漏れず。開いたという事は即ち、あちらに招かれているということ。
「さて……此度はどんな小旅行となる事やら………」
◇◇◇
水中から急に引き上げられるような感覚で、雪雫は眼を覚ました。
「ここは……」
見渡す限りの砂、砂、砂。肌を刺す日差しと喉を急速に乾かすほどの気温。
有り体に言えば砂漠だ。
「双葉の…パレス?」
砂漠と言えば真っ先に思いつくのは双葉パレス。だけど「それはない」と雪雫は即座に否定する。
特殊な例*1を除けば自我のコントロールが出来るペルソナ使いがパレスを持つとは考えにくい。双葉がペルソナに覚醒した後、パレスが自然崩壊したのが良い例だ。それに、そもそもの大前提としてメメントスはヤルダバオトを倒した時点で消えている。
「それなら…別のイセカイ?」
不安定な砂の足場、灼熱の日差し。身体の構造上、疲れるとは殆ど無縁の雪雫であったが、心労は別の話。五感と脳が感じた情報は鮮明に雪雫にフィードバックされ、確かな疲労を心に蓄積していく。
「服は制服のまま。怪盗服に変わらないという事は認知世界じゃない。いや、まだ断定は早い。警戒されていないだけという可能性も───」
変わらぬ景色をあてもなく進む。
約10分程は所々に砂丘があるくらいで代わり映えのしない景色が続いていたが──
「電車?」
この世界では初めての人工物だった。
車体の1/3程は砂に埋もれていたが、その上部に走る緑色のラインに見覚えがあった。東京23区の主要都市をまるまる一周巡回するあの電車。記憶のものよりも些かデザインが異なるが、それでも直観的に分かる様なデザインだった。
風貌はボロボロ。錆びが目立つし、部分によっては朽ちて穴すら空いている。窓ガラスもその殆どが割れていて──まるで長年この場所で放置されているかの様だった。
「終末世界って感じ」
目の前の電車に気を取られていた雪雫であったが、先々まで注視してみれば、僅かにではあるが建物の輪郭が見えた。
しかしその建物も分かりやすく傾いていて、今にも崩れ落ちそうな様がありありと眼に浮かぶ。
「───ん」
やっと景色が変わってきたと、好奇心が湧いてきたところで、雪雫の耳に届くのはバサバサと複数の風を切る音。
音鳴る方へ視線を上に移せば、槍を持った蝙蝠に似た黒い異形が雪雫を嘲け笑っている。
「まぁ、居るか」
明らかに現実離れしたこの世界。当然、想定範囲内。
槍を構え、猪突してくる異形に対し、雪雫は
「ペルソ──」
と言いかけた所で言葉を止め、回避の行動へと移る。
(召喚が出来ない?)
もう1人の己に呼びかけようとしても、底から力が湧き上がる様な感覚は無い。
「──なら」
咄嗟に鞄に手を突っ込み、取り出したのは岩井の店で買ったモデルガン。不要と分かっていながらも、取り出すのを後回しにしていた己のものぐささに感謝をしながら構え、撃つ。
しかしながら、現物は何処までいってもレプリカ。異形にヒットするも豆鉄砲程度の効き目しか無いらしく、その無駄な抵抗を見て、異形達はさらに笑顔の堀を深める。
「効かない。ということはやっぱり認知世界じゃない」
再び繰り出される槍の突撃を回避。手余りの異形から繰り出される火球も同じように回避。
攻撃自体は見てからでも回避が間に合ったが、こちらからの有効打が無い。正に防戦一方という感じであった。
(ペルソナは使えない。銃も効かない。でも身体能力は落ちていない)
数度の攻防を繰り返しながら、雪雫はその思考を巡らせる。
雪雫の身体能力は常人と比べてはるかに高いが、これは主に黄昏の羽根を格としているためで、長年に渡って共にしてきた彼女にとってはこれが普通。
これに加えて、戦闘時においてはリリスからの魔力補助によって、ベースは人間でありながらもアイギスが目を剥く様な身体能力を発揮してきた。
つまり、今までの感覚通りに身体が動くという事は───。
「───リリス」
『ふふ、もう気付いたの?』
リリスの力は健在だと言う事。
『もう少し焦りに焦ってから、縋り付く様に呼んで欲しかったなぁ』
黒い髪、そして烏の様な翼を靡かせ、リリスは艶やかに笑う。
「ここは何処?」
『んー。私の生まれ故郷?』
「───その話、長い?」
『そこそこ』
「じゃあ先に殲滅」
満を持して現れたリリスに面を喰らっていた異形達だが、それも長くは続かない。
再び槍を向け、方や魔法を唱え、射止めんとする化け物達。
向かってくる攻撃に対し、雪雫はまたも回避を取り──。
「リリス!」
いつまで経っても協力しない己の半身に叱咤を飛ばす。
『私が直接やっても良いけど。もっと効率の良い方法があるよ』
そっちの方が好きでしょ。とリリスは微笑む。
「どっちでもいい。手早く終わらせられるなら」
『ふふ、じゃあ手を取って?』
そう言ってリリスは誘う様に手を差し伸べる。
「───」
言われるがままに、手を乗せると、細く長いリリスの指が雪雫の指を絡めとる。
おずおずと警戒心は残しつつも、従う雪雫に『良い子』と柔和に笑う。
瞬間、雪雫の脳内に流れ出す情報。
この世界の成り立ち、仕組み。リリスという存在、この儀式が何を意味するか。
断片的にではあるが、少なくともこの状況を、この世界を渡る上で必要なことであると、雪雫は直観する。
臆せば死ぬ。引いてもいずれは尽きる。
であるならば、この悪魔の誘いに乗って踊るのもまた一興か。
そうして二人は叫ぶ──
『「合一!!」』
と。
二人の輪郭は影となり溶け、交わる。
周囲には突風が吹き荒れ、砂が舞い上がる。灼熱の太陽の下にも関わらず、夜が訪れる様に空気は冷え、光は闇に遮られる。
ドロリとした影の中、それは現れた。
体躯は幾分か伸び、女性の平均的な身長より少しばかり高い。身体の線は細く、身に纏う黒い衣装は怪盗服よりも煽情的で、首から下腹部まで中央部分は白い肌が剥き出しで、その肌の上に走る紅い翼の様な紋章が目を引いた。黒髪は腰まで伸び、その色は黒と白が合わさった灰色。瞳は闇の中でも怪しく光る金色。
雪雫とリリス。
一つの器を分かつ二つの存在。
それぞれが歩み寄り、力を重ねたその姿。
その存在をこの世界ではナホビノと言った。
続 か な い
メガテン知らない!
って人も居ると思うので詳しい解説はまた次回に。