PERSONA5:Masses In The Wonderland.   作:キナコもち

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 続 い た


【真・女神転生VV】The Stranger. -2-

 

 遥か昔。

 まだ人間が知恵を持たず、【ヒト】と呼ばれていた時代。

 

 創生するための知恵と永遠の命を持つ神々は【ナホビノ】と呼ばれていた。

 当時の彼ら【ナホビノ】が求めるものはただ一つ。

 それは世界を統べる者の玉座であった。

 

 血で血を洗う神々による闘争。

 戦いの果てに玉座についたのは【法の神】

 

 【法の神】はその創造主の証たる権能で、神々から【知恵】を取り上げた。

 他の神が二度と玉座に近づけぬ様。そして二度と争いが起きない様に。

 

 【知恵】を奪われ、永遠の命のみが残った神々は【ナホビノ】としての力を失い、【悪魔】と成り下がった。

 【知恵】は【法の神】の元、エデンの園にある【樹の実】に封じられた。

 

 しかし【悪魔】は狡猾であった。

 【法の神】の玉座を奪おうと、再び闘争を引き起こそうと。そう考えた【悪魔】は【蛇】へと姿を変え、【知恵】を持たぬ【ヒト】をそそのかす。

 

 【エデンの樹の実を食べろ】と。

 

 利用されているとも知らず、誘惑されるまま各世界の【ヒト】達は、楽園の実を一斉に食べてしまった。

 食べた【知恵の実】は【魂】と結びつき、【ヒト】は【神】に近づいた【人間】になったのである。

 

 それを知った法の神は激怒し、人間は楽園を追われた。 

 

 

 

「……それがこの世界の創世記……失楽園ってところ?」

 

 

 ふぅん。と興味深そうに鼻を鳴らしながら、雪雫は果ての無い砂漠の中を進んでいた。

 

 歩いてもう随分となる。

 砂丘ばかりが見えていた道は、次第に朽ち果てた人工物に変わり始め、かつての人間の営みを感じさせていた。

 

 

『そう。だから悪魔は何としても神に戻りたい。戻ってかつての力を取り戻したい…ってわけ』

 

 

 雪雫の脳内に響くリリスの声。

 実体が目視出来無い状態での会話に始めこそ違和感は覚えたが、今の雪雫の様子を見るにもう気にしている様子は無い。

 

 雪雫の足取りは軽く、早い。

 それは融合…リリスの言葉を借りるならば合一…したことによる更なる身体の強化の恩恵でもあるし、単純に背が伸びた事による歩幅の変化によるものでもあった。

 

 

「まぁ確かに。凄い力は感じるわ。かつての神…っていうのも造り話じゃなさそう」

 

 

 感覚で言えば、天使になってた時…イヴの感覚に近いか。

 人格の主導権は天使にあったが、その奥底で様子を見ていた雪雫には少しだけ覚えがあった。

 単純な出力で言えば、地形の一つや二つは変えられそうな程だ。

 

 

『え~。疑ってたの?』

 

「いきなり異世界に放りだされて、はいそうですか。って順応出来るほどめでたく出来てないから」

 

 

 リリス曰く、この世界は全く別の世界らしかった。

 有り体に言えば【平行世界】【パラレルワールド】【マルチバース】というやつだろう。

 それを聞いた雪雫は最初こそ眉間に皺を作っていたが、この手の話は映画やゲームで散々見てきたため、何となく理解した様子であった。

 

 何処まで共通していて、何処まで乖離があるのかは定かでは無い。

 しかし、リリスから語られた創世記の内容からして、少なくともこの世界の宗教体系は察する事が出来た。神と呼ばれる者は【法の神】のみで、それ以外は悪魔。つまり他の者を信仰するならば、それは悪魔崇拝となり、いわゆる邪教。

 雪雫の世界よりも宗教的な多様性は乏しいのだろう。

 

 

「……ヤルダバオトが目指した世界も、こういう感じだったのかな」

 

『そう考えると、ちょっと歪でムカついてこない?』

 

「まあ、少しだけね」

 

 

 宗教体系だけを切り取れば、自由は無さそうに感じるが、風景の所々に見られる人工物。特に電車なんてその際たる例だが、風貌がやや古めかしいこと以外、科学技術の差は無さそうに雪雫には見えた。

 よく創作物なんかでは宗教と科学技術は対極に描かれ、決まって宗教が生活に入り込むほど、科学技術は衰えて行くものだが、そうでもなさそう。

 もしかしたら、成り立ちが違うだけで、宗教の盛衰の様は似ているのかもしれない。

 

 

「それで、何で私がリリスの半身なの? 話通りなら、貴女はこっちの住人。つまりリリスは悪魔で、別の世界で生まれた私とは関り無い筈」

 

『うーん、簡単な話…輪廻転生ってやつ? リリスの知恵に紐づいた魂が、たまたま別世界に漂流しちゃったから、引っ張られる様に私が向こうに行っちゃた…で理解出来る?』

 

「……事故ってこと?」

 

『まぁ、そうね。成り立ちが違うだけで世界自体は凄い似てるから。たまにパスが繋がるのよ。ほら、今まさに雪雫がこっちに来ている様に。ほら、その辺の悪魔の見た目だって見た事あるの多いでしょ?』

 

 

 言われるがまま、視線を倒壊したビルの上で佇む悪魔へ。そこに居たのは二足歩行の蝶とも取れ蛾とも取れる翅を持った悪魔。雪雫と目が合った瞬間に一目散に逃げ去ったそいつは確かモスマンという名であり、蓮が使役していたのを雪雫は思い出した。

 

 

「シャドウやペルソナと同じ見た目…。二つは人々の心の写し…でもこっちでは悪魔。姿が共通という事は…人類が心に抱く潜在的な恐怖や欲のイメージが悪魔に当て嵌まったという事で……。こっちの世界から流れ込んできている?」

 

『はたまた、雪雫の世界が先か…。まぁそれは分からないけど。何となく薄い紐で繋がっているのは分かったでしょ?』

 

「ええ。分かったついでにもう一つ確認。元々悪魔の貴女が、なんでペルソナに?」

 

『それは世界の仕組みに合わせただけ。そもそもこの世界にイセカイなんて概念無いからさ。全部現実。だけど向こうはキッパリ分かれてる。だからそういう形でしか、存在出来なかったの』

 

 

 世界の主導権が神か、人間かの違いであろうか。

 それともそれぞれの世界の人間が抱える認知によるものか。

 

 少なくとも、こちらでは異形の存在は現実世界での人権がある。一方、雪雫の世界では現実世界に異形の居場所は無く、影時間、認知世界の様な裏の世界でしか存在が出来ない。

 

 

『こっちは常にメメントスと融合している状態…と言ったほうが雪雫には伝わるかな』

 

「なるほど。異形の存在は日常茶飯事ってことね」

 

『全人類が周知しているかは置いておいて、少なくとも向こうよりは気楽ね』

 

「それでその気楽じゃない向こうの世界で、自由になるために私を殺した?」

 

 

 脳内で鳴り響いていたリリスの言葉が止まる。

 キュっと喉が鳴る様な音が響き、それが暗に核心を突いたのだと示していた。

 

 

『──流石の慧眼』

 

「どうも」

 

 

 かつての神としての権能の証【ナホビノ】

 それが知恵を持つ【人間】、不死性を持つ【悪魔】に別れ、再び一つになる事が目的であるならば、別世界であってもリリスの取りそうな行動は雪雫にも容易に想像が出来た。

 話の限り【人間】そのものに【悪魔】は用は無く、欲しいのはその知恵。つまりそれを持つ【人間】の存在は本来は不純物であり、合一後の障害とすらなる可能性がある。

 

 

「だけど殺そうにも向こうでは現実で顕現出来無い。影時間が唯一の存在証明のチャンスであるものの、私の半身という立場に引っ張られて貴女は私のシャドウ扱い。それこそあの晩の暴走でも無ければ、私の身体からすら出れなかった」

 

『そうね。確かに雪雫殺して器が手に入れば、私は人格を保ったまま現実に居れた。それこそ、向こうで玉座を目指す事も出来たかもね。それ狙って、実際殺したしね』

 

「でもそうならなかった」

 

『偶然が重なってね。結局、雪雫は死ななかったし、あの晩を切っ掛けに能力にも目覚めたから余計にチャンスを失った』

 

「そしてまたチャンス逃した。さっき見逃していれば夢は叶ったのに」

 

 

 結果的に合一する形となったが、身体の主導権は雪雫のまま。

 正しくリリスが望んだ形にはなっていない。

 

 

『えー意地悪ね。もう乗っ取る気無いわよ。長年貴女の中で過ごしてきて、好きになっちゃったんだから』

 

「私が? 人間が?」

 

『主に前者。でもどっちも。見ていて気付いたの。神が創る世界ってなんて味気ないんだろうって。浅慮で、欲に忠実で、簡単に一線を越える人間に世界を任せた方が、予測不能で見ものとして最高だわ』

 

「流石悪魔」

 

『カオスが好きって言ったでしょ?』 

 

 

 リリスのスタンスを理解していたのか、「そうだったね」と雪雫は笑いこれ以上追及することは無かった。

 

 

「それにしても、人が全く見当たらないけど……」

 

 

 歩き始めてもう2時間ほどが経つが、雪雫の言う通り目に入るのは悪魔と朽ち果てた人工物ばかりで人間が居ない。

 リリスの口振り的に、全く居ないという訳でも無さそうだが…と雪雫は首を傾げる。

 

 

『ここ魔界(ダアト)だし。人はこっちに住んでないよ』

 

「だあと? イセカイ無いって言ってなかった?」

 

『ええ。だからどっちも現実よ。悪魔が住むここも。人間が住むところも。悪魔と同じ場所に住んでたら危ないでしょ?』

 

 

 【悪魔】……古の神々だった者達。【知恵】を手にする事でかつての力を取り戻すのならば、確かに【人間】は彼らにとっての餌でしかない。

 最初に襲い掛かってきた【悪魔】達の様子を見るに、リリスの様な友好的な例の方が少ないのだろう。

 

 

「──待って。法の神とやらがナホビノの力を恐れて、知恵を取り上げたのよね?」

 

『そう』

 

「その知恵を持つ人間達は、当然保護されるべき存在。なのに追放したの?」

 

『名前の通り規則に強くてね。ナホビノになること自体タブーとされていたから、例え悪魔と人間が接触してもナホビノにはなれないから問題は無かった』

 

「無かった…。じゃあ今は? 私達はこうしてなっている」

 

『そう!』

 

 

 ご明察!と言わんばかりの声音でリリスは言葉を紡ぐ。

 

 

『つまり今は法の神は居ない。絶賛、悪魔と神の勢力の…戦争中ってわけ』

 

「神の勢力?」

 

『ベテルって言う法の神の教えを遵守し、秩序に重きを置くお堅い集団のこと』

 

「嗚呼、それが人間達の保護を。ナホビノになろうとする悪魔達と、それを阻止しようと奮闘する悪魔達の対立構造って訳ね」

 

『最も、ベテル側は自分達を天使って言わせてるけどね』

 

「結局、神も悪魔も人間も。知恵をつけてすることは結局争い? はぁ……真理というか、何と言うべきか──」

 

 

 ピタリ。と雪雫の歩みが止まる。

 

 ここまで情報を得てやっと気付いた自分の立場。

 見知らぬ世界で気分が高揚していたのか、何故もっと早く気付かなかったのだと自分を叱責した。

 

 唯一神がその力を危惧して禁じた禁忌の存在【ナホビノ】

 それを信じ、人間を保護しながら悪魔と敵対する【ベテル】

 

 その対立構造の中、合一したリリスと雪雫。 

 

 

「──敵、いっぱい?」

 

 

 ドゴン。

 

 凄まじい音と共に、雪雫の背後の砂は噴水の如く吹きあがり、砂の底に埋もれていたコンクリートには大きな亀裂が走っている。

 滝の様な砂の滝の中から、細身であるものの長身な人の影。

 

 腰まで伸びた蒼い髪。

 切れ長の金色の眼。

 首から足先にかけて、細い身体を覆う幾何学めいたバトルスーツ。

 

 彼もまた【ナホビノ】

 とある経緯から【神造魔人】と合一した縄印に通う青年である。

 

 

「───ベテルの使い走り…ってところ?」

 

 

 雪雫はゆらりと身体を反転させ、その金色の双眸を細め、口角を上げた。

 




も う 続 か な い 。


しれっとリリスの設定開示。
急展開ごめんね♡でも結構前から匂わせしてたから許してね♡

次回、真Vのネタバレにならない程度で用語の解説など行います。

 
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