PERSONA5:Masses In The Wonderland.   作:キナコもち

20 / 158
18:Starting from scratch, life of thief.

 

 

 

6月18日 土曜日 晴れ

 

 

 

 歳頃の高校生6人と猫1匹が一同に集まっても尚、損なわれる事の無い広いリビング。

 小さな少女に案内されてこの部屋に通された面々が、あまりの広さに驚いていたのはほんの数十分前。

 いや、若干数名、まだソワソワしているが、少なくとも落ち着いて話せる雰囲気へはなった。

 

 広いリビングに対して、比較的コンパクトな机を取り囲み、7人はそれぞれ顔を見合わせる。

 

 そして、この部屋の主、天城雪雫がゆったりと蓮に指を差し、一言言い放った。

 

 

「犯罪皇子」

 

「……名前は合っている、けど…」

 

 

 そしてその次、とでも言わんばかりに隣に座る竜司へ指を向ける。

 

 

「ブラックスカル」

 

「やべー…、元ネタあるんだろうけど、分からね――……」

 

 

 そして次、杏。

 

 

「女豹」

 

「女豹言うな!!」

 

 

 祐介。

 

 

「きつねうどん。」

 

「麺のコシと出汁の組み合わせはある種の芸術作品……。良い例えだ」

 

「良いのかよ」

 

 

 真。

 

 

「拳王」

 

「教育してあげても良いのよ?」

 

 

 モルガナ。

 

 

「にゃんこ」

 

「猫じゃねーし!!」

 

 

 天然なのかわざとなのか。

 判断付かない雪雫の物言いに対して、ひとしきり突っ込みを終えた怪盗団の面々。

 

 先日のメメントスの件で雪雫に正体を知られた彼らは、落ち着いて話せる場所…、つまりは雪雫の自宅へ集まり、情報交換をしていた。

 まず手始めに自己紹介をと蓮が呟き――、そして今に至る。

 

 

「なるほど、理解した」

 

「ホントに分かってるのか……?」

 

「さぁ……」

 

 

 満足した様に頷きを返す雪雫に、一部の者は一抹の不安を覚えるが、一々突っ込んでいると話は進まない。と思ったのか、特に確認を取ることは無かった。

 

 

「これで全員?」

 

「ええ、そうね。この場に居る全員がペルソナ使い…、つまりは貴女と同じ力を持っているわ」

 

「ペルソナは言わば、もう1人の自分。そしてそれを実体化させたものだ。この間、セツナがナカムラにやった様に、超常の力を操る事が出来る。イセカイ限定だがな」

 

 

 真の言葉に補足する様に、モルガナは続けて口を開く。

 

 

「覚醒の条件は?」

 

「明確にそうとは言えないが…、強い叛逆の意志…、が必要だな。社会に対する義憤、特定の人物に対する恨みや怒り……。それが切っ掛けでこいつらは能力に目覚めた。怪盗服は…、まぁ簡単に言うとその心の表れ、だな」

 

「でも私は変化しなかった」

 

「……ああ。だから明確に言えないんだ。確かにお前はペルソナ使いだ、それは間違いない。しかし、こいつらの様な激しい怒りも感じない。見た目の変化が無いのがその証拠だろう。何か他の条件があるのか…、それともワガハイ達とお前の間に何か決定的な違いがあるのか……」

 

「…………違い…」

 

 決定的な違い。

 蓮達はそれについて暫く思考を巡らせるが、考えても考えても答えは出ない。

 

 

「…私はこの後、どうすればいい?」

 

「それは天城さん次第だ」

 

「ああ。ワガハイ達と共に戦うのも、元の生活に戻るのも自由だ。無理強いはしない」

 

「私個人としては、雪雫を巻き込みたくはないわ。昨日も見た通り怪盗団の活動は命がけ。生半可な覚悟では―――」

 

「真は?」

 

「へ?」

 

「真はどうして、怪盗団に?」

 

「私は―――」

 

 

 真は語る。

 自身の思いの丈と理不尽に対する激しい怒りを。

 

 

「そう…」

 

 

 真の思いを聞き、雪雫は僅かに口角を上げて、首を縦に振る。

 

 

「……私は…。私は貴方達の力になりたい」

 

「マジ!」

 

「やった!」

 

 

 竜司と杏が上げた喜びの声に続く様に、雪雫は「でも」と続ける。

 

 

「でも、モルガナが言う様に私には強い心は無い。肩を並べるには思いの丈が違い過ぎる。そんな中途半端な私が一緒に戦うのはきっと足手纏い。だから、暫くは見極めさせて欲しい」

 

「というと?」

 

「暫くの間、行動を共にする。その過程で私に強い気持ちが芽生えれば、そのまま一緒に戦う。でも今と変化が無いのなら」

 

「元の生活に戻る、ということか」

 

 

 祐介の言葉に、雪雫は小さく頷きを返す。

 

 

「我儘、かな」

 

 

 眉尻を下げながら呟く雪雫は、自信無さげな視線を皆に向ける。

 それを見て、怪盗団の面々は僅かに口角を上げて―――。

 

 

「良いんじゃねぇの。そんな不安そうな顔しなくても、十分立派だ」

 

「少なくとも竜司よりはね」

 

「作戦もまた見直しが必要だな。1人増えるということは、その分、戦略の幅が広がる」

 

「ふふ、腕が鳴るわね」

 

 

 竜司、杏、祐介、真は、やはり嬉しそうな表情で口を開く。

 

 

「まぁ、こんな呑気な奴らだが力になってやってくれ」

 

「宜しく、天城さん」

 

 

 怪盗団のリーダー、ジョーカーこと蓮から伸ばされた手を

 

 

「うん」

 

 

 と小さく呟き、雪雫はその手を取った。

 

 

 

 

その夜

 

 

「思わぬ所で強力な戦力が加わったな」

 

「ああ、ナカムラを一撃で沈めたあの魔法には、目を張るものがある」

 

「少し、おっかないがな」

 

 

 ルブランに屋根裏部屋で、蓮とモルガナは会話に華を咲かせる。

 内容は勿論、仮ではあるが入団を果たした後輩、天城雪雫について。

 

 

「彼女については、分からないことも多い。服装の変化が無いのもそうだが、なによりペルソナの発現の仕方がお前らとは違う」

 

「……仮面、無いもんな」

 

 

 蓮達が身に着けている仮面。

 己の内なる義憤、叛逆心を受け入れた時に出現する、言わばペルソナのもう一つの姿。

 しかし、彼女にはそれが無い。

 

 

「加えてナカムラが言っていたオオヤマダとかいう人物、セツナ個人への忠告……。彼女にも何か問題がありそうだ。………それに気付いたか? 彼女の表情」

 

「ペルソナ使いになる条件の話の時だな」

 

「ああ」

 

 

 モルガナが言った雪雫と蓮達の間にある決定的な違い。

 それについて考え込んでいる時、雪雫1人だけが、何か思い当たる事がある様な、そんな顔をしていた。

 

 

「本人でも分からないのか、それとも話したくないのか」

 

「まぁいずれにせよ、その時が来たら力になって上げればいい。俺達の力になりたいと言ってくれた。あれは嘘じゃないだろう。俺は彼女の意志を尊重する」

 

「そうだな。……色々あって疲れてるだろ。今日はもう寝ようぜ」

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「ペルソナ……、イセカイ…。怪盗団」

 

 

 1人で寝るには余りにも広すぎる寝室とベッド。

 月明かりだけが照らすなか、白髪の少女が1人、物思いに耽けていた。

 

 

「あの夜の事も、稲羽を包んだ霧も、関係ある?」

 

 

 その問いに対する答えを雪雫は持ち合わせていないし、真相を知っている者が居るのかも、彼女には分からない。

 

 

「ん…」

 

 

 ボーっと天井を仰いでいた雪雫だったが、それも飽きた様で。

 身体の向きを横にして、自身を守る様に身体を丸くする。

 

 

「標的、パレス…。金城。―――大山田」

 

 

 怪盗団の事、イセカイの事、改心の事。

 彼らから粗方、その内容と方法は聞いた。

 聞いた上で、私は心から彼らの力になりたいと思った。

 しかし、それと同時に、別の目的があったのも事実。

 

 

「知る権利くらい、あるよね」

 

 

 知らなければ、探る真似なんてしなかった。しかし、知ってしまった。

 人間、好奇心には勝てない様に出来ているらしい。

 

 

「寂しいな、……りせ」

 

 

 少女の小さな呟きは闇夜に溶ける。

 雪雫は静かに目を閉じた。

 

 

◇◇◇

 

 

6月20日 月曜日 曇り

 

 

 

「よし、色々あったが、今日から本格的にカネシロパレスの攻略を開始する」

 

 

 怪盗団のリーダー、雨宮蓮の言葉に、一同は決意を浮かべた表情で頷きを返す。

 

 

「セツナ、昨日も言ったが…。今のお前に直接的な戦闘は任せられない。何しろ怪盗服とマスクが無いからな。その影響が現実の認知にどう影響を及ぼすか分からない」

 

「ん」

 

「幸い、お前のペルソナはアン殿の様に魔法が得意なタイプだ。魔法による支援をメインに頼む」

 

「分かった。」

 

「竜司、頼んでいたモノは?」

 

「ああ、バッチリだぜ」

 

 

 竜司は勢い良く自身の胸を叩き、「なっ」と言いながら雪雫と視線を合わせる。

 

 

「よし……、行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 突如、身体を襲う浮遊感と圧迫感。

 しかし、以前ほど不快な感じはしない。

 慣れか、自覚か。

 どちらにせよ、毎回あんな思いをしなくて済む様になったという事実だけで、私の気持ちは軽くなる。

 

 

「………わぁ…」

 

 

 歪んだ視界がクリアになり、眼前に広がるのは、暗雲立ち込める渋谷の街。

 一見、現実と相違無い街並みだが、空から降り注ぐ無数のお札と、往来を闊歩する四肢の生えたATMが、ここがイセカイなのだと、主張してくる。

 

 

「セツナ、一々驚いていたらキリが無いぞ」

 

「来たな」

 

 

 初めて遊園地に来た子どもの様に、キョロキョロと辺りを見回していた雪雫の元に。いや、正確には新島真…、クイーンの元に。文字通り天空から橋の様なモノが下ろされる。

 その橋の先には、でかでかと「金城信用銀行」と品無く書かれた建物が。

 あれが今回の仕事場所…、つまりはパレスなのだろう。

 

 

「……なるほど。金城からすると、真…、えっと、クイーン…はお客さん…、金づるだから、こうして迎えに来た……」

 

「お、おぉ……。こっちの理解力も半端ねぇな……」

 

「何か私、自信無くなってきちゃった……」

 

 

 再び肩を落とすスカルとパンサーを横目に、続けてフォックスが口を開く。

 

 

「例の写真の期限は、あと一週間ほどだったか。班目の時より余裕が無いな」

 

「ああ。だがこっちの戦力も前回とは違う。パパっと片付けてしまおうぜ! おい、スカル! 何時までも落ち込んでないで、セツナに例のモノ渡しとけ!」

 

「お、おお…。そうだったそうだった」

 

 

 思い出したかの様に、スカルは胸の内ポケットから一丁の拳銃を取り出す。

 

 

「ミリタリー屋のおっさんに、小学生くらいの小さな女の子でも扱えそうなやつ、で頼んだから大丈夫だとは思うけど……」

 

「……小学生………」

 

 

 少し残念そうに呟きながら、差し出された拳銃を手に取り、それを眺める。

 

 

「扱えそうか?」

 

「何となく。ゲームで見た事ある」

 

「微妙に不安が残る知識だな……」

 

「兎に角、後方支援はその銃と魔法でお願いね。危なくなったら、私達でフォローするから」

 

「分かった」

 

 

 パレス攻略の手順は聞いている。

 まずは欲望の核であるオタカラルートの確保。パレス内には主の認知の影響が薄いセーフルームなるものがあるらしく、そこを経由しながら最奥までの安全ルートを確認するらしい。

 ルートの確保が完了したら、次に行うのは現実のターゲットに予告状を出す事。主…、今回は金城に「怪盗団はお前のオタカラを狙っているぞ。」と認知させることで、オタカラが干渉できる物体として具現化する。

 そして最後に戦闘…。いや、正確には戦闘する必要は無いらしいが、決まってパレスの主は激しく抵抗するらしいので、戦闘は避けられないと思って良いそうだ。

 

 

「シャドウに見つかるとパレス全体の警戒度が上がる。つまり、攻略が難しくなる」

 

「要するに、スピード感が大事ってことだ。俺達は怪盗服があるけどよぉ……」

 

 

 竜司から不安と心配が入り混じった視線が、雪雫に注がれる。

 

 

「何?」

 

「制服……、動きにくくない?」

 

 

 竜司のみならず、怪盗団の全員分の視線が雪雫に刺さる。

 彼女の今の恰好は学校指定の、つまりは秀尽学園の制服のまま。靴もローファーのままであり、後方支援中心とはいえ、お世辞にも戦う様な恰好では無い。

 

 

「何だ、そんな事」

 

 

 皆の心配を知ってか知らずか、雪雫は僅かに得意げな表情を浮かべる。

 

 

「大丈夫、伊達にMV撮ってない」

 

「「「「「「???」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「いや驚いたなー。まさかセツナがあそこまで動けるとは」

 

「ああ。まるで軽業師の様だった」

 

 

 新メンバー(仮)を迎えた新生怪盗団の初仕事を終えたその夜。モルガナと蓮は何時も通り、ベッドの上で会話に華を咲かせていた。

 内容は勿論、想定以上の動きを見せた雪雫について。

 

 

「踏み外しそうな細道も難なく渡っていたし、お前達の動きにも殆ど遅れる事が無かった。お前も彼女から学ぶものがあるんじゃないか?」

 

「今度、コツとか聞いてみようか」

 

 

 後から杏に聞いた話だが、雪雫はMVによってはダンスもする様で。

 バランスの取りにくいヒール付きの靴で踊ったり、場合によってはアクロバットな動きを取り入れたり……。兎に角、素人には真似出来ない動きを、さも当たり前の様にやるらしい。

 改めて、彼女の底が知れない。

 

 

「そうだな。まぁ今はカネシロに集中しようぜ。この件が片付けば多少は落ち着くだろ」

 

 

 ふわぁ、とモルガナは大きく口を開けて、その瞳に生理的な涙を溜める。

 床に就く合図だ。

 

 

「おやすみ、モルガナ」

 

「ああ。また明日な」

 

 

 状況は追い込まれているが、かといって打開の策は無い訳では無い。

 人間、慣れるものだな。と蓮は自身の順応能力の高さを内心苦笑しながら、意識を闇に落とした。

 




パレスは長いのでカットカット。
大事なところだけピックアップするスタイルで行きます。


~ゲーム的に雪雫がしている事~

ランダムで味方へバフと回復。
敵にデバフと銃撃、呪怨属性の攻撃をしてくれる。

ダメージ量はジョーカーのレベル依存。
スキルの内容は、レベル21~30の間に覚える程度のもの。

総攻撃の際、たまーに専用のカットインと共に、アリスと一緒に「死んでくれる?」をしてくれる。(ゲスト加入時限定)(期間限定って良いよね)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。