PERSONA5:Masses In The Wonderland. 作:キナコもち
6月18日 土曜日 晴れ
歳頃の高校生6人と猫1匹が一同に集まっても尚、損なわれる事の無い広いリビング。
小さな少女に案内されてこの部屋に通された面々が、あまりの広さに驚いていたのはほんの数十分前。
いや、若干数名、まだソワソワしているが、少なくとも落ち着いて話せる雰囲気へはなった。
広いリビングに対して、比較的コンパクトな机を取り囲み、7人はそれぞれ顔を見合わせる。
そして、この部屋の主、天城雪雫がゆったりと蓮に指を差し、一言言い放った。
「犯罪皇子」
「……名前は合っている、けど…」
そしてその次、とでも言わんばかりに隣に座る竜司へ指を向ける。
「ブラックスカル」
「やべー…、元ネタあるんだろうけど、分からね――……」
そして次、杏。
「女豹」
「女豹言うな!!」
祐介。
「きつねうどん。」
「麺のコシと出汁の組み合わせはある種の芸術作品……。良い例えだ」
「良いのかよ」
真。
「拳王」
「教育してあげても良いのよ?」
モルガナ。
「にゃんこ」
「猫じゃねーし!!」
天然なのかわざとなのか。
判断付かない雪雫の物言いに対して、ひとしきり突っ込みを終えた怪盗団の面々。
先日のメメントスの件で雪雫に正体を知られた彼らは、落ち着いて話せる場所…、つまりは雪雫の自宅へ集まり、情報交換をしていた。
まず手始めに自己紹介をと蓮が呟き――、そして今に至る。
「なるほど、理解した」
「ホントに分かってるのか……?」
「さぁ……」
満足した様に頷きを返す雪雫に、一部の者は一抹の不安を覚えるが、一々突っ込んでいると話は進まない。と思ったのか、特に確認を取ることは無かった。
「これで全員?」
「ええ、そうね。この場に居る全員がペルソナ使い…、つまりは貴女と同じ力を持っているわ」
「ペルソナは言わば、もう1人の自分。そしてそれを実体化させたものだ。この間、セツナがナカムラにやった様に、超常の力を操る事が出来る。イセカイ限定だがな」
真の言葉に補足する様に、モルガナは続けて口を開く。
「覚醒の条件は?」
「明確にそうとは言えないが…、強い叛逆の意志…、が必要だな。社会に対する義憤、特定の人物に対する恨みや怒り……。それが切っ掛けでこいつらは能力に目覚めた。怪盗服は…、まぁ簡単に言うとその心の表れ、だな」
「でも私は変化しなかった」
「……ああ。だから明確に言えないんだ。確かにお前はペルソナ使いだ、それは間違いない。しかし、こいつらの様な激しい怒りも感じない。見た目の変化が無いのがその証拠だろう。何か他の条件があるのか…、それともワガハイ達とお前の間に何か決定的な違いがあるのか……」
「…………違い…」
決定的な違い。
蓮達はそれについて暫く思考を巡らせるが、考えても考えても答えは出ない。
「…私はこの後、どうすればいい?」
「それは天城さん次第だ」
「ああ。ワガハイ達と共に戦うのも、元の生活に戻るのも自由だ。無理強いはしない」
「私個人としては、雪雫を巻き込みたくはないわ。昨日も見た通り怪盗団の活動は命がけ。生半可な覚悟では―――」
「真は?」
「へ?」
「真はどうして、怪盗団に?」
「私は―――」
真は語る。
自身の思いの丈と理不尽に対する激しい怒りを。
「そう…」
真の思いを聞き、雪雫は僅かに口角を上げて、首を縦に振る。
「……私は…。私は貴方達の力になりたい」
「マジ!」
「やった!」
竜司と杏が上げた喜びの声に続く様に、雪雫は「でも」と続ける。
「でも、モルガナが言う様に私には強い心は無い。肩を並べるには思いの丈が違い過ぎる。そんな中途半端な私が一緒に戦うのはきっと足手纏い。だから、暫くは見極めさせて欲しい」
「というと?」
「暫くの間、行動を共にする。その過程で私に強い気持ちが芽生えれば、そのまま一緒に戦う。でも今と変化が無いのなら」
「元の生活に戻る、ということか」
祐介の言葉に、雪雫は小さく頷きを返す。
「我儘、かな」
眉尻を下げながら呟く雪雫は、自信無さげな視線を皆に向ける。
それを見て、怪盗団の面々は僅かに口角を上げて―――。
「良いんじゃねぇの。そんな不安そうな顔しなくても、十分立派だ」
「少なくとも竜司よりはね」
「作戦もまた見直しが必要だな。1人増えるということは、その分、戦略の幅が広がる」
「ふふ、腕が鳴るわね」
竜司、杏、祐介、真は、やはり嬉しそうな表情で口を開く。
「まぁ、こんな呑気な奴らだが力になってやってくれ」
「宜しく、天城さん」
怪盗団のリーダー、ジョーカーこと蓮から伸ばされた手を
「うん」
と小さく呟き、雪雫はその手を取った。
▼
その夜
「思わぬ所で強力な戦力が加わったな」
「ああ、ナカムラを一撃で沈めたあの魔法には、目を張るものがある」
「少し、おっかないがな」
ルブランに屋根裏部屋で、蓮とモルガナは会話に華を咲かせる。
内容は勿論、仮ではあるが入団を果たした後輩、天城雪雫について。
「彼女については、分からないことも多い。服装の変化が無いのもそうだが、なによりペルソナの発現の仕方がお前らとは違う」
「……仮面、無いもんな」
蓮達が身に着けている仮面。
己の内なる義憤、叛逆心を受け入れた時に出現する、言わばペルソナのもう一つの姿。
しかし、彼女にはそれが無い。
「加えてナカムラが言っていたオオヤマダとかいう人物、セツナ個人への忠告……。彼女にも何か問題がありそうだ。………それに気付いたか? 彼女の表情」
「ペルソナ使いになる条件の話の時だな」
「ああ」
モルガナが言った雪雫と蓮達の間にある決定的な違い。
それについて考え込んでいる時、雪雫1人だけが、何か思い当たる事がある様な、そんな顔をしていた。
「本人でも分からないのか、それとも話したくないのか」
「まぁいずれにせよ、その時が来たら力になって上げればいい。俺達の力になりたいと言ってくれた。あれは嘘じゃないだろう。俺は彼女の意志を尊重する」
「そうだな。……色々あって疲れてるだろ。今日はもう寝ようぜ」
・
・
・
「ペルソナ……、イセカイ…。怪盗団」
1人で寝るには余りにも広すぎる寝室とベッド。
月明かりだけが照らすなか、白髪の少女が1人、物思いに耽けていた。
「あの夜の事も、稲羽を包んだ霧も、関係ある?」
その問いに対する答えを雪雫は持ち合わせていないし、真相を知っている者が居るのかも、彼女には分からない。
「ん…」
ボーっと天井を仰いでいた雪雫だったが、それも飽きた様で。
身体の向きを横にして、自身を守る様に身体を丸くする。
「標的、パレス…。金城。―――大山田」
怪盗団の事、イセカイの事、改心の事。
彼らから粗方、その内容と方法は聞いた。
聞いた上で、私は心から彼らの力になりたいと思った。
しかし、それと同時に、別の目的があったのも事実。
「知る権利くらい、あるよね」
知らなければ、探る真似なんてしなかった。しかし、知ってしまった。
人間、好奇心には勝てない様に出来ているらしい。
「寂しいな、……りせ」
少女の小さな呟きは闇夜に溶ける。
雪雫は静かに目を閉じた。
◇◇◇
6月20日 月曜日 曇り
「よし、色々あったが、今日から本格的にカネシロパレスの攻略を開始する」
怪盗団のリーダー、雨宮蓮の言葉に、一同は決意を浮かべた表情で頷きを返す。
「セツナ、昨日も言ったが…。今のお前に直接的な戦闘は任せられない。何しろ怪盗服とマスクが無いからな。その影響が現実の認知にどう影響を及ぼすか分からない」
「ん」
「幸い、お前のペルソナはアン殿の様に魔法が得意なタイプだ。魔法による支援をメインに頼む」
「分かった。」
「竜司、頼んでいたモノは?」
「ああ、バッチリだぜ」
竜司は勢い良く自身の胸を叩き、「なっ」と言いながら雪雫と視線を合わせる。
「よし……、行くぞ!」
▼
突如、身体を襲う浮遊感と圧迫感。
しかし、以前ほど不快な感じはしない。
慣れか、自覚か。
どちらにせよ、毎回あんな思いをしなくて済む様になったという事実だけで、私の気持ちは軽くなる。
「………わぁ…」
歪んだ視界がクリアになり、眼前に広がるのは、暗雲立ち込める渋谷の街。
一見、現実と相違無い街並みだが、空から降り注ぐ無数のお札と、往来を闊歩する四肢の生えたATMが、ここがイセカイなのだと、主張してくる。
「セツナ、一々驚いていたらキリが無いぞ」
「来たな」
初めて遊園地に来た子どもの様に、キョロキョロと辺りを見回していた雪雫の元に。いや、正確には新島真…、クイーンの元に。文字通り天空から橋の様なモノが下ろされる。
その橋の先には、でかでかと「金城信用銀行」と品無く書かれた建物が。
あれが今回の仕事場所…、つまりはパレスなのだろう。
「……なるほど。金城からすると、真…、えっと、クイーン…はお客さん…、金づるだから、こうして迎えに来た……」
「お、おぉ……。こっちの理解力も半端ねぇな……」
「何か私、自信無くなってきちゃった……」
再び肩を落とすスカルとパンサーを横目に、続けてフォックスが口を開く。
「例の写真の期限は、あと一週間ほどだったか。班目の時より余裕が無いな」
「ああ。だがこっちの戦力も前回とは違う。パパっと片付けてしまおうぜ! おい、スカル! 何時までも落ち込んでないで、セツナに例のモノ渡しとけ!」
「お、おお…。そうだったそうだった」
思い出したかの様に、スカルは胸の内ポケットから一丁の拳銃を取り出す。
「ミリタリー屋のおっさんに、小学生くらいの小さな女の子でも扱えそうなやつ、で頼んだから大丈夫だとは思うけど……」
「……小学生………」
少し残念そうに呟きながら、差し出された拳銃を手に取り、それを眺める。
「扱えそうか?」
「何となく。ゲームで見た事ある」
「微妙に不安が残る知識だな……」
「兎に角、後方支援はその銃と魔法でお願いね。危なくなったら、私達でフォローするから」
「分かった」
パレス攻略の手順は聞いている。
まずは欲望の核であるオタカラルートの確保。パレス内には主の認知の影響が薄いセーフルームなるものがあるらしく、そこを経由しながら最奥までの安全ルートを確認するらしい。
ルートの確保が完了したら、次に行うのは現実のターゲットに予告状を出す事。主…、今回は金城に「怪盗団はお前のオタカラを狙っているぞ。」と認知させることで、オタカラが干渉できる物体として具現化する。
そして最後に戦闘…。いや、正確には戦闘する必要は無いらしいが、決まってパレスの主は激しく抵抗するらしいので、戦闘は避けられないと思って良いそうだ。
「シャドウに見つかるとパレス全体の警戒度が上がる。つまり、攻略が難しくなる」
「要するに、スピード感が大事ってことだ。俺達は怪盗服があるけどよぉ……」
竜司から不安と心配が入り混じった視線が、雪雫に注がれる。
「何?」
「制服……、動きにくくない?」
竜司のみならず、怪盗団の全員分の視線が雪雫に刺さる。
彼女の今の恰好は学校指定の、つまりは秀尽学園の制服のまま。靴もローファーのままであり、後方支援中心とはいえ、お世辞にも戦う様な恰好では無い。
「何だ、そんな事」
皆の心配を知ってか知らずか、雪雫は僅かに得意げな表情を浮かべる。
「大丈夫、伊達にMV撮ってない」
「「「「「「???」」」」」」
▼
「いや驚いたなー。まさかセツナがあそこまで動けるとは」
「ああ。まるで軽業師の様だった」
新メンバー(仮)を迎えた新生怪盗団の初仕事を終えたその夜。モルガナと蓮は何時も通り、ベッドの上で会話に華を咲かせていた。
内容は勿論、想定以上の動きを見せた雪雫について。
「踏み外しそうな細道も難なく渡っていたし、お前達の動きにも殆ど遅れる事が無かった。お前も彼女から学ぶものがあるんじゃないか?」
「今度、コツとか聞いてみようか」
後から杏に聞いた話だが、雪雫はMVによってはダンスもする様で。
バランスの取りにくいヒール付きの靴で踊ったり、場合によってはアクロバットな動きを取り入れたり……。兎に角、素人には真似出来ない動きを、さも当たり前の様にやるらしい。
改めて、彼女の底が知れない。
「そうだな。まぁ今はカネシロに集中しようぜ。この件が片付けば多少は落ち着くだろ」
ふわぁ、とモルガナは大きく口を開けて、その瞳に生理的な涙を溜める。
床に就く合図だ。
「おやすみ、モルガナ」
「ああ。また明日な」
状況は追い込まれているが、かといって打開の策は無い訳では無い。
人間、慣れるものだな。と蓮は自身の順応能力の高さを内心苦笑しながら、意識を闇に落とした。
パレスは長いのでカットカット。
大事なところだけピックアップするスタイルで行きます。
~ゲーム的に雪雫がしている事~
ランダムで味方へバフと回復。
敵にデバフと銃撃、呪怨属性の攻撃をしてくれる。
ダメージ量はジョーカーのレベル依存。
スキルの内容は、レベル21~30の間に覚える程度のもの。
総攻撃の際、たまーに専用のカットインと共に、アリスと一緒に「死んでくれる?」をしてくれる。(ゲスト加入時限定)(期間限定って良いよね)