PERSONA5:Masses In The Wonderland.   作:キナコもち

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27:I am thou, thou art I.

 

 

 疑いはあった。

 

 彼が妙を切り捨てたあの日から。

 この人の行動に善性は存在せず、あるのは獣の様な我欲のみと。

 

 だが私はそれを思う裏で、彼の根底にあるであろう善性を信じていた。

 

 命を救われた事に対する恩義からか、はたまた私が子どもだったのか。

 ――――――きっと、その両方だと思う。

 

 都合の悪い事は全て無視して、見たいものだけを見る。

 それはきっと素敵な事。

 甘く、心地良く、()()()退()()()()()()()()()

 

 理想を押し付けるのが人の性。

 理想に応えるのが人の義務。

 

 そんな当たり前の機能を失った、悪人など―――。

 

 

「悍ましい」

 

 

 私の信じるモノは本人によって否定され、その裏から出てきたのはドス黒い欲望。

 こんな奴に、美和の命を預ける価値等無い。

 

 

「それなら、私が」

 

 

 ドクンと、胸が大きく鼓動した気がした。

 

 

 

 

 先程まで座り込んでいた雪雫が、ふと何かに動かされる様に再び地を踏み占める。

 

 

『……ん?』

 

 

 それはさながらマリオネットの様にゆったりとしていて。

 しかしながらその身体に芯が入っているかの様に力強かった。

 

 

「私が信じたかったものは、全て嘘」

 

「…雪雫」

 

「私が描いた理想は、全て幻」

 

 

 ゆっくりと、雪雫は項垂れていた顔を上げる。

 髪に隠れてその目は見えないが、僅かに確認出来るその口角は、ほんの少し上がっていた。

 

 

「ふふ…、ふふふふふふふ………」

 

 

 少女の乾いた笑いが広い診察室に木霊する。

 それを見ていたオオヤマダは、何か気味が悪いモノでも見たかのように、僅かにその足を一歩後退させた。

 

 

「頭にきた」

 

 

 覚悟を決めた様に鋭い視線を投げる雪雫。

 その覚悟に呼応するかの様に、彼女の脳裏に女性の声が響く。

 いや、これは―――。

 

 

『覚悟は決まった様ですね』

 

「っ! 」

 

 

 激しい頭痛が、雪雫を襲う。

 平衡感覚を失い、地にのたうち回りたくなる様な激しい痛み。

 それでも、女性は…、もう1人の雪雫の声は穏やかに語り掛ける。

 

 

『紛い物との決別は、まさに神からの思し召し。その天啓を私は祝福しましょう』

 

「ア、……がっ」

 

『さぁ、共に旗を掲げましょう。今日、まさにこの場所が、貴女にとってのオルレアン』

 

 

 段々と頭痛が治まり、脳内がクリアになっていく。

 やる事は分かってる。その名も知って居る。後は言の葉に覚悟を乗せて謳うだけ。

 

 

「我は汝、汝は我……」

 

『凱旋の時です』

 

 

 小さくしかし力強く呟くと、いつの間にか現れていた黒いドミノマスクに手を掛け―――

 

 

「ジャンヌ・ダルク!」

 

 

 それを思いのままに引っぺがす。

 内側から溢れ出す様に、激しい光が少女の身体を包み込む。

 

 

「おいおい……」

 

「2体目って、マジか……?」

 

 

 その光景を見ていたモナとスカルが、敵の前である事も忘れて言葉を漏らす。

 最初に目を引いたのは、巨大な女性の様なシルエット。その手に剣と旗を携えた、世界で最も有名な聖女。

 

 

「貴方に…、医者を名乗る資格など無い」

 

 

 一歩、また一歩と。地を叩くヒールの音と共に、光の中から白髪の少女が聖女を率いて現れる。

 

 

『な、なにぃ…?』

 

 

 その姿は、少女の色に反して黒一色だった。

 少女の華奢な体躯に対して、明らかにオーバーサイズの袖口が大きく開いたロングコート。

 身体のラインに合わせて、ピタリと吸い付いたインナー。

 ショートパンツとそこから伸びる脚を守るタイツ。

 力強く地を叩くヒール付きのブーツ。

 

 そして、中でも目を引くのが

 

 

「なにあれ…、魔女?」

 

 

 特徴的なとんがり帽子。

 

 

「治療が必要なのは貴方自身」

 

 

 さながら、現代に現れた魔女そのもの。

 

 いつの間にかに手に持っていた、少女の身の丈よりも長い棒を、バトンの様にクルクルと回し、そしてその柄を地面に叩きつける。

 金属音と共に、仕込まれた巨大な刃物の切っ先がオオヤマダの方へ向く。

 

 雪雫が持つ武器は死の象徴そのもの。

 それに触れたものを、根こそぎ刈り取る為の大鎌。

 

 

「貴方の腫瘍、刈り取ってあげる」

 

 

 そう言うや否や、雪雫は勢いよくオオヤマダに向けて駆け出す。

 

 

「早っ!」

 

「元々身軽だとは思っていたが…」

 

 

 その速度は今までの比では無く、あっという間にオオヤマダの目の前へ。

 雪雫は迷うことなく手の中でくるりと柄を回し、彼の首を目掛けて一閃。

 

 

『…ちぃ!』

 

 

 しかし、それはオオヤマダを捉える事無く、彼の後ろに居た筈のナースのシャドウを掻き切る。

 

 

『おい、何してる!? このガキどもを始末しろ!』

 

 

 焦った様子を隠す事無く、そう声を荒げると怪盗団の周りに次々とシャドウが現れる。

 棍棒を持った鬼や、ライオンと蛇のキメラ、半蛇の男など、その種類は様々だ。

 

 

「俺達も加勢するぞ!」

 

「え、ええ!」

 

 

 予想しなかった雪雫の覚醒に、一同は呆気に取られていたが、ジョーカーの言葉で各々武器を構え、シャドウと対峙する。

 まさに乱戦状態。

 隙を見つけてはオオヤマダの元へ向かおうとする雪雫だったが、次々と現れるシャドウにその行く手を阻まれる。

 

 

「邪魔…! ジャンヌ・ダルク!」

 

 

 後ろに控えていた彼女のペルソナが、その手に持つ剣を一振りすると、刃の軌道上の敵が一掃される。

 

 

「オオヤマダ!」

 

 

 シャドウが消え、視界が晴れると件の怨敵はもう手が届かない場所へ。

 彼はチラリとこちらを一瞥すると、相変わらずの卑しい笑みを浮かべて、研究所の奥へと消えた。

 

 

「逃がさない!」

 

「待って!」

 

 

 彼を追おうとする雪雫に、クイーンの制止が入る。

 

 

「1人で追うなんて無謀もいい所よ! 今はこの場を切り抜けて、一旦立て直ししましょう!」

 

「でも………!」

 

「良いから! たまには先輩の言う事聞く!」

 

 

 興奮状態の雪雫本人は気付いていないが、ペルソナ能力の発現は相当の体力を奪われる。それが二体目であったとしても、例外では無いのだろう。

 オオヤマダが消えた先を睨み続ける雪雫の額には汗が流れ、その目の焦点も若干合っていない様だった。

 

 

「この場を切り抜けるって言ってもよ…」

 

「中々、きつくない? これ…」

 

 

 次々と現れるシャドウにじりじりと追い詰められるジョーカー達。

 それを確認した雪雫は、名残惜しそうに先の扉から視線を外し、仲間達の元へ。

 

 

「アリス」

 

 

 オルレアンの乙女と入れ替わる様に、次に現れたのは重々しい呪力を放っている少女の姿。

 ひとたびその指を振るえば、視線の先のシャドウ達は次々と息絶え、逃げ道が開かれる。

 

 

「セツナもレンと同じ様にペルソナ能力の使い分けを……」

 

 

 ペルソナ能力は1人に1つ。

 それから外れたイレギュラーな存在が再び現れた事に、モナは驚きを隠せないでいたが、今はそんなことをしている場合じゃ無いと、首を左右に振る。

 

 

「お前ら、逃げるぞ!」

 

 

 手を大きく掲げお決まりのポーズを取ると、モナは普段の姿から車の姿へ。

 なだれ込む様に、モルガナカーへ乗り込んだ怪盗団は、雪雫が開いた道を辿って、パレスの出口へ向かった。

 

 

 

 

「つかれたぁ……」

 

「なんか、色々あったな……」

 

 

 四軒茶屋にひっそりと佇む喫茶店「ルブラン」の2Fの物置。つまりは蓮の自室。

 ソファにぐったりと腰掛けた杏と竜司は、溜息混じりに声を漏らす。

 

 

「あはは…。……雪雫は? 落ち着いた?」

 

 

 2人の様子に苦笑を浮かべつつも、真の視線は今日一番疲れたであろう人物へ。

 

 

「……はしゃいじゃって…面目ない……」

 

 

 バツが悪そうに視線を逸らしながら、雪雫はゴニョゴニョと恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。

 

 

「いやまぁ、気持ちは分かるぜ? 能力に目覚めた時の……、テンションってやつ? 何でも出来る気がするんだよな~」

 

「分かる! 普段我慢してたものが爆発したあの感じ!」

 

「…2人の言う通りだ。俺とて例外では無かった。そう恥じる事は無い」

 

「………ありがとう」

 

 

 竜司、杏、祐介のフォローに少し気が楽になった様で、雪雫は口角を上げた。

 

 

「それで今後の事だけど…」

 

「取り敢えずあいつは改心確定だろ! ぶっ飛ばさないと気がすまねぇ!」

 

「同感」

 

 

 竜司の言葉に全員が頷きを返す中、その視線は雪雫の元へ。

 

 

「雪雫はどうしたい?」

 

 

 視線を僅かにキョロキョロと動かした後、一文字に閉ざしていた口をゆっくり開く。

 

 

「……みんなも見た様に、私の信じるモノは全部嘘で。彼は正真正銘の悪人そのものだった」

 

「そうね。あんな人が命を預かっているだなんて、にわかに信じがたいわ」

 

「私も……」

 

 

 俯いていた雪雫が顔を上げ、真っ直ぐジョーカー達の瞳を見つめる。

 

 

「私も、ぶっ飛ばさないと気が済まない」

 

 

 その言葉に怪盗団はお互いの顔を見合わせ、満足気に頷きを返した。

 

 

「よっしゃー! また戦力増大だぜ!」

 

「歓迎するぞ」

 

 

 雪雫の言葉に、真っ先に反応を返したのは竜司と祐介。

 

 

「宜しく頼むぜ、セツナ! こいつらバカだからよ、オマエが居てくれるなら心強いぜ!」

 

「んだと、ネコ!」

 

「事実を言っただけだろうが!」

 

 

 やいやいと、モルガナと竜司が何時も通りの喧嘩を始めた所で、杏が嬉しそうに雪雫の顔を覗き込む。

 

 

「バカ達は放っておいて…、雪ちゃんのコードネーム! 決めなきゃね!」

 

「ずっと名前呼びだったからな」

 

 

 コードネーム、怪盗団が仕事をする際に用いる、もう一つの名前。

 覚悟が自分には足りないと、それの決定を先延ばしにしていた雪雫だったが、今日こうして彼女の言う条件が揃ったのだ。

 

 

「皆はどうやって決めたの?」

 

「そうね…、見たところ見た目で引っ張られる傾向が強いかしらね。祐介は狐の面だし、竜司は骸骨だし。」

 

「そうなると、雪ちゃんの怪盗服は……」

 

 

 全身真っ黒。オーバーサイズのロングコート。とんがり帽子……。

 

 

「魔女?」

 

「ならバーバヤガー」

 

「何か敵っぽくない? もしくはヒットマン」

 

「ワルプルギス」

 

「それもちょっと……」

 

 

 蓮と祐介が見守る中、女子チーム主体でコードネーム決めが開催される。

 雪雫が次々と魔女に関する名前を列挙するが、言い辛かったり、イメージに合わないと、中々決まらない。

 話初めて早10分ほどが経った頃、雪雫がふと口を開いた。

 

 

「じゃあシンプルにウィッチで良い」

 

「えー、もう少し凝らない?」

 

 

コードネーム決めを楽しみにしていた様で、杏は目に見えて不満そうに声を上げる。

 

 

「皆の名前がシンプルなのに、1人だけ豪華なんのもなんか違和感」

 

 

 ジョーカー、モナ、スカル、パンサー、フォックス、クイーン……、それぞれのコードネームを頭に浮かべた真は、確かに、と笑みを作った。

 

 

「じゃあ、決まり、かな よろしくね、雪雫」

 

「………うん」

 

 

 皆と同じ様に満足そうに笑みを浮かべる雪雫。

 こうして正式に、天城雪雫は怪盗団の一員となった。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「……魔女って、怪盗って言うのか?」

 

「世間のはみ出し者、社会に対する反逆という点では同じじゃないか?」

 

 

 その裏でそんな会話があったのはまた別のお話。

 

 

 

 


 

 

~以下、ゲーム的なステータス~

 

 

 見なくても問題無いヨ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天城雪雫  Lv.28(加入時)

 

HP:203

MP:174

 

ペルソナ
 

 

 

アリス

 

 

相性

 

物:―

銃:―

火:―

氷:―

雷:―

風:―

念:―

核:―

祝:弱

呪:耐

 

ステータス

 

力:15

魔:28

耐:19

速:23

運:24

 

スキル

 

 

エイガ

 敵1体に呪怨属性で中ダメージを与える。

 

マハエイハ

 敵全体に呪怨属性で小ダメージを与える。

 

タルカジャ

 3ターンの間、味方1体の攻撃力が上昇する。

 

デビルスマイル

 敵全体を中確率で恐怖状態にする。

 

メディラマ

 味方全体のHPを中回復する。

 

死んでくれる?

 敵全体を中確率で即死させる。

 

 

 

 

 

ジャンヌ・ダルク

 

 

相性

 

物:―

銃:―

火:弱

氷:―

雷:―

風:―

念:―

核:―

祝:耐

呪:弱

 

ステータス

 

力:28

魔:17

耐:23

速:26

運:14

 

スキル

 

 

コウガ

 敵1体に祝福属性で中ダメージを与える。

 

レイズスラッシュ

 敵1体に物理属性で大ダメージを与える。バトンタッチ時に威力上昇。

 

金剛発破

 敵全体に物理属性で中ダメージを与える。

 

防御の心得

 戦闘開始時に自動でラクカジャが発動する。

 

マハラクカジャ

 3ターンの間、味方全体の防御力が上昇する。

 

オルレアンの祈り

 味方単体のHPを中回復。3ターンの間、クリティカル率が上昇。




死んでくれる?が若干ナーフされているのは仕様です。
あくまでゲーム的な話だけど、この時点で使えたら強すぎるので…
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