PERSONA5:Masses In The Wonderland. 作:キナコもち
7月4日 月曜日 雨
現実では振り続けている雨も、イセカイでは関係無い。
いや、正確に言えば、大衆のパレスであるメメントスではその限りでは無いのだが。
兎も角、外が悪天候であっても、怪盗団は今日も今日とてパレス内を駆け回る。
オオヤマダ・パレス 1F 実験区域
「…は、は…、はぁ……」
「…ぜ、前回……は、こんな、の……居なかったよ………!?」
「たまたま出くわさなかったか。それともオオヤマダが追加したか」
「お前…、よくこんな走ってって息切れ、しないよな……!」
「伊達にMV撮ってない」
極一部のメンバーを除いて、怪盗団は息を切らしながら走る走る。
彼らを追うのは大勢の犬型のシャドウ。
研究所の長い廊下を絶賛追いかけっこ中だ。
「くそぉ…! ペルソナが出せれば……あんな奴ら、ぶっ飛ばせるのによ!」
「オマエが言うな!」
スカルの言う通り、ペルソナ能力が使えるのならば、こんなに逃げ回る必要は無い。
実際に使えないのだ。
理屈は不明だが、どうやら先の部屋でスカルがスイッチを押した事によって散布されたガスが原因だと思われるが―――。
「殲滅?」
遊びに誘うかの様な気軽さでウィッチの口から物騒なワードが飛び出す。
今は背負われている大鎌の刃も、見えない筈なのに光っている気がした。
「待て待て待て! いくらオマエでもあの数は無理だろ!」
「今は大人しく逃げよう!」
地図によればこのまま進めば上の階層である保護区域に繋がっている様だ。
今居る廊下は生憎の一本道。敵を撒こうにも撒けない状況だ。
一先ず上の階までは逃げに徹し、上で改めて対策を取る…、そのつもりだったが。
上の階に続く階段。
その目の前にはゲートの様なモノが設置されていた。
現実世界で言う家電量販店で良く見る様な。
元陸上部のエースという事もあって、そのゲートを一早くスカルが通る。
そして次にウィッチが。
特にそのゲートの様なモノは二人に反応を見せず、続くジョーカー達にも反応を示さないが―――
「きゃっ!? 何!?」
「苦しい」
怪盗団を追っていたシャドウ達がその間を通った瞬間、けたたましい音が鳴り響いた。
あまりの突然の出来事にクイーンは思わず隣に居た雪雫を力一杯に抱きしめる。
また他のメンバーもクイーン程では無いが、驚いた様子でその音が鳴った方向…つまりは件のゲートの方へ視線を向けるたその時。
パンっと軽快な破裂音と共にシャドウが内部から文字通り破裂した。
人間では無いとは言え、生き物の形を保っていたモノの崩壊に、怪盗団は一名を除いて顔を引き攣らせている。
「何か…した……?」
「何で私?」
「いや、そういう担当なのかなぁって……」
そういうのに強いのか、はたまた鈍いだけか。意識を一早く現実に戻したスカル。
ヘナヘナと座り込むクイーンが脚に抱き着いた状態のウィッチに恐る恐る問う。これはお前がやったのか、と。
年頃の女の子に対して非情にデリカシーの無い質問だと、内心でパンサーは思ったが、しかしながらスカルに少し同意する部分もあったので口には出せなかった。
アリスの魔法、今回の攻略で度々垣間見える戦闘への圧倒的センス。
もし今のが怪盗団の誰かの仕業だとしたら、間違いなく容疑者はウィッチだ。
「何もしてない。そういうシステムだった、としか思えない。爆発する前、大きな音鳴ってた」
「システム?」
「ここは実験区域。さっきの犬のシャドウはあからさまな実験動物。上の階に行こうとしたら勝手にああなる様に仕組まれてた…、とか」
「なるほど…、実験動物を外に漏らす訳にはいかない……。確かに理には叶っているが…」
「じゃあ何で俺達は平気だったんだ?」
スカルの最もな疑問に、よろよろと疲れた様子で立ち上がったクイーンが答える。
「……はぁ、びっくりした……。……えっと…、ゲートの方はあくまでも警告を知らせる為であって、細工自体は動物達の方にされてたのかもね。装飾品…ないしは投与された薬品、とか?」
「どちらにせよ、私達はオオヤマダ側から何かを渡された覚えも、投与された覚えもない。そうじゃなかったらゲート通る前に皆を止めてる」
「さっきのガスの可能性は?」
「スカルのたまたまで撒かれるガス何て、仕掛けにもならない」
「あれ、俺バカにされてる?」
「されてるな」
「うん、私もしてるもん」
ヒドクね……。と項垂れるスカルはさておき、偶然とは言え敵を撒いた一同は、暫しの休息の後、上の階へと足を進める。
▼
オオヤマダ・パレス 2F 保護区域
下の階とは変わり、小さな小部屋が立ち並び、狭く細い道が入り乱れている2F。
この階が何を指示しているかは、階層の全貌を確認しなくても一目瞭然だった。
「……患者の保護区域…、つまりは病床か」
「それにしては物騒だな……」
「厚ぼったい鉄の扉…、外からしか掛けれない仕様の鍵…。まるで監獄ね」
「…まぁこれもシステムとしては遠からず近からず。医者自身がそう考えるのは頂けないけど」
何処か懐かしむ様な表情を浮かべて、ウィッチは鉄の扉をそっと一撫で。
大分長い事使われているのか、その指には僅かにサビか付着した。
彼女が触れた病室のネームプレートには「B2453」の文字。
恐らく、中の人物を指す名前なのだろう。
それを冷たく睨み付けた後、ウィッチは身を翻してジョーカー達の元へ。
「監獄…か。つまりここにおけるナース達は看守の様なものか」
「……看守、か………」
「ジョーカー? 看守に何かあるの?」
「い、いや、何も……」
何故か言葉を詰まらせながら尾てい骨辺りに手を当てているジョーカー。
この悩みは金輪際、彼にしか分からないかもしれない。
「道自体もそこまで広く無いわ。あまり派手に動けないわね」
クイーンがそう言うとみんなの視線がウィッチの元へ集まる。
「だってよ」
「問題無い。状況に合わせた適切な対処をするだけ」
「何か、戦闘ロボットみたいだな…、オマエ……」
「……ん、ロボット…」
ウィッチが少し気にした様子で小さく呟く。
「…………」
その呟きはジョーカーの耳には届いていたが、上手く掛ける言葉が見つからず、結局そのまま探索開始となった。
・
・
・
「パンサーが弱点を突いたぞ!」
喜々としたモナの声が響く。
パンサーのペルソナ…カルメンが放った魔法は的確にシャドウの弱点を射抜き、件のシャドウはその体勢を崩す。
これで、対峙するシャドウ達が、全員漏れなく首を差し出す様に地面に片膝をついた。
それが意味するのは――――
「総攻撃だ!」
ジョーカーの言葉に怪盗団はそれぞれ武器を構えてシャドウを取り囲む。
斬って、打って、殴って、また斬って……。
そして止めを刺しに行くのはウィッチ。
大鎌を構え、何時ものようにシャドウ達へ突っ込み、一閃。
その後、自身の武器でポールダンスでもするかの様に遊んでいるウィッチの後ろで、シャドウ達は血飛沫を上げながら消滅していった。
Good bye. Don't feel bad.
(さようなら。悪く思わないでね)
・
・
・
探索、戦闘、探索……それの繰り返し。
隅々までフロアを踏破したい派のジョーカーとスカル、そしてウィッチ中心に隅から隅まで駆け回る。
所々に置かれた宝箱の様なモノに一喜一憂しながら、体感時間にして1時間ほど。
「特に新薬に関するデータも新しい情報も無かったわね」
パレスにおける唯一の安全地帯。
現実の大山田の認知が…つまりは影響力が弱い部分。時折ぶれて見えるナースステーションが、妙にそれを納得させる。
やはり異性が集まる場所、というのは立場が上であっても関わりにくいのだろうか。
「上の階に繋がる階段も見つけた事だ。長居する必要も無いだろう」
「それもそうね。他に何か…、気になる事が無いなら―――」
「? どったの、雪ちゃん。浮かない顔して」
パンサーの言葉で、皆の視線がウィッチに集まる。
大きな帽子のつばで顔の半分は隠れているが、その僅かに見える口元は不安を表す様に震えていた。
「……美和の、病室が無かった」
「………それは…」
ここは大山田の認知世界。
彼の内面が色濃く反映された精神そのもの、と言っても過言では無い。
「美和ちゃんの名前が別のモノに代わっていた、可能性は?」
「その可能性は低いと思う。否定はしないけど」
「何か根拠があるのか?」
「病室の前のネームプレート。名前がそのまま書いてある人と、そうでない人、2つのパターンがあった。多分、現実の大山田がその人の名前を認識しているかどうかの違いだと思う。一個一個確認したけど、そこに美和の名前は無い」
ウィッチは言う、担当医である大山田が彼女を認識していないのはおかしい、と。
「まぁ確かに。今のオオヤマダにとって、ミワほど影響がでかい患者なんて居ないだろうからな」
「ここに無い…、っていうことは、…最悪………」
「断定するのは早い」
「………ジョーカー…」
「別の病院に移された、この階では無く別の階…、いくらでも理由は思いつく」
少女の震える肩にそっと手を置き、安心させる様に笑みを向けるジョーカー。
彼の言葉には不思議なカリスマ性がある様で、それを見たウィッチは幾らか落ち着きを取り戻した様だ。
「…少し早いけど、今日はここまで、かしらね。皆にも疲労が見えるわ」
「………そうだな」
チラリ、とウィッチを一瞥し、クイーンは手を叩いて幹事の様に取り仕切る。気を使ったのだろう。
彼女の心配も尤もで、ウィッチは人一倍、気を張り巡らせていた。少しでも見逃さないように、取り零しのないように。
何時も通りに見えてもその疲労は相当の筈だ。
「おしっ! なら皆で飯でも食いに行くか~!」
「お~! ナイスアイデア!」
早めに帰還できると知ったスカルは、満面の笑みを浮かべて食事を提案。それに同意する様にパンサーも指をパチンと鳴らす。
「何処か良い場所知ってるの?」
「言っとくが、俺は金無いぞ」
意外にもクイーンとフォックスも乗り気の様で、2人も同じように笑みを浮かべる。
「ご飯?」
「そ、ご・は・ん。まぁ、お嬢様にはちょっと縁が遠い所かもしれないがな~」
「?」
ふふん、と得意気に笑うスカルに、ウィッチは首を傾げた。
▼
店内に立ち込める湯気、エアコンが効いているのにも関わらず暑い店内、やけにテンションの高い店員。そして立ち込める濃厚なスープの匂い。
ラーメン屋である。
「………そんなに、縁無さそう?」
ジトっとした目を竜司に送る雪雫。
こうしている今も、店内には店員の元気な声が響く。
「うん」
「無さそう」
「無い、かな……」
「無いな」
「無い、わね」
蓮、竜司、杏、祐介、真が口々に同意の言葉を漏らす。
「一応、地元では良く行ってた……」
「へぇ! 意外!!」
「老舗旅館のお嬢様も、そういうトコ行くんだな!」
雪雫の故郷、八十稲羽の商店街に佇むラーメン屋。
何でも良くりせ達と一緒に行っていたらしい。
「どういう店なんだ?」
「普通のラーメン屋。餃子とか炒飯とか一緒に出している様な。ここみたいに何とか系って訳では無い」
「へぇ~、オススメは?」
「肉丼」
「なんでだよ」
ラーメンかと思いきや、180度違う食べ物の名前に、蓮のカバンの中に居たモルガナが思わずつっこむ。
そんな感じで雑談を交えながらも皆は、モルガナからの羨望の眼差しをヒシヒシと感じながら、ラーメンを楽しむのだった。
これは余談だが、雪雫の食事の際の、丁寧過ぎるとも言える完成された所作に一同はしばし圧倒されていたとか。
本人はいつも通りにしていたと話しているが、そういう所も含めて、蓮達はまざまざとそのお嬢様部分を見せつけられたらしい。
途中に出てくる英文、合ってるかどうかは置いといて。
私のイメージ的には総攻撃の時の一枚絵のやつのつもりです。
ジョーカーでいう所の「THE SHOW'S OVER」みたいな。
私の頭の中では、誰かさんと同じく、雪雫さんは二つ種類ありまして、装備しているペルソナに変わって絵と文が変わる…と考えてます
アリスだと前にあった
That was fun. See you soon.
ジャンヌ・ダルクだと今話の
Good bye. Don't feel bad.
になります。
…こういう妄想してるときが一番楽しい
一枚絵がどういう感じかは筆舌し難いので、ご想像にお任せします(他力本願)
2024年5月追記
↑でそんな事を言っていましたが、挿絵ご用意しました。
でも画力が無いので一から作成したのでは無く……
キャラクリ出来るゲームで雪雫(イメージ)を作成
↓
ポーズを取らせてスクショ
↓
ペイントソフトでそれをトレース&着色
で用意しました。
まぁまぁ大変でしたが楽しかったです。