12/25、クリスマスに蓮、司狼、香純の三人は────パーティーと称して駄弁っていた。
Twitterでの、の@さん(@kirishira_chang)主宰の怒りの日二次創作企画2021参加作品です。オチもなにもないただこんな会話したことあるのかなーぐらいの短い文章なのでよろしければどうぞ。
時間のある人はTwitterで#怒りの日二次創作企画2021 で検索するとDies iraeの二次創作が見られて楽しいと思います。
では、どうぞ。
十二月二十四日、クリスマスイブ。
「なあ蓮、その肉俺によこせよ」
「……なんでだよ」
「なんでってそりゃもう鍋ん中にねぇからだろ、肉が」
「ハイハイ喧嘩しないの! お肉なら追加してあげるからちょっとくらい待ちなさい!!」
俺の部屋、つまり司狼と香純のたまり場で何故か三人ばかりのパーティー(鍋)が行われていた。
ギャーギャーギャーギャーうるさいが、まあ隣の部屋には誰もいないわけだし無問題だ。
「ま、俺は食えりゃなんでもいいんだが」
「じゃあ自分で入れりゃいいだろうが」
「なんだようるせぇなあ……そんなケチケチしたこと言うんじゃねえよ」
「だーかーらー喧嘩はやめなさいっての! 本気じゃないのはいいけどいちいちギスギスするのもやめなさい!!」
喧嘩でも何でもねえよこんなの。
「そ・れ・で・も! あんたらが表面上だけでもギスギスしてんのがあたしは嫌なの」
「……ったく」
「せっかくのクリスマスなんだから楽しい話をしようよ」
「……あー、わりいわりい」
「……それも、そうだな」
鍋の中の白菜に箸を伸ばす。
まあ、たまにはこういうのも悪くないと、素直にそう思った。
「ところでよ、蓮」
「なんだよ司狼」
「退屈だからなんか話題だしてくれよ話題」
話題ぃ?
「あー、そうだな……香純、なんかあるか?」
「──ん? んぐっ……うーーーーーーん」
口に入っていた食べ物を飲み込んで、考える人のポーズで思案に入る香純。いやまあそんなに真剣に考える話でもねえけど。
「そうねえ……そういえばあんたたちテストどんな感じだった?」
やめとけってその話題。なんでお前自分から負けに行くんだ。
「あ? 俺はまあいつも通りだったけどよ」
「同じく」
「…………ってことはまたしてもあたしが最下位?」
「そりゃそうだろ、お前俺らに勝ったこと一度もないだろバカスミ」
「司狼がサボったときを除いてな」
「お前だってあるだろうがよ」
「ほーんとなんであんたらってバカなくせに勉強とかそういうことはできるわけ? もっと真面目に生きればいいのに」
「なんでってそりゃ才能ってやつだろ」
「そういうことでいいんじゃないか。珍しく意見が一致したな、司狼」
ムキーーーーーー!!!! と全国クラスの剣道部部長さんが発狂するのを横目にちょうどいい具合の牛肉を皿にとる。
「才能、才能ねえ……全然納得できないんですけど」
「お前は剣道の才能があった、俺らは別の能力があった、それだけの話だろーが」
「それはそうなんだけどさあーーー」
なんて、まあ普通の高校生が普通にするような会話をして。
「あ、そうだ! あんたたちプレゼントちゃんと買ってきたんでしょうね!?」
クリスマスの定番というか、俺たちも何回かやってることではあるのだが。
「忘れてねえよ」
「ちゃんと買ってきてやったっつーの」
プレゼント交換をすることになった。ここ数年はそんなのやってなかったのだけど。香純曰く、
『せっかく高校生になって環境も変わったんだし、心機一転、昔にやってたことをも一回やりたいじゃない』
とのことらしい。司狼にあたっても香純にあたっても大丈夫なように選ぶのは少々めんどくさいからやらなくなったのだけど。
「じゃあどうやってプレゼント決める?」
「くじ引きとかあみだでいいだろ面倒くせぇ」
「んもー司狼はすぐそうやって面倒くさがる。もうちょっとこうクリスマスの風情とかあるじゃない」
「風情とか気にするんだったらこんなアパートの一室で鍋なんて食ってねぇだろ」
「うぐ」
「じゃ、あみだでいいか」
適当にパパパっとあみだくじを紙に書いて、香純に渡す。
「ほら、発案者のお前から選ばせてやるよ」
香純はうーんうーんと悩みながら、真ん中を。続いて司狼は左を。
「自分のにあたったらどうする?」
「別にそのままでいいんじゃね。それはそれでくじ運の妙ってことで」
「じゃあ俺はあまりの右を」
結果発表。
「あたしは~、げっ、司狼のだ」
「お、香純か俺のを引いたのは。んじゃあ? 俺がお前にプレゼントをやろう」
そういって司狼は手元から煙草の箱を取り出し香純に手渡した。
「最近俺が気に入ってるやつでよ」
「タバコ吸ってんじゃないわよ未成年!! こんなの渡されてもどうしようもないでしょうがぁ!!」
「そりゃそーだ」
「だったらほら部屋にでも飾っとけよお守りみてーに。思い出ってやつだよ」
「……む、それならまあ…………」
いいのかよ。
「んじゃ俺は香純か蓮のどっちかだな……お、蓮のじゃん」
「きれいに分かれたもんだな…………ほらよ司狼」
「せんきゅー。お、ジッポーのライターじゃねえか。助かるぜ。ちょうどいま使ってるやつの燃料が切れて買い足すとこだった」
「なんであんたらそんなピンポイントなプレゼントなのよ……」
「考えるのめんどっちかったし」
「同じく」
「あたしの幼馴染みってやつはまったくもー……じゃあ蓮には、あたしからね」
そうして香純から手渡されたのはB2サイズのポスターだった。
「ちょうどクレーンゲームでゲットしてさ、ちょうどいいと思って。あんたらの部屋殺風景すぎるし」
「おまえも大概適当じゃねーか……」
あとでどっかに貼るとしよう。そこらへんに置いとくと香純がうるさそうだ。
そんなこんなでその後も駄弁りながら数時間も経ったら、もう日付が変わる時間帯だ。
「あ、零時超えた」
「お、まじか。んじゃそろそろお開きとすっかねぇ」
「メリークリスマス、司狼、蓮!」
「おう、メリークリスマス」
「メリー、クリスマス」
「……なんかクリスマスなのにお正月の挨拶みたいだね、これ」
「言われてみればそれっぽいな。日付変わったとたんに言うところとか」
「じゃあ元旦もそうしようよ! 今日みたいに大みそかに集まって、さ」
「おーいいぜ、場所は……まあここでいいだろ」
「部屋主の許可も取らずに勝手に決めるんじゃねえよ。別にいいけど」
「じゃあそういうことに決定ね! 細かいことはそのうち決めましょ」
「そうだな……んじゃ俺は帰るぜ」
「あちょっと待ちなさいよ司狼! あんたも片付け手伝いなさいーーー!」
そうして司狼が自室に戻って、俺と香純で片づけをする。あの
「ねえ、蓮」
手にもったスポンジで皿を洗いながら香純が話しかけてくる。
「なんだ?」
「なんていうかさ、……来年もまたこうやって三人で過ごしたいなって」
「……そう、だな」
来年もまた同じように。ただこの平穏な日常を味わいたい。
そういう無上の幸福を想像して────今、俺はこの最高の刹那を味わい尽くすのだ。
時よ、止まれ──ただそう思っている。
「ん、なんか今日の蓮は素直だね」
「まるでいつもひねくれてるみたいな言い草だな香純」
「だーってその通りじゃん、このツンデ蓮たんめ」
その言葉は香純が年上ぶっているようでムカついたが。
「おーおー言っとけバカスミ」
「なんだとーこのーーーー!!」
まあ正直このバカみたいなやり取りをしている時間がこいつといて一番楽しいのも事実なわけで。
「……ははは、くく」
ああ、こんな時間が永久に繰り返せばいいと本気で思う。
こんなバカで楽しくて――――くだらない普通の日常が。
「そうだな、香純」
本当に。
十二月二十五日、クリスマス。
諏訪原での初めてのクリスマスは、普通のくだらない会話から始まった。