インフィニット・ストラトス The Gaia Sabers (リメイクver) 作:No.20_Blaz
学園でのゲストの襲撃からそろそろ一週間が経つ頃。
千冬は学園での数少ない休暇を利用して自宅に戻っていた。
自宅に戻って、する事と言っても、大抵はビール缶を飲むか寝るかである。
しかし、今回は違っており、自宅の自室に籠もっていたのだ。
そして、其処にある専用のPCと専用の新型衛星電話。
「・・・矢張りか。」
PCのモニターには幾つものファイル等が表示されていた。
その内の大半は過去の新聞などで、見出しには大きく『南極』と言うワードが揃っていた。
その中の一つのフォルダ。
それは、一般人では絶対に見られない軍の機密資料だった。
彼女がどうやってそれを閲覧できているのか。
それはいずれ分かる事である。
「ゲスト。襲撃してきたIS。暮桜ーーーそして
一夏。」
考えてても始まらない。
そう思った千冬は衛星電話を取る。慣れた手つきでボタンを押して、発信ボタンを押す。
プルルルルル・・・プルルルルル・・・・・ガチャッ。
『久しぶりだな。千冬。』
「ああ。数年ぶりか?」
電話の相手は声からして女性だった。
しかも、千冬の話し方から親しい人物である事が分かる。
だが、それでも真剣な表情は変わらない。
前置きを出来るだけ短くし、千冬は本題に入ろうとした。
『お前がわざわざ衛星電話で話す・・・・何かあったのか?』
「まぁな。そこで・・・お前に幾つか聞きたい事がある。」
『なんだ。私が知っている事であれば話せるぞ。』
「・・・・・・・・『ヒュッケバイン』。」
『っ・・・。』
「凶鳥の眷属。あれの動力機関、『ブラックホールエンジン』についてだ。」
『・・・・まさか。そのワードが出てくるとはな。となると、暮桜関連か?』
「BHエンジンは、今は何処にある?」
『・・・・・・今は私達が管理しているが?』
嘘だ。彼女は嘘をついている。長い付き合いである相手の言い方で千冬はそれを察した。
本当なら直ぐに返事をするかもう少し短い間でいい筈だ。
それなのに彼女は二十秒近く間を取っていた。
明らかに言い訳を考えていたのだ。それを察した千冬は探りを入れようと話しを進めた。
「・・・・・そうか。」
『どうした。何があった?』
「暮桜が盗まれた。」
『何・・・』
「犯人は分からない。だが・・・・」
『だが?』
「もしかしたら・・・・・犯人は一夏なのかも知れない。」
『一夏・・・・・あの一夏か?』
本来言うべきではなかったと思っていた千冬だったが、思わず声に出てしまった。
だが、これを逃しては多分聞けなくなると思い、千冬はあえて一夏の名前を話しに出したのだ。
「ああ。」
『馬鹿をいうな。一夏君は数年前に亡くなったと言った筈だぞ。』
「一夏の死体は上がっていなかった。誰も死んだ思える証拠が無かったんだ。
だから・・・・・・!!」
一夏の事を思い出し、千冬の感情は高ぶっていく。悔やみと哀れみ。そして喜び。
複雑な心境に、今は唯、手を握りこぶしにするだけしか出来なかった。
これを電話越しに聞いていた相手は少し間を空けて言葉を選び、話しを続けたのだ。
『仮にそうだとして・・・・まさか彼が?』
「・・・理由は大体の察しが付く。」
『分かるのか?』
「ああ。」
『・・・・。で。その一夏君とBHエンジンとどう関係が?』
「その一夏と思われる男が、重力制御された兵器を使っていた。」
『重力制御・・・『グラビトン・ライフル』をだと?』
「そうだ。アレを使えるのは、今の所ヒュッケバインだけだろ?」
『・・・確かにそうだが、さっきも言ったとおりヒュッケバインは全て此方で管理されている。早々盗用も出来る筈が無い。』
(なら。やっぱりアイツか・・・・・)
『暮桜の奪取と重力制御を使うIS・・・因縁だな。』
「・・・ああ。」
『分かった。此方でも調べて見よう。何か分かったら連絡する。』
「頼む。それと・・・」
『ああ。この事は他言無用だ。』
「・・・すまんな。」
その後。電話を切った千冬は椅子に深くもたれかかった。
軽く息を吐き、疲れを見せる。そんな彼女は、机に置かれていた二つの写真立てを見つめる。
一つはまだ千冬達が幼い頃の写真。其処には一夏も居ており、幼かった箒や秋龍。
あまり妹と背が変わらなかった束も居た。
そして、そんな彼、彼女達の上には二人の夫婦が映っていた。
それが、千冬達の両親だ。
そして、もう一つはほぼ今の状態の千冬と一人の男性。
もう一人の女性との三人で映っていた写真だ。その写真に写っていた、男性の顔は満面の笑みで、女性は苦笑している。
その隣で千冬は少し呆れ気味の顔で映っていたのだ。
そんな昔の思い出を見つめ、千冬は自然と表情を和らげていた。
そして、唯一言。
「過去との因縁・・・・・・か。」
と呟いたのだった。
同時刻、都内某所の飲食店では珍しく専用機持ちの面々が集まっていた。
但し、其処には秋龍と箒の姿は見当たらない。二人は別件らしかったのだ。
その二人を除く四人が集まった理由。
それは、今まで触れていなかった自分達の教師・恩師である千冬の過去についてだった。
どうしてこの話しになったのか。
それは、ゲスト襲来時に現れたシュテルの台詞や
恐らくは何かを知っていると思い、面々は六人揃って話し合おうと言う事だったらしいが、
生憎と秋龍・箒の両名が別件でこれなかったのだ。
そこで、一旦残る四人が集まり、この中で千冬と過去に縁があった鈴とラウラに心当たりなどを
思い出させてみたのだ。
「まず。秋龍からの話しを元にすると、一番昔を知っているのは秋龍と箒の奴だけ。」
「鈴さんは中学からでしたわね。その時、織斑先生とは?」
「何度かあって話したり・・・まぁ知り合い程度って感じだったかな。そん時ってアタシ、ちょっと色々とやってたし。」
「中学・・・そう言えば数人の友人が居たと聞いたが。」
「まぁね。て言っても、そん時は秋龍とはあまり話さなかったの。」
「え?どうして・・・?」
「何て言うか・・・・・何か昔のアイツ、近寄りがたかったの。」
「昔の秋龍さんが・・・・ですか?」
「ええ。それが現在になってあの性格だから内心では少し驚いていたの。」
「へえ・・・」
「と言うよりも、秋龍とはあまり付き合いが無かったと言う事は・・・」
「そ。私の他に弾って馬鹿ともう一人は方向音痴の大馬鹿。んでもって・・・・一夏。」
「・・・織斑一夏か。」
「そう。中学ではその四人で一緒だったから・・・」
鈴の脳裏には三人の青年達が鈴の周りに居た。
一人はバンダナを付けた一夏の親友、五反田弾。
四人の中では一番のワルと言ってもいい。だが、同時に友情を大切にしていた。
その隣に一夏。何かしらの境遇が似ていたり、過去に助けてもらった恩などもあったので、
正直彼に意識をしていたと言っても過言ではない。
だが、男三人の中で最初に居なくなった人物だ。
そしてもう一人。
鈴の故意であまり思い出したくないが、それでも友であるのは確かな青年だった。
唯。方向音痴と言うのを除いて。
そしてその彼も、つい最近消息を絶った。誰に何処に行ったかと聞くことは出来なかった。
彼の親は既に居なかったらだ。
この中で唯一消息がつかめているのが弾、唯一人。
彼は今は祖父の食堂を手伝っているので今なら会えるのだ。
「はぁ・・」
「と言うか・・・その方向音痴の馬鹿って・・・・誰?」
「・・・・・言いたくないわ。」
「それほどお嫌いですの?」
「まぁ・・・・ね。だって・・・・」
「・・・・・・・。」
「成績と運動神経はいいクセに超方向音痴だし朴念仁だし
それなのに周りには結構な女共が群がっているし・・・」
「あー挙げればキリが無さそうだね・・・・」
「あーもー・・・思い出したらイライラしてきた・・・・」
その青年の性格などを話した鈴は表情が呆れからイラつきに変わる。
相当嫌な相手だったらしい。
だが、何処か嬉しそうな表情でもあるのでどんな相手だったのか気になった三人であった。
「・・で。次は・・・」
「私か。」
しかし、それは今は後にする。今は千冬の過去を知る事が優先だ。
そう言う事で続いてはラウラに目線を移す三人。
ラウラも自分と千冬が関わった過去をある程度隠して話そうとしていたが、
ココである疑問を持つ。
「・・・。そういえば・・・教官は自分の兄弟の子供の頃は話していたが・・中学辺りの事は
話さなかったな。」
「え?でもそれって・・・・」
「あ。言うの忘れてたわね。確かにアタシも千冬さんとは会ってたけど、何か
朝帰りが結構多かったから挨拶とか、軽く話すくらいだったの。」
「って事は・・・・・」
「ココに居る私達は・・・嫁達が中学辺りの教官の事は知らないと言う事だ・・・」
そう。分かっている事は秋龍達が小学生の頃は色々と走り回っていた。
当然、生きていく為の資金稼ぎだ。
やがて、彼等が中学に入ると、其処から千冬の仕事は不明となる。
何かいえない事であるのか。それは確かである。
そしてその中学の終わりごろ。モンド・グロッソでの事件があり、彼女はドイツに借りを返すという形でドイツ軍に在籍する。
ざっくりとではあるが、これが千冬の分かってる過去である。
だが。問題がもう一つある。
「・・・そういえば、教官のご両親は?」
「あっ・・・アタシも聞いたこと無いな・・・・」
彼・彼女達の両親。彼等が今どうなっているのか。
答えは簡単である。
もう既に居ない。
「・・・・・・・・。」
その頃。箒は一人、都内のやや山間にある墓地に訪れていた。
服装は私服で、花束と桶なども持っている。
周りには多くの家の一族などの墓が立っており、その中の一つに箒は黙って向かっていたのだ。
これは彼女にとってはある意味習慣となっている事である。
その人達の墓参り。自分の両親は今でも多分生きている。
なら一体誰のか。
「・・・今日も来ました。」
立ち止まった墓には『織斑家』と書かれていた。
そう。千冬や秋龍たちの家族の墓である。
彼等の家族は箒達が子供の頃に亡くなった。死因は誰かに刺されたとの事だ。
凶器も犯人の情報も無いこの事件は警察の必死の捜査も空しく、
一部の警察関係者によって未解決事件として処理されてしまったのだ。
それを聞いた彼女は姉のISの発表などが重なり、意識が完全に闇の中に落ちかけていたのだ。
それでも必死のカウンセリングなどで多少は保てた箒は、
そのカウンセリングをした人物と約束し、休日の一日は絶対に墓参りに来ると約束したのだ。
「・・・っ!」
その彼女が持ってきた花を供えようと墓の下を見ると、
もう既に一つの花束が備えられて線香も二本ほど付けられていたのだ。
今となっては彼等の墓参りに来るのは自分か千冬、秋龍だけだ。
恐らく彼らだろうと思った箒は一緒に持ってきた仏花を備えたのだった。
そして、合掌。いつも何かを彼等両親に独り言の様に報告する箒。
その報告は今日も平和であると言う事だった。
唯一つ。引っかかっている事も口にして。
「もし・・・あの時に現れたISが・・・・・・いや。私の考えすぎでしたね。」
何か引っかかる事であった。
アッシュの操縦者が一体誰なのか。
二度ほど剣を交えて、思った印象。
それは何か知っていた雰囲気と太刀筋だったのだ。
そして、その太刀筋は今はもう居ない筈の人物の太刀筋に極めて似ていたのだ。
「・・・・・考えすぎ・・・・ですよね。だって・・・・・」
ある人物達が今でも鮮明に、そしておぼろげに覚えている記憶がある。
それは今からもう十年近く前のことである。
その日は雨の日で雷も鳴っていた。
そんな日に、傘も差さずに三人の少女が走っていた。
場所は何処か山に近い場所だった。
足元が泥に塗れ、全身に雨粒が降り注いで、
来ていた服は濃い色となって染み付く。
それでも構いはしなかった。それほどまでの一大事だったからだ。
だが。
一人が幼く、体力もまだ無かったからか段々と他の二人との距離が開いていった。
それでも必死に幼子は走った。
前を走っていた二人の足が止まった。
その後ろに幼子が息を切らして到着する。
そして。その三人は目を疑ったのだ。
其処には。
「・・・おい・・・・・・・・」
「ーーッ!!!」
「う・・・うそ・・・・・・」
「嘘・・・だよね・・・・・・」
「・・・・・・・・・。」
「嘘だ・・・そうだよな・・・・・・・
一夏。」
一本の太刀を持つ一夏。
その太刀と手は血に塗れ、更には近くに二人の倒れた夫婦が居たのだ。