原則としてモデル馬の名前は出さない、あるいは架空名で登場させます。
また、架空名は競走馬の名前と被らないようにします。
上記の要素が苦手な方は各自ブラウザバックをお願いします。
有馬記念ということで好きな有馬記念のレースから
このレースの1、2着がたまらない
ダービーウマ娘。
それは全てのウマ娘がなりたいと一度は夢をみる栄光の証だ。
私だって例外じゃなかった。
皐月賞の出走こそ逃したものの日本ダービーの前哨戦である【青葉賞】を快勝。
そして日本ダービーには10番人気と低評価ながらも栄えある18人の一人として臨むことができた。
『きたきたきた! 馬群を割るようにしてやってきた!』
その瞬間のことはいつだって思い出せる。
『
私の後ろにいるウマ娘はもう届かないところにいた。
でも、そんなことを考える余裕はなかった。
栄光のゴールはすぐそこに見えている。
ただ必死になって脚を動かした。
ダービーウマ娘になれるのならば、このレースがたとえ最後になっても構わない。
そんな思いが届いたのかもしれない。
私が怒号のような拍手の嵐を駆け抜けた時には後ろと7バ身というとんでもない着差がついていた。
そして、私の1と4分の3バ身前には美しい栗毛の髪を靡かせた皐月賞ウマ娘が大歓声を浴びていた。
私の夢がアイツに勝つことに変わった瞬間だった。
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しかし、私の夢が叶うことは今日を残して一度もなかった。
『───あっさりと抜け出した! これが二冠ウマ娘の脚だ!!』
秋初戦となった神戸新聞杯は2と2分の1差の2着。
『金色のバ体が弾んでいる。もう追うものは無し! これが第7代目の三冠ウマ娘だ!』
殿一気の奇襲を試みて臨んだ菊花賞は、バ体が並ぶことすらなく、ただアイツが三冠ウマ娘になる瞬間を
翌年、シニアで初めての対決となった春の天皇賞では精彩を欠いたアイツに初めて先着することはできたものの、伏兵の一発にやられて6馬身差の3着。
次走の宝塚記念ではアイツが復活の勝利を挙げる一方で私は伸びきれずの4着と夢は近づくどころか遠のいていくばかりだった。
そして、負け続けの私に追い打ちをかけるかのようにさらなる試練が襲い掛かる。
秋のレースへ向けてトレーニングをしている最中、トレーナーからフォームに少しだけ違和感があると言われて向かった病院での出来事だった。
「──! 左足の屈腱炎って……そんな……嘘ですよね!? まだ脚は普通に動いて──」
「残念ですが本当のことです。不幸中の幸いと言っていいのか、屈腱炎の中では浅めの症状ですので時間をかければレースへの復帰は叶いそうですが……」
トレーナーが心配性なだけだ。と軽い気持ちで病院を訪れた私に伝えられたのは屈腱炎発症という診察結果。
浅いと言われても全治には少なくとも9か月がかかるらしい。
青葉賞、ダービーと結果が出ている東京レース場でのGI奪取目指しての今秋だっただけに悔しさと虚無感で一杯になる。
そして、アイツがフランス遠征で結果を残していることもさらに焦りを生んだ。
フォア賞を快勝して臨んだ凱旋門賞。
『外から栗毛のバ体が来たぞー!! 日本の──』
『栄光まで残り50! さぁ、勝てるかどうか!』
日本中の夢を背負って走ったアイツは、ゴール直前に差されてしまったものの、ほぼ勝ちに等しい素晴らしいレースをたくさんのファンに見せつけた。
それも海外の、世界最高峰のレースである凱旋門賞でだ。
怪我でただリハビリしかできない私ともの凄いレースをするアイツ。
(やっぱり凄いな……)
もはや悔しいという思いすら湧かなかった。
一年前、私の二馬身と少し前を走っていた背中は、気づけば見えなくなっていた。
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年が明けシニア級二年目が始まっても私の生活は変わることはなかった。
レースへの復帰を目指して、リハビリと通院を繰り返す日常。
もう一度凱旋門賞へと挑戦することを発表したアイツと同じ舞台で競い合ったのは夢のような状態だ。
さらにどこからか「
もう、アイツと同じレースを走ることはないかもしれない。
そんな諦めの気持ちも芽生えてきた時だった。
『やあ、驚いたッスか? フランスから──ちゃんへのラブコールッスよ』
「───ッ! あんた……こんな時にかけてくる電話じゃないでしょ!」
消灯時間の間際、突然の着信は二度目のフランス遠征中のアイツからだった。
『いやぁ、こっちにいてもやることあんまり無いんスよねぇ。森の中でのトレーニングとか楽しかったけど飽きてきたし……。そこで暇そうにしている人に電話でもかけようって思い付いたッス』
「……で、選ばれたのが私だったと」
『そうッス! どーせリハビリで暇ッスよね。アタシと楽しいトークをするッスよ』
「……はぁ。もうすぐ消灯時間だからそれまでよ。ったく、これが世界中の注目を集めるウマ娘とは……」
『う~ん、国際電話のせいか上手く聞こえないッスね。そんなことよりこの前こっちに来た──』
そのまま廊下に出て話すこと数分。久しぶりの会話は思いのほか弾み、電話を切るのが名残惜しくなってくる。
『────ん、なんかトレーナーに呼ばれてるッスね。じゃあリハビリ頑張るっス!』
「あんたも次こそは凱旋門賞勝って世界一になりなさいよ」
『もちろんスよ。あ、言い忘れてたけどラストランは有馬記念に決めたッスから楽しみにしてるッスよ。それじゃあ切るッス』
「え、ちょっと待って──」
最後に爆弾発言を残して電話を切られる。
聞き間違いじゃなければラストランは有馬記念とか聞こえてきた。
私がトレーナーから伝えられた復帰プランは11月最終週のGII【金鯱賞】のはず。
思わずカレンダーをめくって確認する。
金鯱賞と有馬記念の間は3週間。脚の状態次第になるが間に合わなくはない間隔である。
もしかすると叶うかもしれない。
しばらくの間、遠のいていた夢がほんの少しだけこちらに近づいてきた瞬間だった。
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そして迎えた今日のレース。
カレンダーが指し示す日付は12月22日。
私が臨む
電光掲示板には
「ここで話すのも久しぶりッスねぇ」
ターフに入ってからスタートまでの数分間を待つゲート裏。先に話しかけてきたのは勝負服にマスク姿のアイツだった。
「ええ、本当に久しぶりね。レース自体が一年半の復帰開け二戦目の私からしたらこの
「アタシだって日本で走るのは久しぶりッスよ。ファンのみんなに忘れられていないかが心配で心配で」
「よく言うわね、ほんと。あんなにも多くのファンがあんたのラストランを見に来ているのよ」
遠くに見えるスタンドに顔を向ける。
ゲート裏まで聞こえてくる大歓声はまさに三冠ウマ娘のラストランに相応しい熱量だ。
「全く、ありがたいものッスよ。アタシなんかにこんなにも多くのファンが来てくれるのは」
彼女はマスク越しに笑みを浮かべながら空に呟く。
それは引退が決まっているのが伝わってくる昔の彼女からは想像できない姿だった。
「ったく。走る前からそんな顔を見せちゃって。言っとくけど、今日は……
だからこそ、私の夢を、私の想いをすべてぶつけると彼女に向かって宣言する。
「もちろん、そんなことわかってるッスよ。みんな必死になって私に勝ちに来る」
対する彼女も私の眼を見てそう言うと、背を向けてゲートに向かい出した。
「でも、今日だけは関係ないッス。今日はアタシの
少しづつ離れていく彼女の手が口元から後ろへと回される。
「ただ、これだけは言っておく。
スタートを告げるファンファーレが鳴り響いた。
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『さぁ、共に進もう。夢のグランプリ有馬記念スタートしました!!』
ゲートが空いて各ウマ娘が一斉に飛び出す。
『好スタートを切ったのはハレノヒ。葦毛のゴールドシップは後ろからになりました』
スタートはまずまずといったところ。
逃げウマではない私には充分なスタートだ。
(そんなことよりアイツはどこにいる? 同じような位置になると予想したけど──)
前と横にいるウマ娘をざっと見てアイツの姿を探す。
スタートは似たようなタイミングだったのを横目に捉えていたが見当たらない。
ゴールドシップの葦毛のバ体が並ぶように出てきたのが確認できただけだ。
そのゴールドシップも私が好位につけるとすぐに後ろ側に見えなくなる。
(……ということは後方にいる。ならば追い込みで来るのか?)
脚を動かしながら考える。
今の位置はインの中団。前にも後ろにもいける位置である。
だからこそアイツがどう動くかを読み切ってレースを進めたい。
『1000メートル通過は60秒8。間もなく2コーナーにかかります』
レース自体は隊列が激しく変わることはなく淡々と進んでいく。
(捲りはゴールドシップがいるからしてこない? いや、アイツの脚なら関係ない! だったら私は───)
『───さぁ、葦毛のゴールシップが上がってきたか。──と並ぶような位置にいます』
選択したのは位置を下げることだった。
おそらく捲りで勝負するであろうゴールドシップの横につける。
「────ッ!」
ゴールドシップが仕掛けて捲っていった。
そしてそのすぐに後ろから栗毛のウマ娘が上がってくる。
『さぁ、いった! 3コーナー手前で栗毛の三冠ウマ娘が上がってくる!』
(やっぱり捲っていった! だったら私は最後に脚がなくなったところを後ろから───)
その栗毛を靡かせて走る後ろ姿を見た瞬間、何か確信めいたモノが体を駆け巡った。
(いや、待っていたらダメだ! 菊の時と同じになる! ここしかない!!)
『動いた動いた! グレーと赤の勝負服、三冠ウマ娘が少しずつ動いていった! そして初対決となるゴールドシップを一瞬で抜き去った!』
アイツの一挙一動にスタンドのボルテージが上がっていく。
『すぐ後ろからはゴールドシップが食らいついていく! あるいは───』
(まだだ! まだやれる! まだ追いつける!)
まだアイツの姿は前にある! 姿は見えている!
『さぁ、三冠ウマ娘がすべてのウマ娘を引きつれて先頭で直線コースを向きました!!』
(届く! 届く! 届く! 絶対に、絶対に───)
「勝つのは私だ────ーッ!!!」
スタンドからの地鳴りのような大歓声も全く聞こえてこない。
聞こえるのは私の吐く息の音だけ。
見えているのは前にあるアイツの背中だけ。
脚のケガの事なんて疾うの昔に忘れてきた。
(アイツに勝つのは私だ)
その背中が一歩遠ざかる。
(最後に笑うのは私だ)
また二歩分遠のいていく。
(
『抜けた! 抜けた! 抜けた! 抜けた! 強い6番───』
「うおおおおおお!!!!!」
『あっという間にリードを広げました! なんという強さだ!!』
どんなに必死に走っても、どんなに必死に脚を動かしても前にある背中が捉えられない。
それはダービーの時と同じで。
菊花賞の時と同じで。
私が大歓声に揺れるゴール板を通過した時、後ろとは1と2分の1バ身の差がついていた。
前にはただ一人しかいなかった。
その一人は夕焼けに綺麗な髪を照らされながら、8馬身前でスタンドの声援に応えていた。
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控室につながる通路を歩いているとウイニングランを終えた彼女が戻ってきた。
そして、勢いよく私の前に立ち塞がると胸を張って言ってきた。
「今回も私の勝ちだったッスね!」
あぁ、全く。この三冠ウマ娘様は嫌味なくこう言うから憎めないのだ。
私も負けじと言い返す。
「次はGIウマ娘になってあんたに勝つから、先に
モデルレース 2013有馬記念
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