「死んでもらいますよ………織斑一夏。全てはデュノア社の未来の為に……延いては、シャルロットの明るい未来を取り戻す為に」
全身を覆う黄昏の装甲。見据えるは、一人の少年。全身を駆け巡る雷鳴の如き
『ねぇ〜ヴァリー?ホントのホントにやるの〜?』
「手段を選んではいられなくなりましたからね。織斑くん、君に恨みはありませんが死んでもらえますか?」
「其処で、おう!いいぜっ!って答えると思ってるのか?俺が」
装甲越しに放たれた、ヴァリーの問いに一夏が快く応じる筈等無く、真っ直ぐと彼を睨み付け、逆に問い直す
「君は少々抜けている部分があるので、気持ちの良い返事が聞けると思っていたのですが………交渉は決裂ですね」
「是。
「一夏よォ、一般教養は身に付けといた方がいいぜ?社交界で恥を掻いてからじゃ遅ぇしな」
「美を極める為には内面も美しくてはならない……え?私はどうかだって?
「おぃぃぃぃ!何でお前等も其方側なんだよっ!?せめて、此方側だろうがぁぁぁぁ!!!」
日頃の行い、交流の仕方と呼ぶべきか一夏よりもヴァリーの意見に賛同する頼達。空かさず、薄情極まりない友人達に突っ込みが放たれ、その光景にヴァリーは拳をゆっくりと下ろした
「………………やはり、慣れないことは出来ませんね……ボクは自分が思うよりも君たちとの学園生活に充実感を得ていたようです………」
BMを解いた彼は、儚くも優しいぎこちない笑顔を見せた。その様子に何かを感じ取った頼が彼に歩み寄る
「……………ランバージャック。貴様の目的等に興味等無いし、知ろうとも思わん。
((態度はデカいけど、聞こうとしてる………))
ヴァリーの内に秘めた真意を聞き出そうとする頼の態度は相も変わらず、尊大であるがその裏に隠された彼なりの優しさにに気付いた一夏達は口には出さないが、衝撃を受ける
「何処から話すべきか………事の始まりは、「489の奇跡」と呼ばれた飛行事故の日まで遡ります」
「「489の奇跡」………確か、フランスで起きた奇跡の生還があった事件だよな?五年くらい前だっけか」
「有名な話だよな。今でも偶に特番が組まれてるくれぇだし」
「私の記憶が正しければ、機械設備の点検を怠ったが故に起きた乗員乗客を巻き込んだ大規模な事故だった。然し、其れと君にどういった関係があるんだい?」
「ありますよ………だって、その機械設備の点検を任されていた整備士は…」
言葉に詰まったのか、僅かに口を噤むヴァリー。誰もが息を呑み、彼が口を開くのを待ち、暫くの沈黙が流れた後に、その時は訪れた
「
「
「ええ。その整備士の名はシャルル・デュノア、デュノア社の長男です」
「「シャルルがっ!?」」
級友の名が出た瞬間、一夏とセオドアが声を揃え、両眼を見開く。其れに引き換え、事情を知る頼は耳を傾け、何かを考え込んでいたマティアスは口を開く
「………彼に感じていた違和感があった。私は昔から人よりも嗅覚には自信があるんだ、私たちがシャルル・デュノアと呼ぶ人物の
「是。守秘義務が有る以上、真実を語る事は出来んがランバージャックの行動には意味があった、愛しき者を守り抜く為には大きな犠牲を払わなければならない時もある。かく言う、オレ様も…………不是、今のは忘れてくれ」
何かを言い掛け、直ぐに我に返った頼は軽く咳払いをした後、話を逸らかす。一夏は疑問に思うがセオドア、マティアスは彼の言い淀んだ話と似た経験があるのか、何も言及しなかった
「君たちがシャルルと呼ぶ彼女の本来の名はシャルロット……日本風に発言するならば、妾?という存在の愛人との間にデュノア氏が設けた望まれない子どもでした。シャルルさんが姿を消すまでは…」
「その口振りだと生きているかの様に聞こえるが?」
「「489の奇跡」の唯一の犠牲者である490人目は生死は勿論ですが死体も見つかっていない、行方不明なんですよ。ですがフランス政府は貴重なライブメタルと適合者が消えた事実を認めようとはしなかった。だから同じ血を持つ彼女が、シャルロットが必要だったんです、彼女に行方不明の兄を探すと約束したフランス政府はデュノア社と結託し、経営危機を回避する為の広告塔に彼女を男装させ、二人目の男性操縦者シャルル・デュノアとする事で、織斑くんの専用機体と本人のデータを搾取しようと考えたんです。そして、彼女の教育係であり適合者であるボクも、両親の罪を隠蔽するという取り引きを持ちかけられ、この学園に来ることになったんです」
「そんな事情があったのか。でも、言ってもらえればデータくらい---いっ!何するんだよっ!?頼!」
「阿呆か?貴様は。男性操縦者とは各国が欲しがる人材だ。安易に情報を与えるのは関心出来ん」
「全くだぜ。女性権利団体が何処で聞き耳を立ててるかも分からねェからな」
「うっ………」
女性権利団体、其れは男尊女卑の反対である女尊男卑の世の中を風潮する団体の名称。適合者とは長い対立関係に在り、男性操縦者である一夏も彼女達にとっては目に余る存在、故に彼のデータを開示する事は余りにも無謀なのだ
「らいらい〜!たいへ〜ん!たいへ〜ん!」
真剣な話し合いの場に響き渡る能天気な声、其れは一夏のクラスメイトである布仏本音の声だ
「ん?のほほんさん?」
「布仏。どうした?怪我でもしたか?」
「わたしじゃないよぉ〜!りんりんとせっしーがたいへんなのぉ〜!」
恋人、幼馴染の名を聞いた瞬間に頼とセオドアが駆け出した。時間帯は放課後、二人は学内トーナメントに向けての個人特訓の為にアリーナに居る時間帯、胸に過ぎる一抹の不安に足を走らせる。近付く度に鳴り響く轟音、最悪の結末を予感しながらもアリーナに二人は飛び込んだ
「鈴音!!!」
「セシリア!!!」
名を呼び、地に落下する彼女達を受け止める。傷だらけの体に掠れる意識、ゆっくりと自分を見上げる彼女の頭に頼は優しく触れる
「
「ら………い…え…ん…」
「不是、今は喋るな。鈴々!」
《
「セシリアも寝てろ。こっからは俺たちの喧嘩だ」
「セオドア………貴方に助けられるわたくしでは……きゃっ!?」
「一夏!セシリアを頼む」
遅れてアリーナに姿を見せた一夏と自分の肩に乗っていた鈴々に、彼女達の非難を頼むと遥か頭上に浮かぶ
「ボーディッヒ。貴様の仕業か」
「だとしたら、どうする?私に勝てるか?ISも持たない貴様が」
「不是。貴様と争う気など微塵も存在せん………然し、オレ様の愛しい者に傷を付けた事を許すつもりは無い。オレ様の気が変わらぬ間に立ち去れ」
「ふんっ……随分と甘いのだな?ならばこれではどうだっ!」
「しまった!!!頼!あのヤロー!狙いは一夏だっ!」
「図られたかっ!」
気付いた時既に遅く、ラウラの黒き拳が鈴とセシリアを保健室に運ぼうとしていた一夏に迫る。頼、セオドアの声で彼が振り返ろうとした時だった
「我が美しき誇りを糧に、
その言葉と共に左腕の腕輪が光を放ち、白銀の
「美しくないよ、今の君は」
圧倒的な力を見せるラウラを前に、一夏を救ったのはまさかのマティアス・シュレンドルフ!彼の実力は果たして!
「如何なる者が相手でも容赦はせん、故に我不迷」