「えっ?デュノアと更衣室を分ける?どうしてだよ」
翌日。ISの実技訓練に向かおうとしていた一夏は、同じ男性操縦士のシャルルを誘おうとしていたが教育係のヴァリーからの意外な答えに疑問符を浮かべていた
「申し訳ない、彼は色々と準備に時間が掛かるものですから……。準備が終わり次第、連れて行きます」
「え……準備?」
「黙りなさい」
「ひぃぃぃぃ!」
機転を効かしたヴァリーの意志を汲み取れないシャルルが首を傾げた瞬間、その瞳が、ギロリと動く
「いきますよ」
「ふぁい……」
恐怖に震えるシャルルを連れ、ヴァリーは教室を後にする。取り残された一夏は、セオドアと共に更衣室へと向かう
「う〜む……ヴァリーに警戒されてるのかな?俺って」
「あん?なんだよ、唐突に」
「いやさ、ヴァリーのヤツ。飯に誘っても、デュノアにマナーを教えるとか言って、断られるんだ」
「はんっ、ほっとけよ。人付き合いが出来ねぇヤツなんだろうぜ?どっかの伝説気取りのチビ医者みてぇにな」
「ほう?伝説気取りのチビ医者か、存在するので在れば……
「見るも何も、オメェのこと…………ぎゃぁぁぁぁ!!!」
けらけらと笑っていたセオドアであったが、背後から聞こえた声に振り返り、答えを返そうとした瞬間に叫び声を挙げた
「良き身分で何よりだ……なぁ?フロックハートよ」
「何時から、いやがったっ!?」
「何時から?無論、最初からだ。更衣室は限られている、故に同じ方向に向かうのは至極当然。貴様は阿呆か?」
「やっぱムカつくっ!!!コイツ!」
「ははっ…まさに火と油だな。それで……シュレンドルフ?お前は何をしてんだ?」
小柄な頼に突っ掛かるセオドアに苦笑していた一夏は、その背後で何かを見ているマティアスに視線を向ける
「何をしている?決まっているだろう……眺めているのだ」
「眺めてるって……何をだ?」
「私の美しさだ。
「むっ……貴様、そばかすがあるな。漢方薬を処方してやろう。光栄に思え」
「そばかす……?なんてことだ…!私の美しい顔が!」
「一夏。アイツ、頭おかしいぜ」
「しっ…!目を合わせちゃダメだぞ、セオ。ああいうヤツはな、ほっておくのが一番だ」
「織斑。中々の気遣いだ、そう言った誠意は大事だ。貴様が日本人である事を漸く、理解出来た」
「まぁな、それ程でも----えっ?今更?」
騒ぐマティアスから、目を逸らす一夏の気遣いに納得の意を示す頼。然し、言葉の節々に有る辛辣さを聞き逃さなかった一夏は、目を点にしていた
「それと一つ、忠告をしておく。良いか?二度は言わん。その脳裏に焼き付けろ……デュノアには、決して気を許すな。
「お、おう。よく分からんけど分かったぜ」
「……………フロックハート。貴様、これ程迄に阿保な奴と、良く付き合っていられるな」
「………ああ、俺も不思議だぜ」
「おいコラ、なんかすげぇ失礼なこと言われてんのは分かるぞ」
忠告の意味を理解していない一夏を見ながら、頼が同情するように呟くとセオドアも共感の意を示す。其れ即ち、二人の気があった記念すべき日である
「ねぇ、ヴァリー……」
「如何しました?シャルロット」
此処はシャルルとヴァリーに充てがわれた更衣室。事前に事情を理解していた頼と鈴からの進言に寄り、彼等はこの部屋を更衣室に使用している
俯き、本来の姿で彼基彼女は自らの幼馴染の名を呼ぶ
「僕が役目を果たせば……本当に、あの人は……
「あの人」、そう呼ばれた人物は定かではないが彼女にとっては名前も口にしたくない存在であることは明白。そして、偽名である名と同じ名の存在、彼女にとっては其方の方が重要のようだ
「当たり前です。約束とは破れぬ誓い、その約束を卑下する事は誇り高きフランス人に有るまじき行為です」
「そうだよね!よーし!頑張るよっ!僕!」
「ええ、期待してません。ああ……間違えました、期待してます」
「今、絶対にワザと間違えたよねっ!?」
真顔で彼女の成功を願う?ヴァリーの発言に、突っ込みを放つ。着替えを終え、グランドに到着すると待ち構えていたのは、ジャージ姿の千冬と既に着替えを終えた生徒たちが待ち構えていた
「わわっ!もう、集まってる!」
「貴様等で最後だ。さっさと並べ」
「出張保健室」と書かれたテント下に待機していた頼が、ジト目気味に睨みを効かせ、促すとシャルルは申し訳なさそうに列へと並ぶ
「其れで……貴様等、何故に此処に居る」
じろりと、視線を動かした先に居たのは頼以外の三名。其れ即ち、男性操縦士の一夏を除いた《IS》を動かせない男子生徒である
「私の美しい顔を砂埃で汚せというのか?君は」
「ああ?だってよ、一夏以外にIS持ってねぇじゃん」
「ボクはアウトドアNGですので」
「ダーリン、ダーリン」
「如何した?小鈴」
矢継ぎ早に放たれる見学理由に、呆れた眼差しを向ける頼。すると、列に並んでいた鈴が駆け寄り、彼を呼ぶ
「ごめん!授業の間だけ預かってもらえない?着いてきちゃったのよ……怪我しちゃうと可哀想だし。お願い出来る?ダーリン」
「仕方あるまい。其れに誰あろうお前からの頼みを、オレ様が断る理由等存在しない。
頼が名を呼ぶと、鈴の肩から一匹の生物が彼の肩に飛び移る。その生物は、誰もが知る生物であるが実に小柄で見た目は飼い主に似て愛らしい、其れ即ち
「じゃあ、鈴々。妈妈はちょっと行かなきゃ行けないけど、爸爸の邪魔しちゃ駄目よ?しっかりとお手伝いしてあげるのよ」
《是。頑張って、妈妈》
幼子を言い聞かせる様に頭を小突くと、看板を取り出し、文字を書き、返事を返す鈴々に優しく笑い掛け、鈴は列に戻っていく
「毛むくじゃらだな、コイツ」
「美しくないね」
「食用でしょうか」
「「「いっ……ぎゃぁぁぁぁ!」」」
鈴々を取り囲み、各々の感想を述べるセオドアとマティアス、ヴァリーの手に鈴々が、がぶっと噛みつき、その痛みに三人が飛び上がる
「気を付けろ。鈴々はオレ様と小鈴以外の言うことは聞かん」
「「「早く言えよっ!!!」」」
一人、冷静な頼に三人からの突っ込みが飛ぶ。そして、一夏は……
「山田先生……ありがとう、そしてごちそうさまです」
「えっと……は、はい……お、お粗末さまです……」
IS用ウェアを着た麻耶の胸にダイブしていた。其れはもう盛大に、男ならば一度は埋もれたい場所ランキングで堂々と上位にランクインする場所に、彼は頭から突っ込んでいた
「んまぁ!なんてハレンチ!そこにお座りなさいな!一夏さん!良いですか?そもそも!」
「不潔ね。あたしはダーリンになら、触らせるけど……未婚の人にセクハラするなんて不潔よ」
「やはり認めない!私は認めんぞ!」
「織斑先生。アイツの頭に出席簿を」
「僕は六法全書?とか言うのを」
「篠ノ之、デュノア。お前たちは何を差し入れするつもりだ」
然しながら、女性陣からの視線は冷ややかである。其れ即ち軽蔑の眼差し也
「ぐすん………」
「みなさん!イジメは良くないですよ!さて、誰から相手をしますか?」
麻耶が笑うと、列から鈴が一歩進む。その瞳に宿るは闘志という名の焔。彼女は息を吸い、真っ直ぐと麻耶を見据える
「先生……あたしと戦って。あたしは強くなりたい。故に先生と戦う事も精進の一つ……其れ即ち、我不迷也」
鈴VS麻耶!彼女たちの戦いの先は……!そして、シャルルとヴァリーの秘密とは!
「如何なる者が相手でも容赦はせん、故に我不迷」