メイド イン 蝕   作:黒チョコボ

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呪いと呪い

 

アビス、それは大いなる未知を孕んだ大穴。ほぼ全ての地上が探求され尽くした中、その理不尽としか言いようが無い特性や発掘される不思議な物品に心を惹かれ、今もなお沢山の人々が夢を求めてやって来る。

 

そして、その存在の認知はほぼ義務教育に近い。

 

例え貧困にあえぎ、そんなものを受けられない者だったとしてもアビスの存在は知っている。

 

それ程までにアビスの存在は世界の人々にとって大きいものなのだ。

 

それを、今リコ達が居る深界四層まで辿り着いた者がこれっぽっちも知らないなど、誰が信じられるだろうか。ましてや、そんな無知な状態でアビスを生き残れるなど、誰が信じるのだろうか。

 

だが、信じる他無かった。

 

目の前に疲れた表情で立つ生きた証人がいる故に、疑えなかった。

 

「あれ、どうした? そんなポカンとしちゃって。なんか変なことでもあった?」

 

あまりにも衝撃的な事実に動揺したリコ達は、パックに額をピシピシと叩かれるまでただただ口をあんぐりと開けていた。

 

なんとか正気を取り戻したリコは少しの間だけ目線を下げて、脳内を整理すると共に投げかけるべき質問を導き出す。

 

「えーと、ガッツさん達は……どこからここに来たの?」

 

「どこから……か、まあざっくりと言やあそこら辺の孤島だ。それで、寝て起きたらいつの間にか知らねえ場所に居た」

 

リコの問いに彼は言葉を選びながら答える。しかし、そこに納得のいかなかった者が一名居たようで、不満そうな表情で無礼者を指差した。

 

「ガッツ君! 我が故郷たる妖精郷をそこら辺の孤島呼ばわりとはいい度胸じゃないか!?」

 

「言ってもどうせ通じねえだろうが……」

 

先端に毬栗のくっ付いた棒と冷たく硬い左手が交差する。幾度かの打ち合いの末、勝利を収めたのはガッツの左手らしい。その証拠に、故郷を重んじる小さき戦士は鼻血を出して地に伏していた。

 

「あの、起きた場所ってどこですか! 何か関係があるかも!」

 

身を乗り出すようにしてリコはガッツに問いかける。

 

「……起きた場所? 雪が積もった陰気臭え所だった。それで、たまたま通りがかった奴に道を尋ねた後……なんとかして登ってきた」

 

思い出しながらゆっくりと語られた経緯を聞き、今度はナナチが反応を見せる。

 

「間違いねえ、五層だ……!」

 

自分達が今居る場所から一段階下の名前に、目を見開くレグとリコ。残念ながら、二人はまだ五層に踏み入った事はない。それ故に、経験者であるナナチの言葉を疑う事は無かった。

 

だが、その単語を出した張本人はそうではないようだ。

 

「リコの予想が当たってたのか!?」

 

「ナナチ! それ本当?」

 

「んなぁ……自分で言っといてアレだけどさ、やっぱ信じらんねえ。アビスも探窟家としての基礎知識も知らねえ奴が、五層から生きて上がってきたなんて嘘としか思えねえんだ」

 

嘘偽りなく己の考えを吐き出すナナチ。それは決して間違いなどではなく、アビスに潜る者であれば当然とも言える反応だった。

 

「良く分かんねえが、俺の言った事が信用出来ねえならそれで良い。上への行き方とコイツさえ取って貰えりゃ勝手に出て行くさ」

 

どうやらガッツは晴れぬ疑いが掛けられる事は重々承知のようだ。毒々しいキノコの苗床となった右腕を晒し、ちょっとした用さえ済めば出て行くと言葉を添えて。

 

だが、その腕をチラリと見たナナチは間髪入れずに否定を返した。

 

「無理だ。今その水キノコを取ったら傷口が腐って死ぬぜ? まだ毒が少量残ってるってのもあるが、そんな事よりも血が全然足りてねえ」

 

「……そうか、なら仕方ねえ」

 

ガッツはその診断結果に特に動揺する事はなく。ただただ平然と言葉を返すと、その足の向きを出口へと向けた。

 

「また暫くしたら来る。そん時はよろしく頼むぜ?」

 

血色の悪いその顔から放たれた一言はレグ達は勿論のこと、彼の仲間であるパックも同様に驚愕させた。

 

まるで、一旦ここから出て行くかのような物言いに、聞き間違いかと思わざるを得なかった。

 

「が、が、が、ガッツ!? 何で出てっちゃうのさ! 絶対ここでお世話になった方が早く良くなるって!!」

 

重い足取りで出て行こうとする彼の眼前へパックは咄嗟に回り込むと、ここに居るべきだと言い放つ。

 

「ここは元々コイツらの家だ。お前はともかく俺は邪魔者だ。そこの茶色い奴が初めから警戒を解いてねえのが良い例だ」

 

「んなあっ!?」

 

動揺が現れたその表情を見るに、どうやら本当のようだ。

 

だが、その事実があったとしても外と比べてかなり安全なこの場所からわざわざ離れる意味が全く分からない。おまけに、ここに居させてくれという交渉が一切無い事もレグの理解を妨げる原因となっていた。

 

そんな中、リコがパックと同じようにガッツの前へと飛び出した。

 

「ガッツさん! あの、私は全然邪魔だとか思ってないです! ナナチは違うかもしれないけど……」

 

「僕も問題無い! そもそも、言い出したのは僕だ! 色々と面倒が増えるなら僕がやる!」

 

リコの一言を切り口に、レグも続いてガッツの滞在を肯定する。そうして、残りの一人へ視線が集中した。

 

「……んなあ! 分かったよ! 受け入れれば良いんだろ! だけど、少しの間だけだからな!!」

 

耳を畳んで目を瞑るナナチ。だが、それでもジワジワと迫り来るその圧には耐えきれなかったようだ。ヤケになったかのような少々乱暴な言い方だったが、彼の滞在を認めたのだった。

 

「邪魔じゃないってよ?」

 

パックがニヤついた笑みでガッツの肩へ乗り、頭へと寄り掛かる。これで、彼もここで安静にしてくれるだろうと、レグはホッと息を吐く。

 

 

 

 

 

しかし、返されたのは理不尽な否定だった。

 

 

 

 

 

「調子付いてるとこ悪いが、俺はお前らと馴れ合うつもりなんて無え。一人の方が気楽なんでな」

 

「えっ!? ちょっとガッツ!! 折角許可もらったのにどうして行っちゃうんだよ!」

 

「じゃあ聞くが、俺達がここに迷い込んでからどれだけ経つ?」

 

「……? 大体二日ぐらい?」

 

「そうだ。もうそろそろで片方の護符の効果が切れる……後は言わなくてもわかんだろ」

 

リコの横を平然と通り抜けて、彼は外へと出て行った。彼が最後に発した言葉の内容にパックは暫く唖然としていたが、すぐにその大きな背中を追って行く。

 

「えーっと……ごめん」

 

一瞬だけ振り返ったその妖精はしょんぼりとした表情を浮かべてレグ達に一言謝ると、サッと飛んで出口の曲がり角にその姿を消す。

 

一気に沈黙が訪れたそこに残されたのは、その行動を理解出来ない三人と、地面に点々と続く血痕だけであった。

 

「馴れ合うつもりは無えってよ? ほんと、どうかしてるぜ!」

 

「僕もそう思う。だけど、なんか違う気がするんだ……」

 

だが、レグはこの一連のやり取りに違和感を感じていた。それはまるで魚の小骨の様に彼の脳裏に引っかかり続けている。

 

「私もそう思う」

 

リコはその視線を地面からレグへ移すと、ハッキリとそう言った。

 

「あのね、さっきガッツさんが馴れ合いがどうとか言ってた時……とても悲しそうな顔してた。きっと、何か事情があってそう言ったんだよ!」

 

「一応聞いとくが、わざわざここから離れなきゃいけねえ事情ってなんだ?」

 

ナナチは問いを投げかける。だが、その答えなど分かりきっている。きっと、誰に投げても同じ答えが返ってくるだろう。

 

「……分かんない」

 

当然だ。出会ってたった少しの関係性。そんなもので人に内包された細かな事情など知るわけが無い。

 

「ま、そうだよな。そんじゃ、明日の朝に直接本人に聞きに行くか」

 

「い、良いのかナナチ!? てっきり、完全放置するのかと思っていた」

 

「始めはそう考えてた。ただ、ほとんど敵じゃねえ事が分かったからな」

 

「敵じゃない……? どういう事なんだ?」

 

ナナチの考えている事を読み取ったのか、リコがゆっくりと話し始める。

 

「あの人、すごく強かった。ボロボロの体なのにレグを簡単に倒しちゃうし、私が撃っちゃった矢だって普通に防いじゃった」

 

彼女の言葉にあの勘違いで起こってしまった戦闘を思い出す。始めは手荒に行く気が無かったとはいえ、後半は本気で止める気だった。

 

しかし、結果はお分かりの通りである。

 

組み伏せ、素早い足運び、矢の軌道を見切る目。卓越した技術の節々にレグは倒された。それは正しく歴戦と言って良い物だろう。

 

だが、彼女が言いたいのはより人間の本質を突いたものだった。

 

 

 

「あの人が……ガッツさんがもしその気なら、私たちを殺して薬を奪ったり、人質にして脅迫する事も出来た」

 

 

 

レグの脳裏に先日の光景が思い浮かぶ。満身創痍のガッツを大人数で囲み、殺そうとしていたあの探窟隊。アレの被害者側の者になる可能性があったのだ。

 

人の醜さを垣間見てか、もし略奪が起こっていたらと考えてなのか、彼の顔色は一瞬にして青ざめた。

 

そんな彼の肩をふわふわの手がポンと叩く。

 

「そういう事だレグ。今リコが言ってた状況であのガッツって奴は自ら去ったんだ。完全に敵じゃねえって訳じゃねえが、多少は信用しても良いやつかもな。あと……」

 

ナナチは少し悪戯な笑みを浮かべると、威勢よく言い放った。

 

「あんな強えんだ! 色々と交換条件付け足して、オイラ達には出来ねえ事でもやって貰おうぜ?」

 

「な、ナナチが……」

 

「凄まじく悪い顔してる……!」

 

あまり見かける事の無い表情に、二人の口からクスクスと笑いが漏れる。

 

「んなぁ! 何笑ってんだよ! 明日の為にもう寝るぞ!」

 

余りにも可愛い怒り顔が家の中に消えて行くのを見届けると、リコとレグもその後に続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。あっさりとした朝食を済ませた後、レグ達はガッツ達が残した痕跡を探しに外へ出ていた。

 

そして、肝心の痕跡の方は何の苦労も無く見つかる事となる。本来なら消えて無くなる筈であろう足跡は彼の規格外の装備重量で深く深く地面に刻まれ、流れ出た血液は雨が降らなかった事が幸いして地面の苔にドス黒く残ったままであった。

 

ただ、それを辿る上で一つだけ問題がある。

 

「……アビスの知識が無いってのは思ったよりも厄介だな」

 

ナナチの呟きの先にあったのは急な坂道。その上へと続く血の道筋だった。

 

きっと、何の知識もない彼は当たり前の様に登って行ったのだろう。探窟家であれば避ける筈の傾斜を。

 

「どうする? 僕だけ行って呼んで来た方が……」

 

「わ、私もちゃんと行く! ゆっくり登れば大丈夫! 多分……」

 

「オイラはここの負荷にだいぶ慣れてる。心配無用だぜ?」

 

「了解した。ただ、厳しいと感じたらすぐに言うんだぞリコ!」

 

「うん……」

 

四層の上昇負荷、それは全身のありとあらゆる穴からの出血と激痛。苦い記憶が蘇るその負荷を傷が治ったとはいえ、今のリコに負わせて良いのだろうかとレグは思案する。

 

だが、その心配も杞憂に終わる筈だ。

 

想像よりも彼女は強い。きっと、過去の経験が半ばトラウマとなり、思考を縛る鎖となっているだけなのだから。

 

 

 

 

 

強すぎる負荷を掛けないようゆっくりゆっくりと坂道を進み、ようやく彼らはこの坂の頂上まで辿り着く。

 

肝心のリコの方は覚えのある痛みだからか、思ったよりも元気そうだ。なお、充血しきった瞳や未だにポタポタと垂れている鼻血が、彼女を女の子らしくない見た目にデコレーションしているのは言うまでもない。

 

「ふぅ〜……よしっ! ちょっと痛いけどもう大丈夫!」

 

血の涙と鼻水を拭き、大きく深呼吸したリコはいつも通りの勢いを取り戻すと、坂を登る前と変わらぬペースで歩き始めた。

 

「も、もう行くのかリコ!?」

 

「うん! だって早くガッツさんと会わないとどっか行っちゃいそうだもん!」

 

その後は、元気そうなリコが先導する形となって進んでいった。痕跡は相変わらず途絶える事はなく、ものの数分でガッツの物と思われる野営地を発見する。

 

だが、そこにあったのは燻りを残す焚き火の跡だけでは無かった。

 

「何なんだ……これは!?」

 

目に入ったその光景は彼らを驚かせ、それと同時に得体の知れない恐怖を呼び起こした。

 

積まれて灰となった木の枝を中心に、周囲に広がる破壊の跡。大木はへし折れ、高くそびえていたであろう草木は腰ほどの大きさまで乱雑に切り刻まれていた。まるで、竜巻のような天災でも起きたのかと錯覚させる程である。

 

「やっぱり……この辺りの木、全部傷だらけ! しかも、血がいっぱい付いてる……!」

 

呟くリコの視界には、傷だらけとなった木々が。鋭利なもので抉られたかのようなその傷は、見たところ遠くの木には付いていない。

 

そして、そんな鋭利な物を持つ生物としてタマウガチが筆頭に挙げられるが、ここは彼らの生息地から大きく離れている。つまり、この傷は人為的に付けられたのだ。

 

「もしかして、何かと戦った……?」

 

もはや見慣れた血の跡を見て、リコがそう呟いた時だった。

 

獣道ですらない、ぼんやりと道のように見える草木の隙間。その両サイドの葉っぱの裏側が赤く染まっているのを発見する。

 

「ねえ、ここ! こっちに血が続いてる!」

 

「血? そんな跡どこにも……」

 

「見てみろレグ、葉の裏側だ」

 

植物に刻まれた小さな痕跡を確認した後、リコ達はその怪しげな道もどきをゆっくりと進み始める。

 

一歩一歩進み度に鮮明になってくるのは男の気配ではなく流れる水の音。その音に草木の音がかき消され始めた頃、一同はようやく目的の人物を発見した。

 

「居たぜ! ガッツだ!」

 

流れる川を中心とした、少し開けた空間。そんな人気の無さそうな川沿いに、彼は上半身裸の状態でこちらに背を向けて立っていた。きっと、血を洗い落としていたのだろう。その体は川の水で濡れている。

 

だが、彼らの目に映っていたのはその鍛え上げられた肉体などでは無く、隅々まで痛々しく刻まれた夥しい数の古傷だった。

 

「んなぁ……昨日も思ったがよく生きてんな」

 

凄まじい戦闘を繰り返した故なのか、それとも何か他の外的要因があったのかは不明だが、確かに言える事は彼の生き方は常人のそれと大きく異なるという事だった。

 

それぞれが表情を歪める中、何も知らぬ男と妖精が話し始める。

 

「いやー、昨日は思ったよりも数が少なくて良かったね!」

 

「ああ、まだ婆さんの護符が残ってるのもあるが、意外とここらで死んでる奴は少ねえらしい」

 

「そう考えると、この間の毒入りハリネズミの場所は……昔を思い出せそうだな」

 

レグ達には殆ど理解できないその会話内容。不思議そうな表情を浮かべる彼らの目に次に映ったのは、側に置かれた規格外の大剣をその傷だらけの右腕で持ち上げる瞬間だった。

 

表情に驚愕が浮かび上がる三名の前で、手首の力だけであの大剣をクイクイと動かし、調子を確かめている。

 

「また傷口開いちゃうんじゃないの? さっきオレが塞いだばっかなのに」

 

「全力で振らなきゃ問題無え」

 

そして、彼は鋼鉄の左手も柄へと持っていくと、前方へと大きく振るった。風を切る音と風圧に揺らされた木の葉のざわめきがレグ達の下まで響き渡る。

 

「凄えな……アイツ。今、殆ど意識せずに剣振ったぜ。道理で力場を読んでも避けられねえわけだ」

 

ナナチが感心の意を表しているすぐ横で、一人の少年は"度し難い……"と呟きを漏らす。きっと、己に持ち上げることすら出来なかったあの鉄塊をいとも簡単に振るっているからであろう。

 

ちなみに、リコはというと"あの左手、ちゃんと剣握ってる! やっぱり動くんだ!"と二人とはまた別の感心を示していた。

 

それぞれが色の異なる反応をする中、三人の誰かが小枝を踏んだようで、パキッと乾いた音が響いてしまった。

 

「ッ!!」

 

眼前の戦士の動きは早かった。普通のナイフを腰の鞘から取り出すと、かなりの勢いでそれを投擲した。空中を真っ直ぐ進むその刃は茂みの中へと突入し、レグの真後ろにある木へ頭を掠めて突き刺さる。

 

恐らく、直撃しても問題は無かっただろう。だが、明確に向けられたその殺意はレグにゾクリとした恐怖を植え付けた。

 

「ま、待ってくれ! 僕は敵じゃない!!」

 

段々と押し寄せるそれに耐えられなくなった彼は、ヘルメットにナイフの柄が当たるのもお構いなしに立ち上がり、両手を上げて呼びかける。

 

そのお陰で、ナイフ以上に突き刺さる殺気は鳴りを潜めたが、代わりに現れたのはどうしてここに居ると言わんばかりの形容し難い表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、なんでお前らここに居るんだ?」

 

所々に匠の技が見える甲冑を身に纏ったガッツ。何故か首元に手を添えて辺りを見回した後、彼は予想通りそう言った。

 

「もしかして覗きか? レグ、お前良い趣味してんな。自首するなら今のうちだぞ」

 

「ち、違う! というかなんで僕だけなんだ!?」

 

パックの呆れた声と不名誉な言葉がレグへと突き刺さる。どうやら、名探偵パックによると首謀者は彼らしい。

 

「レグ……お前そういう趣味してんのか? オイラ初めて知ったぜ……」

 

「違うんだナナチ! 僕は断じてそんな趣味は持っていない!」

 

悪ノリして煽りに煽るナナチ、至極真面目に弁解するレグ。そんな光景を横目にリコはガッツが投げ掛けた問いに返事をした。

 

「えっと、私たち今先に進む為に色々と準備してるんです! それで、ガッツさんの腕が治るまで診る代わりに色々と協力して欲しいなって……!」

 

その言葉を放った直後、辺りは静けさに包まれる。レグもナナチもふざけるのを止め、ガッツの返答を聞くべく耳と目を向けていた。

 

「フッ……構わねえよ。そもそも、こっちは断れる立場じゃねえ。でかい貸しもあるしな」

 

「……っ!! ありがとうございます!」

 

ホッと息を吐く三名。だが、安心しきったその心にまるで脅しのような低い声が突き刺さる。

 

「ただ……」

 

何の変哲もない切り出しの言葉。そうであるにも関わらず、不思議と恐怖が湧き上がる。殺意とは違った得体の知れない"圧"が彼らの心臓へ手を伸ばす。

 

それは、縄張りを侵された黒い獣からのシンプルな警告であった。

 

 

 

 

 

「夜の間はオレに近づくな……!」

 

 

 

 

 

全く笑っていないその視線に突き刺され、その表情を固く青く変貌させるレグ達。彼らの知る人物を幾ら探しても、同じ圧を出せるのは殆どと言って良いほど居ないだろう。

 

「やっぱ怖えよアイツ……!」

 

「初見だとそうなるよな〜」

 

こうして、釘を刺すように言い放たれたたった一つの言葉に恐れ慄く歪な協力関係が始まったのだった。

 

 




ドラゴンころし

ガッツの持ってる馬鹿げた大きさの大剣だ。盾にも使えるみてえだな。ただ、とんでもねえ重さしてるらしく、レグがムキになって持ち上げようとしてもダメだったみたいだ。

オイラは何かしらの遺物だと思い込んでたんだが、実際は何の変哲もない鉄の塊だとさ。リコがガッカリしてたぜ!

遺物じゃねえって事は、コイツは地上の誰かが作ったという事になるが……

ここだけの話、作ったヤツもそれを実際に使うヤツも……頭おかしくねえか?
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