第1話「狩人と全力娘」
ーサァッ!!!
ーギュイィィィアアァァァァァァァ!!
暗黒物質満ちる宇宙空間を赤い流星と緑の流星が駆け抜けていく
赤い流星は時折緑の流星にぶつかり、緑の流星はそれを弾き返しながら暗黒の空間を切り裂いて行く
『待ちやがれ…‼︎ お前だけは逃がさねぇぞ、イザーティア!!』
ーサァァァァァッ!!
赤い流星の強烈な一撃が緑の流星を大きく揺るがし、近くの小惑星に叩き落とす
ーギュイィィィアアァァァァァァァ!!!
緑の流星が墜落した場所から起き上がった「ソレ」は異形としか言えない姿をしていた
芋虫のような羽毛と鱗に包まれた小さな本体からいくつも袋状の器官がぶら下がり、更に背中からは触手がいくらも生え、うねうねと蠢きいくらかが束になり脚のようになって小さな体を宙に浮かべている
その目前に銀のラインが入る赤い体に黒いガントレットとレギンス、胸当てを装備した巨人が降り立つ
銀色の顔には鋭い目つきの金色の目が輝いていた
『やっと、追いついたぜ…‼︎』
立ち上がるその巨人は異形の怪物を睨みつける
ーギュイィィィアアァァァァァァァ!!!
巨人がイザーティアと呼ぶ異形がおぞましい声で吠える
と共にその触手が振るわれ、巨人へ襲いかかる
巨人はそれを見て腰に吊り下げられたキーホルダーのようなものを取り、左腕に装備したデバイスのグリップを握り、展開された手の甲側のリング型機構にそれを通過させる
《フォージング:カミソリデマーガ》
《ハンマーアップ:ツヴァイソード》
リングを通過したキーホルダーが赤熱・分解され、双剣の形に精錬される
ーサァッ!!
手にした双剣を逆手に持ち、襲いかかる触手を切断しその攻撃を回避しながら突撃する
触手を束ね槍のようにして直線に撃ち出すが、巨人は別のキーホルダーをリングに通し、新たな武器を呼び出す
《フォージング:EXゴモラ》
《ハンマーアップ:スピア》
精錬されたのは大きな穂先を持つ長槍
それをそのまま突き出しながら突撃する
『うおらァァァァァァァァァァァァ!!!』
触手攻撃を振り払い、突撃していく巨人
ようやく見えた本体に槍を投げ捨て、拳を突き立てようとする
ーギュイィィィィィィィィィ!!!
が、イザーティアは咆哮と共に4つに開いた口から翡翠の光線を放ち、巨人を大きく吹き飛ばす
『ぐあっ!!』
惑星表面に叩きつけられる巨人
その腰からいくつものキーホルダー状のアイテムが転がる
ーギュイィィィアアァ……
イザーティアの触手が落ちたキーホルダーを拾い、飲み込んでいく
『あ、おい⁉︎ オレのハンティング・タリスマン返せ!!』
巨人が起き上がり、イザーティアに突撃していくがその体からぶら下がる袋が二つ脱落し、ぐにゃぐにゃと形を変形させていく
ーゴァァァァァァァァ!!!
ーギュアァァァァァァァァ!!!
そこから現れたのは2体の怪獣
粘土細工を練ったような簡略化された恐竜じみた怪獣ーカグラーゴ、鳥のような姿をした怪獣ーシマキルガがイザーティアの袋状器官から生まれ落ちた
その体内の中央部が光り、カグラーゴの尻尾が鋭利な槍状に、シマキルガの翼が赤熱化し火の粉の羽を散らすようになる
『タリスマンの力を利用しやがるのか…‼︎』
怪獣たちを放置し、イザーティアは小惑星から飛び立ち近くに開いていた平行宇宙へのゲートに飛び込む
それを見て拳を握り、2体の怪獣を前に怯むことなく巨人が立ち塞がる
『オレは怪獣ハンター。ウルトラマンイクサ!!』
巨人ーウルトラマンイクサはビシッと怪獣たちを指差す
『お前たちをぶっ潰すヤツの名前だ。覚えておけ!!』
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蒼き星、地球
人間をはじめ、多くの人々や生物が命を育む奇跡の星
そんな星の夜空に一筋の緑の流星が流れ落ちた
ーしゃらん
五道町の片隅の古神社
そこの本堂から一人、巫女が空を見上げる
【ガォオォオオオオン…】
【シュルルルルルル……】
「お鎮まりください。ティグリス、イツシ」
どこか遠い、それでいて近い場所から響く虎のような咆哮と蛇のような呼吸音が聞こえたように巫女は静かな声で両者を宥める
「星辰の揺らぎ……大地が、獣たちが騒いでいる…」
「ー大きな異変が、はじまろうとしているのですね」
翌日
五道町の外れ、隕石の落下地点には人だかりができていた
未だにプスプスと煙を上げていた隕石の落下地点周辺では自衛官たちが規制線を引いて調査を行なっていた
「はいはーい、どいたどいた!仕事の時間だから通してねぇ〜」
野次馬たちをかき分けて少し茶色みがかった高めの身長のショートヘアの女性が規制線に近づく
青と白の派手な隊服にその上から白いコートを羽織った女性の格好も中々珍妙だが、その後ろについてきていた者もまた珍妙だった
『………』
頭部と思しき場所に青い発光体を持つイカを逆さまにしたような赤と銀のカラーリングの体を持つ長身の異形
左手に女性の制服と同じカラーリングの腕章が巻かれている
「
「
「記念だし写真撮っておこうっと」
「特殊自衛隊もいるのにほんとにこの人たちいるの?」
好き勝手に話し始める野次馬を無視し、ずんずん進む女性と異形を規制線前の自衛隊員が引き止める
「ここから先は立ち入り禁止です」
当然の言葉に女性はコートの内ポケットからライセンスを取り出し見せる
「対巨大生命体対策部隊GBCT隊長、
GBCT
Giant Beast Corespondence Teamの略称
10年前から巨大生命体・怪獣による被害が増加してきたこの日本にて、特殊自衛隊に続く形で結成された怪獣対策のエキスパートチーム
その行動理念は『怪獣をはじめとした巨大生命体、超常存在を理解・対応すること』
そのライセンスに渋面を見せた自衛隊員が渋々といった様子で二人を通す
「ランダル、宇宙線反応は?」
『……特には無い。今のところはただの隕石落下地点だと考えられる』
歩夢の問いに計器を操作しながら異形ースタンデル星人レドル・ランダルが淡々と返答する
『……本当に我々の管轄の事件だろうか?特殊自衛隊連中に任せてもいい現場にしか思えないが』
「そう言わない。私たちの仕事は怪獣をはじめとした超常存在を解明して理解し、対応すること……」
ビシッとランダルを指差しながら歩夢が告げる
「だからこそ現場百回!!超常存在かもしれないなら、見過ごさないのも私たちでしょ!」
『……それを為すには人員が足りなさすぎるがな。私と歩夢だけではそもそもチームと呼ぶのも怪しいだろう』
得意げに言い放っていた歩夢がランダルの言葉にショックを受け固まる
ランダルの言う通り、行動理念が特殊極まるGBCTに理解を示す人々は未だ少ない
悲しいかな、それが反映されてしまい現在GBCTの行動隊員は隊長である歩夢と技術部門のランダルのみ。事務員も数名しかいない
「痛いところを言うな……‼︎ 一般の未経験の方でも募集にしてるんだからそのうち集まるから今は我慢の時なんだよ…‼︎」
『……こんな鉄火場に一般人を入れるのもどうなんだ』
「こういう職場だからこそ!いろんな人が必要なの!!」
などと言いながら隕石落下地点に到着した二人
早速見聞している自衛隊員が二人を見つけ、制止する
「またあんたらか……ここは俺たち特殊自衛隊が調査しているんだ。邪魔するならー」
『……特殊自衛隊が調査する事案ならば我々も見過ごすことはできない事案だろう』
自衛隊員を睨むランダル
「そうそう、うちの科学担当の言う通り。ってわけで頼んだよ、ランダル」
『……承知している』
ぽんぽんと歩夢に肩を叩かれ、ランダルが落下地点に近づき、様々な計器を取り出しながら色々と分析を始める
時折調査中の自衛隊員を押し除けながら調査とサンプリングに没頭するランダルを白い目で周囲の自衛隊員たちが見ている
「なんなんだよあの宇宙人野郎…」
「ランダル。うちの科学担当隊員にして副隊長!」
ランダルに対し陰口を叩く自衛隊員の肩を掴み、真正面から見据えながら歩夢が笑顔で言う
「それ以上でも以下でもないし、それ以外でもない!それでも文句があるなら、いつでも聞いてやるから面と向かって言いな」
『……私は気にしていない。無用な衝突はやめろ、歩夢』
サンプルを肩から下げたボックスに収めながら戻ってきたランダルが歩夢の肩を抑えながら告げる
「終わった?案外早かったわね」
『……サンプルとなる残留物が少ない。いや、少なすぎる』
「少なすぎる…?燃え尽きたとか?」
『……そもそも燃えた痕跡が無い。更に言えば、こんな妙なものも見つかった』
ランダルがあるサンプルを歩夢に見せる
「……何これ?キーホルダー?」
そこに収まっていたのは少し焦げた銀色のキーホルダーのようなもの
恐竜の頭部に似た意匠が見られるそれは不思議なことにどこも溶けた様子が見られない
『……何にせよ人工物なのに違いはない。こんなものがある落下地点…怪しいにも程があるだろう』
「ちょっと待て!ここに落ちてたサンプルを勝手にー」
「こっちでレポートまとめて提出するって
止めようとする自衛隊員を制して歩夢とランダルが去っていく
背中越しに手を振る歩夢を隊員たちは恨めしそうに睨んでいた
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ーサァッ!!
ーゴァァァァァァァァァァ!!!
イクサのショルダータックルとカグラーゴの突進が激突。小惑星表面を大きく揺るがす
ーゴァァァァァァァァァァ!!!
衝撃で後退したカグラーゴが尻尾の先をイクサに向け、刺突を繰り出す
『
炎を纏わせた蹴りが鋭い刺突を弾き、その勢いを利用して大きく飛び上がるイクサは空中でくるくると体を回転させ、更に纏う炎の熱を上げる
『
青い炎を纏う蹴りがカグラーゴの胸に突き刺さる
凄まじいエネルギーを纏う一撃に耐えきれず、そのままエネルギーをスパークさせながら倒れ、爆発した
カグラーゴが爆発した跡から小さな光がイクサの手元へと戻り、EXゴモラのハンティング・タリスマンの形を為す
ーギュァァァァァァァァ!!!
シマキルガが背中を見せていたイクサへ炎の竜巻を放つ
が、その竜巻は直撃することなくイクサの眼前で両断される
ーサァッ!!
EXゴモラの力を精錬した長槍ーゴモランスを振るいながらイクサが突撃する
ゴモランスでの一撃にダメージを負ったシマキルガは武が悪いと判断したか、翼を羽ばたかせ離脱する
『待ちやがれ!!』
イクサもそれを追って小惑星から飛び立つ
シマキルガとイクサはイザーティアが通過したのと同じ平行宇宙へのゲートへと飛び込んでいく
『どこへ繋がってやがる…このゲートは…』
シマキルガを追いながらイクサが呟く
ーギュァァァァァァァァ!!!
シマキルガは後方から追ってくるイクサを火炎弾で攻撃するが、それらは全て回避され、イクサは更にスピードを上げシマキルガを追う
シマキルガとイクサがゲートを抜けた先
その宇宙のはるか向こうに青く輝く星が煌めいていた
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GBCTの空中要塞型基地・スターゲイザーベース
五道市上空に浮かぶ空の城
その中の作戦指令室にて、雑務の整理を行う歩夢の隣でランダルもサンプルの解析を行っていた
『……あらかたの解析は終わった。結果を出す』
「おっ、待ってました!」
ランダルが端末を操作し、種々のサンプルの解析データを画面に映し出す
『……まず落下地点でいくつか回収できた破片のようなサンプル。こいつは生物の組織と見て間違いがない』
映し出された画像はたしかに生物の細胞組織に似た構造が映し出されていた
「なんかあんたにしては歯切れの悪い分析結果ね」
『……それしか分からないからな。見ろ』
ランダルの示した画像を見た歩夢が目を見開く
細胞片は急速に劣化し、黒ずんで崩壊していった
『……早回しの映像じゃない。この細胞片らしいものはこんな急速さで劣化するのだ。分析したいが、その前にこれは崩れてしまう』
「なんだか変な細胞ね……そんな細胞の主人ならもうこの地球だとバラバラになったりしちゃうんじゃないの?」
『……さてな。そうかもしれんし、剥離した細胞だけがこうなってるのだとしたら……まぁ邪推の域を出ないことは科学者として断言できないがな』
手にしたタブレットを振りながらランダルが淡々と告げる
「警戒体制は維持しとかないとね。万が一この細胞の持ち主が現れたらその時は、私たちの仕事ってわけだし」
『……無論だ。続いてもう一つ』
ランダルがモニターに提示したサンプルはシルバーのキーホルダーらしい形状のサンプル
「ああ、あのキーホルダーね」
『……こいつもまた興味深いサンプルだった』
タブレット操作と共に新たな画像がモニターに映し出される
その画像はある怪獣の全身図
『……このキーホルダーは未知のエネルギー金属と怪獣生体組織の混合物だ。生体組織の分析結果としてこの持ち主はカミソリデマーガという宇宙怪獣だということがわかった』
「カミソリ……デマーガ……?」
『……異次元空間を渡る凶悪な怪獣だ。執念深く、一度発見されたら死ぬまでこちらを追跡してくる』
「なんだか血気盛んなヤツね……そんなヤツの細胞片がなんでこんなキーホルダーに?」
『……さぁな。流石に私も訳がわからない』
ピッ、とタブレットを操作しモニターを閉じる
『……分析データは既に特殊自衛隊に送っておいた』
「サンキュー、ランダル。さっすが副隊長」
『……副隊長じゃない。私とお前しかいない隊に副隊長も何もないだろう』
「だからこそじゃないの。こんな私について来てくれたただ一人の隊員。こっからメンバーが増えても、私が隊長である限り私はあんたを副隊長に指名し続けるから、ね?」
『……勘弁してくれ。私はそんな頭の痛い役職に就く気はない』
「ちょっと、それどういう意味!?」
ビーッ、ビーッ!!
と、言い合いをしていた二人の顔が警報と共に真剣なものに変わる
それぞれのデスクへと向かい、ランダルが分析結果を表示する
『……ポイントH4、
地上に設置された観測カメラにアクセスし、巌蓮山周辺の様子が映し出される
ーゴゴゴゴゴゴ……
鳴動する大地、裂ける岩盤
地底から巨大な影が立ち上がる
ーゴアァァァァァァァァ!!!
硬皮に覆われた巨体にヘラのような奇妙な形状の大角を持つ恐竜のような姿の巨獣。それが大きな体を持ち上げて咆哮を上げる
『……タイプRの大型怪獣。コイツは何度か同種族が火山地域で確認されていた。確か、識別名称はー』
「サルファルド!!こんなとこの地下にもいたなんて……」
サルファルドと呼ばれたその怪獣は体の各所に開いた噴出口から黒いガスを噴き出しながら住宅地へと進行をはじめていた
「っと、GBCTキャリアーにGBCTセンチネルを搭載!!現場に急行して、対象怪獣・サルファルドの調査・対処を始める!!」
『ラジャー!』
コートを脱ぎ、ヘルメットを装着した歩夢とそれに追従したランダルが格納庫へ続く簡易エレベーターに乗り込む
二人を乗せた簡易エレベーターはそのまま降下し、格納庫内に収められていた大型戦闘機・GBCTキャリアーに接続され、そのコクピットへとシートインする
「GBCTセンチネル、コンディション・グリーン」
『GBCTキャリアー、コンディション・グリーン』
「『テイク・オフ!!』」
スターゲイザーベースのハッチが開き、誘導灯に従ってGBCTキャリアーが発進口に向かって飛び立つ
折り畳まれていた主翼が展開され、GBCTキャリアーがスターゲイザーベースから飛翔していく
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーゴアァァァァァァァァ!!!
住宅地へと向かうサルファルド。その眼前に突然眩い閃光が発生
目が眩んだサルファルドは思わず後ずさる
『……ガードフィールド、展開』
GBCTキャリアーの上部からビーコンのようなものが放たれ、サルファルドの上空に滞空、ビーコンを中心にレーザーで構成されたバリアのようなものがドーム状に展開
森林地帯の一部の中にサルファルドを閉じ込めた
『……フィールド定着100%』
『オーケイ!じゃあセンチネルを投下して!』
『……了解した』
GBCTキャリアーの下部ハッチが展開。直方体コンテナ型の何かが直下に投下される
落下途中にその直方体コンテナが展開。短い脚と大きなアームが伸び、その左アームから大型のシールドが展開され、右アームの手のひらが開く
中型ロボット型のマシン・GBCTセンチネルが手のひらをにぎにぎと開け閉めし、サルファルドに向き直る
「いよっし怪獣くん!いっちょ拳で語り合おうか!!」
コクピットの歩夢の意気込みを反映したかのようにアームの拳をパキパキ鳴らすような仕草を見せるセンチネルを見たサルファルドはぱちくりと目を白黒させている
「サーチガン!」
センチネルの右手に収められていたパーツの一つが射出、スピードガンのような形になり、センチネルはそれをサルファルドに向ける
サーチガンから水色の光線が放たれ、サルファルドの体をなぞる
それと共に上空で待機するキャリアーにサルファルドのデータが整理されながら転送されていき、ランダルがそれを淡々と解析、閲覧していく
ーゴアァァァァァァァァ!!!
サーチガンの分析光線を攻撃と勘違いしたのか、サルファルドが興奮した様子でセンチネルへ突撃してくる
「っとと、いい子だから大人しくしといてッ!」
右手に装備したガンアタッチを切り替え、サルファルドの眼前に何かを発射する
発射されたそれが弾けて淡い緑の煙を撒き散らす
「精神安定成分を濃縮した煙幕弾、いい香りでしょ?」
『……歩夢。この手のガス下環境に慣れた怪獣には嗅覚細胞が変化した種が多いからー』
ーゴアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
一瞬呆けていたサルファルドが目を血走らせ、ドラミングのように胸を叩き吠える
『ー精神安定成分が効かない、あるいは逆効果になる可能性が…ともう遅かったか』
「遅いわよ!?」
ーゴアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
安定成分が反対に作用した様子のサルファルドがセンチネルへと突っ込んでくる
「おわわッ!?」
センチネルが左アームに装備したシールドを前に出してサルファルドを受け止める
脚部の履帯をフル回転させ、その突進のパワーを受け止めるがそれでも機体は後方へ押し戻されつつある
「ーッ‼︎ ちょっと乱暴するけど、ゴメンよッ!!」
左アームのシールドを押し除けながら振り上げ、サルファルドから一旦離脱。返す刀でシールドを突き出しながらサルファルドを吹き飛ばし転倒させる
「ランダル!分析まだ!?」
『分析自体は終わっている。サルファルドの体内からは今火山性のガスが噴き出し続けていて、喉元にある器官に熱エネルギーの蓄積を確認。体表組織の組成からー』
と不意にランダルが言葉を切る
「ランダル?」
『ーこちらに高速で接近する大型生体反応を検知!!お前の方に落ちてきている!!歩夢!!!』
ランダルの警告を聞いた歩夢の行動は素早かった
ふらつきながら立ち上がるサルファルドを突き飛ばしながらセンチネルを高速後退
それが早いか、ガードフィールドのバリアを突き破りながら炎を纏った何かがサルファルドとセンチネルの間に落下してくる
落下の衝撃をセンチネルはシールドを地面に突き立て踏ん張り、サルファルドは再び転倒。上空で待機していたキャリアーも機体をぐらつかせる
ーギュアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
落下地点から新たな巨体が立ち上がる
現れたのは燃える翼を持つ鳥型怪獣ーシマキルガだった
『……新たにタイプB大型怪獣の出現を確認した』
「見ればわかるわよ!こっちも早いとこ分析をー」
サーチガンを構えようとするセンチネルに向け、シマキルガは火炎旋風を放つ
すんででそれを避け、なんとかサーチガンを構えようとするが火球攻撃に阻まれる
「ちょっと!大人しくしといてよ!!」
『……歩夢。もう今回はタイムオーバーだ』
「いや、まだやれる!まだー」
『ガードフィールドが崩壊し始めている。怪獣を留めておくことは不可能だ』
センチネル越しに見上げた先でガードフィールドのバリアがバラバラと崩壊していく
シマキルガの火炎により崩壊は更に加速していく
「でもー」
『ガードフィールドが崩壊したら特殊自衛隊も黙っていない。ならば、せめて私たちが責任を持つべきだろう』
「ーッ‼︎」
ランダルの言葉に唇を噛み締め、右アームのガジェットを攻撃用のバルカンに変更し、シマキルガへ向ける
ーサァァァァッ!!
が、そのバルカンから弾丸が発射されることはなかった
空から降り注ぐ爆炎の流星がシマキルガを大きく吹き飛ばす
ーギュアァァァァァァァァ!?!?
「な、今度はなに!?」
シマキルガと共に困惑する歩夢
それを他所に分析を続けていたランダルが驚愕の表情を見せる
『……新たな大型怪獣…いや、この反応はタイプA……しかもこの反応は……!?』
シマキルガを吹き飛ばした爆炎の流星がくるくると回転、その炎を散らしながらセンチネルの目前に着地する
そこに立ち上がっていたのは、赤い体の各所に黒い甲冑を纏った巨人だった
「大型のタイプA!?なんでこんな時に…」
『……ただのタイプAではない。この特異なエネルギー反応に、あの姿…スタンデル星の同胞が以前別宇宙で遭遇した巨人に似ている』
『ー光の巨人、ウルトラマン。たしかそう呼ばれていた』
「ウルトラマン……」
怪獣と相対した巨人ーウルトラマンは興奮した様子のシマキルガと、隣で立ち上がるサルファルドを睨み、格闘技のような構えをとる
ーギュアァァァァァァァァ!!!
火炎弾と火炎旋風を放つシマキルガに向かってそのまま突撃。火炎弾を手刀で弾きながら身を回転させ、炎を纏った鋭い回転蹴りがシマキルガを捉え、吹き飛ばす
ーゴアァァァァァァァァァァァァ!!!
サルファルドもウルトラマンを敵と認識したのか、ガスを噴き出しながら突進。その首を掴み受け止めたウルトラマンは巴投げの要領でその巨体を放り投げる
ーサァッ!!
《フォージング:EXゴモラ》
《ハンマーアップ:スピア》
背後から迫るシマキルガを突如出現させた長槍で斬りふせ、更に起き上がって突撃してきたサルファルドに刺突を放ちダメージを与える
『……凄まじい戦闘技術だな』
「………」
ウルトラマンの戦闘を感心した様子で眺めているランダルに対し、歩夢はどこか不機嫌そうにそれを見つめていた
よろよろと立ち上がるシマキルガに向けてウルトラマンは長槍を収め、その両腕の手甲を擦り合わせ、火花を放ちながら赤熱化させ広げる
『ーイクサライズ光線ッ!!!』
赤熱化した両腕をエックス時に交差させ、真紅のエネルギー迸る必殺光線を放つ
ーギュアァァァァァァァァ!?!?!?
光線が直撃したシマキルガは断末魔の咆哮を上げながら倒れ伏し、爆散する
シマキルガの爆炎の中から赤く煌めく光点がウルトラマンの下へ飛び、その手に収まるとタリスマンの形に変化した
ーゴアァァァァァァァァ…!!
よろよろと立ち上がるサルファルドに向き直り、構えるウルトラマン
が、その肩口に何が命中し炸裂、その体がよろめいた
「ウルトラマンだかなんだか知らないけど…いきなり降ってきといて怪獣たちをただ殺していくなんて、私は許さない!!」
サルファルドの前に立ちはだかるのはセンチネル
思わぬ存在からの攻撃にウルトラマンーイクサは困惑した
『怪獣をただ殺すのが許せないだぁ?何言ってんだこの星のヤツは…』
『怪獣なんて、倒さないとならないヤツ以外の何ものでもないだろうがよ…‼︎』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「翠玉の流星は降り、それと共に神聖なる獣たちは目を覚ましました」
薄暗い部屋の中、似た服装で統一された大勢の人々が膝を突き平伏、目前の祭壇に向けて祈りを捧げている
祭壇の前で平伏する人々の前で黒いヴェールで顔を隠した人物が祝詞のように言葉を告げていく
「既に兆候はありましたが、我々の望む浄化が今ついに始まろうとしているのです」
ヴェールの人物の言葉に人々がおお、と歓喜の声を上げる
「さぁ、祈りましょう。我らが
「穢れきったこの世界が浄化されゆく日は近いのです…‼︎」
ヴェールの人物が祈りを捧げ始めると共に人々もまた深い祈りを捧げ始める
祭壇に鎮座していた本尊ー悪魔のような造形の人型の眼のような部分が、祈りに反応して光り輝いたように見えた
ウルトラマンのやり方に納得のいかない歩夢
同時にイクサも怪獣を守ろうとする歩夢を理解できずにいた
そんな中逃げたサルファルドが再び姿を現す
そんなサルファルドへ「浄化」を祈り、身を捧げんとする人々
人々を守るためにサルファルドの討伐を決定する特殊自衛隊
そんな中でも、歩夢はサルファルドも救おうと立ち上がっていた
次回ウルトラマンイクサ
「信念と見えない涙」