ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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第12話「龍脈と霧慧の黙示録」

ーサァァァァァ……ッ!!

 

シールドを展開し、テラジュームアンタレスの破壊光線を受け止めるイクサだが、そのあまりのエネルギーを押さえきることは叶わず、シールドが粉々に砕け散り、光線がイクサに直撃する

 

『「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」』

 

あまりのエネルギーにイクサの体からエネルギーがスパークし、脱力。膝を突き、倒れ伏す

 

その胸のカラータイマーの点滅がイクサの限界を知らせていた

 

ティグリスと、その目を介して一部始終を見据えていた苑樹(えんじゅ)は倒れ伏すイクサの背を見て、一瞬表情を曇らせる

 

ーグァァァァウゥゥゥ…‼︎

 

が、再び怒りの炎をその目に宿らせるとティグリスはテラジュームアンタレスへと疾走していく

 

「ダメ……苑樹さん……ッ‼︎」

 

イクサが手を伸ばすが、声も手もティグリスには届かない

 

 

ーグァァァァウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「テ、テラジュームアンタレスの再発射は⁉︎」

「地下テラジュームリアクターからのエネルギー供給が間に合いません…‼︎ 怪獣がこちらに到達するのが先ですッ‼︎」

 

隊員の悲痛な叫びの中、モニターに映るティグリスの体で爆発が起き、肉が爆ぜ飛ぶと共に血飛沫が舞う

 

 

「が…⁉︎ はッ⁉︎」

 

イクサたちのいる場所が見渡せる森の中

苑樹が脇腹を押さえ、体をくの字に曲げながら膝をつく

 

「こ、れは……ッ⁉︎」

 

苑樹が銅鏡を持ち上げ、ティグリスの視界から地表を見据える

 

と、地表が煌めき、何が飛翔し左目に直撃

そして突き刺さったそれが小爆発を起こす

 

「がぁぁぁあァァッ!!!」

 

苑樹も銅鏡を取り落とし、左目を押さえて苦悶の絶叫を上げる

 

怒りのあまりティグリスとより深く繋がり、力を送っていた苑樹にティグリスのダメージがフィードバックされてしまっているのだ

 

 

ーグァァァァウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

左目から大量に出血するティグリスを地上の湯田直属の機動部隊がスコープ越しに見据える

 

「ダビデ003、効果確認」

「攻撃続行。ヤツを保管庫に近づけるな」

 

よろめくティグリスに更に銃口が向けられる

引き金が引かれ、ダビデ003が放たれる

 

ーサァァ……ッ!?

 

が、その弾丸が命中したのはティグリスの前に飛び出したイクサの脇腹だった

 

突き刺さった弾丸が突き刺さり、爆発

血飛沫のようにイクサから光がまた溢れ出す

 

「⁉︎もう一度…‼︎」

 

機動隊員が構え直そうとする

 

 

ーキュオォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

と、どこからともなく透き通る声が響き渡った

 

同時に降りしきる雨がより強くなり、天の底が抜けたのかと言わんばかりの雨が降り始める

 

「なっ⁉︎」

「報告!五道(ごどう)市各所から謎の高エネルギー反応検知‼︎すぐさま迎撃に迎えと指示がありました‼︎」

 

機動隊員の報告を受けた隊長らしい人物は隊員たちを下がらせていく

 

 

膝を突くイクサ、その側でティグリスは天を見上げていた

 

【嗚呼……ついに逆鱗に触れてしまった……】

「逆鱗…?それって……」

 

ティグリスがイクサを見据える

 

【この町の地下は龍脈の結束点。あなたたちが向かった岩神諸島もまた龍脈の結束点であり、大地と共に生きる怪獣たちが息づく場所でもあるのです】

 

【その龍脈が(よど)めば、怪獣たちは居場所を失い大地は衰弱していく。龍脈の枯渇した大地は怪獣共々死に絶えていくしかない…】

 

「それじゃあ、あの兵器はー」

 

【人間たちは幾度となく大地に必要以上の干渉をし続けてきた。大地のバランスを崩し、龍脈に生きる怪獣たちを刺激し、ついにはその龍脈にまで直接干渉をしてきた】

 

ティグリスと苑樹の怒りの眼光がイクサを見据える

 

【元より理解など、人間はする気がない。したとしても、大地を汚すことを人間はやめない。だから相互理解など夢想でしかないのです】

 

「だからって…怪獣たちが人間を滅ぼそうとするのは間違ってる…」

 

イクサの中から歩夢(あゆむ)が反論する

 

「怪獣が暴れれば、人間はそれを殺そうともっと強力な武器を手にしていく。あなたたちに使った特殊弾丸や、あの新兵器のように…」

 

「だから、怪獣たちも私たちと共に生きる命だって、みんなに理解してもらわないと…このままでは共倒れになるだけだから…‼︎」

 

【あなたの綺麗事はもうウンザリですッ!!】

 

『ああ、確かに綺麗事だな……』

 

今度はイクサが苑樹に語りかける

 

『でも、一理くらいはあるんじゃないのか?』

 

【……狩人が、今更何を⁉︎】

 

『ああ、オレは狩人だ。何十も、何百も怪獣を狩り尽くしてきた。今更許してくれなんて言やしねぇよ。でも……これからを変えることはオレにだってできる…』

 

『まだオレもわかりきった訳じゃねぇ。だが、人間からあゆみ寄ろうとする歩夢がいて、怪獣と共に生きるお前がいて、こうして言葉を交わせるなら……憎み合う以外にあるんじゃねぇのか⁉︎ オレたちが生きた宇宙は非情すぎて不可能でも、こうして対話できるここなら…ッ』

 

イクサは拳を握りしめながら俯く

 

『憎むのも、殺すのも……簡単で、それでいて心を多く持って行きやがる…そんなもの、無くせるなら無い方がいい。それは、こんなオレでもわかるんだよ…‼︎』

 

「イクサ……」

 

【………】

 

それを告げたイクサの姿が薄れ、消える

エネルギーが限界になったために一時撤退せざるを得なかったのだ

 

【……わたくしには、わたくしたちにはこの道しかない…】

ーグァァァァウゥゥゥ……

 

苑樹の独白にティグリスの咆哮が重なる

その咆哮は、どこか優しげで穏やかだった

 

【…ティグリス?】

 

ーギュアァァァァァァ!!!

 

と、油断していたティグリスに空から強襲する影が現れ、その巨体が吹き飛ばされる

 

【ぐぅっ!?】

 

飛来したそれはティグリスの正面に着陸する

3体の怪獣が合体した合体怪獣トライキングがティグリスを睨む

 

『大地の牙ティグリス…我らの主のためにここで退場願おう』

 

【大地の力を利用する存在…お前は何者だ!?】

 

トライキングへティグリスが疾走

保管庫を背にした怪獣同士の決戦の火蓋が切って落とされた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

豪雨の中、なんとか待機させていたセンチネルのコクピットまで戻った歩夢

 

その脇腹には血が滲み、他もぼろぼろだった

先の戦いのダメージがまだ残っていたのだ

 

呼吸を整えながらGBCTパッドを開き、ランダルに通信を繋げる

 

『歩夢か。ようやく通信が繋がった…状況は?』

「雨が酷くなってきたわ…もうバケツひっくり返したみたいな感じで雨粒が痛いぐらいよ…」

『怪獣たちの出現が各地で頻発している。リュウと大介(だいすけ)が新たに2体保護してこちらに合流したが、それも含めてこちらでルシルや駿河(するが)に調べてもらって共通項が分かった』

 

ランダルが報告を続ける

 

『ルシルが調べて所見では、怪獣たちはどうやらエネルギー不足で弱っている状態にあったらしい。そこで駿河がここら一帯のインフラ以外のエネルギーの流れを調べてくれた』

「高濃度になってるポイントがあったんでしょ…?それは私も見つけたわ。というか、特殊自衛隊が使った兵器が正にそのエネルギーの収束点だったんだけど」

『ーなるほどなぁ。ガウルが言ってた新兵器はそれか』

 

駿河が代わりに電話口に出る

 

『一つはそれなら納得じゃが、問題はエネルギーの収束点はもう一つ見つかっとることなんよな』

「エネルギーの収束点がもう一つ…?」

 

GBCTパッドにデータが送られてくる

駿河が調べた一帯のエネルギー反応分析。そこには五道市全域が黄色くエネルギー低下している中、真っ白になるまで高濃度になっている地点が2つ見受けられた

 

一つは今歩夢が近くにいる第三保管庫

もう一つはー

 

炎魔(えんま)丘陵…?」

『そうじゃ。炎魔丘陵、その地下数百メートルんとこにもう一つ高エネルギーの収束点がある』

 

それを聞いて歩夢がしばし思案を巡らせる

 

「わかった。ランダルに代わって」

『あいよ』

『ー作戦は決まったか?』

「ええ。炎魔丘陵にはリュウと大介を向かわせるわ。ヘラクレスの掘削用換装を届けてもらえるかしら?」

『了解した。が、お前はどうする?』

 

ランダルの問いに歩夢は一度沈黙する

 

ーキュオォォォォォォォォォン……

 

豪雨の中、澄み渡る声がまた響く

 

「……私はこの雨の主らしい人に、話をつけてくる」

『……どういうことだそれは』

「多分、私とイクサでないとダメだから」

 

それを聞き、今度はランダルが沈黙する

 

『無茶だけはするなよ。隊長』

「わかってるわよ」

 

ランダルの言葉に歩夢がニッと微笑む

 

 

歩夢の言葉を聞き、ランダルがGBCTパッドを閉じる

GBCT地上基地の怪獣保護ブロックで共に一部始終を聞いていた水輝、ルシルがランダルを見据える

 

『隊長からの指示だ。私と水輝(みずき)でGBCTキャリアーを発進。炎魔丘陵に向かった大介たちに掘削用換装を運搬する』

「了解ですッ!」

『ルシルは駿河と共にここで怪獣たちの様子を見ていてくれ』

「了解した」

「人使いマジで荒いな…まぁええけど」

 

ランダルたちが準備を始める中、ルシルは駿河に声をかける

 

「貴方もなんだかんだ、付き合いはいいのだな」

「なんじゃそりゃ…ワシそんなとっつきにくい感じ?」

「いや、そういうわけでもないが…」

 

ルシルは顎に手を当て、駿河を覗き込む

 

「……貴方と歩夢隊長はなんだか正反対な気がするのだよ」

「あー……よう言われるわ。まぁそれは事実じゃけど」

 

ポリポリと駿河が頭をかく

 

「まぁ、それでもあいつのこと、なんだか憎めん。似たようなヤツも、あるんじゃろうなぁ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

歩夢はGBCTセンチネルを走らせながら、ひとまず一番大きな傷である脇腹の応急処置を行なっていた

 

「イクサ、ありがとね」

『……礼を言われる筋合いなんか、ねぇよ。オレはオレの仁義を通しただけだ』

 

イクサはぶっきらぼうに答える

 

『オレたちの宇宙にまだいた時、ある星で怪獣に全て奪われた女を助けた時があった。アイツも、オレと同じく怪獣を憎んでいたし、何より素質があったから怪獣ハンターの仲間としてオレたちは迎え入れて、そいつはオレの戦友になった』

 

『……頼もしいヤツのはずなのに、アイツが怪獣を憎んで、その手が血に染まるのを見る度に、オレはなんだか苦しくなった…思えばあの時にオレはもう、オレの正しさがわからなくなってたのかもしれない…』

 

イクサの話を聞いた歩夢が口を開く

 

「そんなものだよ。多分。誰もが正しさに迷うし、誰もが正しさを探してる」

 

「私もそう。綺麗事だってわかってる。荒唐無稽だってわかってる。本当に正しいのかって何度も私も思ってきた」

 

歩夢はニッと笑みを浮かべる

 

「だけど私は、私として正しくありたいから、この道を曲げない。そう誇れるのがこの道だって、私はそう胸を張って言えるから」

 

『……誇れる、道か……』

 

歩夢の言葉を受け取ったイクサがその言葉を繰り返す

 

『ところで、オレたちはどうするつもりだ?話をつける相手ってのは誰のことなんだよ?』

 

「この龍脈の(あるじ)さん、かな」

 

歩夢はそう答える

目的地はわかっている

 

エネルギー反応の分布の中、低下しつつある五道市全域の中、炎魔丘陵と第三保管庫の収束点には及ばずとも他より高いエネルギー量を記録していた場所

 

五道市中央 五行(ごぎょう)町へ

 

 

炎魔丘陵

上空で待機していたキャリアーの直下に大介とリュウの乗っているヘラクレスが現着する

 

『換装を投下する』

『了解』

 

キャリアーからコンテナが投下され、ヘラクレスのアームのうち2本がショベルのようなアームへと換装される

 

「………」

「どうした?リュウ。なんだか浮かない顔だが…」

 

コクピット後方のリュウを振り返りながら大介が問う

 

「……なんだか、すごいゾワゾワと嫌な感じがする…」

 

ヘラクレスがショベルアームを使い掘削を開始していく様子を豪雨に濡れながらも眺めていた人物が2人

 

「おお……おお……‼︎なんたる冒涜!!斯様な穢らわしい鉄の獣で我らが聖地を侵さんとするとは……‼︎」

 

黒い儀礼装束を纏い、顔を黒いヴェールで隠した男が興奮気味に叫ぶ

 

「……やはり感づくのは早いようですね」

 

その隣のもう一人の黒装束ー火煙(ひえん)が微笑み、懐から小さな木像のようなものを取り出し、男に渡す

 

煙角(えんかく)。敬虔なる使徒である貴方に我らが神より使命が下されました」

 

「ーあの者たちを、阻めと」

 

男ー煙角はその木像を受け取る

 

「こ、これは…霧慧(きりえ)の神の御分体(ごぶんたい)…⁉︎ありがたき幸せ…‼︎」

 

煙角は木像を掲げ、何やら祈りを始める

 

「さぁ、お披露目といきましょう。我らが霧慧の神、いえー」

 

 

「ーキリエルの神の力を」

 

 

煙角が力を込め、天高くに向けて両手を広げる

木像が輝き、煙角の足元が崩れ獄炎が噴き出し巨大な火柱を為す

 

地獄より迫り上がるかのように、黒き仏ー否、悪魔のような巨人が姿を顕にした

 

ーキリィッ!!!

 

現れた巨人ーキリエロイド・アバターは悲しみを浮かべたような顔をヘラクレスに向けると、その拳から獄炎の弾丸を放ってくる

 

「ぐあっ!?」

 

突然の攻撃にヘラクレスを下がらせる大介

キャリアーからアルバトロスを分離させ、空から2機が攻撃を行うがキリエロイド・アバターはそれを軽やかに躱し、獄炎弾による反撃を放つ

 

「異星人…⁉︎ なんでこんなタイミングで…」

『……見たことのない種族だ。こいつは一体…』

 

キャリアーとアルバトロスが一時離脱したのを見たキリエロイド・アバターは右拳に獄炎を溜め、ヘラクレスに向けて構える

 

「兄貴!ここはオレが!!」

 

《ウルトライブ‼︎》

《ウルトラマンテラ!!》

 

ーキリィッ!!

 

キリエロイド・アバターが放つ獄炎弾がヘラクレスから飛び出した蒼き光に打ち消され、かつその光にキリエロイド・アバターが吹き飛ばされる

 

ーキリィッ!?

 

倒れ伏したキリエロイド・アバターの目前にウルトラマンテラが着地する。キリエロイド・アバターもしなやかな身体使いで立ち上がり、古武術のような構えをとる

 

ーテァ……‼︎

ーキリィィ……‼︎

 

テラとキリエロイド・アバターが互いの構えを保ちながら間合いを測る。互いに構え直すと共に突進、拳を交える

 

テラの拳や蹴りをキリエロイド・アバターは柔軟に受け流し、その拳を掴んで後ろ手にテラを捻り上げ拘束する

 

ーキリィッ!!

 

そしてすかさずヘラクレスに獄炎弾を放ち、掘削作業を妨害する

 

「くっ、こいつ⁉︎ 抜け目がなさすぎる…‼︎」

 

テラは肘鉄を食らわせ、キリエロイド・アバターを怯ませるとその腕を逆に掴み、柔術のような体捌きでその巨体を放り投げる

 

ーテァッ!!

ーキリィッ!?

 

捻り上げられた腕を振り、感覚を戻しながらキリエロイド・アバターを睨む。投げられたキリエロイド・アバターは軽やかに身を翻し着地する

 

『退がれ、穢らわしき者どもよ。ここは我らが聖地。我らの黙示録のはじまりの地である!』

 

キリエロイド・アバターは手を広げ、天を仰ぎながらテラたちに告げる

 

「聖地…?」

「黙示録の地…だと…?」

 

『訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!ここで何をする気だ⁉︎』

『我々はただ神の御心のままに、その到来を待つのみ。そして今正にその時が迫ろうとしている』

 

キリエロイド・アバターはテラを指差す

 

『貴様らのような紛い物の救世主ではない真なる神は、我らが信仰と共にある!!我らが信仰と偉大なる救済の邪魔をする悪魔は今ここで死ぬがいい!!』

 

 

五道市の各地からは巨大な水柱が噴き出す

 

ーキュォオォォォォォォォォォン!!!

 

噴き出す水柱と共に蛇のようなものが姿を表す

 

鈍色の鱗と赤いツノ、金色の瞳を持つ龍の頭だった

 

避難する人々と入れ替わりで現れた特殊自衛隊の機動隊員たちが小銃を構え、攻撃を開始するが龍たちに弾丸は届かず、全て弾かれていく

 

ーキュォオォォォォォォン!!!

 

龍の咆哮と共に車両や兵器のシステムがダウンし、周囲の電気系統もショートしていく

 

 

五道市の各所で同じように龍が現れていく中、五行町中央から大きな水の渦が広がっていく

 

地面という封から抜け出すように鈍色の鱗を持つ二足で直立する龍が姿を現す

 

 

ーキュォオォォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

長大な首を振り、天に向けて上がる咆哮

それを皮切りに雷鳴が鳴り響き、更なる勢いを以て雨が降り注ぐ

 

巨龍ーリュウミャクノオロチは人類の街を金色の瞳で睥睨する

 

神とも語られた龍脈の主は、その瞳に静かな怒りを滲ませていた

 

それを遠景からGBCTセンチネルに乗った歩夢が見据える

 

「あれが、龍脈の主……」

 

さしもの歩夢も、リュウミャクノオロチが放つプレッシャーに気圧されていた

 

『話して聞いてくれるのか、こいつは…⁉︎』

「……話すしかない。もう憎しみ合わないためにも‼︎」

 

 

歩夢がイクサファーナスを構え、カードを装填する

 

《アユム:イクサイテッド》

 

歩夢が突き出す拳を鏡合わせに現れたイクサが受け止め、2人が一体化して巨大化していく

 

《リンケージ:ウルトラマンイクサ》

 

ーサァァァッ!!!

 

 

水没しつつある街並にイクサがその足を下ろす

正面には遂に地上に全身を現したリュウミャクノオロチ

 

東洋の伝説に語られるような龍を直立させたような長大な体は鈍色の鱗に覆われ、ところどころから赤い炎が渦巻いていた

枝分かれし、広がる尾の先は全て龍の頭になっており、本来の頭と共にこちらを睨んでいた

 

ーキュォオォォォォォォン!!!

 

長い首をしならせながらリュウミャクノオロチが咆哮する

 

それと共に雷鳴が一箇所に集まり、轟音と共に雷が大地に降り注ぐ

 

いくつかの雷が街並を破壊する中、自身に降り注いできた雷をシールドでイクサが防ぐが、あまりの威力に膝をつく

 

たがめげずにイクサは立ち上がり、リュウミャクノオロチを見据える

 

「お願い!話を聞いて!!」

 

リュウミャクノオロチがその体の周囲に雨を集め、いくつもの大きな水弾を作り出しイクサに向けて放つ

 

EXレッドキングのタリスマンから精製したナックルで水弾を撃ち落とすが、いくつかは落としきれず、大きく吹き飛ばされる

 

【聴く必要はない】

 

威厳に満ちた厳格な声が直接歩夢の頭に響く

 

(われ)ら大地に生きるもの、大地の命を育むもの】

 

【大獣も、獣も、人の子も、全て吾らの育んだ等しき命】

 

【吾らと分たれて尚、同胞(はらから)と信じ見守り続けたが】

 

【最早その増長、看過できるものではない】

 

リュウミャクノオロチの咆哮と共にイクサの下にいくつもの雷が降り注いでいく

 

【地を汚し、地を奪い、遂には龍脈までも(よど)ませた】

 

【そなたら人の子は、もう吾らが同胞とは思わぬ】

 

【吾らの生を脅かす、『敵』である】

 

降り注ぐ雷にその身を焼かれ、イクサが倒れ伏し水没した道路の中に沈みかける

 

しかし、イクサは、歩夢は再び立ち上がる

 

「……確かにそう。私たちはあなたたちから色んなものを奪ってきた。色んなものを脅かしてきた……あなたたちのことを、何も知らないから…」

 

「だから……だから今度こそあなたたちと共に歩むために、私たちはあなたたちを知っていく!」

 

歩夢は遠くで共に戦う仲間たちを思い浮かべる

 

「知りたいと願ってくれた人がいる」

 

「同じ命だと、救おうとしてくれる人がいる」

 

「共に生きる友として、寄り添える人がいる」

 

「そして…そんな人たちを笑わない仲間もここにいる‼︎」

 

イクサを通して言葉を投げかける歩夢をリュウミャクノオロチはその瞳で見据える

 

「信じて!龍脈の主!!」

 

「私たちは変わっていく!私たちから変えていく!!」

 

「何十年かかるかわかったもんじゃないけど、必ず!!」

 

リュウミャクノオロチはその言葉を聞き届けた

だが、その瞳から怒りが消えることはない

 

ーキュォオォォォォォォォォォン!!!

 

咆哮。そして一際激しい雷鳴が響き始めた

 

「……お願い…」

 

祈るように歩夢が言葉を絞り出す

 

イクサがその拳を強く握りしめていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ーキリィ!!

 

キリエロイド・アバターと組み合い、鋭い肘鉄からの腕ひしぎを受け、テラが蹴り飛ばされる

 

ーテァッ…⁉︎

 

ーキリキリィ……

 

倒れ伏すテラにジリジリとキリエロイド・アバターが迫り、右腕を振り上げる

 

ーキリィッ!!!

 

その右腕が振り下ろされる

が、その直前にキリエロイド・アバターの眼前で眩い光が発生し、たまらずキリエロイド・アバターが後退する

 

ーキリィィィッ!?

 

よろめくキリエロイド・アバターの胸に飛来した巨岩が激突し、さらにダメ押しと2条の光線が直撃する

 

立ち上がるテラに後方から駆けつけたヘラクレスとアルバトロス、キャリアーが並び立つ

 

『大丈夫か?リュウ』

『私たちだって舐められてばかりじゃないですよ‼︎』

『サポートは任せろ。お前はお前なりに動いていい』

 

大介、水輝、ランダルからの激励を受け取り、テラが頷く

 

「ありがとう、みんな‼︎」

 

インナースペースのリュウがその手にマグマイーターのテラスパークドールズを取り出し、テライグナイターに読み込ませる

 

《ウルトランス!!》

《マグマイーター・ソウル!!》

 

マグマイーターの力を解放したテラの左腕と右脚に装甲が追加、更に腰から尻尾が伸びる

 

獣のように低く構えるテラを睨み、キリエロイド・アバターが怒りに拳を震わせる

 

ーテァッ!!

ーキリィッ!!

 

再び両者が飛び出し、激突する

テラの爪撃を回避し、カウンターの蹴りを放とうとしたキリエロイド・アバターの背にアルバトロスからのビームが直撃。よろめいた隙にテラの爪がその体を引き裂く

 

反撃に獄炎弾が放たれるが、キャリアーのビームにより撃墜

爆煙を引き裂いたテラの尾撃がキリエロイド・アバターの胴体を薙ぎ払う

 

『兄貴!!』

「よしきた!!」

 

リュウの声に応え、ヘラクレスが4本のアームを組む

バック宙でそこに着地したテラをヘラクレスがフルパワーで打ち上げる

 

飛び上がるテラをキリエロイド・アバターが獄炎弾で迎え撃つ

 

が、飛び上がった勢いそのままに身を丸めて拘束回転したテラはそれを物ともせずキリエロイド・アバターに殺到する

 

ーテァァッ!!!

ーキリィィィッ!?!?

 

強化された右足での踵落としが直撃し、キリエロイド・アバターの胴体が大きく引き裂かれる

 

翻り着地したテラは既に腕にエネルギーを貯めていた

 

苦し紛れに放たれた獄炎弾に対抗し、振り向きながら必殺の一撃を放つ

 

『テラジュームシュート!!!』

 

テラの必殺光線は獄炎弾を容易く貫き、キリエロイド・アバターに直撃。その体に何度も小爆発を引き起こす

 

ーキィリィィィアァァァァァァ!?

 

キリエロイド・アバターの絶叫がこだました

 

 

こちらを見下ろすリュウミャクノオロチに相対し、イクサが立ち上がる

 

『この頑固野郎がッ!!こいつが人を騙すタマに見えんのかッ!!』

 

叫んだのはイクサの方だった

 

『こいつはな、怪獣のためにも、人間のためにも命をかけやがる大馬鹿野郎だ……だがな‼︎だからこそコイツは、どの命にも嘘はついてないってわかるんだよ……』

 

『怪獣も守りてぇ、人間も守りてぇ……バカみてぇな綺麗事だ……でもコイツには覚悟がある。その覚悟が色んなヤツを動かしてんだよ』

 

リュウミャクノオロチはその訴えをただ黙って受け止める

 

『大地に生きる、等しき命ってんなら、変わろうとしてるコイツらのこと無視してんじゃねぇ!!!必死に生きてるのは、共に生きる道を見つけようとしてんのは、コイツらも同じだろうが!!!』

 

「イクサ……」

 

訴えを聴き届けながらリュウミャクノオロチはまだその怒りを収めない

 

【戯言は終わりか?意味のない時だったな】

 

「………ッ」

『この野郎…‼︎』

 

リュウミャクノオロチが再び雷を呼ぼうと首を揺らす

 

《ー待たれよ、龍脈の(ぬし)よ》

 

その時、インナースペースの歩夢の懐から光り輝く勾玉のようなものが飛び出し、リュウミャクノオロチの眼前に浮かぶ

 

「あれは…ガイアルドから預かった勾玉…?」

 

【!?岩の神…⁉︎何故貴様が、それを人の子に預けている⁉︎】

 

《ー見定め、知ったからだ。この者どもが、我らと共に生きるに相応しい慈愛あるものだと。守るべくために戦えるものだと》

 

勾玉から響く声にリュウミャクノオロチが目を細める

 

《ー目を曇らせるな、龍脈の。人の子と長く寄り添い生きたお前が一番よく知っているはずだ。憎しみに目を曇らせた結末を……》

 

【…………】

 

それだけ告げた勾玉はイクサのカラータイマーからインナースペースに立つ歩夢の元に戻っていった

 

リュウミャクノオロチはイクサを、歩夢を静かに見据える

 

【……憎しみに目を曇らせたのは、吾も同じか…】

 

そう呟くリュウミャクノオロチ

 

鳴り響く雷鳴が少しずつ収まっていく

 

 

ーギィィィヤァァアァァァァァァァァァァッ!!!

 

 

耳障りな咆哮が響き、リュウミャクノオロチの胸が地底から伸びてきた青黒い光線に打ち抜かれ、火花と血飛沫を飛ばす

 

「なー」

 

ーキュォオォォォォォォン!?!?

 

悲痛な悲鳴をあげたリュウミャクノオロチが地上に落下し、横たわった

 

 

よろめくキリエロイド・アバターを前に油断なくテラは構えを続ける

 

『ハハ、ハハハハハハハハッ!!私は、私は使命を果たしましたよ我らが神よォォォッ!!!』

 

体を崩壊させながらキリエロイド・アバターが狂ったように笑う

 

『神よ、神よォオッ……今、あな、たの……お側、にー』

 

そのままキリエロイド・アバターは仰向けに倒れ、粉々に砕け散る

 

「何だったんだコイツ……とにかく、邪魔がいなくなったならさっさと地下にー」

 

と、大介はリュウの姿に戻らないテラを不審に思い見上げる

 

「どうした?リュウ」

『おかしいんだ、兄貴……』

 

『ゾワゾワする嫌な感じが、ここから消えてる……もっと、遠くに行ってるような……』

 

 

豪雨に(すす)がれる街並、そのビルの一つの屋上に立つ火煙は肩を震わせながら倒れ伏すリュウミャクノオロチを見据えていた

 

「くひっ、はははっ、クヒハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァァァァッ!!!!」

 

普段の感情を感じさせない様が嘘のように愉快そうに狂ったような哄笑を上げ、天に向けて両手を広げる

 

「ご覧あれ!ここに今、我らの!霧慧の黙示録に描かれた神の御使が姿を露わになさるのですッ!!!」

 

 

めきめきめき、とビルと地表を押し退け、地の底から巨体が姿を露わにする

 

身の丈以上の巨大な翼。歪に変形した4本の腕。体中に浮かび上がる骸のような怪獣の顔や腕などの構造体

 

脈動する不気味な巨体に備わる頭部も異形。3つに裂けた顎を備え、4つの赤い目を血走らせ、ギョルギョル、と辺りを見回す

 

ーギィィィヤァァアァァァァァァァァッ!!!

 

心胆から凍えんばかりの不気味な咆哮を上げ

 

狂乱に堕ちた「母神」が降臨した






次回 ウルトラマンイクサ

「母神狂乱」
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