「ーッ!?」
『余所見をしている暇があるのか?』
ーギャオォォォォォォン!!!
トライキングの一撃がティグリスの頭部に叩きつけられる
その一撃がティグリスのツノを一本折り砕く
「ぐぅっ!?」
共有されたダメージに苑樹が頭を押さえる
ーグァァァァウゥゥゥ……
よろめくティグリスの目前でトライキングが勝ち誇るように雄叫びを上げる
「……ッ、ぐぅっ…‼︎」
頭を押さえながらも立ち上がる苑樹
キッ、と見開いたその眼に赤い光が灯る
「調子に、乗るなァァッ!!!」
苑樹の怒りと共に手にした銅鏡ーバトルナイザー:EARTHが光り輝き、一回り縮小して青い機械的なデバイスー真の姿を露わにする
《ティグリス:レイオニックバースト》
ーグァァウゥゥゥゥゥゥ!!!
苑樹の力を受けたティグリスの全身が真紅に輝き、二足で立ち上がると共に前脚が更に強靭に、更にその爪が伸びる
苑樹の姿も変化し、左側の頭から一本のツノが伸び、目の下に電子回路のような模様が現れる
『レイオニクスの本領発揮、か。そうこなくてはな』
《Five King Alter》
トライキングの左腕からガンQの頭部、右腕から超パズズの頭部が現れ、超合体怪獣ファイブキングアルターへと新生する
ーグァァウゥゥゥゥゥゥ!!!
ー■■■■■■■■■■!!!
パワーアップしたマスラオ・ティグリスとファイブキングアルター
それぞれが咆哮し、巨体が衝突した
ーギィィィヤァァァァァァァァァァ!!!
リュウミャクノオロチが弱ると共に小降りになる雨
その暗雲の中現れた異形の巨獣が咆哮する
『あいつは……イザーティア!?』
「イザーティアって……イクサが追ってるっていう怪獣⁉︎」
『ああ、姿はだいぶ変わっちまってるが、この気配と威圧感は間違いねぇ』
ズルリ、と大地からその姿を露わにしたイザーティアー否、狂乱母神イザーティア・ゲヘナはずしん、ずしんと一歩一歩大地を踏み締め進行を始める
体の各所からは青黒い結晶がはみ出し、脈動するように輝いていた
『なんだかわからねぇが、コイツはここで倒す!でねぇと、この星も終わっちまう…!!』
イクサがリュウミャクノオロチを庇うように立ち、イザーティア・ゲヘナを睨む
その時、イクサを通して周りを見ていた
「神の遣いが降臨なされた!」
「教主様の言っていた通りだ!!」
「救済がはじまるんだ…‼︎」
イザーティア・ゲヘナのすぐそばのビル、その屋上に何人も民間人が集まり、すがるようにイザーティア・ゲヘナに手を伸ばしていたのだ
「嘘でしょ…⁉︎」
イザーティア・ゲヘナはビルに集まる人々に顔を向けると、3つに裂けた口を開き、ビルの一部ごと一息に飲み込む
ーくちゃ、くちゃ
赤い4つの目をぐるぐると動かしながら咀嚼し、ゴクリと飲み込む
それを見たイクサが駆け出し、その体に拳を撃ち込む
「……この怪獣は、ここで倒さないと…‼︎」
唇を噛み締めながら歩夢が吐露する
ーギィィィヤァァァァァァァァァァ!!!
咆哮と共に背中から触手が何本も飛び出し、イクサの体を打ち据えるが、その数本を逆に絡め取り力一杯引っ張り手刀で触手を切り落とす
《フォージング:EXレッドキング》
《ハンマーアップ:メタルフィスト》
ーサァァッ!!!
イクサがメタルフィストを装備し、渾身の拳を何発も叩き込む
インパクトの衝撃でイザーティア・ゲヘナの体が吹き飛び、肉片が飛び散る
ーギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…‼︎
が、イザーティア・ゲヘナはその肉体を急速に再生させると共に胸の中央から赤黒いエネルギーが右下腕と左下腕に流れ込みその腕に触手が絡みつき肥大化する
【ーキシャァァァァァオォォォゥゥゥ!!!】
今までの咆哮とは異なる歪んだ咆哮と共に肥大化した腕をイクサを挟み込むように叩きつける
咄嗟にメタルフィストで防ぐがあっさりと破壊され、その衝撃にイクサが膝をつく
ーギィィィヤァァァァァァ!!!
そこにイザーティア・ゲヘナの口から放たれた青黒い光線が直撃
あまりの威力にイクサは大きく吹き飛ばされ、高層ビルの壁面にめり込むように叩きつけられ倒れ込む
ーサァ……ッ!?
『なんだコイツ…ッ⁉︎今までとは比べ物にならねぇ…』
今度は肩から生えたもう一対の腕に黄色いエネルギーが流れ込み、腕が2本の長大な触手に変化。更にその触手にバチバチと電撃が迸りはじめる
【ーキュイィィィィィィィィィィィィ!!!】
再び歪んだ咆哮を上げ、殺到してきた触手にイクサが掴み上げられ、電撃を流し込まれる
『グァァァァァァァァァァ!?!?』
「ああああああああああああああ!?!?」
そのままイザーティア・ゲヘナはイクサを大地に叩きつけ、建物を何棟も巻き込みながら引き回し投げ捨てる
背中から打ち付けられ、もがくイクサに驚異的な跳躍力で肉薄したイザーティア・ゲヘナは肥大化した両腕を持ち上げる
【ーキシャァァァァァオォォォォォォ!!!】
全体重の乗った苛烈なアームハンマーの一撃がイクサの胸を打ち据える
あまりの衝撃に大地が撓み、巻き込まれた建物や瓦礫が跳ね上がる
「ガハッ……⁉︎」
『EXレッドキングにEXエレキング……コイツ……オレから奪ったタリスマンの怪獣たちの能力を自分のものにしやがったのか……⁉︎』
何度もイクサに肥大化した腕の強烈な攻撃が叩きつけられる
なんとか脱出しようとするが、体が動かない
ーテァッ!!
そこに飛翔してきた蒼い影がイザーティア・ゲヘナの胸部に直撃する
後退したイザーティア・ゲヘナの目前に翻ったテラが着地する
『アユム!イクサ!大丈夫か!?』
「リュウ!助かった……」
イクサが立ち上がり、テラと並び立つ
『嫌な予感がしたから急いで飛んできて正解だった…ランダルたちもこっちに向かってる』
「わかった。みんなであいつをなんとかするわよ!」
ーギィィィヤァァァァァァァァァァ!!!
イザーティア・ゲヘナが新たな敵の出現に咆哮
胸元に褐色のエネルギーを漲らせ、古代怪獣ゴモラの頭部に似た構造を作り出す
【ーギャォオォォォォォォン!!!】
歪んだ咆哮と共にイザーティア・ゲヘナの胸部から増幅された超震動波が放たれる
《ウルトランス!!》
《アルマンドラ・ソウル!!》
その超震動波を右腕に生み出したシールドで防ぐテラの肩を借り、イクサが飛翔。その背中に回り込む
《フォージング:EXゴモラ》
《ハンマーアップ:スピアー》
生成した長槍を構えるイクサ
だが、その動きが固まる
イザーティア・ゲヘナ近くのビルにまた人々が集まっていたのだ
「ここで攻撃したら、余波が…⁉︎」
【ーギャォォォォォォォ!!】
その隙を逃さず、イザーティア・ゲヘナの体が再び変質。肩から生えた腕がグルリと背中を向き、刃状に変化してエネルギーの刃がイクサへと放たれる
イクサはなんとかそれをスピアーで撃ち落とすが、イクサの背後の地面から飛び出した槍状に変化した尻尾の一撃を背後から受け、テラの後方に吹き飛ばされる
いつの間にかイザーティア・ゲヘナが地面に尻尾を潜らせていたのだ
ーサァッ!?
『イクサッ!?』
超震動波を振り払うテラ。が、イザーティア・ゲヘナの胴体には新たな怪獣の頭部が形成されていた
【ーゼェェェットォォォン……】
形成されたEXゼットンの頭部から一兆度の業火球が放たれる
ガードしたテラのシールドを突き破り、その巨体を吹き飛ばす
吹き飛ばされたテラに後方のイクサも巻き込まれ、2人のウルトラマンが高層ビルに叩きつけられて倒れ伏す
2人のウルトラマンのカラータイマーが点滅し始める
『くそっ……』
「なんて強さなの……イザーティア……」
『……あの結晶、多分
ーギィィィヤァァァァァァァァ!!!
イザーティア・ゲヘナが咆哮
それと同時に体の各所から伸びた触手が振るわれ、建造物や民間人が巻き込まれていく
『やめろ……やめろォォォ!!!』
イクサが思わず駆け出す
その体をイザーティア・ゲヘナの触手が縛り上げ、捕らえる
『てめぇ……てめぇはァァ……‼︎』
触手を引きちぎらんと力を込めるが、エネルギー不足ゆえに力が入らない
瞬間、一瞬イクサのカラータイマーの点滅が止まり、真紅の光が煌めいた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーガァァァァァァァァァァァァ!!!!
イクサが獣のような咆哮を上げ、絡みついた触手を力一杯引き千切る
ーギィィィヤァァァァァァァァァァァァ!?
イザーティア・ゲヘナの悲痛な咆哮が響く
『な、イクサ⁉︎』
テラがイクサの変貌に驚愕する
『怪獣……ツブス……‼︎』
獣のように低く構えたイクサがジリジリとイザーティア・ゲヘナに迫る
「イクサ!!」
一心同体となった歩夢の声にイクサは足を止める
『歩夢……?』
カラータイマーが再び点滅をはじめ、先程の剣呑な気配が消える
「……あの怪獣はたしかに倒さなきゃダメな存在。これ以上対話は不可能だから…」
歩夢は毅然と言葉を続ける
「でも、だとしても憎んじゃダメ。憎しみで命を奪い続けたら、きっと私たちも道を踏み外すから……」
『………』
イクサは沈黙を返す
改めて立ち上がり、イザーティア・ゲヘナを見据える
『……そうだな。目が覚めた気するぜ…』
イクサにテラが並び立ち、イザーティア・ゲヘナを睨み両者が構える
「………ほう?」
事の動きを見守っていた
「…ですが、この状況下であなた方が動けないのもまた事実」
火煙が手を広げる
事実今イザーティア・ゲヘナの周囲には何人もの霧慧神獣教の信者たちが集まってきている。彼らを巻き込まずに戦い続けることは困難なはずだ
が、瞬間周囲の信者たちが集まるビルの直上にドローンが飛来し、バリアフィールドを展開してビルを覆った
『待たせたな。2人とも』
イクサとテラの背後からGBCTキャリアーにGBCTアルバトロス、GBCTセンチネルが合流してくる
「ランダル!みんな!!」
『バリアドローンで逃げ遅れた人々がいる建物は保護しています!』
『保護しきれていない場所も特殊自衛隊やルシルが誘導に回っている。街への被害は気にするな。俺たちができる限りカバーする!』
『兄貴…‼︎わかった!!』
ーサァッ!!
ーテァッ!!
ーギィィィヤァァァァァァァァァァァァ!!!
イクサとテラ、イザーティア・ゲヘナが共に駆け出し衝突する
強大なパワーの突撃をイクサとテラが2人がかりで押さえ込み、触手による攻撃の余波はバリアフィールドが弾き被害を押さえ込む
回り込んだキャリアーがスキャンレーザーでイザーティアを解析する
『結晶体はエネルギー収束器官であると同時に外部からの衝撃には脆くなっているらしい。ここなら我々の兵装でも有効だろう』
『ウルトラマンイクサ、並びにウルトラマンテラを援護する!』
『『了解(です)!!』』
ランダルの指示を受け取り、アルバトロスとセンチネルが疾駆
三方向に別れながら3機はイザーティア・ゲヘナの体から生えた結晶体にバルカンや機関砲、レーザーによる攻撃を仕掛けて破壊していく
ーギィィィィィィヤァァァァ!!!
破壊された結晶器官から溢れ出したエネルギーが光の雨のようになり、周囲へと降り注いでいく
ダメージになっているのか、イザーティア・ゲヘナがもがきイクサとテラが一旦離れる
《フォージング:カミソリデマーガ》
《ハンマーアップ:ツヴァイ・ソード》
ーサァッ!!
ツヴァイソードを装備したイクサが突進、触手を切り裂きながら肉薄し、イザーティア・ゲヘナの胴体に突き刺さる
ーテァッ!!
そこにテラが飛翔。その右腕のクリスタルが輝きを増す
『テラジュームストレイト!!』
光を纏う拳がツヴァイソードを伴ってイザーティア・ゲヘナの体を抉り取る
ーサァッ!!
更にイクサのパンチもダメ押しで押し込まれ、更なるダメージを与えてイザーティア・ゲヘナを後退させる
ーギィィィヤァァァァァァァァ!?!?
イザーティア・ゲヘナが悲鳴のような金切り声を上げる
『よし!今ならー』
『行けるッ!!』
下がった2人のウルトラマンが必殺の光線を構える
『「イクサライズ光線!!」』
『テラジュームシュート!!』
赤と青の光線がイザーティア・ゲヘナに直撃、その体を大きく吹き飛ばす
が、イザーティア・ゲヘナはその体を再生させていく
『これでも、ダメなのか…‼︎』
イクサがよろめき、テラが膝をつく
2人のウルトラマンのカラータイマーは限界を迎えていることを示すように激しく点滅していた
ーギィィィヤァァァァァァァァ!!!
イザーティア・ゲヘナはその異形の口を大きく開放し、エネルギーを迸らせながら貯めていく
「ここで……終わりなの……?」
破滅の光線が、2人のウルトラマンへと放たれる
ーキュオォォォォォォォォォン!!!
澄み渡る咆哮が響く
雷鳴がイザーティア・ゲヘナの直上から響き渡り、その巨体に雷が降り注ぎ体勢を崩す
【立ち上がるがいい、狩人。そして、我らを知らんとする人の子】
後方より現れたのはリュウミャクノオロチ
光線に貫かれた部分は既に塞がりつつあるが、生々しい傷跡としてまだ残っている
「リュウミャクノオロチ…⁉︎」
【貴様ら人の子を信じきった訳ではない】
金色の瞳がイクサらを見据える
【だが、岩神のが信じた貴様らを信ずるに値する】
イクサとテラの頭上から澄み渡る透明な雨の滴が落ちてくる
それは2人の体を巡り、カラータイマーが同時に青き輝きを取り戻す
「力が…戻ってきた!!」
イザーティア・ゲヘナが体勢を戻し立ち上がる
【赤き狩人、そしてその者と心を共にする人の子よ】
【これを、貴様らに預けよう】
リュウミャクノオロチの尾の一本が輝き、赤い優しい光を纏う何かが飛来してイクサの手に収まる
光が晴れて姿を現したそれは、一本の剣だった
鋼色の刀身に赤の柄
『これは……⁉︎』
【ホシウミノツルギ。かつてこの地に降り立ち、我ら地に生きる命と共に星より降り立つ悪しき者と戦った勇士が残した剣だ】
【狩る者の猛き魂と体、守る者の深き慈愛の魂と心。それを持つ者に託せと、勇士は吾に告げた】
【使いこなしてみせよ。守る意思が本物ならば、それは必ず貴様らの力となるだろう】
リュウミャクノオロチの言葉にイクサは頷く
使い方は不思議と歩夢の頭にもイクサの頭にも入ってきた
「行くわよ、イクサ!」
『ああ、行くぞ歩夢!』
ホシウミノツルギをイクサが構える
インナースペースの歩夢の手にも同じ剣が出現
2人が息を合わせ、その刀身の裏と柄を掴み、両側に引く
ガシャン、と鍔の装飾が回転し、炎形の刻印が赤く輝く
《エレメント:ファイア》
イクサが剣を構える
その刀身に真紅の炎が宿り、燃え上がる
『行くぞ、イザーティア!!』
ガチリ、と柄のトリガーを引き絞る
《ファイア・ブレイク・バースト》
炎の刃が極限まで伸び、横一文字に振るわれる
イザーティア・ゲヘナの胸を真一文字に切り裂いた一撃を起点に炎が爆発し燃え上がる
ーギィィィィィィィィィヤァァァァ!?!?
すぐさま体の再生が始まるが、炎がそれを許さず、イザーティア・ゲヘナの体に大きな傷がはじめて生まれた
ーギィィィィィィ……‼︎
『よし、効いてる‼︎』
『ああ!もう一度ー』
イクサとテラがもう一度光線を放とうと構える
が、イクサを通して歩夢は見た
ーキュイィィィィィィィィィ……
うずくまるイザーティア・ゲヘナ
その赤い瞳から、涙のような液体がこぼれ落ちていくのを
その姿が、歩夢の脳裏である記憶と重なった
ーグァァァァオォォォォォォン!!!
火の海になる村
その村の中心で暴れる狼を直立させたような姿の巨体
鋭い爪を振り回し、咆哮を上げながら暴れるその獣
ーグァァァァオォォォォォォン!!!
友達として共に遊んだこともあったその怪獣は
たしかに涙を流していたのだ
「泣いてる……」
『あ?なんだって?』
歩夢の呟きにイクサが問う
「あの怪獣……イザーティアが泣いてる……」
『泣いてる…⁉︎ おいこんな時に何言ってんだ⁉︎』
イクサが思わず声を荒げる
『アイツは放っておけば星一つを喰らい尽くして滅ぼす怪獣だぞ⁉︎保護や共存なんか、あり得ない存在なんだぞ⁉︎』
イクサの言葉を聞き、歩夢も固唾を飲む
そうこうしている間にもイザーティア・ゲヘナの傷跡はゆっくりと塞がり、その巨体を起こしていく
【ーギャオォォォォォォン!!】
【ーキシャアァァァァォォォォォォ!!】
【ーキュイィィィィィィィィィ!!!】
【ーゼェェェットォォォォォォン】
様々な怪獣の構造体が浮かび上がり、歪んだ咆哮がこだまする
怒りに打ち震えるかのようにその体が泡立ち、脈打ち、変質する
だが一瞬
ほんの一瞬
ーキュイィィィィィィ……
一瞬だけ現れたイザーティアのものらしい顔は、弱々しく吠え声を上げて、その目から涙をこぼした
「ーだとしても、あの子も生きている」
「なら、その涙は無視できない‼︎」
歩夢はインナースペース内で手にしていた剣を見る
「これなら…‼︎」
歩夢が剣の刀身と柄を掴み、石版を切り替える
《エレメント:アクア》
今度は刀身に清き水が溢れ出し、渦を巻く
もがくイザーティア・ゲヘナをイクサの目を通して歩夢は見据える
「……今、助けるから…‼︎」
《アクア・プュリファイ・シュトローム》
渦巻く清らかな水の刃が解放され、振り抜かれた剣からイザーティア・ゲヘナへと到来し、その巨体を優しく包み込む
ーギィィィィィィィィィ……?
渦巻く水はイザーティア・ゲヘナの体をなぞり、洗い流し、その体を徐々に、徐々に縮ませていく
否、イザーティア・ゲヘナの変質しきった姿から元のイザーティアの姿へと戻していく
『これは……』
『きれい……』
見守っていたランダルと水輝が思わず呟く
更に水はイザーティアの体を洗い流し続け、その体を更に変質ー
否、『浄化』していくー
ーキュイィィィィィィ……
水の球の中、イザーティアだったソレは薄緑の柔らかな体と髪のような触手、澄んだ2つの青の瞳と捩れた羊のようなツノを持つ体を丸めた胎児のような姿になり、寝息のような澄んだ声を上げていた
『………こいつが、イザーティア、なのか…?』
『小さくて、なんか可愛い?な…』
ホシウミノツルギを振るうイクサ/歩夢が起こした奇跡
それを眺めていたヴィクターA班室長ーガウルは右手を胸に当て、払い除けるかのように振り下ろす
ガウルの体が青い燐光を放つ赤いコアを持った球体へ変化し、飛翔していった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーキュイィィィィィ……!
か細い声を上げるイザーティアだったその怪獣を見つめ、イクサのインナースペースの中で歩夢は胸を撫で下ろす
「よかった……」
ーギィィィィィィッ!?!?
が、その健やかな声は突如悲鳴に変わった
「えー」
水の球が弾け、現れた小さな体から伸びていたのは金属質の輝きを放つ鋭く尖った槍状の手甲に包まれた黒い腕
その緑の体液に塗れた黒い手の中には、脈動する心臓のようなものが握られていた
ずるり、と引き戻された腕から落下する小さな怪獣は弱々しく声を上げるが、それを意に介さず細身の漆黒に包まれた足が踏み潰し、踏み躙る
ーぱちゅん
小さな水風船の弾けるような音が響き、小さな命は潰えた
しばしその光景を呆然と見るしかなかった歩夢が、その目を見開く
そこに現れていたのは異形の巨人だった
無駄を廃した流線形のような黒い痩躯
蜘蛛の巣のような銀のラインが規則的に走る体
その頭に当たる位置には黒いひび割れたディスプレイのようなものがあり、赤い光がいくつも明滅していた
鋭く研ぎ澄まされた槍のような手甲に包まれた腕の片方には、今しがたイザーティアよりむしり取った内臓が未だ脈動していた
『なんだアイツは…あんな異星種族は見た事がない…‼︎』
『ワロガ!?なんで、なんでこっちの宇宙にいる⁉︎』
ランダルの言葉にイクサが図らずも答える
『ワロガ、だと…?』
『オレたちの宇宙にいた侵略種族だ…怪獣を改造したり、星の内政を崩壊させたりといくつものテロ行為を繰り返す出自不明の種族…‼︎』
イクサが剣を構え直し、テラも油断なく構える
巨人ーワロガは手にした臓物を眺める
『ーコレはまだ、利用価値がある』
電子的な加工されたような声でワロガは小さく呟く
ギシリ、とホシウミノツルギの柄が握りしめられる
「なんで、なんで殺したァァァァァァ!!!」
歩夢の絶叫と共にイクサが駆け、棒立ちのワロガに剣が振り抜かれる
瞬間、空間に溶け込むようにワロガの姿が消失。イクサの背後に現れ、その背に手甲から放つレーザーが突き刺さる
『ぐわっ!?』
イクサが吹き飛ばされ、倒れる
わざわざその前方にワープし、ワロガがイクサを見下ろす
『ーウルトラマンイクサ。お前は私が必ず破滅させてやる』
無機質な言葉が告げられ、イクサが驚愕しながら顔を上げる
『お前は……⁉︎』
『ー首を洗って待っていろ』
ワロガは手にした臓物を黒いコンテナにしまうとそれごと自身を青い燐光を放つ球体に変化させ、どこかへ飛び去っていった
「クソッ、クソォッ!!」
怒りのままにイクサの体で地面を殴りつける
歩夢とイクサはしばらくその場から動けなかった
立ち込めていた暗雲が晴れる中、赤き巨人はしばらく立ち上がれなかった
それを傍観していた火煙は顔布を下ろし、表情を隠す
「……まさか、阻まれるとは。予定外でした」
火煙はどこか無感動にそう呟く
「ですが、良いものを見せてもらいました。なるほど、道は一つではなかったようですね」
くっくっ、と肩を震わせながら火煙が笑う
「ー
数刻前 特殊自衛隊第三保管庫から少し離れて
2体の怪獣は未だに対決を続けていた
ーグァァァァウゥゥゥ!!!
マスラオ・ティグリスが巨体ながら軽やかに跳躍しながらファイブキング・アルターを何度も爪で引き裂く
ファイブキング・アルターは体の各所からの光線や、超パズズのツノからの雷撃で迎え撃たんとするが、マスラオ・ティグリスの高速軌道に追いつく事ができない
ーグァァァァウゥゥゥ!!!
跳びついてきたマスラオ・ティグリスがファイブキング・アルターの首にその牙を突き立てる
ー■■■■■■■■■■!!!
ファイブキング・アルターは超パズズのツノをマスラオ・ティグリスに突き立てるが、マスラオ・ティグリスはその全身にエネルギーを漲らせ、強烈な爆発をゼロ距離から放つ
満身創痍となり元の姿に戻ったティグリスが光となって帰還する
ファイブキング・アルターは跡形もなく姿を消していた
「ごぶっ……‼︎」
近くの山から見守っていた苑樹が膝を突き、吐血する
その手から落ちたバトルナイザー:EARTHが元の銅鏡に戻る
「はぁ、はぁ…ッ、はぁッ……‼︎」
押さえた腹からは血が滲み、白い巫女服が赤く染まっていた
「あの、怪獣は……」
と、苑樹がいる近くにどさり、と何か重たいものが横たわる音が響き、思わず身を隠す
木の影から視線を送ると、そこには人が1人倒れていた
身に纏うのは、特殊自衛隊の士官服
所々に血がつき、負傷しているように見え、特に肩口の傷跡が深いように見えた。マスラオ・ティグリスが噛み付いた箇所に近い
木にもたれるように倒れていたのは、特殊自衛隊司令官の
荒い息をしながら黒斗は手にしていたデバイスーフェイクZライザーを懐にしまい込み、気を失った
「あれは……まさか、あのひー」
ーズガッ!!
「がっ⁉︎」
苑樹の背後から首元に強烈な一撃が撃ち込まれ、朦朧としていた意識が刈り取られ、倒れ伏す苑樹を数名の機動隊員が後ろ手に押さえ込む
「ーこちら第三隊
隊長らしい人物が黒斗の負傷や周囲を確認しながらどこかに連絡を取る
「ー了解。女は連行。近くの第三保管庫内の倉庫に一時収容します。黒斗司令は直ちに病院へ」
機動隊員たちは隊長格の指示を受け、苑樹を後ろ手に手錠で拘束し連行していき、黒斗を担架に乗せて運んで行った
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
五行町の復興作業の手を一旦止め、歩夢が空を見上げる
先日までの大雨が嘘だったかのように晴れ渡る空が広がっていた
イザーティアの件が終わった後、リュウミャクノオロチはいつの間にか姿を消していた
大雨はもう止んでいたことから、まだ人類側に猶予をくれたらしい
その事を思い出しながら歩夢は制服の下に下げている勾玉に手を当てた
『……なんだか、脱力しちまうな…』
そんな歩夢にイクサが声をかける
「そうね……ここ最近は緊張しっぱなしだったし」
左腕のイクサファーナスに視線を移す
「イクサは、これからどうするの?」
『オレ?』
「ここに来た目的の、イザーティアはもういなくなっちゃったし」
歩夢の問いにしばしイクサは沈黙する
『……そうだな。だけど、まだこの星には怪獣たちが暴れてる。何よりも…ワロガみたいなやつもいるとわかった』
「ワロガ……なんか知ってるみたいだったけど、心当たりあるの?」
『この宇宙にイザーティアを追って来る前に、一度ワロガと戦った事があったんだ。だが、あのワロガはたしかにオレが倒したはず。同一人物では無いはず…』
「そうなのね……」
イクサが仕切り直すかのように咳払いをする
『とにかく!まだこの星は放っておけない。何よりお前はまだ体治りきってないから分離できないしな』
「そういえば……すっかり忘れてたわ」
はは、と乾いた笑いを返す歩夢
『お前なぁ……』
呆れた声を漏らすイクサ
「まぁ、ともかくまだここにいるのねイクサ」
『ああ……改めて、しばらくよろしくな、歩夢』
「うん、もう少し力を貸してね、イクサ」
隣にヴィジョンとして現れたイクサと歩夢が拳をコツンとぶつけた
晴れ渡る青空は、2人の絆がより深くなった事を祝福しているようでもあり、同時にこれからの嵐の前の晴れ間のようにも思えた
イザーティアの事件から続く平和な日々
そこに突如現れたのは混沌魔王獣マガキマイラ
イクサとテラ、GBCTの総力を以ても苦戦する強敵
新たな力を使いこなせないイクサと歩夢は窮地に陥る
その時、煌めく剣と共に1人の勇士が現れる
風の音色と共に現れた風来坊は、2人に力の意味を問う
次回ウルトラマンイクサ
「風来坊と剣の意味」
『紅に、燃えるぜ!!』