ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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第14話「風来坊と剣の意味」

スターゲイザーベース内 データベース

 

イザーティアの事件から数週間ほど

それ以前には数日に一度は現れていた怪獣たちのペースも少し落ち着きを見せ、平和な日々が続いていた

 

その間に歩夢(あゆむ)はある物を調べていた

 

「……この辺りの記述に何かあるかも……」

 

カタカタとコンソールを操作し、モニターに資料を映しだす

そこに映し出されていたのは尾の代わりに数多の龍頭を持つ黒い龍の姿。龍脈の主として現れていた怪獣・リュウミャクノオロチと瓜二つな姿の龍だった

 

そこに並び立つように描かれていたのは、リュウミャクノオロチと同じくらいの大きさに描かれていた大きな剣を携えた赤い巨人の姿

 

「これが、リュウミャクノオロチが共に戦ったって言ってた空から降りてきた勇士…」

『まさかとは思っていたが、オレにそっくり……ということは、この星には一度ウルトラマンが現れたことがあるのか…⁉︎』

 

ふぅ、と息をつきながら歩夢が続ける

 

「それが、一度どころではないみたいよ」

 

と、歩夢はその画像に並びもう一つの画像を表示する

その資料はどうやら外国で描かれたものらしく、太平風土記とは違うタッチで描かれている記録だった

 

そこにはガイアルドらしい怪獣のようなものに並ぶ胸と頭にV字の刻印が刻まれた巨人の姿が描かれていた

 

「数百年ほど前後こそしてるから多分、こちらは別の巨人ーウルトラマンだと思う。ガイアルドと一緒にいるあたり、リュウに力を与えたウルトラマンじゃないかしら」

『……オレの大先輩みたいなのが、この地球に…』

 

歩夢は元のリュウミャクノオロチたちの画像に戻す

 

「問題は、このオロチと巨人が戦う存在なのよね。悪しき存在ってオロチは言ってたけど……」

 

画像をスクロールし、オロチと巨人が相対する存在の方に目をやる

 

が、その部分は欠落しているらしく、見ることが出来なかった

 

『なんだよ、これじゃあわからねぇ』

「欠落してるのよね、この最後の部分だけ。チラッと文字だけは見えるんだけども」

 

歩夢は画像のある部分を拡大する

 

赤いおどろおどろしい文字で書かれた「滅」という一文字

 

「……ここだけでも、ろくでもない連中だってのはわかるわ」

 

苦笑いを浮かべる歩夢

 

そこに久方ぶりの警報が鳴り響いてきた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

五道市(ごどうし) 炎魔(えんま)丘陵

 

ーズドォォォン!!!

 

空から突如巨体が落下。大地を鳴動させながら着地する

 

ーギィィィイイォオ……‼︎

ーグォォォォォォン……‼︎

 

その怪獣はとてつもなく歪な姿をしていた

 

ーゴァァァァァァ……‼︎

 

天に向かって伸びるツノを持つ金色の鱗の左頭部と右腕

ねじくれたツノを持つ銀色の岩石のような体表の右頭部と左腕

更にカエルにも似た両生類じみた頭部が腹に収まり、緑色の鱗とヒレの生えた前脚が伸びる

 

ーグェェォオォォォォォォ…‼︎

 

そして背面からは赤い鱗の鳥に似た双頭が尾の代わりに伸び、同じく赤い鱗のもう一対の後ろ脚が大地を踏み締め

 

その4つの頭部には赤いクリスタルが嵌り、金と銀の頭部のクリスタルは鋭く飛び出し第3のツノのようになっていた

 

ー■■■■■■■■■■■■■!!!

 

多頭の四脚怪獣は天に向かって咆哮する

 

そこにGBCTキャリアーが急行してくる

 

「な、なんなんですかこの怪獣⁉︎ 頭がいっぱい⁉︎」

「なんか、いろんな怪獣が混ざってるような……」

「まるでキマイラ、だな…」

 

GBCTキャリアーを発見した怪獣ーマガキマイラは四股を踏むように右前脚を振り上げ叩きつけ、大地を揺るがす

 

ーギィィォォォォオ!!

ーグォォォォオォォォン!!

 

と共に金と銀の頭部が吠え、金のツノから黄金の雷撃が、銀の顎から青白色の火炎弾が放たれる

 

「わわ⁉︎アルバトロス、スプリット!!」

 

キャリアーの背面後部からGBCTアルバトロスが分離し、雷撃と火炎弾を回避し、キャリアーも滞空姿勢に入る

 

『歩夢、大介、リュウ、射出するぞ』

「オーケイ!」

『了解ッ!!』

 

GBCTキャリアーからGBCTセンチネルと戦闘特化装備に換装したGBCTヘラクレスが射出、変形して着地する

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

ーグェェォオォォォ!!!

 

腹部の口と双頭の尾が咆哮し、それぞれから水弾と火炎が放たれる

 

「シェルターウォール、接続展開!!」

 

前に出たヘラクレスが2本の下腕に装着したタワーシールドを突き立て合体させ、攻撃を防ぐ

 

そのシールド裏から機を見計らい飛び出したセンチネルが機関銃を放ちダメージを与える

 

ーギィィォォォォオ!!

 

金の頭部がセンチネルに雷撃を放つが、素早くバックジャンプしてそれを回避する

 

その隙に空中で旋回したアルバトロスがマガキマイラの直上を取る

 

ーグォォォォオン!!

 

銀の頭部がアルバトロスに向けられ、青白い火炎弾が再び放たれる

 

「わ、わわっ!?」

 

ーグェェェェォオォォォ!!

 

後方からスキャンしようと近づいていたキャリアーも火炎攻撃に襲われる

 

『首の多さは伊達ではない、ということか…‼︎』

 

「イクサ、リュウ!」

『おう!』

「わかった!!」

 

歩夢の掛け声に合わせ、2人がウルトラマンへと変身する

 

ーサァッ!!

ーテァッ!!

 

空から現れた2人のウルトラマンのキックがマガキマイラに突き刺さる

 

ーギィィォォォォオ!!

ーグォォォォオン!!

 

しかし、2人の蹴りは金と銀の腕によって掴まれ、止められる

 

「なっ⁉︎」

『くっ⁉︎』

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

マガキマイラは2人のウルトラマンを軽々と投げ飛ばす

 

翻って着地する2人を逃さず、金銀の双頭から雷撃と火炎弾が放たれる

咄嗟にシールドを作り出してガードするが一瞬で相殺、破壊され後ずさる

 

『なんてパワーだこいつ⁉︎』

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

マガキマイラは咆哮と共に全ての頭から攻撃を放つ

 

《ハンマーアップ:ツヴァイソード》

《エンチャント:エレクトリック》

 

《ウルトランス!!》

《アルマンドラ・ソウル!!》

 

雷を纏う双剣と両腕の装甲を展開したイクサとテラが疾駆。マガキマイラの攻撃を打ち落としながら肉薄し、双方の武器を叩きつける

 

ーグェェォオォォォ!!

 

『ぐあっ!?』

 

尾になっていた双頭がテラに噛みつき、気を取られた隙に金の右腕の裏拳をくらい吹き飛ばされる

 

「リュウ!」

 

ーサァッ!!

 

イクサの振る双剣をマガキマイラは両腕を巧みに使い防ぎ、その両腕を掴んでひねり上げる

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

身動きを封じられたイクサ目掛けて黄金の雷撃と青白の火炎弾、巨大な水球が同時に放たれ、直撃

多大なダメージにイクサの体がスパークする

 

『「ぐぁあぁぁあぁあ!!!」』

 

イクサが大きく吹き飛ばされ、テラの隣にまで転がされる

 

『なんなんだこいつ…‼︎手も足もでねぇッ‼︎』

「イクサ、ホシウミノツルギなら‼︎」

『‼︎よし‼︎』

 

歩夢とイクサが念じる

2人の手元に同じ剣が現れ、同時に掴み取る

 

イクサが刀身と柄を持ち、ガシャンと引き戻す

「火」の刻印が光り輝く

 

ーサァッ!!

 

イクサが剣を構えなおし、振り抜く

放たれた烈火の一斬がマガキマイラを切り裂くー

 

ーグォォォォォォン!!!

 

ことはなかった

放たれた斬撃は、マガキマイラの銀の左腕に打ち消されて霧散する

 

『なっ!?』

「うそっ!?」

 

ー■■■■■■■■■!!!

 

『なら、もっと打ち込むまでだ!!』

 

ーサァッ!!

 

ホシウミノツルギに炎を纏わせ、イクサが疾走。マガキマイラへと切り掛かるが、肩口に直撃したにもかかわらず小揺るぎもしないマガキマイラは金の右腕で反撃のパンチを繰り出し、負けじと更に剣を振るイクサだが、マガキマイラは易々とその攻撃を凌ぎ、2つの頭で頭突きをかまして吹き飛ばす

 

『ぐうァッ!?なんで、なんでだ…⁉︎』

「ツルギの力が……発揮されてない……⁉︎」

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

マガキマイラが咆哮、全ての口をこちらに向けエネルギーを溜め始める

 

『高エネルギー反応…‼︎ デカいのが来るぞ‼︎』

 

ランダルの言葉にイクサとテラ、GBCTの隊員たちが備え始める

 

 

ーショワッ!!

 

 

その瞬間、天から一筋の光が降り注ぎマガキマイラを大きく吹き飛ばした

 

ー■■■■■■■■■■!?!?

 

マガキマイラが横転しもがく

 

その前方に、1人の巨人が降り立った

 

「あれは…?」

『タイプA…いや違うー』

 

そこに立ち上がったのは一振りの剣を携えた赤と黒、銀の体色を持つ巨人だった。胸にはOの字形に光り輝くカラータイマーが備わっている

 

手にした剣は、丸い円盤が備わった奇妙な形をしていた

 

『見たことない……ウルトラマン……⁉︎』

『あの剣……まさか、あの人は……⁉︎』

 

現れた新たなウルトラマンが立ち上がり、頭上に剣で光の円を描き、振り回して構える

 

 

『ー俺の名はオーブ、ウルトラマンオーブ!!!』

 

 

『ウルトラマンオーブ‼︎ 本物なのか⁉︎』

「え、まさかの知り合い…⁉︎」

 

『知り合いというか、オレより随分前に戦士になったウルトラマンと聞いてた人だ……オレたちの宇宙以外でも正義のために戦ってるとか、聞いたことあったけど……』

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

ーシュワッ!!

 

重なる咆哮を上げるマガキマイラが突進、オーブもそこに駆けていく

火炎弾を撃ち落とし、雷撃をいなし、その体に手にした剣ーオーブカリバーを振り下ろす

 

光を纏う斬撃がマガキマイラの胴を大きく切り裂きダメージを与える

マガキマイラがよろめいたところに更に重い剣撃がぶち当たり、着実にダメージを与えていく

 

『すげぇ……あの怪獣にダメージを与えてる…‼︎』

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

ーグェェェェオォォォォ!!!

 

胴体の頭部からの水球と尻尾からの火炎を体を翻し躱す

 

オーブは手にしたオーブカリバーを構え、その円盤を回転させ「風」と書かれた文字のような緑の刻印を点灯、トリガーを引き、円盤を強く回転させる

 

『オーブウインドカリバー!!!』

 

刀身に風が渦を巻き、振り抜いた剣先から放たれる

竜巻は水球と火炎を巻き込みながらマガキマイラを飲み込み、ダメージを与える

 

ー■■■■■■…‼︎

 

よろめいたマガキマイラは金の頭部から雷撃を放ち、オーブを後退させると共に、今度は虹色の雷撃を周囲に放つ

 

と、マガキマイラの後方の空間がぐにゃりと歪み、虹色の空間が口を開くとそこにマガキマイラは後退していく

 

マガキマイラがその空間に入り切ると共に空間は閉じ、姿が消えた

 

『生体反応が消えた…⁉︎』

 

ランダルが驚愕の声を上げる

 

 

その場に残されたウルトラマンオーブとイクサ、テラはしばらく立ち尽くしていたが、オーブはその体を輝かせ姿を消す

 

イクサとテラも人間の姿へと戻り、帰投していった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

スターゲイザーベース 作戦司令室

 

『先程のあの怪獣、データベースを参照してみたところ、右頭部と左腕は剛力怪獣シルバゴン、腹部と前脚は海獣ゲスラの特徴を有していることがわかった』

 

ランダルがモニターに先程の怪獣の画像を映し出し、分析結果を見せていた

 

「右頭と尻尾もなんか元の怪獣がいるとすると、あの怪獣ってたくさんの怪獣の複合体ってこと?」

『そう見て問題ないだろうな』

「あと、アルバトロスの簡易サーチで調べたんですが、あの怪獣の頭部のような構造にあった赤いクリスタル状の構造、あれから高エネルギーが感知されました」

 

水輝(みずき)の追加報告に今度はイクサが口を開く

 

『あれは……多分、マガクリスタルだ』

「マガクリスタル…?」

『戦士の頂の記録で見たことがある。あのウルトラマン、ウルトラマンオーブが倒した魔王獣と呼ばれる怪獣たちに、似たクリスタルがハマっていたんだ』

「なるほど…それも踏まえてあのウルトラマン…オーブさんだっけ?に話聞かないとね……」

 

歩夢がふぅ、と息を漏らす

同じように隊員たちも沈痛な面持ちをしていた

 

『……問題は、そのオーブがどこにいるか…だな』

 

全員が薄々理解していたことをランダルが呟く

 

と、地上基地から連絡が入り、一応スピーカーにして歩夢が出る

 

「こちら歩夢。一応作戦司令中だからスピーカーで応答するけど、何があったの?」

『歩夢隊長、それが…なんだか妙な人物が来ていまして…』

 

機関員の言葉に歩夢が首を捻る

 

「……どんな人?」

『ええと、その…コートを羽織った背の高い男で、ハーモニカを吹きながら現れたのですが…』

 

『この星にいるウルトラマンに会わせてほしい、などと言ってまして…』

 

 

歩夢とリュウが共に地上基地から外に出る

 

と、風に乗って透き通るような、それでいて力強いハーモニカのメロディが流れてきた

 

メロディがした方向に目をやると、機関員が言っていた通りのコートを纏う長身の男がそこにいた

 

「……おう、あんたらだな?この星のウルトラマンは」

 

男はこちらに気づくと手を上げて気さくに挨拶してきた

 

「一応、そうね。リュウはともかく私はちょっと事情が違うけど…」

「?そうなのか?まぁ、その辺の話も立ち話じゃなんだな…」

「どこか場所を変えましょうか?希望があるならそこに合わせるけど…」

 

男は顎に手を当て少し首を捻って思案して答える

 

「そうだ、ラムネが飲めるところないか?久しぶりの地球だから飲みたかったんだが…」

「ラムネ…?まぁ飲めるとこは知ってるけど」

「それはよかった。早速案内してくれ」

 

と背中を向けかけた男がもう一度こちらを振り返る

 

「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はクレナイ・ガイ、通りすがりの風来坊だ。よろしくな、後輩」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

歩夢が案内した駄菓子屋前のベンチ

ガイ、リュウ、歩夢と3人並んでラムネを口にする(開け方に苦戦していたリュウはガイに教わっておっかなびっくり飲んでいたが)

 

「ーまずは先に謝らせてくれ。あの怪獣…混沌魔王獣マガキマイラは、俺が取り逃してここに来させちまった…すまない」

 

ガイが頭を下げたのに歩夢は慌てて手を振る

 

「いやいや、そんな謝罪なんて……」

「新たに誕生した魔王獣、十分警戒して臨んだつもりだったんだが、想定以上に強敵だった…」

 

ガイが沈痛な面持ちを見せる

 

「……でも、ガイはあの怪獣とやり合えてて、オレたちは手も足も出なかった…」

 

リュウの言葉に今度はリュウと歩夢が表情を曇らせる

それを見たガイはきょとんとした顔を見せる

 

「……いや?お前たちも戦えてたじゃないか。アレだけできれば十分だろ」

『アレだけできれば…って、オレたちはほぼ押されてたんだぞ⁉︎』

 

思わず声を上げたイクサにガイが応える

 

「あんたが俺と同郷のウルトラマンだな?たしかに、戦いとしては押されていたな。あの剣も、うまく扱いきれてなかった」

 

ガイの真っ直ぐな言葉にイクサは口ごもる

 

「…なら、ガイが修行つけてくれよ。先輩ウルトラマンなんだろ⁉︎」

『あ、ああ、そうじゃねぇか‼︎ オレたちに色々戦い方とか、強くなる方法を教えてくれよ‼︎』

 

「それじゃ意味がない。何より、それじゃお前たちは強くなれない」

 

残ったラムネを一息に飲み干し、ガイが答える

 

「……どういうことだよ、それ」

 

リュウの問いにガイはあっけらかんと告げる

 

「お前たちはウルトラマンに選ばれて、ここまで戦ってきてる。その強さやあり方は、お前たちだからこそのものだ。俺が手取り足取り教えても、今は前に進めない」

 

ガイは歩夢とイクサの方に目を向ける

 

「特に、そっちの同郷の後輩の方はもう手にしてる。あとはそいつに気づくだけだ」

『気づくって……何にだよ』

 

「ー剣を手にして、振るう意味ってヤツかな」

 

「剣を……振るう意味……」

 

ガイの言葉を聞いて歩夢が胸に手を当てる

 

と、歩夢とリュウのGBCTパッドに着信が入り応答する

 

『ーあの怪獣が消えた空間付近に次元異常だ。ヤツが再出現する予兆かもしれん』

 

ランダルのその言葉を聞き、歩夢たちが見合わせ頷く

 

「こっちは直接向かうわ」

 

ランダルに必要最低限を伝え、3人が立ち上がり駆け出していく

 

と、リュウは1人足を止める

 

「リュウ⁉︎」

「先に行ってて、アユム!」

 

リュウを心配しながらも歩夢は頷き、ガイに続いて駆けていく

 

 

「……何だ、アンタは?」

 

リュウが振り返り、側の電柱の影を睨む

 

「ーへぇ、鋭いじゃないか。ウルトラマン少年」

 

影がゆらりと蠢き、その姿を現す

 

闇をそのまま纏ったかのような黒いスーツ

軽薄そうな雰囲気ながら油断ならない剣呑な雰囲気を放つ怪人物

 

男はニヤリと笑う

油断せずリュウはテライグナイターを男に向ける

 

「お前は、何者だ…⁉︎」

『いいねぇ、その目。オレ好みのギラギラした目だ』

 

チャキッと、刃音が鳴る

いつの間にか背後に立たれ、リュウの首元には日本刀が当てられていた

 

(気づかなかった…⁉︎)

 

『だがまだまだヒヨっ子だなぁ。ここからが楽しみってとこか?』

 

日本刀が外されると共にリュウが振り返り、テライグナイターを向ける

 

そこに立っていたのは、日本刀を携えたトゲトゲした褐色の体表と緑の目を持つ怪人

 

その胸には赤い三日月型の傷があった

 

『安心しな。これ以上攻撃はしねぇよ。ここには遊びに来たようなもんだからな』

 

怪人がそう呟き、姿を元のスーツ姿の怪人物に戻す

 

「何者か、って言ったな」

 

「オレはジャグラス・ジャグラー。ガイのヤツが光の先輩ならー」

 

ジャグラス・ジャグラーと名乗った男はニヤリと愉快そうに笑いながらリュウを見据える

 

「オレは闇の先輩、ってところだな」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

バチバチッと空間に虹色の稲妻が走り、裂けた空間からマガキマイラが再び姿を現す

 

ー■■■■■■■■■■■■■■■!!!

 

現れたマガキマイラが咆哮、進撃を始める

 

それを見上げ、2人が並び立つ

 

(剣を振るうことの意味……)

 

歩夢は未だガイの言葉の答えを見つけられずにいた

 

「そんなに肩に力を入れることじゃないさ、後輩」

 

隣のガイが爽やかに告げる

 

「言っただろ、答えはもう手にしてる。剣が選んだのがその証拠だ」

 

ガイの言葉を受け取りながら、歩夢はまだ首を傾げる

が、何かを思い出したかのように顔を上げる

 

それを見たガイは頷く

 

「いくぞ、後輩…いや、歩夢とイクサ!」

「ええ、行きましょうか、先輩…オーブさん!」

 

ガイがオーブリングを、歩夢がイクサファーナスを構える

 

 

ガイがウルトラマンの姿が描かれたカードを取り出し、リングに通す

 

「ウルトラマンさん!」

 

《ウルトラマン!》

 

ガイの隣にウルトラマンの姿が現れる

 

ーシュワッ!

 

もう一枚、別のウルトラマンが描かれたカードを取り出し、リングに通す

 

「ティガさん!」

 

《ウルトラマンティガ!》

 

さらにもう1人、ウルトラマンティガの姿がガイの隣に現れる

 

ーテァッ!!

 

「ー光の力、お借りします!!」

 

ガイがオーブリングを掲げる

リングが光り輝くと共にガイに2人のウルトラマンの姿が重なる

 

《フュージョンアップ!》

 

重なる光が新たな光の姿へガイを変化させ、飛翔していく

 

《ウルトラマンオーブ!》

《スペシウムゼペリオン!!》

 

 

《アユム:イクサイテッド》

 

歩夢がカードを装填すると共に歩夢の目前にイクサの姿が現れる

 

突き出した左拳をイクサが受け止める

 

《リンケージ:ウルトラマンイクサ》

 

イクサと歩夢の姿が重なり、飛翔していく

 

 

マガキマイラの前に2本の光の柱が出現し、2人の巨人が姿を現す

 

赤い体に青のラインが入る巨人ーウルトラマンイクサ

 

白銀の体に紫・赤・黒のカラーリングが入る巨人ーウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン

 

『俺の名はオーブ!闇を照らして、悪を撃つ!』

 

イクサが構え、オーブもまた構える

 

ー■■■■■■■■■■■!!!

 

マガキマイラが咆哮で返礼し、その巨体を走らせる

2人のウルトラマンはそれを受け止め、イクサは拳を、オーブは鋭いチョップを撃ち込む

マガキマイラはゼロ距離から火炎弾と雷撃を放ち、2人を退けると、尾から火炎を放ち追撃する

 

オーブがそこに飛び込みながらその姿を光り輝かせる

 

《ウルトラマンオーブ!》

《バーンマイト!!》

 

『紅に、燃えるぜ!!』

 

真紅の体に大きな2本角を持つパワー形態・バーンマイトに変身したオーブが胸で炎を押し返しながら肉薄、燃えたぎる拳をマガキマイラの胴体に撃ち込み、その体を大きく後退させる

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

 

腹部のゲスラの口が咆哮し、水弾が大量に吐き出される

 

《フォージング:EXゴモラ》

《ハンマーアップ:スピア》

 

《ウルトラマンオーブ!》

《ハリケーンスラッシュ!!》

 

ーサァッ!!

ーシュワッ!!

 

イクサのスピアとオーブのオーブスラッガーランスが閃き、水球が撃墜されていく

 

素早く身を翻したイクサとオーブが駆け、オーブはオーブスラッガーランスのレバーを2回引く

 

振り回される腕をイクサのスピアが弾き、胸を突いて動きを止め、そこに突き出されたオーブのスラッガーランスがゲスラの口に突き刺さる

 

『ビッグバンスラストォォ!!』

 

オーブスラッガーランスの穂先が爆発。ゲスラの大口の中でエネルギーがスパークし、ゲスラの頭部の目から光が消える

 

ーグェェェオォォォ!!!

 

尾が動き、パンドンの双頭が炎をチャージする

 

《ウルトラマンオーブ!》

《サンダーブレスター!!》

 

ーヌゥァァァァ!!!

 

が、パンドンの頭部は炎を吐き出す暇もなく2つ丸ごと黒い爪の手に掴まれる

 

『闇を抱いてェ、光となるゥッ!!』

 

吊り上がった目と赤と黒の体色のマッシブな体となったオーブ・サンダーブレスターがパンドンを掴み締め上げていた

 

暴れる尾を万力のようなパワーで押さえながらオーブはその右手に回転ノコのような光輪を出現させ、回転させる

 

『ゼットシウム、光輪ッ!!!』

 

振り下ろされた光輪が片方の尾を切り裂き、残ったもう一方の尾は辛くも逃れた

 

ー■■■■■■■■■■■!?!?

 

ゲスラとパンドンの頭部を潰され、マガキマイラがよろめき後退する

 

イクサとオーブが並び立つ中、マガキマイラは残る頭部にエネルギーを溜め、粉砕されたゲスラの頭部も傷を治しながらエネルギーを溜め始める

 

『デカいのが来そうだな…フッ!』

 

オーブの内部、インナースペースでガイは1枚のカードを取り出す

 

《覚醒せよ!オーブオリジン!!》

 

リングに通されたカードから巨大な剣、オーブカリバーが顕現する

 

それを掴み、構えたガイが鍔部分の円盤を回し、トリガーを引く

 

それと共に円盤の刻印が光り輝き、同時に吹き抜ける風のようなメロディが響くと共にオーブの姿が「本来の姿」へと変わっていく

 

オーブオリジンの姿となったオーブがオーブカリバーを振り回し、構える

 

 

『銀河の光が、我を呼ぶ!!!』

 

 

その間にもエネルギーが蓄積されていくマガキマイラに向き直りながらオーブが背中越しにイクサに視線を送る

 

『流石に俺1人だとキツそうだ。イクサも、あの剣で合わせてくれ』

『はぁッ⁉︎ そんなこと言われても、あの剣はまだー』

 

 

「いや、大丈夫。いけるよイクサ」

 

イクサのインナースペース

イクサの隣に並び立つ歩夢が微笑みながら告げる

 

『いけるって……何でそんなこと言えんだよ…⁉︎』

「ガイさんの言葉の意味がわかったから、かな」

『⁉︎あの剣の意味ってヤツか⁉︎』

 

歩夢が頷く

 

「怪獣のことをもっと分かり合いたいから戦う私、怪獣を憎むから戦うイクサ。はじめて会った時は真反対だって思った」

 

『……な、なんだよ、いきなり……』

 

「正直、イクサのことも理解したいけど平行線なところもあるかもって諦めてたこともあった」

 

「でもさ、平行線なんかじゃなかった。根っこは同じだったんだよ」

 

歩夢が隣のイクサを見る

 

「イクサは怪獣を憎んでいても、傷つけられたアルマに怒り、リュウミャクノオロチと対話することを選んでくれた」

 

『アレは…オレじゃなくてお前に従っただけだ』

 

「私が戦えないなら、オレの好きにするって言ってたのに?」

 

『それは……』

 

 

「そして私は、憎み合わないような世界の一歩になりたいと思い、だからこそ怪獣も人間も守りたかった」

 

「憎んでいたとしても、誰かを守るために戦えるイクサ、憎み合わないように、どちらも守るために戦いを選んだのが私」

 

「私とイクサ、どちらも守りたいから、この力を振るってる」

 

 

『……守りたいから……そうか…たしかに、そうだった』

 

イクサが自身の胸に手を当てる

 

『確かに、オレはオレの故郷を滅ぼしたイザーティアが憎かった』

 

『ーでも、それ以上に…オレは怪獣から弱いヤツらを守りたかったんだ。オレみたいなヤツを、生まないために…‼︎』

 

 

「ガイさんの言う通り、最初から私たちにはあったんだ」

 

『ああ、そうだ。真反対のようで根本では繋がってた』

 

「剣を振るう意味ー」

 

『そして力を求める意味ー』

 

 

『「それは、守りたいものを守りたいから!!」』

 

 

2人の声が重なる

瞬間、2人の間にホシウミノツルギが現れる

 

2人は同時に、その柄を掴んだ

 

 

現れたホシウミノツルギを掴むイクサ

 

イクサが、歩夢が、展開したイクサファーナスの輪にその剣身を通す

 

《共鳴せよ、2つの魂!!》

 

同時にホシウミノツルギの鍔の紋章が光り輝く

 

猛る力の「火」

慈愛の心の「水」

 

重なる2つの光がイクサの体を包み、その体に新たに金色のラインを走らせる

 

 

ーサァッ!!

 

新たなる姿ーイクサ・デュアルブレイブに変身したイクサがオーブと並ぶ

 

『気づいたみたいだな、2人とも』

『ああ、やっと気づいたぜ』

「ありがとうガイさん!」

 

フッ、とオーブが微笑む

2人の剣を構えたウルトラマンはマガキマイラへ向き直る

 

ー■■■■■■■■■■■■!!!

 

エネルギーチャージを終えたマガキマイラは腹部のゲスラの口を引き裂かんばかりに開き、極太の赤黒い光線ーデザスタル・マガ・バーストを放つ

 

あまりの威力に軌道内の大地が赤熱化し、瓦礫が浮き上がる

 

『いくぞ、イクサ!!』

『おうッ!!』

 

 

オーブーガイがオーブリングにカリバーの刀身を通す

 

《解き放て!オーブの力!!》

 

鍔の円盤を回転させ、トリガーを引き絞る

 

 

イクサー歩夢がホシウミノツルギの鍔中央の窪みにイクサファーナスを装備した左腕を重ね、窪みを押し込む

 

《束ねよ!2つの勇気!!》

 

刀身に虹色の光が溢れ、それを∞の軌道に振り回して突きのような構えをとる

 

 

『ーオーブスプリーム、カリバァァァァ!!』

『「ーデュアルライズ、バーストォォォ!!」』

 

 

オーブカリバーから放たれる銀の光線

ホシウミノツルギから放たれる赤と青の光線

 

2つの光線が重なり、渦を巻き、デザスタル・マガ・バーストに真正面からぶつかり、切り開いていく

 

そのままマガキマイラまで到達した2条の光線が、その巨体を貫き、エネルギーがスパークしもがく

 

『このまま決めるぞ、歩夢!』

「ええ、行きましょうイクサ!」

 

 

イクサと歩夢がホシウミノツルギを引き、2つの紋章を順に光らせ、8の字に振り回した刀身を再びイクサファーナスのリングに通す

 

《猛き火!優しき水!》

《今、一つに!!》

 

赤と青、2つの光を交互に放つホシウミノツルギを改めてイクサが構え、マガキマイラに肉薄し、その肩口に叩きつけられる

 

 

『「デュアルライズ・スラッシュ!!」』

 

 

重なり合う2つの声、2つの心

 

エネルギーを噴き出した刀身が振り抜かれ、袈裟に切り裂き、返す刀で振り上げX字の斬線を刻み込む

 

ー■■■■■■■■■■……ッ

 

弱々しい咆哮と共にマガキマイラが倒れ、爆発する

 

イクサに歩み寄ったオーブが手を差し出す

それにイクサが応え、2人の戦士は硬い握手を交わした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「もう行っちゃうんだ…」

「ああ、風来坊だからな。まぁまたどこかで会うこともあるだろうさ」

 

マガキマイラが倒れた炎魔丘陵で歩夢がガイの背を見送る

 

「お前たち、中々いいコンビだったぜ」

 

「その心を忘れるなよ。それとー」

 

ガイは改めて振り返り告げる

 

「ーお前たち自身を、信じることを忘れるな」

 

「私たち自身を…」

『信じる…か……』

 

ガイは微笑み、手を上げると踵を返し、ハーモニカを吹きながら去っていく

 

途中、その体が光り輝くと共にウルトラマンの姿となり、夕焼けの空へ飛翔していった

 

「アユム!イクサ!!」

 

オーブを見送っていた歩夢の後方からリュウが駆けてくる

 

「リュウ!今までどうしちゃってたの⁉︎」

「ごめん、怪しいヤツがいたから追いかけてた…怪獣は⁉︎」

『オレたちが倒したから安心しな。剣も使えるようになったし』

 

イクサの言葉に微笑み、歩夢もピースサインを見せる

 

「……そうか、よかった…」

 

それを見たリュウはホッと安堵の息を吐くと共に、どこか浮かない顔を見せた

 

報告のために帰路につく歩夢の背を見ながら、リュウはあるものを取り出す

 

黒曜石のような黒い色彩のテラスパークドールズ

その姿は、ジャグラス・ジャグラーの変身した姿そのものだった

 

 

数分前

 

「闇の先輩……だって…?」

「ああ。オレはアイツと違って光に嫌われた身だからなぁ…」

 

ジャグラーは微笑みながらリュウに近寄り、その肩を叩く

 

「ーだが、だからこそ光の中のヤツらには見えないものがある」

 

とん、とリュウの胸に人差し指を当てる

 

「オマエの中の、焦りとかもな」

 

バッ、とリュウが後退する

 

「オレは…オレは焦ってなんかいない‼︎」

「あのイクサとかいうヤツらに追いつけてないんだろ?強がんなって」

 

ヘラヘラと笑いながらジャグラーがリュウを見透かす

怪人の姿になりながら、ジャグラーはおもむろにその胸に手を突っ込んだ

 

『ーオマエ、何よりもウルトラマンの癖にどちらでもないな』

「どちらでも、ない……?」

『オマエには、まるでまだ芯がない』

 

胸から取り出した何かをリュウに投げ渡す

 

それはジャグラーの姿をしたテラスパークドールズだった

 

『決めかねてるなら、こちら側も味わって見ることだ』

 

ジャグラーは呆けるリュウの側を通り過ぎながら、その手にブラックの缶コーヒーを一つ渡す

 

「まぁ、少しばかり大人の味だからオマエには多分似合わないがな」

 

それだけ告げた黒スーツの怪人は霞のように姿を消した

 

リュウは、その手に残ったテラスパークドールズを見つめた

 

「オレの……芯……」




定期点検のために地上に降り立つスターゲイザーベース

滞りなく作業が進む中、鳴り響く電話の音
それと共に眠りに落ちていく機関員と隊員たち

眠りに囚われた水輝が見たのは
深く傷を残す過去の事件だった

次回ウルトラマンイクサ
「暗闇と罪状のエレジー」

「そいつ」は、人の頭を覗き見る
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