ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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第16話「闇と自分自身のゴクジョー」

特殊自衛隊のある研究施設

 

刀を構える怪人ージャグラス・ジャグラー

 

銃に手を伸ばす男ーリシュリア星人イグニス

 

無言の圧力と覇気のぶつかり合う中、どちらからともなく両者が構えを解く

 

『……やめだな。お前、元々それ盗るつもりないだろ?』

「……冗談のわかるヤツで助かったぜ。ああそうだとも」

 

イグニスが愉快そうに笑いながら銅鏡を苑樹(えんじゅ)に投げ渡す

慌てて苑樹が銅鏡を掴み、大事に抱きとめる

 

「返すぜ嬢ちゃん。俺は人様のゴクジョーには手出ししない主義なのさぁ」

「そ、それならそうと早く言ってください‼︎」

「ハハッ、つれないねぇ」

 

肩を竦めるイグニスと怒鳴る苑樹を眺め、ジャグラーが肩を竦める

 

ーギャリィィィィィィィン!!!

 

瞬間、ジャグラーが刀を振るい背後からの攻撃を受け止める

 

「ージャグラス・ジャグラー。招かれざる客」

『オイオイ、随分乱暴なお嬢さんだな』

 

襲撃者を弾き返し、ジャグラーが睨み苑樹とイグニスも油断なく構える

 

そこに現れていたのは銀髪の黒スーツを纏う女性

ヴィクターA班室長ーガウル・エオがそこに立っていた

 

ガウルが右腕を胸に当て、払い落とす

 

ガウルの姿が揺らぎ、ワロガの姿へと変わる

 

『ワロガだったのか、オマエ』

『ー分かっていただろう。ウルトラマンのなり損ない』

 

ワロガの挑発にジャグラーの切先が少し揺らぐ

 

『ーリシュリア星人、巫女さん。さっさと逃げな』

「ーあいよ」

「え、はッー」

 

呆けた苑樹を米俵のごとく担いだイグニスが逃走、姿を消したのを確認すると共に剣閃が閃き、ワロガのアームショットが煌めく

 

肉薄するジャグラーの剣撃を手甲で受け止めながら鍔迫り合いを始め、数多の剣撃が交錯し薄暗い室内を火花が照らす

 

『ー貴様のような異分子(イレギュラー)が迷い込むなら、手当たり次第引っ張り込むのも考えものだな』

『ほう?オレ抜きに悪巧みか。ちょっと聞かせてもらおうかッ‼︎』

 

刀を振るうジャグラー

その動きが一瞬鈍る

 

『⁉︎』

 

動きを止めたジャグラーのガラ空きの胴にワロガのアームショットが炸裂し、大きく吹き飛ばす

 

『ーッぐ!?』

 

倒れ込むジャグラーの前にワロガの背後からもう一人人物が現れた

特殊自衛隊士官服を着たその人物は左腕の指を細かく動かしつつ、襟首を直しながらニッと嘲笑う

 

『油断は禁物だろう?クククッ』

『ー陰湿な野郎だな…ま、オレが言えた話じゃねぇか』

 

ジャグラーの背後に黒い穴のようなものが出現、その体を吸い込む

 

『邪魔者は元の宇宙にお帰りいただこう』

『チッ、まずったかッー』

 

穴に吸い込まれ、ジャグラーは姿を消した

ワロガはガウルの姿に変化し、髪を直す

 

「ーアレの分析も必要だったな。丁度いい」

 

その手に浮遊しながら回転する立方体型の装置を取り出し、起動

燐光を放ちながら立方体が「開く」

 

「ーヴィクター・ゴルザ。殲滅コマンド入力」

 

 

特殊自衛隊の施設から脱出したイグニスが苑樹を下ろす

 

「全く…なんだってんだ。こんな何の変哲もない施設にあんな怪しげな連中集まりやがって…」

 

居住まいを正していた苑樹が何かに気づき、イグニスに警告する

 

「この反応はーゴルザ⁉︎」

「何?」

 

訝しげな顔をイグニスが向けると共に大地が大きく鳴動し、盛大な土煙を巻き上げながら巨大な影が現れる

 

ーゴォォォアァァァァァ!!!

 

「あいつは…⁉︎オイオイ、こっちの宇宙にもいるのかよ⁉︎」

 

現れた怪獣ーゴルザの体には外側からその骨格を補強、もしくはその体を支配するかのようにギブスのような形状の機械が装着され、駆動音を発していた

 

「あの機械…まさかアレでゴルザを…⁉︎」

 

驚愕する苑樹たちを見下ろし、ヴィクター・ゴルザがその額にエネルギーを蓄積し始める

 

それを見たイグニスがやれやれと肩を竦めながら紋様の刻まれた機械的な黒い銃を取り出し、構える

 

「ー下がってな」

「何をー」

 

ーゴァァァァァァァァァァ!!!

 

《TRIGGER DARK》

 

額から光線が正に放たれる

苑樹が顔を覆う

 

が、衝撃はいつまで待っても襲ってこなかった

 

「……⁉︎」

 

ゆっくりと目を開けた苑樹は目の前の光景に驚愕する

 

ヴィクター・ゴルザの光線を背に受け、苑樹を庇っていたのは肩から2本のツノのような装飾が伸びた古代の装飾のような複雑な紋様の黒銀の体を持つ巨人だった

 

その胸には青く輝く菱形のクリスタルが煌めいていた

 

「イクサと同じ……いや、あなたは…⁉︎」

 

ーヌゥアァァ‼︎

 

ゆっくり立ち上がり、ヴィクター・ゴルザの光線を振り払いながら向き直った黒き巨人ートリガーダークが低く構えた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

GBCTの基地を一人抜け出したリュウはどこへともなく足を向けていた

 

ジャグラーや、幻影から言われた言葉が頭の中を巡る

 

『オマエには芯がない』

 

『お前は何も守れない』

 

耳の痛い言葉だった

だが紛れもない事実であり、その為にリュウは悩んでいた

 

(オレは、オレはどうしたいんだ…どういたいんだ……)

 

その時、妙な駆動音が耳に入り、リュウが顔を上げる

 

頭上を黒いドローンが飛んでいくのが目に入った

 

「あれって…GBCTでも使われてるヤツに似てる…?」

 

ーゴォアアアアア!!!

 

リュウの耳に怪獣の咆哮らしいものが入り、その源に目を向ける

 

そこではゴルザが黒い異形の巨人と格闘している様が見られた

黒い巨人ートリガーダークはゴルザに手刀を叩き込みながらヘッドロックで押さえ込む

 

「!?あいつは…イクサじゃない⁉︎」

 

リュウはテライグナイターを構える

 

《ウルトライブ!!》

《ウルトラマンテラ!!》

 

 

ーテァッ!!

 

飛来してきたウルトラマンテラにトリガーダークが気づく

 

『お?この宇宙のウルトラマン、ようやく登場か?』

 

『テラジュームスラッシュ!!』

 

テラは腕と脚のクリスタルを発光させ、テラジュームの光弾を4連続で放ちながら疾走する

 

放たれた光弾はー狙い通りトリガーダーク(・・・・・・・)に直撃。怯んだ巨人にテラが組み付く

 

『って⁉︎オイオイ⁉︎怪獣はあっちだろうが⁉︎』

『怪獣にいきなり襲いかかるなんてお前誰だ⁉︎』

『はぁ!?いや、なんのことだよッ!!』

 

トリガーダークは困惑しながらもテラを受け流し、ショルダータックルで吹き飛ばす

 

《ウルトランス‼︎》

《マグマイーター・ソウル‼︎》

 

ーテァッ!!

 

マグマイーターの力を纏ったテラが素早く吹き飛ばされた先の山肌を蹴り跳躍、トリガーダークに反撃の爪撃を与える

返す刀で爪を振り回すがトリガーダークは腕でそれを防ぎ、続けて放たれる蹴りも受け止め投げ飛ばす

 

身を翻し着地するテラとトリガーダークが睨み合う

 

『こいつ…強い…ッ⁉︎』

『ったく、話聞けってば‼︎俺のどこが怪し……いや怪しいなたしかに』

『何をごちゃごちゃと⁉︎』

 

テラが再びトリガーダークに組み付く

が、ほぼ不意をつかれた先程とは違いトリガーダークは軽々とテラの連撃をいなし、その腕を後ろ手に固めて耳元に顔を寄せる

 

『落ち着けっての。こちとら話もできやしねぇ…』

『くっ、離せ‼︎』

 

ーゴォアアアアアァァァァァ!!!

 

そこにヴィクター・ゴルザが咆哮と共に光線を放ってくる

トリガーダークはテラの拘束を解きながら突き飛ばし、共に攻撃を回避する

 

咆哮するヴィクター・ゴルザを見据え、テラがその体の機械部品に気づく

 

『あの怪獣、改造されてる…?』

 

その様子を見たトリガーダークが得心のいったような様子を見せる

 

『……なるほどなぁ。似たヤツってのはどこにでもいるもんだ。だがなー』

 

ーゴォアアアアアァァァァァ!!!

 

ヴィクター・ゴルザがテラに向けて放つ光線をトリガーダークが割って入り振り払う

 

『コイツはもう助からん。完全に正気を失ってる』

 

背後のテラにトリガーダークが目配せをする

 

『ひと思いに仕留めてやるのが、今コイツにとって一番の救いだろうさ』

 

更にトリガーダークは胸の前で腕を交差させ、横一文字に広げながら闇のエネルギー粒子を集めていく

 

ーヌゥアァァァァァ!!!

 

トリガーダークが腕をL字に組み、必殺のダークゼペリオン光線を放つ

 

闇の光線がヴィクター・ゴルザに直撃し、漆黒のエネルギーをスパークさせながらヴィクター・ゴルザが爆散する

 

それを見て俯いたままのテラと、構えを解いたトリガーダークがそれぞれ人間の姿へと戻っていく

 

 

脱力し、木に背中を預けるリュウ

 

そこに苑樹を連れたイグニスが歩み寄る

 

「少年がさっきのウルトラマンかい?若いのにすげぇな…」

「あんたが…さっきの黒いウルトラマンなのか…?」

 

警戒心を滲ませるリュウにイグニスは両手を上げて見せる

 

「取って食おうとか考えちゃいねぇよ。安心しなって」

 

歩み寄り、リュウを助け起こす

 

「……その代わり、と言っちゃなんだが…」

 

ぐぅ〜……と緊張感の無い音が響く

 

「…どっかで飯、奢ってくれないか?腹減っちまって死にそうでさ」

 

ハハッと笑いながら苑樹の方を振り返る

 

「あっちの巫女さんもぺこぺこみたいだしな」

 

苑樹が赤面しながらお腹を隠す

先程の腹の虫はどうやらイグニスのものではなかったらしい

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

玲武(れいぶ)神社の敷地内にある苑樹の居宅

 

「いやぁ〜食った食った。ごちそうさん、少年」

 

座敷のちゃぶ台に空になった茶碗と箸を置き、イグニスが満面の笑みで手を合わせる

 

近くに苑樹の住む神社があったため、そこの台所を借りて負傷していた苑樹の代わりにリュウが3人分の食事を作ったのだった

 

「えっと…こういう時は、お粗末様でした?でいいのかな…」

 

照れ臭そうにリュウは頬をかきながら同じく手を合わせる

 

「………ご馳走様でした。美味しかったです」

 

礼儀正しい所作で箸を置き、苑樹も手を合わせる

思ったよりもかなり空腹だったらしく、焼き魚3尾に白飯5杯、味噌汁3杯を平らげていた

 

「気持ちのいい食いっぷりだったなぁ巫女のお嬢ちゃん」

「ー見せ物ではないんですが…?」

 

少々ドスの効いた声でイグニスを睨みつけながら苑樹が告げる

イグニスは冷や汗を垂らしながら口笛を吹いて誤魔化していた

 

「……色々聞きたいことがあるんだが、いいか?」

 

その様子を気まずそうに伺っていたリュウが恐る恐る口を開く

 

「聞きたいことなら、俺にも色々あるんだなぁ」

 

それを聞いたイグニスはあぐらに座り直し、膝に肘をつきながら2人を見比べて微笑む

 

「別の宇宙から来た俺はこの宇宙のこと、この宇宙の地球のこと、全然知らないからなぁ。色々教えてくれよ、おふたりさん」

 

「別の宇宙…?」

 

リュウが思わず呟き、苑樹も小さく首を傾げる

 

「ああ、お宝を探して飛び回ってる時になんか妙な黒い穴に吸い込まれちまってな。気がついたらこの地球の近く、なんとかグエバッサーの箒で地球まで辿り着いてみたら俺の知る地球じゃないからびっくり仰天したってワケさ」

 

「……この地球が、あなたの知る地球ではないという確証はどこで得たのですか?」

 

「簡単さ。俺がいた宇宙の地球で星の防衛をしていたのは、TPUって組織とGUTS-SELECTってチームだったからな。この巫女さんが捕まっていた施設のマーク、見覚えがなかったからとなるとって推理したわけさ。見知らぬウルトラマンもいたからまぁ、大当たりだろうな」

 

「捕まっていた…?」

 

イグニスの言葉にリュウが顔を顰める

 

「……先日の事件、リュウミャクノオロチが覚醒した時以来、特殊自衛隊にわたくしは身柄を拘束されていました。わたくしの側で特殊自衛隊の司令官で重傷を負って倒れていましたから、わたくしに嫌疑がかかったのでしょう」

「特殊自衛隊の司令官が…?歩夢からそんなこと聞いてないぞ⁉︎」

「貴方、GBCTに所属したのですね。所属したばかりの新人隊員程度では、そこまでの事件の情報開示があるほど信用されていないのではないですか?」

「な、そんなこと…ッ‼︎」

 

反論しかけてリュウは言葉を飲み込む

 

(……思えば、オレは度々作戦会議に参加しなくていいなんて言われてた……オレが、まだ未熟だから……?オレが、弱いから……)

 

考え込むリュウと共に苑樹も顎に手を当て思案を巡らせる

 

(とはいえ、いくら新人隊員だとしても嫌疑のかかる不審人物の周知を怠るとは考えにくい…そもそも、検査やバトルナイザー:EARTHの解析こそされ、尋問の一つもなかったのは……?)

 

難しい顔をして黙りこくる2人の頬をイグニスがつねり、引っ張る

 

「ってて!?!?」

「ッ⁉︎ないふるんてふか!?」

 

不意の攻撃にリュウと苑樹が抗議の声を上げる

 

「なーに少年少女が難しい顔してるんだよ。スマイル、スマイル」

 

リュウたちに振り払われ、イグニスが手を離す

 

「抱え込んでばっかりだと、肝心なところでゴクジョーなことを見逃しちまうぜ。気を取り直して、この地球のことを教えてくれよおふたりさん」

 

「代わりに俺の宇宙の地球であったおもしろおかしくてゴクジョーなヤツのことも話してやるからさ」

 

 

ヴィクター・ゴルザのコントロールに利用していた立方体デバイスをガウルがコンソールに装填する

 

装填をキーにしてコンソールが起動、青白いシステム光を放つそれをガウルが操作していく

 

コンソール上に展開されたホログラムモニターにはトリガーダークとヴィクター・ゴルザの戦闘が表示され、ヴィクター・ゴルザの分析と並行してトリガーダークの解析もされていた

 

「性が出るな、ワロガ」

 

士官服の人物がガウルの背後から現れ、声をかける

 

「ただの契約。仕事の一環だ」

「清々しいまでの仕事人間だな。仕事は楽しまないと損だぞ」

 

ガウルの操作するコンソールの側の台座に歩み寄り、セットされていたガジェットを見つめる

 

それはイグニスが持っていた黒い銃とよく似たY字型のガジェットだった。イグニスの持つもののような艶やかな黒ではなく、光を飲み込むかのような漆黒だった

 

そこから伸びたコードは黒いUSBのようなものに繋がっていた

 

「こいつは、このオモチャと似たようなものか?」

 

士官服はその懐から扇型のデバイスーフェイクZライザーを取り出してプラプラと振る

 

「ーえぇ、尤もそれを使うのはワタシですが」

 

暗闇の中からもう1人、黒い法衣を纏い顔布で顔を隠した人物ー火煙(ひえん)が現れる

 

「なるほど。ようやくそちらが動くのか」

「ええ。機は恐らく近いでしょうから、ね」

 

光のラインが走り、紋様が浮かび上がったUSBらしいものを取り上げてスイッチを入れる

 

《KYRIELOID APOSTLE》

 

黒紫の炎が這ったUSBのようなデバイスーハイパーキーにステンドグラス状の新たな紋様として笑みを浮かべたような顔の怪人ーキリエロイドの姿が刻印された

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「なるほどねぇ。怪獣を理解し、保護するチーム・GBCTと大地と怪獣と古来より生きてきた巫女さん……こっちの地球も面白そうなこと盛り沢山だなぁ」

「他人事な感想ですね…」

「当事者じゃねぇんだし、仕方ねぇだろ?」

 

飄々とした物言いを返しながらイグニスはリュウの方を見遣る

 

「怪獣たちを保護して守ってやるってんなら、尚更そんな怖い顔はダメだろ、少年?」

「そんなこと、言われても……」

 

イグニスは少し真剣な顔になってリュウに問う

 

「なぁ、少年。少年にとってのゴクジョーなことはなんだ?」

 

「ゴクジョー……?」

 

イグニスの言葉にリュウが首を傾ける

 

「俺にとってのお宝、故郷のリシュリア星、そんでもって…地球で出会った気の置けない仲間たち。そういうヤツだ。まぁ要するにー」

 

「ー何がなんでも譲れない、そういう大切なものだ」

 

「譲れない、大切なもの……」

 

自分の胸に手を当て、考え込むリュウを見て苑樹がきっぱりと告げる

 

「貴方は、ガイアルドやその他の怪獣たちと共に生きてきた。ならば、守るべきはどちらか、もうわかっているはずー」

 

「お嬢ちゃんは黙ってな。ゴクジョーは、自分自身で見つけるからゴクジョーなんだ。他人に決められるもんじゃねぇ」

 

悩むリュウを横目で見遣り、イグニスはフッと笑う

 

「ーまぁ、すぐに見つかるさ。俺もそうだったからな」

「……そうなのか?」

「おうよ。まぁちょっとばかし、目を逸らしすぎて気づくのに遅れちまったがな」

 

イグニスはリュウの両頬をぐっと摘み、口角を上げる

 

「だからもっとスマイルしとけ。俺の仲間、闇にまで手を伸ばしたとんでもないヤツの請け売りだが、不思議と力になるのも本当だからな」

 

「ふ、ふわいる……」

 

その様子を眺めていた苑樹がなにかを察知し、天井をー空を見上げる

 

と同時に強い衝撃が家屋を揺らした

 

「な、なんだぁ!?」

 

驚いた3人が家屋から飛び出す

 

「あれは……⁉︎」

 

3人が見たのは神社の近くの林に聳え立つ白亜の外壁に紫のラインが入る塔のような2つの巨大構造物だった

 

その壁面には何やら古代文字のような、アルファベットのような文字列が刻まれていた

 

その発光する文字列を見てイグニスが何かに気づく

 

「あいつは……アキトが持ってた本に載ってた地球の言語に似てるな。確か……ラテン語とかいうヤツで……」

 

 

『……《Decliner(ディクリナ)》《衰退》、という意味の文字列に似ている』

 

GBCT地上基地の簡易司令室では歩夢(あゆむ)たちもモニター越しに白亜の巨塔を見ていた

 

神社の近くに現れた2本以外にも五道市の街中に1本、計3本が出現していたようだ

 

「監視衛星での観測から、おそらくこの構造体は宇宙から落下してきたものだと思われます」

「いきなりすぎるでしょ…まぁ侵略者とかが待ってはくれないのは分かりきった話だけどさ…」

 

ガシガシと頭を掻きながら白亜の塔を睨む

 

「……よりにもよってリュウがどっか行った時に出てくることないでしょうよ…」

 

側のデスクに置かれたリュウの制服に視線を落としながら歩夢がため息を吐く

 

ビーッ!!ビーッ!!

 

突然のサイレンに歩夢たちが顔を上げる

 

『構造体に変化アリ。起動した…?』

 

モニターに映る白亜の塔たちがそのボディからコードを伸ばし、地面に突き立てて何かを吸い上げ始めた

 

「何が何やらだけど、間違いなくヤバいのはわかるわね…ひとまず被害拡大を防ぐために街中の方を先に対処するわよ!!」

『了解ッ!!』

 

 

ゴウン、ゴウンと動き始めた塔を見て苑樹が口を開く

 

「あの塔……龍脈のエネルギーを吸い上げてる!?」

「なっー」

 

その意味するところを知るリュウが目を見開く

それが事実であることを示すかのように白亜の塔の周辺の木々が枯死し、萎れていく

 

「やらせるか!!」

 

《ウルトライブ‼︎》

《ウルトラマンテラ‼︎》

 

リュウがテライグナイターとテラスパークドールズを取り出し、テラへと変身する

 

ーテァッ!!!

 

テラが白亜の塔にパンチを撃ち込む

盛大な火花を散らす中、間髪入れずにキックを決める

 

更に追撃を行おうとするテラの目前で塔の頂上部が展開、赤く脈動する球体部からビームが放たれ、テラの胸に直撃し吹き飛ばす

 

【ー・・ ・・ ・・ー ー・ーーー ・ー ・ー・・ ・ー ーー・ー・】

 

ピポピポと不可思議な音声を放ち、白亜の塔が変形していく

側面から腕らしい機構が出現し、下部から脚のようなパーツが展開

円柱から腕と脚が生えたような珍妙なロボット形態へと変化した

 

ー◇◇◇◇◇……

 

駆動音を響かせながら塔ー天体リプロダクトマシン・ディクリナがテラへと突進、その強固なボディをぶつける

 

なんとかその勢いを殺し、押さえ込みチョップや蹴りを決めるがビクともせずに放り投げられる

 

『ぐぁっ!?』

 

背中から叩きつけられたテラにディクリナは脚を格納、ロケット噴射で上昇してテラを押し潰さんと落下してくるのを間一髪で転がってかわすが、すかさず脚部を展開したディクリナは踏み潰さんと何度も脚を下ろす

 

《ウルトランス‼︎》

《マグマイーター・ソウル‼︎》

 

『ハァッ!!』

 

強化された脚力で振り下ろされたディクリナの脚を受け止め、蹴り上げると共に回転しながら跳躍してその表面を切り裂きながら身を翻してディクリナの背中側に降り立つ

 

よろめきながらも体勢を立て直すディクリナに振り返り、構え直す

 

ーテァァッ……⁉︎

 

が、そのテラの背にコードが突き刺さり、エネルギーを奪い始める

 

【-・・-- ・・- ・・・- ・・ ・-・-・ -・--- ・-・-・ ---- ・・】

 

背後にいたもう一機のディクリナが戦闘形態に変形、その背面からコードを伸ばしてテラのエネルギーを奪っていた

 

ーテァッ……⁉︎

ー◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

カラータイマーが赤く点滅し始めるテラを球体部からの光線で挟撃し、ダメージを与えていく

 

コードが抜かれたテラが地面に倒れ伏した

 

地上でそれを傍観していた苑樹

見かねたとばかりに銅鏡を取り出そうとする

 

それをイグニスが制した

 

「まだ本調子じゃねぇだろ?下がってな」

 

ニヤリ、と微笑むと腰のホルスターから黒い銃ーブラックスパークレンスを抜く

 

「もらいもんだが、今俺はあいつの先輩みたいなもんだしな」

 

その手に黒と金のハイパーキーを取り出し、スイッチを押す

 

《TRIGGER DARK》

 

そのハイパーキーを銃把に装填する

 

《BOOT UP DARK ZEPERION》

 

「後輩にはカッコいいとこ見せねぇとな!」

 

 

バレル部分を展開、Y字型のデバイスに変化させる

 

「ー未来を染める漆黒の闇……」

 

「トリガーダーク……‼︎」

 

ブラックスパークレンスを掲げ、トリガーを引く

 

《TRIGGER DARK》

 

イグニスの姿が闇の竜巻に包まれながら巨大化

超古代の闇の巨人ートリガーダークに姿を変える

 

 

ーヌゥゥゥゥアァァァァ!!!

 

トリガーダークの跳躍からのパンチが最初にテラが戦っていたディクリナAに直撃、その白亜の巨体が吹き飛ばされる

 

返す刀で手から黒い光弾を放ち、ディクリナBの動きを止める

 

テラに駆け寄り、立ち上がらせたトリガーダークは正面からテラに向き合い、額に腕を交差させ下げる

 

トリガーダークの額のクリスタルから光がテラのカラータイマーへと流れ込み、点滅していたカラータイマーに蒼い光が戻る

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

倒れていたディクリナAが起き上がると同時に背中合わせになり、テラがAに、トリガーダークがBに向き直る

 

『何色が好きだ……ってコイツら色の違いはねぇから無理か』

『?なんのことだ?』

『こっちの話さ。こちらは任せな、後輩!』

『ーわかった!!』

 

ーテァッ!!

ーヌゥアッ!!

 

テラがディクリナAに膝蹴りを撃ち込み、トリガーダークがディクリナBにラリアットを叩き込む

 

怯んだそれぞれに手刀と蹴りを交えたラッシュ、拳と蹴りの重い連撃がヒットし、巨体がよろめく

 

よろめいた巨体の肩を掴んでテラが押さえ、トリガーダークが首付近を抱え込み、向き合って意図を汲んだ2人が頷く

 

ーテァァァァァッ!!

ーヌゥゥゥゥゥッ!!

 

ディクリナを抱えたまま2人のウルトラマンが全力疾走し、その頭部同士を衝突させる

 

衝突した球体部分が派手な音と共に割れ、火花が噴水のように噴き出す

 

【-・-・・ ・・-- ・・- ・-・-- ・- ・-・・】

 

だらりと双方脱力したディクリナたちの背を2人のウルトラマンが蹴り付け、ぶつけ合わせて距離を取り必殺の光線を構える

 

『ーテラジュームシュート!!!』

ーヌゥゥゥアァァァァ!!!

 

青白いテラジュームシュートと黒と金の粒子を纏うダークゼペリオン光線が前後から2体のディクリナを貫き、爆散させた

 

 

ーサァッ!!

 

街中に聳える白亜の巨体にGBCTアルバトロスの攻撃が突き刺さり、そこからイクサの拳が叩き込まれる

 

よろめくディクリナは頭部の球体部分を何色かカラフルに発光させながら動きを止める

 

【-・-・- ・- ・---・ ・- ---・ ・・ ---- ・・- ・---・ --】

 

『なんだ⁉︎突然何してんだ…?』

「分かんないけど、今のうちに決めるわ‼︎」

 

両腕を赤熱化し、イクサが必殺の光線を放つ

 

『「イクサライズ光線!!!」』

 

イクサの放つ光線がディクリナを穿ち、白亜の巨体を爆散させる

 

それを見届けたイクサが赤い光となり縮小

歩夢の姿に戻り、GBCTセンチネルのコクピットへと戻る

 

「森林地帯の方にも急がないと……」

『ーそれなら大丈夫』

 

歩夢のコクピットに外部からの通信が入る

音声だけだったが、それはリュウの声だった

 

「リュウ⁉︎無事なの⁉︎というかどこに行ってー」

『ごめん、勝手なことして…こっちのロボットたちはオレが倒したから』

『……たしかに、残り二つの反応も消えている』

 

通信を聞いていたらしいランダルが告げる

 

「そうだったのね。ありがとう、リュウ」

『それと……オレ、しばらくGBCTと家には帰らない』

 

リュウが告げる言葉を歩夢は黙って受け止める

 

『……勝手な話だってのはわかってる。でも、オレ、もう少し色々見たいものがあるんだ。オレ自身のゴクジョー…オレの芯を見つけるために……』

「………」

 

リュウの言葉を聞いた歩夢は静かに微笑む

 

「これだけは守りなさい、リュウ」

『……え?』

 

「自分の気持ちに嘘をつかないこと。自分を騙しながら突っ走ってったら、ここ一番で転んじゃうからね。そしてよく寝てよく食べること!」

 

歩夢の言葉を黙ってリュウは受け止め、ふと思い出したように歩夢に問う

 

『なぁ、アユム。オレを会議とかに呼ばなかったのは、なんでなんだ?』

「会議?あー……特殊自衛隊との合同会議ね。あそこ、怪獣を酷く差別するいけすかないヤツが来るから、怪獣に育てられて家族同然に想ってるリュウは辛いだろうから呼ばなかったのよ」

 

その言葉にリュウはしばし沈黙する

 

『……わかった。ありがとう』

「……制服も部屋も、取っておいてあげるからいつでも帰ってきなさい。リュウ」

 

歩夢は優しく微笑む

 

「いってらっしゃい」

 

ピッと通信が切れる

 

『……良かったのかよ?』

「いいのよ。寂しいけどね」

 

イクサの問いに歩夢が肩を竦めながら答える

 

「私は、リュウの保護者代わりだけど、だからこそあの子を縛る訳にはいかないから。あの子が道を見つけようと足掻いてみるなら、私は背中を押してあげないとね」

 

 

歩夢との通信を切り、苑樹にスマホを返す

 

「いいのか?仲間から離れちまって」

 

イグニスが腕を組みながら問う

 

「これでいい。オレは、オレのこともオレを信じてくれてた歩夢も信じきれてなかった。だからもっと、もっと色々知って、オレのゴクジョーを見つけ直したい」

 

まだ少し表情は晴れていなかったが、その目には決意の光がたしかに宿っていた

その顔を見てイグニスがニッ、と笑う

 

「頑張れよ後輩。まぁ、お前なら案外すぐ見つかりそうだけどな、お前だけのゴクジョーが」

 

「これからどうするつもりなのですか?リュウさん」

 

苑樹がリュウに問う

 

「その、しばらく苑樹のとこにいようかなって」

「ーは?」

 

呆ける苑樹

ヒュー、と口笛を吹かして茶化すイグニスを苑樹が睨む

 

「オレ、怪獣と過ごしたことはあったけど、苑樹みたいな同じように怪獣と生きた別の人間とは過ごしたことなくて…」

 

「だから、苑樹のことも知りたいんだ。なんで歩夢の願いを受け入れられないのか、なんで人間を強く恨み続けるのかー」

 

真剣な表情で告げるリュウを睨んでいた苑樹だが、根負けしため息をつく

 

「……神社の仕事の手伝いはしてもらいますよ。炊事や掃除も交代制です。丁度部屋なら余ってますから」

「‼︎ありがとう、苑樹‼︎」

「……礼など要りません。貴方がたの考えが如何に無駄か、知ってもらった方がこちらも良いですから」

 

そんなことを告げる苑樹をイグニスが見つめる

 

「……お嬢ちゃんも、自分のゴクジョーから目を背けるなよ。そいつがよりゴクジョーであればあるほど、亡くしてから気づいちまうからな」

「……余計なお世話です」

 

イグニスはそれを聞いて微笑むと2人に背を向ける

 

「行くのか?」

「ああ。折角の別宇宙だし、色々観光して帰ろうかなって思ってな。ゴクジョーのお宝も見つかるかもしれねぇしな」

 

「じゃあな、後輩。色々楽しかったぜ!お前のゴクジョー、見つかるといいなぁ!」

 

イグニスは2人に手を振り、マガバッサーの箒を取り出してどこかへと去っていった

 

「ーまた、どこかで‼︎」

 

その背が見えなくなるまでリュウは手を振り、見送った

 

 

「……そういえば、あのよくわからんロボットみたいなヤツに刻まれた文字…ラテン語にも似てるがこっちの宇宙でも似た文字を見たことあったような……」

 

マガバッサーの箒を片手に空を駆けるイグニスがふと思い出したように頭を捻り、ポンと叩く

 

 

「ー思い出した。確か……リンケイド星の言語もあんな文字だったよな。地球でラテン語見てびっくりしたっけ……」

 

 

「こっちの宇宙にもあるんだろうかねぇ、リンケイド星……」

 

そう呟いたトレジャーハンターは、まぁいいかと気ままに風に乗って去っていった




頻発した怪獣災害による怪獣への警戒を薄めるために
水輝が企画した学生向けの岩神諸島の見学ツアーが行われることになった

学生たちの扱いに四苦八苦する大介
同じく地球人との改めての交流に苦戦するルシル

大介はプルメウスとは異なる過去のトラウマをルシルに吐露する

そんな中、突如島の気温が低下し、雪すら吹雪き始める
現れたのはあの白亜の機構によく似た謎のマシンだった

次回ウルトラマンイクサ
「交流会と寒冷機構」
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