その中でガヤガヤわいわいと騒ぎ回る小学生くらいの子供たち15人を前に、
「え〜
水輝の言葉を注目する生徒、まだ騒ぎ続ける生徒、どこかつまらなそうに座る生徒を一通り見回し、水輝は続ける
「保護区として整備されつつありますけど、まだ自然の残る場所も多く危険なエリアも多くありますので、私たちの案内するエリアの外には飛び出さないように、お願いしますね〜‼︎」
ーはーーーーーい!
何人かが元気な返事を返し、それを聞いて頷いた水輝が室内前方の座席に戻る
「お疲れ様、水輝。いい感じだったわよ」
「はぁ……緊張しました…こういうのは実は初めてで…」
座席に先に腰掛けていた
「…ボク達も、改めて緊張してきました…」
「…必要なことだとは思っていたが、いざとなると確かに緊張するな…」
通路を挟んで水輝の隣に並んで座る青年と女性も緊張した様子を見せていた
気の弱そうな線の細い、しかし鍛えられた雰囲気は感じる青年と肩口をくすぐる程度の短いプラチナブロンドにオレンジの瞳を持つ女性だ
「だいじょうぶ。ミズキとアユムもいるし」
2人の間に座る中学生ほどの年恰好の少女が2人の膝に手を置いて声をかける。長い黒髪と赤い目が特徴的な少女だ
「協力ありがとうございます、ハイルさん、ルプスさん、そしてホシちゃんも」
「いえ、こちらこそありがとうございます。ボクたちも、地球で生活していくと決めたからにはもっと地球の皆さんのことを知りたいですから」
ハイルが照れ臭そうに頭を下げる
話は数日前に遡る
「学生向けの岩神諸島見学……?」
珍しくランダルの代わりにモニター前に立つ水輝が答える
「はい。GBCTの活動を広報して怪獣保護について理解してもらうために企画したイベントです!歩夢隊長やランダル副隊長とも十分に話し合いをして実現にまで漕ぎつけました!」
水輝がモニターにスライドと用意したしおりの画像を表示する
「とは言っても、中央島で生活してもらってる怪獣たちの紹介と交流くらいが関の山だけどね…流石に他の島にまで周るのは整備が終わってなくてまだ危険なところがあるし」
「ですね……流石に施設設備がまだ仮設段階のところは危険すぎますから…」
コホン、と水輝の隣に立っていたランダルが咳払いをする
『ひとまず今回のイベントは、学校側も了承してくれた五道市立浪川学園初等部の希望者15名が参加する形になっている』
「随分少ないですね…」
「最近、怪獣の被害もバカになってないからね…イザーティアとか、ティグリスみたいなのが暴れてた分、怪獣への不安感や恐怖感が強くて、殆どの親御さんは反対したらしいし…」
歩夢が渋い顔を見せる
「そのマイナスな部分の払拭が、今回の目的ですね。幸い私たちにはルシルさんもいますし、今回の交流会の意も汲んで更に協力していただける人たちにも来てもらいました!」
と水輝が司令室で座っていた3人に手招きをする
現れたのは青年ーハイルと少女、女性の3人組だった
「ど、どうも…」
「よろしくおねがいします」
ハイルと少女が頭を下げ、女性も無言で頭を下げる
「えっと、たしか……そっちの人はモスキュラスの事件の時に色々あって地球での生活が認められた……えっと…」
「ヴァイロ星人です。改めて、ハイルと申します。よろしくお願いします」
ハイルが頭をもう一度下げる
大介も頭を下げながら他の2人に視線を送る
「他の2人は一体……?」
「ああ、水輝と歩夢以外にはこの顔を見せるのは初めてだったな」
プラチナブロンドの女性は淡白にそう告げ、右手の人差し指と中指を揃えて伸ばし、首に当てる
ピピッという電子音と共に頭部と手先がホログラムのように揺らぎ、元の姿ーカラスに似たオレンジの大きい目を持つ頭部と黒手袋に包まれた手が現れる
ーキキキッ
「⁉︎あんた、あの時の‼︎」
その顔にようやく見覚えがいった大介が声を上げる
『私も改めて自己紹介を。レイビーク星人ルプスだ。此度はよろしく頼む』
ルプスが伸ばした手に驚きながらも大介が握手を返す
ホログラムを起動し直すルプスに大介が驚きの声を漏らす
「……女性だったんだな…」
「ん?ああ、この星の性別定義に合わせるとそうらしい。私の星では性別定義がかなり曖昧だから気にしたことはあまりなかったが…」
と、2人に並んでいた少女が前に歩み出して手を上げる
「バネス族の、ホシです。よろしく」
「⁉︎あの時の女の子⁉︎たしか小学生くらいだったはず…」
『私も驚いたが、血液が安定して摂取できるようになってから肉体年齢が追いつくように急成長したらしい。一応それでもまだ幼体だが』
「………」
開いた口が塞がらない大介にホシが手を差し出す
一瞬大介はたじろぐような様子を見せ、その手に握手を返した
「3人には私たちと一緒に生徒たちとの交流と簡単な案内をお願いしているわ。ランダル自体何度か公の場に出てこそいるけど、地球に共存しつつある異星種族の認知度もまだまだ課題があるからね」
パチリ、と歩夢が手を合わせる
「ひとまず、本番は私たちもガイド兼万が一に備えてで岩神諸島に同行していくわ。メインの進行は水輝だけど、私たちもちゃんとサポートするから安心してね」
「は、はい、頑張ります…‼︎」
緊張した面持ちの水輝が敬礼する
それとは別に、大介も何故か緊張した面持ちを見せていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
岩神諸島中央島観測施設
その前に並んだ小学生たちが騒ぎながらも水輝たちGBCTの面々に注目している
何人かの小学生たちは側にいるランダルに興味深々なようでその周りを何人もぐるぐる回っていた
「ランダルさんも宇宙人なの?」
『そうだ』
「イカ星人??」
『いや、スタンデル星という星の出身だ』
「難しいなまえの星だね」
『地球人の皆にはたしかに難しい発音かもしれない』
「飴、食べますかー?」
『……いただこう』
質問やら何やら色々詰められているが当の本人は至って冷静に対処していた
『…意外とランダルは慣れてるのか?こういうの』
「私もなんだか意外ー」
と、歩夢がふとランダルの方に視線をやるとランダルは六角形の青いクリスタルのような目(?)をこちらに向けてきていた
いつもは静かに点滅を繰り返しているそれが心なしか、いや確実にいつも以上にハイペースで点滅している
……さながらウルトラマンたちのカラータイマーのように
「………でもないみたいね」
『………オレにもアレが救難信号なのはわかるな』
「はい、では皆さんにはこれから3班に分かれて色々な場所を見学してもらいます!」
と、水輝が大まかな説明を終えて班分けを説明していく
歩夢・ルプスについていく1班
水輝・ハイル・ホシについていく2班
そして大介・ルシルについていく3班
それぞれに学校側の教員もついた5人ずつの班で各々見学や交流をしていく…はずだったのだが…
「GBCTの見学ッて聞いたから来たのに、怪獣ばっか見るのなんてつまんねぇよ」
「わ、わたしは…その…ちょっと近くで見るのは怖くて…」
「おれ、こっちのイカ宇宙人の隊員さんといたい〜‼︎」
3人ほど駄々をこねて班分けに従わない生徒がいた
「
「うっせぇ!ブス‼︎」
「ぶー」
気の強い雰囲気の仏頂面の男の子ー雄太が言い放った言葉に水輝が笑顔を貼り付けたまま固まる
『……仕方がない。3人程なら私が面倒を見よう。映像資料の鑑賞やビークルの見学をさせておく』
「……大丈夫、ランダル?」
心配そうな歩夢の問いかけにランダルは再び目を高速点滅させ動揺を見せながら絞り出すように答える
『……なんとかする』
「……まぁ、先生にもついてもらうから…」
びっくびくのランダルを先生に頼みながら歩夢はふと大介とルシルの方を見る
『よろしくおねがいします!』
目前に集まった生徒4人の元気な挨拶を受け、大介とルシルはどこか固い雰囲気を残したまま挨拶を返す
「よ、よろしく……おねがいする……」
「こ、こちらこそ…よろしく……」
堅苦しいまま頭を下げる2人を生徒たちは不思議そうに眺めていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ークオォォォォォォォォォン!!
遠吠えを上げる褐色の体表を持つ四足歩行の怪獣を遠くから見つめる生徒たちが驚きと共にキラキラとした眼差しで見つめる
水輝とハイル、ホシが連れた生徒たちが来ていたのは観察・監視用の簡易展望塔の頂上だった
柵だけで保護ガラスなどはないが、一定以上に怪獣が近づいた場合に自動でバリアが貼られるようになっている
一時はガラスドームで作ろうとしたらしいが、ケイ酸化合物が鉱物らしいネルドラントやゴメノスといった一部怪獣に破壊されたから断念したとルシルや観測施設職員の人たちが語っていた
ークオォォォ……?
気配を感じたのかこちらを向いた怪獣は3対の翠色の目をパチクリと瞬きさせながら首を傾げる
「かわい〜!」
女子生徒の1人が歓声を上げる
「今見てもらってる怪獣は地底怪獣の爬虫類タイプ、タイプRに分類されているテールダスという種族になります!元々大人しい性格の怪獣ですが、とても臆病な性格のようで……」
と、のんびり過ごしていたテールダスの側の地面が捲れ、別個体のテールダスが姿を表す
それに驚き飛び退いたテールダスが頭を抱えるように前脚で顔を押さえてうずくまる。地中から飛び出したテールダスは申し訳なさそうにもう一体に鼻先を擦っていた
「このように大きな音や変化には驚いてしまうようです」
水輝の解説と共に愉快な光景だったのか生徒たちから笑い声が漏れる
ハイルとホシも愉快そうに笑っている
そんな皆の上空を大きな影が飛行していく
ーグェ〜‼︎
気の抜けるような鳴き声と共に飛翔していた白い翼の怪獣はグエバッサーだった。この岩神諸島に元からいた種族らしい
わぁ〜と見上げる生徒たちを見てホシが頬を膨らませる
「わたしも、とべる」
「え、ホシ?」
ホシが生徒たちから少し離れ、両手を広げると体が輝き大きな黒い角張った翼のような姿ーバネス族本来の姿に戻る
一瞬生徒たちがぎょっとした様子を見せるが、ホシはその姿のままバリアの範囲に当たらないように変則的な軌道で飛行してみせる
一連の飛行を終えたホシが展望塔に再び降り立ち、人間の姿に戻ってから腰に手を当て、得意げな表情を見せる
『すげ〜!!!』
最初は驚いた様子だったが生徒たちはホシに駆け寄り、わいわいと周りを囲んで褒めたりもう一度やってとせがんだりしている
「えへん」
得意げな顔を見せるホシに水輝とハイルが苦笑いを返す
ぺたんと腰掛けてくぁ〜と伸びをするゴツゴツした体表の怪獣ーバデータを生徒たちが展望塔から見上げる
保護できなかった個体とは別に岩神諸島にも生息していた個体がいたようで、報告がされていた
「なんかのんびりしてる〜」
「怖そうな顔してるのにね」
「おーい!」
展望塔の柵から生徒たちが手を振る
それに気づいたバデータが生徒たちに両手で手を振る
「ね、のんびりしてるでしょ?体こそ大きいけど、穏やかな性格のいい子なのよ、バデータたちは」
「どっから連れてきたの?」
「この子はこの島に前からいた怪獣ね。この島々にはたくさん怪獣がいて、島の外でも目撃例がある怪獣もいるからその怪獣たちの生態調査も行われてるのよ」
「なんだよ〜保護してる怪獣はいないのかよ」
「言ったな、少年?ほら、あっちをご覧」
歩夢が得意げに遠くの岩山を指差す
そこにあったのは岩山ーではなく岩山のような怪獣、この島々の守護者でもあるガイアルドだった
目を閉じ、どうやら眠っているらしいガイアルドの岩山のような体表を鉄色の小柄な何かが上がっていく
ーキュルルルルル……
小柄な影ー2体のタラトスカはそれぞれ各々好きなところの岩肌ー否ガイアルドの体表にガリガリと齧り付く
ーゴァァァァ…⁉︎
流石に痒いのか、痛いのか、ガイアルドが抗議の声を上げながら体を揺する
こてん、こてん、と落下したタラトスカたちは残念そうに一度は森に身を隠す
が、寝直そうと目を閉じたガイアルドを確認し、また森から飛び出して体表に取り付く
ーゴァァァァァァァァァァァァ!!!!
頭にきたのかガイアルドが大きな声で咆哮し、暴れるように腕を振り回してタラトスカを追い払う
「あのリスみたいな怪獣、タラトスカは私たちが保護してこの島に連れてきた怪獣よ」
「なんか怪獣じゃないみたい」
と、紹介していると1人の女子生徒がぽつりとこぼす
「あの怪獣さん、お家はどうしたの…?」
「お家……元の住処は、別のところだけど、今はここで生活してるのよ」
「お家から離されてきたの?」
歩夢の言葉を聞いた女子生徒がタラトスカを再び見つめる
「なんだか……かわいそう……」
「ーッ」
女子生徒がぽつりと溢した言葉に歩夢が言葉を飲む
「……それは、たしかにそうだけどー」
ーおお〜!!!
歩夢が絞り出すように言葉を紡ごうとしていると、反対側から歓声が上がる
ーグォォォォォォン!!
ーゴァァァァァァ!!!
見ると、先程のんびりしていたバデータに別の怪獣ーゴルメデがちょっかいをかけていた
叩き合いから取っ組み合いになり、離れているとはいえ派手な地響きが聞こえる大乱闘になる
『全く、困った駄々っ子だ』
と、レイビーク星人の姿に戻ったルプスが生徒たちを掻き分け、柵に右足をかけてどこからか取り出した縮小光線銃をゴルメデにスナイパーのような構えで向け、光線を放つ
ーゴァァァァァァ!?!?
縮小されたゴルメデが光線銃の中に消える
生徒たちの前に向き直ったルプスは光線銃のタンクの中から小さくなったトカゲ大のゴルメデを摘み出し、生徒たちの目の前に見せる
『ここでは基本、怪獣たちの生活に干渉しないようにしているが、時折興奮した気性の荒い怪獣がお痛をする時があってな。他の怪獣のストレスになりそうな場合は遠ざける。私がここで主に手伝っている業務だ』
どこからかビンを取り出し、縮小したゴルメデを入れる
「こ、この怪獣は落ち着くまで待ってから縄張りに戻されるから安心してね」
歩夢が補足する隣で光線銃をしまい、ホログラムを再起動するルプスたちを生徒たちはキラキラした目で見上げる
『おねえさんかっこいい…‼︎』
羨望の眼差しを一身に受け、ルプスは頰をかく
「………照れるな、存外」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「なーなー、こっちはなんなんだ?」
「あ、ちょっと⁉︎そっちはダメだ‼︎」
「あの怪獣なーに?」
「あ、あれはだな…その……」
「隊員さんおしっこ〜」
「お、おしっこ⁉︎と、トイレは…このエリアだと…‼︎」
「ねーねー隊員さん隊員さん!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ⁉︎待って、な?」
ドサッと大介とルシルが並んでベンチに勢いよく腰を下ろし項垂れる
激動の案内を終えて一足先に観測施設近くに帰ってきていた大介とルシル率いる一団は休憩所に腰掛けて休んでいた
生徒たちは引率の先生が見ており、共に休憩所で休んでいる
「つ、疲れた……」
「私もだ……」
げっそりとやつれた顔を向き合わせ、どちらからともなくぷっと吹き出す
「やれやれ、この星に居つこうと決めたのにまだ慣れないものだな…私たちの星と地球の勝手の違いがわからないから、思わず身構えてしまうよ…それが小さい子供たちならなおさらに」
ハハッとルシルが自嘲気味に呟き、大介も乾いた笑みを溢す
「そりゃ違う星だからな……勝手がわからないのも仕方がない」
「……しかし、ダイスケがこういうの苦手なのは意外だな。私のような宇宙人、しかも怪獣連れにも物怖じしてなかったのに」
「怪獣やら宇宙人は、もう俺たちみたいなヤツらだってわかったし…」
「……?まるで子供たちはそうでないような感じ、だが…」
大介は後頭部をかきながらバツが悪そうに答える
「……昔、ある現場で子供の避難誘導を任された時、指示に従わないから思わず怒鳴りつけて、拗ねた子供が怪我をした時があったんだ」
真剣な顔で答える大介をルシルが静かに見つめる
「なんてことは無い事件だ。大した怪我でもないし、同僚もよくあることなんて言ったが、でも俺があの子を傷つけたのは変わらない」
「……わからなくなったんだ、子供が。その上で、ちょっとしたことで傷ついてしまう子供たちが怖くも思ってるんだと思う」
大介が自分の手を見つめる
「……何より俺は、助けたいはずの命をこの手が、この俺が奪うかもしれないことが怖いんだ。俺の信念を、俺自身が否定してしまうことを」
それを聞いていたルシルはフッと微笑み、上着のジッパーを下ろして胸元のリンクデバイスを晒すと、大介の手を取ってリンクデバイスに押し当てた
「ーッ!?!?」
あまりにも自然かつ唐突なことに大介が目を白黒させる
が、その脳裏にある情景が思い浮かんだ
暗く沈んだ中、何かの声が響いて闇が晴れていくイメージ
不安を感じさせる闇が、温かな光に置き換わっていくイメージ
「ー驚かせたかな?」
「お、驚くに決まってるだろ⁉︎」
さっと手を離す大介を見て愉快そうにルシルが笑う
「今のは、あの時の私の心境だ。キミが、宇宙艇の中から助けてくれたあの時の」
「あの時の……ルシルの心境……」
ルシルは大介に向き直る
「……訳あって星から飛び出した私とエルシア。野蛮な人の多いと聞いていた地球で、大介は私たちに手を伸ばして、懸命に言葉を投げかけてくれた」
「キミの言葉は、キミが思っている以上に暖かく、力強いんだ」
「ーだから、そのままでいい。キミの信念を信じれば、きっと子供たちにも、怪獣にも、他の異星人にも届くはずだ」
ルシルの言葉を受け、大介が呟く
「俺の言葉が、暖かい……」
観測施設玄関前
GBCTセンチネルに乗り、同じくコクピットに乗った3人の生徒にランダルが色々なものを示していた
『このレバーで操縦する。人型に近い分、操縦はそれなりに難しいが、うまく扱えば器用に作戦をこなせる』
「おぉ〜!かっけぇ!」
孝介が歓声を上げ、美希が目を輝かせる中、雄太だけは退屈そうな顔をしてそっぽを向いていた
そんな雄太がブルッと体を震わせる
「さみぃ…スーパーマシンなら、暖房とかねえのかよ」
『おい、雄太くん。勝手に触るのはー』
と雄太がコクピットのスイッチを押そうとしたのをランダルが止めようとする
ーズドォォォォォォン!!!
その時、突如大きな衝撃が機体を揺さぶった
『⁉︎』
思わずランダルが身を乗り出す
センチネルの機体の前方、小さな岩山の山肌に何かが突き刺さり盛大な土煙を巻き上げていた
「うわ、わっ⁉︎」
よろめいた雄太の肘がスイッチに当たる
コクピット開閉のスイッチだったらしくコクピットが締まっていく
『ーしまっ⁉︎』
咄嗟に身を外にずらしたランダルが外に投げ捨てられ、コクピットに生徒3人が閉じ込められる
「え、えっなんだよこれ⁉︎」
「きゃっ⁉︎」
思わず体を乗り出そうとした孝介が押し退けた雄太と美希の体がブレーキレバーとアクセルペダルに押し込まれる
瞬間、センチネルがフルスロットルで暴走し、そのまま正面のー何かの近くの山肌に衝突し横転、崩れた岩石に機体が隠されてしまう
『まずい…‼︎ 緊急事態発生だ、歩夢、水輝‼︎』
「こっちでも確認した!こっちの生徒たちは全員無事よ!」
『こちらも無事です!』
『こちらも大丈夫だ!』
水輝、大介と点呼を終え、落下してきた不明物体を見やる
それは艶のある黒色の逆三角形型の石板ー否、歪な石柱のような何かが見えてきた
その石柱に走るのは水色のライン
そしてその正面には何かゲージのようなものが見てとれ、80%が溜まっていた
【・-・・ ・-・-・ --- ・- ・-・・ -・-- ・- ---・ ・・ ・・・-】
ピポピポとアナウンス音を響かせながらその石柱を中心にビュオッと冷気が放出され、周囲の森の木々が凍りついていく
「なんかこいつ…この前街中に現れた真っ白な塔に似てる…?」
『それだけじゃない。こちらで預かっていた雄太、孝介、美希の3人の生徒がセンチネルに閉じ込められたままヤツの側に暴走して岩に埋もれてしまっている』
「なんですって…⁉︎」
ランダルの報告に歩夢が顔を青くする
『すまない、私のミスだ。あの構造物が着陸した際の衝撃で投げ出されていなければ…』
『泣き言は後です!近くにいるので、俺がヘラクレスで向かいます!』
「わかった。頼むわ、大介!」
歩夢との通信を切り、件の構造物とセンチネルが埋もれていると思われる岩山を見据え大介が駆け出す
「ルシルはこちらの子供たちと先生の誘導を…ルシル?」
ルシルに声をかけようとした大介がルシルの異変に気づく
あの黒い構造物を見上げたルシルは目を見開き、あり得ないものを見るような顔で構造物を見ていたのだ
「……なんで…リンケイド星のリプロダクトが終わったら機能停止して自壊するようにプログラムしたはずなのに…‼︎」
「?なんだって?」
「⁉︎いや、なんでも…ない……避難誘導だな。任せてくれ」
動揺した様子のルシルだったが、大介の言葉に頷き、観測施設へ生徒たちを誘導していく
その様子を見届けた大介はGBCTヘラクレスに急行した
「暗い……怖いよ……‼︎」
孝介がか細い声を上げる
センチネルのコクピット内に閉じ込められ、岩の下敷きになってしまった3人だったが、コクピットは潰されておらず無事ではあった
「美希…おい美希⁉︎」
雄太が側で倒れていた美希の異変に気づいてその体を揺する
「ーう……」
美希は返事とも呼べないか細い声しか漏らさない
暗い中、触れた頭のあたりでヌルヌルした水のようなものが触れて思わず指を引っ込める
「あ、血が……⁉︎」
「雄ちゃん怖いよ…‼︎どうしよう…⁉︎」
「おれだって、おれだってしるか⁉︎」
雄太がガラス部分をガンガン叩く
「だれか!だれか!!!」
孝介は孝介でうずくまり震え、美希はか細い呼吸を繰り返している
自分たちの置かれた状況に雄太は絶望していくー
《ーか?ーおい!》
その時、どこからか男の声が響いた
限界を迎えようとしていた雄太が思わず声に飛びつく
「ここだよ!おれたちはここだよ!!」
《ーよかった。通信は生きているみたいだな》
「早く、はやくここから出してくれよ!おねがいだよ!!」
《待て、落ち着け!今助けに向かってー》
「暗いよぉ!!怖いよぉ!!!」
「ーッ」
通信越しに聞こえる声が完全にパニックを起こしていると気づき、大介が息を呑む
脳裏にいつかの怪我をさせてしまった子供がよぎる
今度は、怪我ではすまないかもしれない
『キミの言葉は、キミが思っている以上に暖かく、力強いんだ』
『ーだから、そのままでいい』
と、同時に脳裏に先程のルシルの言葉が過ぎった
大介はルシルのリンクデバイスに触れた手のひらを見つめる
(ー俺のままで、いい…‼︎)
ぐっと拳を握った大介は通信を再開する
「雄太くん、孝介くん、美希ちゃん!そこにいるのはその3人なんだな⁉︎」
『……う、うん』
『はぁい……』
「美希ちゃんの返事がないが、どうしたんだ?」
『血…多分頭から血流して…揺すってもほとんど返事がなくて…』
「揺すらないで、そのままにしておくんだ。頭を強く打ってるかもしれない……反応はどれくらいある?」
『なんか、う…って、首を動かそうとしてるくらい…』
「……意識不明ではない、か…よし、美希ちゃんはそのままあまり動かさないで、血が出てるらしいところをハンカチとかで押さえていてくれ。あと、美希ちゃんの名前を呼んでいてくれ。返事しなくなったら、すぐに知らせてくれ」
『わ、わかった……』
出発前に垣間見た悪ガキぶりが嘘のようにか細い声で返事する雄太の声を聞き、大介が口を開く
「大丈夫だ。雄太くん、孝介くん、美希ちゃん」
「俺が、絶対に助けるから。もう少しだけ頑張ってくれ」
優しく、力強い言葉で少年たちを励ました大介はコクピットの計器を操作。それに従い、ヘラクレスの4つのアームが繊細かつ効率的に岩石の除去を行っていくー
避難誘導した生徒たちを預けたルシルはランダルたちから離れ、近くの森林からあの構造物を見上げていた。その隣で救出作業を行うGBCTヘラクレスを見遣りながら、懐から小型のデバイスを取り出し操作する
が、デバイスの画面は赤く染まり、ラテン語に似た字体の文章が点滅を繰り返している
「不正なオーナーアクセス…⁉︎ なんで…ッ」
そうこうしているうちに構造物のゲージは90%あたりまで上昇
辺りの気温は更に低下し、吹雪が舞い始める
「クソッ、視界が…ッ‼︎」
舞い始めた吹雪に視界を遮られ、大介の救助作業に滞りが出始める
ーコァァァァァァ!!!
が、吹雪は傍に降り立つ影に遮られ、ヘラクレスへ降り積もる雪が少なくなる
「エルシア‼︎」
ーコァァァァァァ!!
そこに現れたのは、ルシルのパートナー怪獣でもあるエルシアだった
エルシアは広げた翼でヘラクレスを吹雪から庇いながら背中越しに頷く
「ーありがとな。助かる‼︎」
エルシアのサポートを受けた大介が救出作業に戻る
そんな中、構造体のゲージが100%まで充填される
ー◇◇◇◇◇◇◇◇……
構造体の表面に走るラインが光り輝き、メーターのある前面部がガシャンと上昇し、カブトムシのような大角を形成
更に構造体の側面から腕、底部から足が生えて怪獣のような姿になる
メーターの下からはあのラテン語に似た文字列がまた現れていた
『今度は《
ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇!!
フリジダスは腕を振り回しながらエルシアとヘラクレスの方に向き直る
ーサァッ!!!
その巨体の側面から赤い流星が直撃、エルシアとヘラクレスから遠ざける形に吹き飛ばす
『ウルトラマンイクサだ!!!』
フリジダスの正面に着地した赤い巨人ーウルトラマンイクサを見上げた生徒たちが歓声を上げる
「このままじゃセンチネルの中の子供たちが危ない、さっさと片付けるわよ!!」
『勿論だ!!!』
《共鳴せよ、2つの魂!!》
早速ホシウミノツルギを抜き、デュアルブレイブに変身したイクサを前に立ち上がったフリジダスが大角から冷気を圧縮した光線を放つ
『冷たいヤツには、熱々のコイツをお見舞いしてやる‼︎』
《猛き炎!》
ホシウミノツルギの火の紋章を輝かせ、剣身に炎を纏わせ、突きの要領で突き出して炎を放つ
渦巻く炎は冷気光線に衝突し、それを難なく押し返してフリジダスに直撃する
倒れたフリジダスに追撃を試みようとするイクサだが、何故か動けない
『なっ、いつの間に⁉︎』
見るとイクサの足元が凍結し、地面に縫い付けられていた
ー◇◇◇◇◇◇◇◇…‼︎
その隙を逃さないとばかりに立ち上がったフリジダスが冷気光線を再び構える
ーゴァァァァァァァァ!!!
ーコァァァァ!!!
が、突然その足元の地面が陥没しよろめくフリジダス
穴に片足がハマって動けなくなるフリジダスの背後から強烈な翼撃が直撃し、巨体が前のめりに倒れ込む
その背後に立つのはエルシア
遠くにはガイアルドも見えた
「ガイアルド!エルシア!ありがとう‼︎」
ふと横を見遣るとヘラクレスがセンチネルを慎重に持ち上げ、後退していく姿が見えた
『これで心置きなく決められる‼︎』
《束ねよ!2つの勇気!!》
もがくフリジダスの前でホシウミノツルギにエネルギーがチャージされていく
ようやく立ち上がるフリジダスだが、もう遅い
『「デュアルライズ、バーストォォォォォォ!!!」』
ホシウミノツルギから赤と青二色の光線が放たれ、フリジダスを貫く
ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇……
目のようなパーツを点滅させながら、フリジダスは倒れ伏し爆散した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
センチネルから救助された3人は無事だった
雄太と孝介は目立った傷はなく、美希も少し頭を切っただけで大事には至らなかった。雄太と孝介が大介の指示通りに処置したおかげもあるだろう
「………ごめんなさい」
流石に懲りたようで雄太は素直に大介とランダルたちに頭を下げた
隣に立つ孝介も思わず頭を下げていた
大介はあっかなびっくりながら、雄太と孝介の頭を優しく撫でる
「……よく、頑張ったな」
その様子を側から見ていたルシルが微笑む
『…元々私の監督不行き届きもある話だ。気に病むことはない』
ランダルも2人の頭を優しく撫でる
「あ、ちょっと待ってください!ウルトラマン!」
それを見届け、去ろうとするイクサを水輝が呼び止める
ーサ…?
オレ?と言わんばかりに自らを指差し、イクサが首を傾げる
「ちょっとハプニングもあってしまいましたし、せっかくなら悪いハプニングではなく楽しいサプライズで終わらせましょう!協力してください、ウルトラマンイクサ!」
『え……オレ?』
「なーるほど、考えたわね水輝も」
『うわ〜!!!すごーい!!!』
吹き抜ける風に吹かれながら生徒たちと先生までも歓声を上げる
皆が乗っていたのはイクサの掌の上
生徒や先生たちを乗せたイクサが岩神諸島の外周をぐるりとゆっくり飛翔していたのだ
『しっかり掴まっとけよ。落ちたら一大事だからな』
空を飛ぶイクサを見上げていた大介が隣に立つルシルに目をやる
「ありがとな、ルシル」
「……?なんのことだい?」
「俺のままでいい、その言葉のおかげで俺は、俺らしくやれた」
その言葉を聞いたルシルは照れ臭そうに髪をかき上げる
「大したことは、していないさ」
ルシルはそう答え、また大介がイクサたちを見上げたのを見て表情を曇らせる
懐から取り出した錆び付いたペンダントを、ルシルは静かに悲しそうな瞳を見せながら握りしめた
岩神諸島の見学体験が行われていた一方
苑樹はリュウと共に自身の故郷・宙舟村を訪れていた
苑樹自身の用事を済ます中、開発される山中を見たリュウ
開発業者たちに抗議する謎の少女
開発が進む山の中から現れた怨霊鬼を前に
少女の流す涙の意味とは
次回ウルトラマンイクサ
「妄念と沙羅の花」
【ーどうして我らを引き裂こうとする……】