ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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第20話「迷いが森と戦士の決意」

深い森の中を作業服のような灰色の服を着た青年が途方に暮れた様子で歩き回る

 

「ゼットライザーもベリアロクさんも見つからない…バロッサ星人まで見失っちゃうし…ゼットさーん‼︎ベリアロクさーん‼︎いたら返事してくださぁぁぁい!!」

 

探し人の名前を叫びながら彷徨う青年が木々の隙間を通り、その姿が突然消える

 

入れ替わるように別の木の影から妙な人物が姿を現す

 

ぐるぐる渦を巻いたような装飾が体の各所にあり、ウサギのような耳や翼のような装飾が目立つ青い大きな瞳の怪人だった

 

『バロバロバロ…妙な裂け目に飲み込まれ、デビルスプリンターも取り落とし、こんな森に迷う羽目になるとは…おのれウルトラマンゼット…‼︎ワンマンアーミーの私にこんな屈辱を与えるとは…‼︎』

 

そんな恨み言のようなことを呟きながら怪人物ーバロッサ星人五代目も木々の隙間に消えていく

 

 

静かな、不気味な雰囲気の満ちた森の中

所々の木々に結ばれた紐の先の鈴がちりん…と鳴った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「迷いが森ってなんなんだよ?」

 

オビコからその名前を聞いた苑樹(えんじゅ)は複雑な表情を見せ、今日は早く休んで明朝にその迷いが森へ探索へ向かうことを告げた

 

それに従い、襖を挟んで敷布団を敷きながらリュウが苑樹に問うていた

 

「……迷いが森は、わたくしたち玲武(れいぶ)の民が管理する封印が存在する禁足地です」

「禁足地…?」

「太古の時代に空から飛来した2つの流星。そのうちの一つ、生き胆星が眠る土地がその迷いが森なのです。わたくしたち玲武の民に与えられた力でその生き胆星の活動を最低限まで抑え込んで封印しています」

 

「ですが、それでもなお生き胆星は周囲に影響を及ぼす。人を迷わせ、心を惑わせ、二度と帰れぬ森を作り出した。それが迷いが森です」

 

「人を迷わせる…森……」

 

襖の向こうから告げられた言葉にリュウが唇を噛む

 

「早くその迷い込んだ人を、助けに行かないと…‼︎」

 

襖を挟んだ苑樹が黙り込む

 

「……えぇ、そうですね」

 

 

その深夜

 

巫女服に身を包んだ苑樹は銅鏡と幾らかの道具を手に玄関口を出て行く

 

《一人で行くのか?》

 

背後に現れたベリアロクが問う

 

「……あなたもついてくるので?」

《いや。オレ様はオマエに持たれてやるつもりはない》

「そうですか。ご安心を、あなたの使い手さんは必ず連れて帰りますから」

 

一人行こうとする苑樹をベリアロクが見送る

 

《なんでアイツを連れて行かない?》

「……これは、わたくしの仕事だからです。ただわたくしを知りたいだけの彼に、あの地へまでついてこさせるわけにはいきません」

 

去っていく苑樹

それをただ見送るベリアロク

 

《……だそうだぞ。どうする?》

 

ベリアロクの背後から現れたリュウが険しい顔を見せる

 

「放っておけるわけ、ないだろう。苑樹はもう、オレの仲間だ」

 

 

迷いが森の入り口

 

黒い鳥居が聳え立つそこに苑樹は立つ

鳥居から一歩踏み込めば、人を惑わせる魔の空間が広がるのみ

 

苑樹は縄を腰にきつく結びつけ、鳥居にもくくりつける

 

ひとつ深呼吸をし、苑樹が鳥居をくぐる

 

「……わたくしは、簡単に惑わされたりはしません」

 

鳥居をくぐった苑樹の体が消え、急に引っ張られた縄がピンと張った

 

 

数刻して苑樹の足取りをなんとか辿ってリュウが辿り着く

 

「ここが、迷いが森…?」

 

リュウが黒い鳥居の前で立ちすくむ

ふと、鳥居を見たリュウは異物に気づく

 

「なんだ、これ?」

 

リュウが手にしたのは鳥居に括り付けられたロープだった

ピンと張ったロープを引っ張り、その先を見てみるとロープのもう一方の端は鳥居の中の一本の木に結びつけられていた

 

「……何かの罠か?」

《………》

 

側のベリアロクは何かに気づいたようでリュウに話しかける

 

《小僧。オレ様を掴んどけ》

「……あ?いいのか?」

《特別だ。オマエならまぁまだ掴まれてもいい》

「なんだよそれ…」

 

リュウはベリアロクの柄を掴む

 

「行くぞ…‼︎」

《用心しろよ。妙な気配が濃い》

 

リュウとベリアロクが鳥居をくぐる

 

瞬間、苑樹と同様にその姿が消えた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ハッと苑樹が覚醒し辺りを見渡す

 

霧の濃い薄暗い森の中に自身はいる

 

「迷いが森の中……ということですか」

 

苑樹は自らの姿を確認する

 

どこか破れた服もなく、曲がった指や歪んだものも、衣服以外に身につけたものもない

 

「問題はありませんね」

 

頷き、苑樹が森の中を進む

 

(確か生き胆星の下には、木に括られた鈴を辿ればー)

 

と苑樹は周りの木々を見て鈴がある木を見つけては傷をつけて進んでいく

 

次々と、次々と……

 

 

霧がこもってきた森の中をリュウもベリアロクを手に進んでいく

 

「たしかに…これじゃどこがなんだかわからないな…」

 

辺りを見回しながら進んでいく

 

《小僧、地に足を付けておけよ》

「?何言ってんだ?ちゃんと足は地面にー」

 

その言葉に反応しようとしてリュウは気づく

 

自分が崖の外に一歩踏み出していたことを

 

「は?へ、うぇええええええええ!?!?」

 

そのまま断崖絶壁から落下していくリュウは落ち葉の中に着地し、ゴロゴロと転がっていき、木に頭を強かにぶつけて止まった

 

「っでッ!?」

 

後頭部を押さえるリュウにベリアロクが声をかける

 

《気をつけろ。ここは空間が歪んでいる》

「そういうことは早くーっでッ⁉︎」

 

ガツンとリュウの頭に何か別のものが落ちてくる

 

木の上に引っかかっていたらしいそれは青い扇型のよくわからない機械だった

 

「ーったた…なんだよこれ…⁉︎」

 

リュウが落ちてきたデバイスを拾いあげる

 

《⁉︎ そいつは…オレ様が探してるヤツの1人だ》

「は…?これが…???」

 

ベリアロクの言葉にリュウが首を傾げる

 

《性格にはこいつともう1人は一心同体だから一部、になるのか》

「い、いちぶ…?」

《まぁいい。それも一応持っておけ》

「……わかった」

《ひとまず小僧。動き回るとどこに飛ばされるか分からん。一旦ここでジッとしてー》

 

 

「ーおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

と、リュウが落ちてきたのと同じあたりにまた別の人物が落下してくる

 

顔面から落ちてきた青年は落ち葉を払いながら立ち上がる

 

「もうどうなってんだよ…どこ行っても変なとこ出るし…」

 

立ち上がった青年を見たベリアロクが声を上げる

 

《……見つけたぞ。ハルキ》

「へ?あの人が持ち主!?」

「はい?あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ベリアロクさん!!!」

 

ハルキ、と呼ばれた青年がリュウの隣に浮かぶベリアロクを指差す

 

「あ、ああ⁉︎しかもゼットライザーまで!?良かったぁ…」

 

リュウが持つデバイスを見つけ、思わずリュウに近づきそのデバイスごと手を取る

 

リュウは終始ハルキの勢いに押され、しばらく目を白黒させていた

 

 

押忍(オス)!オレはストレイジのナツカワ ハルキといいます!この度はゼットライザーとベリアロクさんを拾っていただき、ありがとうございました!!」

 

暑苦しい勢いのままハルキと名乗った青年がすごい勢いで頭を下げる

 

「あ、いや、その…拾ったの偶然だし…そんな硬くならなくても…」

「ほんと心細かったので助かりました…バロッサ星人追いかけてたらなんだかよくわからない裂け目に吸い込まれてヨーコ先輩たちともはぐれちゃうし…」

 

姿勢を正したまま告げるハルキが手にしたゼットライザーを持ち上げる

 

「なんだか分からないけど、ウルトラマンさんと出会えて助かりました…」

「はー」

 

ハルキがなんとはなしに口にした言葉にリュウが思わず目を丸くする

 

「え?ウルトラマンさん、ですよね?リュウさん」

「え?いや、えっと、そうだけど…え???なんで???」

「なんとなくわかるんですよ。前にも当たったことある勘ですし」

 

と、驚く両者の前に突然光のゲートのようなものが出現する

 

「そういえば…説明とか色々積もる話はこの中で、狭いですけど…」

「え、これ入って大丈夫なの…⁉︎」

「大丈夫ですよ!ささ、どうぞどうぞ」

 

ハルキの案内でリュウとベリアロクが光のゲートの中に入る

 

しばらく中に進んだ先、光の中にもう1人の人影が現れる

 

『無事だったんでありますねハルキ!ウルトラ心配したぜ…』

「ゼットさん!そちらも無事で良かった…」

 

ハルキがフランクな様子で話しかけていたのは青い体を持ち、胸にZ型のカラータイマーを持つウルトラマンだった

巨人ではなく人間大だが、間違いなくウルトラマンだった

 

「え、ウルトラマン…⁉︎」

 

驚くリュウにウルトラマンが向き直る

 

 

『ニーハオ。オレは、ウルトラマンゼット。ハルキと一緒に戦ってるウルトラマンでございます』

 

 

丁寧(?)に自己紹介してきたウルトラマンゼットを見てリュウが固まる

 

『………言葉、通じてます?』

「あ、ああ…一応……ただ言い回しがなんか…」

『マジで…?中々地球語には慣れてなくて…すまねぇ…やっぱり地球の言語はウルトラ難しいぜ……』

 

なんだか調子の狂う雰囲気に頬をかきながらリュウも自己紹介をする

 

「オレはリュウ、稲葉(いなば) 竜。一応その、ウルトラマンやってます」

 

「ここに来てもゼットさんみたいに姿を現さないってことは、ケンゴさんみたいにウルトラマン本人ってことなんすかね?」

『いや、彼の気配は普通の地球人だな。多分、俺と同じく地球人と一体化しているはずだと思うんでございますが…』

「多分、ゼットの言ってるタイプであってると思う。オレの場合だいぶ特殊だけど……」

 

その時、リュウの体から光の粒子が溢れ出し、人の形を作り出す

ゼットと同じくウルトラマンの姿ーだが、光で構築されたそれは淡く、弱々しい形をしていた

 

『なるほど…リュウと一体化しているのはどうやら、ウルトラマンの力の部分だけのようだ』

「力の部分…だけ?」

『ああ、そのウルトラマンからはウルトラマン特有の意志みたいなものを感じない。オレからは、それしかわからない。けど、その力と似たものはオレも出会ったことがある…気がする…』

 

自身なさげに告げたゼットにリュウが眉を顰める

 

『ただ、これだけは言えると思います。リュウの中にあるそのウルトラマンの力は、まだ「リュウだけの形」として固まっていないのかもでございます……多分』

「……いや、そこは言い切ってくれよ…」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

森の中を進んでいく苑樹

 

その進む先に霧が立ち込め、情景が変わる

 

「ーここ、は……」

 

現れたのは見慣れた宙舟(そらふね)村の近く、羅刹(らせつ)山の風景

 

ーゴァァァァァァァァァァ!!!!

 

黒い体に赤い目、耳まで裂けた大きな口、頭や肩から伸びた大きなツノ。妖怪伝説に語られる悪鬼そのままの姿の巨人がそこにいた

 

アクラセツ

 

かつて羅刹山に封じられ、解き放たれた人を食らい、龍脈を荒らす邪悪な「鬼」という存在そのものでもある

 

ーグァウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

飛来した巨体が放つ一撃がアクラセツを引き裂く

 

着地した巨体は純白の高貴な毛皮を持つ、虎を二足歩行にしたかのような姿の怪獣

 

その名を、ビャクラン。大地に生きるティグリスと似た種族の怪獣

そしてー

 

『決めなさい‼︎ ビャク‼︎』

ーグァウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

凛とした声が響くと共にビャクランの体が銀の光に包まれ、アクラセツを貫いて爆散させる

 

『はぁっ、はぁっ……』

 

光に戻ったビャクランを銅鏡に戻す

 

その銅鏡を抱いていたのは、苑樹より少し大人びた玲武神社の巫女服を着た女性だった

 

「ー(あおい)、母さま……‼︎」

 

それは、苑樹の母・玲武 葵だった

 

葵の額からは以前苑樹も見せていたツノのようなものが伸びていた

玲武の血を持つものが、その怪獣を操る力を解放した際に伸びるものである

 

『が、ぁあ…あぁぁぁあぁぁぁぁ!?!?』

 

獣のように葵が咆哮する

ツノが更に伸び、その姿が人間のものから宇宙人のような姿へと変貌していく

 

『ぁぁぁぁハハハハハハハハハハハ!!!』

 

目が赤く光り輝き、哄笑をあげる

 

『ーバースト、モンスロード…‼︎』

 

ーゴァァオゥゥゥゥゥゥ!!!

 

葵だったものの声と共に黒い毛皮に変貌し、目が赤く輝くビャクランが姿を現し、めちゃくちゃに暴れ始める

 

『ハハハハハハハハハハハハハ!!!いけぇ‼︎壊せぇ‼︎』

 

狂乱する葵に導かれ、山々に火を放ち暴れるビャクラン

 

ーグァウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

そのビャクランにもう一体の巨体が飛びつき、その体を切り裂く

 

『ぐぁうぅッ⁉︎』

 

怪獣のダメージが共有され、葵がよろめく

 

葵は正面に立つ小柄な少女とその背後に立つ黄色い目を輝かせる黒い巨体の怪獣を見据える

 

『ーそう、それでいい…それでいいの。これであなたは、巫女になる。次の代の、玲武の巫女にー』

 

少女の指示に従った巨獣の一撃がビャクランを引き裂き、葵の胸から血が噴水のように吹き出す

 

怪獣の消滅と共に葵の体が地に倒れ伏し、落下した銅鏡が割れ砕けた

 

駆け寄ってきた少女が葵の死体を揺らす

泣きじゃくりながらも声は上げない。大お婆さまから聞かされ、母自身からも何度も聞かされた

 

 

玲武の獣使いは、先代を殺しその力を手に入れ、巫女の名を継ぐ

 

 

お婆さまは大お婆さまの旦那様を、母さまはお婆さまを、それぞれ力が弱り、「悪鬼」に成り果てた時に殺して「継承」してきた

 

その代が、苑樹に来ただけだった

 

 

(玲武の血は、呪われた血)

 

(生き胆星と共に地上に落ちた、宙舟(そらふね)からこの地に降り立ち、怪獣を支配して侵略した先祖の血を持つ罪深き一族)

 

(この力を人として使うなかれ、個として使うなかれ)

 

(罪を濯ぐためにのみ使うべし)

 

(大地の代弁にのみ使うべし)

 

 

「だから……わたくしは、リュウさんとも、歩夢(あゆむ)さんとも、歩いてはいけないのです。そんなことわかっています…‼︎」

 

唇を噛みしめ、苑樹が自身の胸をギュッと握りしめ、背を曲げる

 

 

『妙な森に迷ってどうなるかと思えば、面白いものを見つけました』

 

「!?」

 

いつの間にか戻ってきていた森の中、苑樹の目前に長い耳と翼のような装飾を持つ細身の宇宙人が現れる

 

「おまえ、は…⁉︎」

『兄上とはぐれて光の巨人も見失い、目当ての怪獣も見つからないがもっといいモノを見つけました』

「なんのことですか?わたくしは何も出せませんよ」

 

宇宙人ーバロッサ星人は懐から一つの細長いモノを取り出す

それを見た苑樹が目を見開く

 

ードグンッ!!

 

「ーか、はぁっ…⁉︎」

 

苑樹が体を折る

怪獣を呼び出してもいないのに、玲武の血を行使した時のような血の昂りが全身を襲い、左の額からツノが飛び出す

 

『やはり貴殿は「レイオニクス」。さぁ、いざ尋常にレイオニクスバトルであります‼︎ そして、貴殿の怪獣も頂戴しましょう!!』

 

 

「なるほど、そうだったんですね…自分の芯がわからない、と」

「ああ……ずっと、オレはオレが分からなくて…」

 

ゼットとの会合を終え、ひとまず森の奥に進んで苑樹を見つけることにした2人が森を歩んでいく

 

「……リュウくんは、守りたいものとかってありますか?」

 

ハルキはリュウに突然問うてくる

 

「……守りたいもの…?」

 

少し考えて、悩みながらもリュウが答える

 

「……怪獣は、守りたい。オレを育ててくれたアルマみたいな優しい怪獣だっているし、怪獣たちだって好きで暴れてるわけじゃないやつがたくさんいる」

 

ハルキが頷く

 

「……でも、人間も守りたい、もちろん宇宙人のみんなも。苑樹は、人間は大地を汚す愚かなままの存在だって言うけど、でも、歩夢やGBCTのみんな、墨田(すみだ)のじいちゃんとか優しくていい人間たちもいっぱいいて、みんな大切だと思うから」

 

もう一度ハルキは頷く

 

「……どちらが大切なのか、オレにとってのゴクジョーなのか、オレには決められない。どうしたら……」

 

「…?じゃあどっちも大切でいいんじゃないですか?人間も、怪獣も」

 

ハルキがあっけらかんと言ってのける

 

「……え?」

 

「話聞く感じだと、この世界では怪獣の保護も積極的なんですよね?なら、どちらの命も大事でどちらも大好き。それいいじゃないですか」

「……でも、オレは、ただの人間じゃなくて、怪獣に育てられて…でも、アレ…?」

 

ハルキがリュウの肩を叩く

 

「リュウくんはリュウくんですよ。怪獣側の目線を知ってて、人間とも生きてる。それが、リュウくんってことだと俺は思う」

 

「怪獣を知るから人間に敵対しなきゃとか、人間が好きだから怪獣を倒さなきゃとか、それはあくまで大多数がそうなだけってことですから」

 

「戦う理由も、そこにある芯も、自分なりでいい。俺が昔悩みに悩んでたどり着いた俺の答えだから、あまり参考にはならないかもですけど」

 

ハルキの言葉を聞き、リュウはハルキを見上げる

 

「……ハルキも悩んでたのか?」

「押忍!」

 

リュウの問いにハルキが元気よく頷く

 

「俺たちの地球では、怪獣は倒すもので俺も疑問に思っていなかった。でも、そんな怪獣たちにも命があって、守るために命をかけるヤツもいた。そこで俺は悩んじまった…悩みに悩んで、何度も先輩やストレイジのみんなに迷惑かけちまった」

 

ハルキが手を握りしめる

 

「救えない命も、救うために奪わなきゃならない命もある。だから俺は決めたんです。『自分の手の届く範囲の正義を信じて、手の届かなかった命は決して忘れず背負っていく』って。父さんに教えられて、やっとでしたけどね」

 

ハルキはリュウに微笑む

 

「……人間も、怪獣も、大好きで全力で守ればいい…」

 

リュウはある人物を思い出す

 

底抜けに明るくて、真っ直ぐで、めちゃくちゃだけどあったかくて

とても、かっこいいなと思っていた人

 

アルマが去った自分の、3人目の母親のような人

 

バカバカしくなって、リュウは思わず微笑む

 

「ーなんだよ。すぐそこに、答えはあったじゃないか」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

リュウが突然顔をあげる

 

「ど、どうしたんすか⁉︎」

「苑樹の声がする…気がする……」

「え?……何も聞こえないんですけど?」

 

ハルキが耳を澄ませてみるが、何も聞こえない

 

だが、リュウには何か聞こえるようでリュウは走り出す

 

「あ、リュウくん⁉︎」

『バロッサァァァァ!!!』

 

と、ハルキに突然何かが飛びついてくる

 

「は、ハルキさん⁉︎」

 

流石の異常事態に気づいたリュウが振り返る

 

転がり、立ち上がったハルキに襲撃者が相対する

 

『逢いたかった…逢いたかったぞ、ウルトラマン‼︎ マジで心細くて私の乙女のハートがヤバかったわけじゃないんだからねっ⁉︎』

 

「バロッサ星人…‼︎オマエもここにいたのか⁉︎」

 

『いたよぉぉぉ⁉︎一緒に来たじゃん⁉︎』

 

バロッサ星人がハルキを指差しながら地団駄を踏む

 

『ここであったが2万年目ェ…いざ尋常に勝負ッ‼︎』

 

バロッサ星人は懐から白亜の複雑なデザインが施された銃を取り出し、ぶっ放すのをハルキが組みつき、押さえ込む

 

『ぬおっ、厚い抱擁だな…‼︎ ハッ、これがあー』

「リュウくん‼︎苑樹さんは任せた‼︎」

 

バロッサ星人にヘッドロックを決めて叫ぶ

 

その心意気を受け取ったリュウが走り出す

 

『私の言葉を阻むッ!?』

 

ハルキの蹴りを食らったバロッサ星人がよろめく

その隙にハルキがウルトラゼットライザーを取り出し、トリガーを引いて光の門ーヒーローズゲートを呼び出してカードをセット、ゼットライザーのスロットを倒す

 

《HARUKI ACCESS GRANTED》

《ULTRAMAN Z》

 

ヒーローズゲートがハルキを通過し、その姿を人間大のウルトラマンゼットへと変化させる

 

ーキァッ!!

ーバロッサァァァァ!!

 

ウルトラマンゼットとバロッサ星人が突撃し、激しい組み合いを始めた

 

 

「苑樹!!!」

 

何度も何度も同じ森の景色を繰り返す中、リュウは頭を抱えてうずくまる苑樹の姿が歪む空間の中に映るのを目にする

 

「……何しに、来たのですか…⁉︎」

 

「お前が呼んだから来たんだろうが、助けてって」

 

苑樹はぐしゃぐしゃに歪めた顔をリュウに向ける

その右目は赤く変色していた

 

「呼んでません、離れてッ……今は力がセーブできないッ‼︎」

「だから、助けて欲しいんだろう?」

「違うッ!!」

 

「……わたくしは、玲武の巫女…肉親を殺して、獣を操る外の星よりきた罪深い力を持つ存在…呪われた血を継ぐもの……わたくしは、わたくしであってはならないの…‼︎」

 

「そんなの、そんなのが当然なわけあるか‼︎」

 

「人も怪獣も、選べないあなたには、わたくしのことなんか一生わからないッ!!」

 

苑樹の悲痛な叫びにリュウは毅然とした顔で苑樹を睨む

 

「そんなの、関係ない‼︎ 苑樹は苑樹で、呪われた存在でも罪人でもないだろう‼︎」

 

「罪人としての血を継いだから?ならオレだって似たようなものだ。人間や怪獣を傷つけるために、オレは生まれた。でも、そんなのもう知るか‼︎」

 

リュウはバンッと自分の胸を叩く

 

「人も怪獣も選べない。選ぶ気なんかないっ‼︎ どっちも大事なんだ。どっちも大事で、どっちも守りたい…‼︎」

 

「苑樹も、苑樹として選んでいいんだ‼︎ 悩んでることや、辛いことは今度オレが全部聞く‼︎ オレは、お前の味方にもなれるからッ‼︎」

 

リュウの言葉が苑樹の耳に届く

 

苑樹は胸を握りしめる

 

【わたくしは呪われた血】

【わたくしは罪人の子孫】

【大地の代弁者であれ 個であるな】

 

ぐるぐる、ぐるぐると渦を巻く

その想いは、苑樹のものなのかわからなかった

 

でも、ひとつだけ。今はひとつだけ自分のものとわかるモノがある

 

あの時、母の死体に縋る子供が願ったこと

 

『お母さんを、わたしをー』

 

苑樹がリュウに顔を向ける

久しく流したことのない大粒の涙が頬を伝った

 

 

「ーだれか、たすけて」

 

 

絞り出した言葉を、リュウは聞き逃さず頷いた

その手に紫に輝く魔剣が握られる

 

「ベリアロク⁉︎」

《答えろ、リュウ》

《オレ様を手にしてオマエは何をする》

 

ベリアロクの問いにリュウは、そのグリップをより強く握りしめながら

答える

 

「オレは、オレは誰かを傷つけて笑うヤツを許さない。誰かの思いを笑うヤツを許さない。誰かが涙も我慢しなきゃならないクソッたれな運命を許さない‼︎」

 

「人でも怪獣でも、どちらでもあってどちらでもない、オレだから選べる道をオレは進む‼︎ オレの、オレの助けたいものを守るためにオレは力を使う‼︎」

 

その言葉を聞き、ベリアロクは告げる

 

《面白い。いいだろう》

《オレ様が斬るに相応しいモノだ》

 

リュウはベリアロクを逆手に構え、グリップ下のボタンを押し込む

 

 

《フゥンッ‼︎ ヌゥアッ‼︎ ハァッ‼︎》

《デスシウム・スラァァァァァァッシュ!!》

 

 

ベリアロクの刀身が紫に輝き、その目が光る

 

「りゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

テラが刃を振るう。その姿にウルトラマンテラの姿が重なり、斬線がTの字を描き、空間を引き裂いた

 

 

ードクン、ドクン……

 

迷いが森の奥、窪地になった地の中央から響く脈動

 

一瞬、紫の光が輝き、中央で小爆発が起きる

 

捲れた地面からぶよぶよした赤青2色の何かー生き胆星と呼ばれていたモノの体表が覗く

 

その表面は深々とT字に傷が付き、体表の突起から覗く触手がへし折れていた

 

 

ーパリィンッ‼︎

 

空間が「割れる」ような音が響くとともに苑樹、リュウ、バロッサ星人が合流する

 

「おりゃあッ‼︎」

『バロォオッ⁉︎』

 

バロッサ星人を蹴り飛ばし、その影響が弱まったからか脱力した苑樹をリュウが抱きとめる

荒い息はしているが無事らしく、ほっとリュウが安堵の息を漏らす

 

『バロッサァァァァ‼︎ 神聖なるレイオニクスバトルを汚しおって…‼︎無礼なる無法者には、天誅をッ‼︎』

 

バロッサ星人(六代目)はバトルナイザーを構える

 

《バトルナイザー・モンスロード‼︎》

《ブラックキング‼︎》

 

バトルナイザーからロードされた黒い怪獣が姿を現す

 

ーギシャォォォォォォン!!!

 

リュウはテライグナイターを取り出し、ウルトラマンテラへと変身した

 

《ウルトライブ‼︎》

《ウルトラマンテラ‼︎》

 

ーテァッ!!!

 

テラの蹴りがブラックキングにクリーンヒットする

が、ブラックキングはそれを易々と受け止め、跳ね返す

 

ーテァッ!?

 

着地したテラがブラックキングを睨む

 

『我がブラックキングの装甲は折り紙付き‼︎ さぁ死ねぇい‼︎』

ーギシャォォォォォォン!!!

 

バロッサ星人(六代目)の号令に合わせてブラックキングが疾走、テラの巨体と衝突し、大地を揺るがした

 

 

テラとブラックキングのぶつかり合いを見たバロッサ星人(五代目)はゼットを押し退け、歓喜の声を上げる

 

『おお、弟よ‼︎ まだそんな獣なぞを操るのか⁉︎』

 

バロッサ星人(五代目)は手にした銃を天に向けて放つ

 

そこから広がった魔法陣から白亜の巨体と金の兜を装備した巨大な機械獣ーギャラクトロンMk-2が姿を現す

 

『とうっ!!!』

 

カッコいいジャンプでギャラクトロンMk-2の胸部コクピットに飛び乗ったバロッサ星人(五代目)はコクピットのレバーを掴み叫ぶ

 

『ならばこの兄が見せねばなるまい‼︎ この鋼のボディの雄々しさを‼︎私の武士道を‼︎』

 

ーLAAAAAAAA…‼︎

 

歌うような咆哮をあげ、ギャラクトロンMk-2がテラに迫る

 

地上でゼットがもう一度ヒーローズゲートに包まれる

 

『リュウがピンチだ‼︎ 改めていくぞ、ハルキ‼︎』

「押忍!!」

 

 

ヒーローズゲートの中でハルキが3つのメダルを取り出す

 

「宇宙拳法、秘伝の神技‼︎」

 

「ゼロ師匠!セブン師匠!レオ師匠!」

 

ゼットライザーにメダルをセットし、スキャンする

 

《ZERO SEVEN LEO》

 

「押ォ忍‼︎」

『ご唱和ください、我の名を‼︎』

 

ハルキの背後に現れた巨大ウルトラマンゼットが手を広げる

 

『ウルトラマンゼーーーット!!』

「ウルトラマン、ゼェェェェェェット!!!」

 

ハルキがゼットライザーを掲げ、トリガーを引く

 

ハルキの体が輝き、力を授けた3人のウルトラマンが飛翔する

 

《デヤッ‼︎》《デュワッ‼︎》《ィイィヤァッ‼︎》

 

《ULTRAMAN Z》

《ALPHA EDGE》

 

ーキァッ!!!

 

 

光と共に現れた新たなる姿ーアルファエッジとなったゼットが現れ、ギャラクトロンMk-2の背後にキックを決めながら翻り、テラの側に着地する

 

『ゼット!ハルキ‼︎』

「押忍‼︎ 俺たちも加勢します‼︎行きましょうゼットさん‼︎」

『おう‼︎ウルトラ暴れるでございますよ、ハルキ‼︎』

 

ブラックキングを蹴り飛ばしたテラがゼットと背中合わせになりながら構え直す

 

『オレたちの宇宙拳法ならブラックキングと相性がいい。ブラックキングは任せろ‼︎』

「わかった‼︎」

 

ゼットの言葉に頷き、背中合わせのままぐるりと回転しポジションを変え、迫ってきていた2体をキックで共に吹き飛ばす

 

 

ーキァッ!!

 

ブラックキングに向き合ったゼットは頭部のゼットスラッガーを光刃として取り出し連結、ヌンチャクのような形のアルファチェインブレードとし、Zの軌跡を描きながら振るう

 

ーギシャォォォォォォン!!!

ーキィァッ!!!

 

高速で振るうチェインブレードでブラックキングが放つ高温光線ーヘルマグマを弾きながらその黒い頑強な皮膚に一撃、振るわれるブラックキングの腕や打撃をいなしながら的確な手刀やチェインブレードの連撃を決めていく

 

 

《ウルトランス‼︎》

《アルマンドラ・ソウル‼︎》

 

ーテァッ!!

 

アルマンドラの装甲を纏ったテラに対し、ギャラクトロンMk-2も後頭部から巨大斧ーギャラクトロンベイルを抜き放つ

 

『果たし合いを、所望するッ!!』

ーLAAAAAAAAA……‼︎

 

ギャラクトロンベイルの振り下ろしをアルマンドラの装甲で弾きながら受け流し、装甲を纏った腕での打撃を打ち込み、ローリングキックを胸元に打ち込み吹き飛ばす

 

『やるな…‼︎だが、その程度の打撃では私の魂には届かんぞ‼︎』

 

持ち直したギャラクトロンMk-2がギャラクトロンベイルを振り回す

かろうじてそれを特に分厚い右肩の装甲で受け止めたテラは渾身の力を込めてギャラクトロンMk-2を押し込む

 

『こいつ…硬い…‼︎』

《面白い相手だな。斬ってやろう》

 

苦戦するテラの元にベリアロクが現れ、それをインナースペースのリュウと共に掴む

 

『もう一回だけ、オレに力を‼︎』

《ハン、せいぜい面白く使え‼︎》

 

ーテァッ!!

 

頷き、テラがベリアロクを逆手に持ち、その顔を自身の顔と並べるように構える

 

 

ーギシャォォォォォォン!!!

 

ブラックキングとの格闘を続けるゼットは一度キックと共に距離を離す

 

『さすがブラックキング…そのパワフルさ、ウルトラとんでもないぜ‼︎』

「なら、こっちもパワーで‼︎」

『ああ‼︎真っ赤に燃える勇気の力だ‼︎』

 

 

ハルキが新たな3枚のメダルを取り出す

 

「真っ赤に燃える、勇気の力‼︎」

 

「マン兄さん‼︎エース兄さん‼︎タロウ兄さん‼︎」

 

メダルをセットし、スキャンしていく

 

《ULTRAMAN ACE TARO》

 

「押ォ忍ッ‼︎」

『ご唱和ください、我の名を‼︎ウルトラマンゼーーーット‼︎』

 

「ウルトラマン、ゼェェェェェェェェェット!!!」

 

『シュワッ‼︎』『トゥワッ‼︎』『タァーッ‼︎』

 

《ULTRAMAN Z》

《BETA SMASH》

 

ーデュワッ!!

 

 

身を翻しながら現れたのはマッシブな真紅の体になったゼット・ベータスマッシュ

 

ーダァァァァァァァァッ!!!

 

雄々しい咆哮を上げながらドロップキックをブラックキングに打ち込み、吹き飛ばす

 

ーギシャォォォォォォン!!!

 

ブラックキングは負けじと立ち上がり、張り手を決めるがゼットはそれに水平チョップで反撃、よろめきながらも尻尾も打ち込むが、それもゼットは受け止め、浴びせ蹴りで反撃。オマケに鋭いローリングソバットもぶち込んでブラックキングを吹き飛ばし転がす

 

ーダッ‼︎ダッ‼︎ダァァァァッ!!!

 

マッスルポーズを決めながらゼットがパワフルな雄叫びを上げるのを地上から見ていたバロッサ星人(六代目)が怒りに身を震わせる

 

『調子に乗るのはそこまでだッ‼︎』

 

 

《バトルナイザー・モンスロード‼︎》

《レッドキング‼︎》

ーキシャァァァァァオォォォウ!!

《エレキング‼︎》

ーキュイィィィィィィ!!

 

 

ブラックキングに歩み寄ろうとするゼットに長いエレキングの尻尾が巻きつき高圧電流を流す

 

ーグォォォォォォ!?!?

 

痺れながらよろめいたゼットを今度はレッドキングのラリアットが直撃し、その体を倒す

レッドキングが首をバシバシドラミングし、闘志を鼓舞する

 

「うぉぉッ!?卑怯だぞ3対1なんて!?」

 

『卑怯汚いは敗者の戯言ッ‼︎ 勝てば官軍である‼︎』

 

『ならこっちも複数で行くぞ‼︎』

「変幻自在、神秘の光ッスね‼︎」

 

再びゼットの体をエレキングが拘束する

 

 

そんな中、ハルキは新たなメダル3枚を再び取り出す

 

「変幻自在、神秘の光…‼︎」

 

「ティガさん、ダイナさん、ガイアさん‼︎」

 

メダルをスロットし、スキャンしていく

 

《TIGA DYNA GAIA》

 

「押ォ忍‼︎」

『ご唱和ください、我の名を‼︎ウルトラマンゼーーーーット‼︎』

 

「ウルトラマン、ゼェェェェェェット!!!」

 

『テァッ!!』『ダァッ!!』『デュア!!』

 

《ULTRAMAN Z》

《GANMA FUTURE》

 

ーキィアッ!!

 

 

新たな姿に変わったウルトラマンゼットがエレキングの拘束から消え、攻撃対象を失ったレッドキングのラリアットがエレキングを巻き込みながら両者が倒れる

 

ーキシャァァァァァ!?

ーキュイィィィィィィ!?

 

もがく2匹を引っ張り起こすブラックキング

並んだ3匹の前に現れたのはプロテクターを纏う神秘のゼット・ガンマフューチャーだった

 

『ーガンマイリュージョン』

 

ゼットはゆっくりと気を練るように構え、指を鳴らす

 

それと共にゼットのシルエットから3人のウルトラマンが光の虚像として分離。ガンマフューチャーに力を与えるティガ、ダイナ、ガイアの3人が並び立ち、ガイアはスプリームバージョンに変身した後、それぞれの必殺技を構える

 

ーテァッ!!

ーシュワッ!!

ーデヤァァァァッ!!

 

ゼペリオン光線、ソルジェント光線、フォトンストリームが三匹の怪獣に殺到する

それを見たブラックキングとレッドキングはエレキングを突き飛ばし、3つの光線の盾にする

 

ーキュイィィィィィィ!?!?

 

3光線の直撃に耐えられるわけもなく、エレキングが爆散する

 

ーギシャォォォォォォ!!!

 

ブラックキングが怒り心頭に突進する

ゼットは頭部にエネルギーを迸らせ、赤と青の光刃を伸ばす

 

『ーゼスティウムドライブ‼︎』

 

光刃の乱舞がブラックキングを縦横に何度も引き裂き、その体を爆散させる

 

 

ーテァッ!!

ーLAAAAAAAA…‼︎

 

ベリアロクとギャラクトロンベイルが衝突し、盛大な火花を散らす

 

先程まで以上に攻勢に出たテラはギャラクトロンMk-2を押し込んでいき、その胸の装甲をTの字に切り裂いた

 

『ぬぅあっ!?』

 

後退するギャラクトロンMk-2にテラが手にしたベリアロクで渾身の一斬を決める

 

 

吹き飛ばされたギャラクトロンMk-2とゼットが投げ放ったレッドキングが背中合わせに衝突する

 

『決めよう、ハルキ‼︎』

「押忍ッ!!」

 

ゼットがZ字に光を漲らせ、テラが右腕にエネルギーを集める

 

『テラジュームシュートォォォ!!!』

『「ゼスティウム光線!!」』

 

2つの光線が衝突し、レッドキングとギャラクトロンMk-2が盛大にエネルギーをスパークさせながら爆発する

 

『ぐァァァァァァァァッ、武士道は、死ぬことと、見つけたりィィィィィィィィィッ!!!』

 

ギャラクトロンMk-2のコクピットにいたバロッサ星人(五代目)の断末魔が響く

 

 

『兄上ェェェッ!!!』

 

地上から見ていたバロッサ星人(六代目)は慟哭、拳を握りながらも部が悪いことを悟ったか、気を失っていた苑樹を放って逃走していく

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ードクン、ドクン…

 

迷いが森の奥、窪地の中央で心臓のような脈動を繰り返す生き胆星ー四次元怪獣ブルトンは身を震わせ、突起の穴から新たな触角ー四次元繊毛を伸ばしていくー

 

ーグァァァァウゥゥゥ…!!!

 

そこに新たな咆哮が響く

 

ーズガシュッ!!!

 

瞬間、地に埋まったブルトンから鋭く尖った黒い装甲で覆われた尻尾が突き出て、そのままブルトンを持ち上げる

 

地中から急襲してきた怪獣が、ブルトンを差し貫いたのだ

 

ーど、くん……どく、ん……

 

紫色の血液を吹き出しながらブルトンの拍動が弱まっていき、爆散

その爆心地から赤と青の波動らしきものが迸り、空間を揺るがす

 

その光景を窪地のへりから火煙が見つめていた

 

「ウルトラマンテラ、あなたはワタシたちの黙示録にも乗らない人でも獣でも、英雄でもない最大のイレギュラーです」

 

ニヤリ、と火煙が笑みを浮かべる

 

 

「ー感謝なさい。黙示録の番外、空の穴の向こうから至る大いなる虚無そのもの、宇宙の原初の混沌すら知らぬ「零」が、あなたを浄化するのですから」

 

 

突然の爆発音に気づき、並び立つテラとゼットが振り返る

 

そこにはブルトンが爆発した残滓の爆炎と、赤と青の波動の名残が残っていた

 

『……なんか今、爆発した…?』

「……みたいですけど…ゼットさん、なんか見てました?」

『おいおい…流石のオレでも背後までは見れないぞ…』

 

と、ゼットが何か思い出したかのように首を捻る

 

『いや…でもなんか……あの爆発の名残みたいなのどこかで見たことがあるような気がするでございますな…』

 

瞬間、爆発の中心点あたりが怪しく形容し難い光を放つ

 

 

 

【                】

 

 

 

「何か」が響く

 

その「何か」を察知し、テラとゼットが思わず身構えた

 

テラのインナースペースの中、リュウは油断せず構えるが、その体は震え、脂汗が垂れていた

 

『……ッ、なんだよ、なんなんだよコレ…⁉︎』

 

それも仕方のないことだった

岩神諸島で様々な怪獣たちを狩り、遭遇してきたリュウはその経験ゆえに「戦ったらまずい」危険な気配は察知することができるし、その手の雰囲気には敏感だ

 

だが、そんなリュウが「何も感じない」のだ

 

弱いか強いか、それ以前として

どんな弱い生き物にもあって当然の「命の気配」を

 

その爆心地の「光」からは全く感じない

 

それがリュウにはとてつもなく恐ろしかった

 

「ゼットさん…‼︎ こいつは、こいつは…ッ‼︎」

『そうか…思い出したぞ、あの光…‼︎ あの光はブルトンが残した次元振動の残滓…じゃあ、やっぱりコイツは…‼︎』

 

リュウと違い、ハルキとゼットは「経験」から「光」をこれ以上なく警戒していた

 

相対したことがある。激突したことがある

だからこその恐怖

 

経験があってなお、「常識外にある」それへの圧倒的な本能からの恐怖が、今2人を支配していた

 

 

爆心地の「光」を中心に「穴」が開いたかのごとく周りの残滓を吸い取り、「光」は一層の輝きを放ちながら球体となり、細長い人型へと変じて2人のウルトラマンの前に降り立った

 

 

 

【                】

 

 

 

「それ」は人の形に似た姿をしていた

ただ黄色く光るだけののっぺらぼうの頭部、白い複雑な模様の入った体

 

ぐにゃり、ゆらゆら、ぐにゃり、ゆらゆら

 

直立していたように見えたはずなのに、愉快そうに身を揺らすようにも見える

 

静止しているはずなのに、狂ったように動いて見える

 

それの姿は捉えられない

 

当然だった。「捉える姿」はそれに「存在しない」

 

今見えているこれは「何もない」そこに脳が無理矢理像を当てはめているから

 

先程から響く笑い声、否歌声、否金属音、はたまた違う音は「何も発しない」それの声を、脳が無理矢理補完しているから

 

そこに立つのは完全なる虚無。宇宙に開いた「穴そのもの」

 

 

 

【                】

 

 

 

虚空怪獣グリーザは、高らかに笑った(歌った)






次回ウルトラマンイクサ
「虚空貫く相剋の剣」


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