【 】
グリーザはゆったりと歩を進めていく
一歩進むごとにその姿はブレ、バラけ、構えてすらないその存在は全く掴みどころを感じさせない
「ゼットさん‼︎」
『ああ‼︎コイツはウルトラ速攻で倒さないとヤバい‼︎』
テラの前にゼットが飛び出す
ハルキが新たなメダル3枚を取り出す
それと同時に3枚のメダルが雷光を放ち、金色のメダルへと変化する
「闇を飲み込め‼︎黄金の嵐‼︎」
「ゼロ師匠‼︎ジード先輩‼︎ベリアル‼︎」
装填した3枚のメダルをスキャンしていく
《ZERO BEYOND》
《GEED》
《BELIAL ATROCIOUS》
「ォォォォォォォォ押忍ッッ!!!」
『ご唱和ください、我の名を‼︎ウルトラマンゼーーーット‼︎』
「ウルトラマンゼェェェェェェェェェット!!!!」
『セヤッ‼︎』『ハァッ‼︎』『ヌゥアッ‼︎』
《ULTRAMAN Z》
《DELTA RISE CLAW》
ーキィアッ!!!
黄金の嵐を纏いながら黄金のプロテクターを纏うマッシブな姿となったゼット・デルタライズクローが現れ、その右手にテラから離れたベリアロクが飛来して握られる
《あの時の宇宙の穴か。面白い》
「ベリアロクさん、またお力を貸してください‼︎」
デルタライズクローに変身したゼットにテラが並び立つ
『ゼット、ハルキ、あいつは…ッ⁉︎』
テラの問いにハルキが重い口を開く
「あいつは、グリーザ…宇宙に開いた穴そのもの‼︎」
『そこに存在がないはずの虚空そのものみたいな、とにかくウルトラヤバい怪獣なのでございます…ッ‼︎』
『宇宙の穴…虚空そのもの……‼︎』
【 】
不気味な音が2人の耳朶を叩く
グリーザは無機質な、それでいてどこか狂喜しているかのような歩みを続けてこちらに迫る
『だけど、このベリアロクがいればその穴は塞ぐことができる‼︎ ここは、オレたちに任せるであります‼︎』
ーキィアッ!!!
気合い一喝、ゼットが疾走し、グリーザに肉薄する
【 】
ぐるり、ぐるりと脱力したように体を回すグリーザから七色に輝く雷撃が放たれる
ゼットはそれらをベリアロクで引き裂き、撃ち落としながら肉薄、ベリアロクを振り抜くが、グリーザの体が歪みながらブレ、その場から少し後方に瞬間移動し、狂った軌道を描きながら空に飛び上がっていく
ーキィアッッ!!!
ゼットも離陸し、超高速でグリーザに迫る
無軌道な瞬間移動と雷光を纏う超高速
七色の雷撃と黄金の斬撃
理を歪める打撃と白銀の拳
空中を縦横無尽に駆け回りながら繰り返される技と技の応酬に空が何度も眩く輝く
『す、げぇ…‼︎』
呆然とそれを見上げるしかできなかったテラが思わず呟く
その空中戦は突如終わりを告げた
一層眩い輝きで空が埋まると共に爆発、その爆煙から黄金の巨人がテラの側に落ちてきた
ーキィアッ…!?
『ゼット、ハルキィッ!?』
墜落してきたゼットをテラが助け起こす
その胸のカラータイマーは赤く点滅していた
「どうして…手応えがない⁉︎」
『宇宙の穴を縫う針ならここにあるはずなのに…⁉︎』
ゼットが持ち上げたベリアロクが口を開く
《なるほどな。悔しいが、アイツはオレ様でも斬れない》
『ハァッ!?どういうことでございますか!?』
「な、なんでですかベリアロクさん!?」
ハルキとゼットが共にベリアロクの顔を覗き込む
《たしかにオレ様はハルキたちの世界の穴から生まれた宇宙を縫う針。宇宙の穴そのものであるヤツを斬り裂き、縫いなおせる力があるのは事実だが…》
「それなら、あのグリーザだってー」
《ー簡単な話だ。破れ方が違う穴にオレ様という針は意味がない》
『ど、どういうことだ?』
《ミシンで縫う必要のある大穴を、手縫い針で縫いきれないのと同じだ。逆もまた然り。この世界の穴として生まれた「この」グリーザは、オレ様という針で塞げる穴にはなっていないということだ》
「そんな…じゃあ、またグリーザの中からこの宇宙の針を取り出さなきゃダメってことじゃないですか⁉︎」
『何の話をしてるんだ⁉︎』
【 】
ゼットとテラが空を見上げる
ぐにゃりぐにゃりと踊り狂いながら直立して空に浮かぶグリーザは自身の体の周りに光球を生み出し、手を振るう
それに合わせて光球とグリーザの胸からいくつもの雷光、光線が地上のテラとゼットたちに降り注ぐ
ーテァァァッ!?!?
ーキィアッ…!?!?
グリーザの攻撃を受け、ダメージを負った2人が膝を突く
テラのカラータイマーもまた、赤く点滅していた
『ぐうっ……⁉︎ あんなの、どうすれば…‼︎』
「……アイツの中から、アイツ自身を縫う針を掴むしかない…」
『…アイツ自身を縫う針…?』
『ああ、宇宙の穴であるグリーザの中には、ヤツ自身を縫う針が必ず存在するらしい……ベリアロクさんも、オレの兄弟子ージード先輩がヤツの中で見つけて、オレたちが手に取った宇宙を縫う針なんだ』
『でも、ベリアロクでもあいつは……』
《だからこの世界の穴を塞ぐための針が別に必要だ。もう一度、誰かがヤツの中から取り出す必要がある》
【 】
2人が情報を交換している間にグリーザは別の方向に体を向け、泳ぐように空を高速で無軌道に移動し始める
その移動方向を見てテラが血相を変える
『あの方角…
「都市部の人たちが危ない‼︎」
テラは地上に倒れたままになっていた
『行かせるか!!』
そしてそのまま飛翔し、グリーザを追っていく
「ゼットさん、俺たちも‼︎」
『もちろんだーッ!?』
そこに追従しようとするゼットだが、気配を感じ振り返る
ー■■■■■■■■■■■■■■■!!!!
ーキィアッ!?
突如突き出されたハサミのような形状に変化したツノにゼットの首が挟み込まれ、近くの山肌に叩きつけられる
現れたのは5体の怪獣が合体した超合体怪獣ファイブキング・アルターだった
『行かせないよ。オマエにも用があるし、何よりあのテラってのはここで消えてもらうからな』
ファイブキング・アルターのインナースペースで士官服の謎の人物が獰猛に笑う
「コイツは⁉︎セレブロが変身してた怪獣と同じ⁉︎」
ーキィアッ!!
ベリアロクを振るって超パズズのツノを払い除け、ゼットが構える
ー■■■■■■■■■■■■■■!!!
ファイブキング・アルターが疾走しながらガンQの腕から怪光線を放ち、ゼットがベリアロクでそれをいなしながら肉薄
黄金の巨人と異形の巨獣が衝突した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
気を失っていた
「ここ…は…?」
朦朧とする頭を振るい、気を失う前のことを思い出す
たしか、レイオニクスのバロッサ星人のせいで自分の闘争本能の血が暴走しかけてー
「ーッ!?リュウ!?」
そこまで思い出したところで自分の体を支えてくれていたリュウのことを苑樹がようやく認識する
「苑樹!?無事だったんだな‼︎」
「リュウ、ここは一体…?」
「今はちょっと緊急事態でな…もう少し辛抱してくれ…ッ‼︎」
ーテァッ!!!
全力で飛行し、グリーザに追い縋るウルトラマンテラ
だが、グリーザの無軌道ながら高速な飛行に追いつくことすら叶わない
改めて先程グリーザとやり合っていたデルタライズクローとの出力差にリュウが渋面を作る
【 】
空を泳ぐようなグリーザがこちらを振り返り、再び光弾と雷撃を放ってくる
雨霰と殺到するそれを紙一重で回避しながら攻撃のために減速したグリーザにテラが最大速度で突撃していく
ーテァァァァァッ!!!
【 】
グリーザの体を抱えたまま、テラが地上へと突撃する
五道市内の高層ビルに激突、それを巻き込む形でグリーザ共々テラが地上に降り立ち、グリーザの体を押し込む
「なんという無茶を…」
「アイツを止めるにはこれしかなかった…‼︎」
【 】
体に纏わりつく瓦礫を払い除け、グリーザがその体の像を歪めながら立ち上がる
ーテァッ!!!
グリーザに向けて油断なく構えたテラが突撃する
テラの組みつきを瞬間移動で回避したグリーザを狙い、テラが蹴りを放つがそれも瞬間移動で回避し、背中越しにグリーザがテラを蹴り飛ばし、その反動でくるり、くるりと踊るように回りながら体の発光体から雷光を周囲にめちゃくちゃに放つ
黄昏時の空が虹色に彩られながらビルが爆散し、瓦礫が舞い飛ぶ
ーテァァァァァァッッ!?!?
雷光に撃たれ、テラが脱力し、膝を突く
「ぐぁっ…⁉︎」
「リュウ!!」
インナースペースでよろめくリュウを苑樹が支える
【 】
ブレ、歪みながらグリーザがゆっくりとテラに近づいてくる
ーサァァァッ!!!
そのグリーザを空から飛来した赤い影が袈裟に斬り、吹き飛ばす
「リュウ、無事!?」
『アユム‼︎ イクサ‼︎』
現れたのはホシウミノツルギを構えたウルトラマンイクサ
膝をついたテラに手を貸し、その体を助け起こす
「
『ああ、なんとか…もうぼろぼろだけどな…』
【 】
グリーザはぐるり、ぐるりと体を回しながら立ち上がる
追いついてきたキャリアーとアルバトロスの中、分析結果を見た
「熱量ゼロ、質量ゼロ、あの怪獣らしき存在の位置する部分のあらゆるパラメーターがゼロ…⁉︎ マイナスですらない完全な虚無しかあそこにはない…ないはずなのに…あそこにいるアレはなんなの…⁉︎」
『恐らく、我々に見え、聞こえているアレは脳が無理矢理に虚無を認識しようとして生み出したバグ、のようなものなのだろう。さながら、暗闇の中に見えるはずのないモノを認識する様に……』
ランダルが冷静に分析するが、その声もまた震えていた
『アユム、とにかくアイツはヤバい…‼︎ オレが出会った別宇宙のウルトラマンさえ簡単にあしらってやがる…‼︎』
「よくわかんないけど、とにかくコイツはここで止めないと‼︎」
『ああ、全力で行くぞッ‼︎』
2人のウルトラマンにアルバトロスとキャリアーが並び立ち、グリーザと相対する
【 】
生ける虚無はそれを見てただ体を震わせ、ただ沈黙し、歩んできた
ーキィアッ!!
ゼットの放つ斬撃を右腕のツノで弾き、雷撃を纏わせたそれでゼットを斬り裂く
更によろめいたゼットに体中から放つ光線で追撃し、光線を纏わせた左腕をその胸に叩きつけ吹き飛ばす
ーグゥオァッ!?
「ぐうっ!?」
ー■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!
ファイブキング・アルターの重なり合う異形の鳴き声が響く
膝をつきながら立ち上がるゼット
「このままじゃヤバい…‼︎ゼットさん、ベリアロクさん‼︎」
『おう‼︎一か八か、でかいの決めるぞ‼︎』
《面白い。斬ってやる》
インナースペースでハルキがベリアロクを逆手に持ち、そのトリガーを三度押し込む
《フンッ‼︎ ヌゥアッ‼︎ ハァッ‼︎》
《デスシウムスラァァァァァァッシュ!!》
ーキィアッ!!!
ハルキが順手に持ち替えたベリアロクのトリガーをもう一度引くのに合わせてゼットもベリアロクを構え直し、紫に煌く斬撃を放つ
ー■■■■■■■■■■■■!!!
ファイブキング・アルターはガンQの左腕でデスシウムスラッシュを受け止める
迸る闇のエネルギーをガンQの目玉が吸い込んでいくが、その巨体は徐々に押し込まれている
『「ゼス、ティウム‼︎ 光線ッ!!!」』
「チェストォォォォォォォォォォォォ!!!」
渾身の力を込めたゼスティウム光線がそこに重なる
流石のガンQの吸収能力でも飲み込みきれず、ファイブキング・アルターの体に過剰なエネルギーが迸り、その体が爆散する
ーキィァァ…ッ
ゼットが膝を突く
そのカラータイマーの点滅はかなり早くなっていた
「早くリュウくんたちに…追いつかないと…ッ‼︎」
『ああ…あのままじゃ、この彼らがウルトラ危ない…‼︎』
ゼットとハルキは渾身の力を込め立ち上がり、空へと飛翔する
「か、はぁッ…‼︎」
迷いが森の中、士官服の人物が仰向けに倒れ大の字になる
「全く…面倒なの呼びやがって…」
ザッ、ザッと足音を響かせながらガウルが士官服の側に無言で現れる
「ー仕事は果たしたのか?」
「…ったく、休ませろよ…」
士官服はその手にしていたものを投げ渡す
紫のスパークを放つ真っ黒なメダルを受け取り、ガウルはそれを懐にしまうと無言で去っていく
「……愛想のねぇ女だこと」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーサァァァッ!!
ーテァァァァァァッ!!
イクサとテラが共に駆け、グリーザに突撃する
【 】
グリーザは腕を振り回し、光線を渦巻かせて胸元の発光体にチャージして解き放つ
2人のウルトラマンは身を翻しながら跳躍、イクサが大上段から斬りつけるがグリーザの体がブレながら移動し、斬撃が空を切り返礼のヘッドバッドでイクサが吹き飛ばされる
死角からマグマイーターの力を纏ったテラが飛び出し、クローで攻撃を行うが、不可思議な動きで回避され、手刀を打ち込まれ更にゼロ距離から雷撃を放たれテラが吹き飛ばされる
ーサァァァッ!!!
ーテァァァッ!!!
同時に攻撃を仕掛けようとする2人のウルトラマン
【 】
対してグリーザは頭をぐらんぐらんと揺らし、紫の衝撃波と不協和音のような音響を響かせ空間を揺らす
たまらず耳を押さえ、イクサとテラがうずくまる
そこへ合わせて虹色の放電がまた無秩序に放たれ、2人のウルトラマンが大きく吹き飛ばされる
「がはっー⁉︎」
『ぐうッ…⁉︎』
【 】
グリーザはゆったりと、それでいて騒がしくこちらに近づいてくる
「イクサ‼︎」
『わかってるッ‼︎』
なんとか立ち上がったイクサはカラータイマーを点滅させながらもホシウミノツルギを解放し、エネルギーを漲らせながら歩み出る
『「デュアルライズ・バーストォォォォォォ!!!」』
【 】
ホシウミノツルギから放たれる2色の光線、それをグリーザは胸の発光体から水晶のような光球を展開して乱反射させてそれを受け止める
ーサァァァァァ……ッ!!!
しばらく光線は拮抗していたが、グリーザは体をぐるりと回しながらその光線を吹き飛ばし霧散させる
『な…ッ!?』
【 】
新たに光線を繰り出そうとするグリーザ
ーキィィィィアァァッ!!!
『「チェストォォォォォォォォォ!!!」』
瞬間、空から飛んできた黄金の嵐がグリーザに衝突。紫の刃がその胸に突き刺さる
「オオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
『ゼット‼︎ハルキ‼︎ベリアロク‼︎』
裂帛の気合いでゼットがベリアロクをグリーザの胸に突き刺し、押し込んでいく
刃が少し沈む、がそれ以上は突き刺さらない
【 】
グリーザが虚無の咆哮を上げ、衝撃波を放ってゼットを吹き飛ばす
ーキィアァァッ…!?!?
吹き飛ばされたゼットをイクサとテラが受け止めるが共に倒れ、ビルを崩しながら倒れ込む
「クソォ…ッ、届かない…のか……⁉︎」
三者共にカラータイマーを点滅させ、疲弊した様子で立ち上がる
テラはそこでグリーザの異変に気づいた
少し突き刺さったベリアロクを起点に紫の亀裂がグリーザの胸元に生じていたのだ
グリーザの動きも心なしか緩慢になっており、虹色のエネルギーを放出しながらゆらゆらと揺れている
『ーじゃあ、またグリーザの中からこの宇宙の針を取り出さなきゃダメってことじゃないですか⁉︎』
テラ、リュウはハルキの言葉を思い出した
『……ハルキ、ゼット…グリーザを…宇宙の穴を縫う針は、グリーザ自身の中にあるんだな…?』
テラがゼットとハルキに問う
「……あ、ああ…リクさんの言葉だと、そういうことのはず…」
『ジード先輩もグリーザの中であのベリアロクを見つけたはずだから、間違いないはずだ…‼︎』
意を決したテラはカラータイマーに手を当て、苑樹を光の球に包んで近くの無事なビルの屋上に送る
光の球が弾け、苑樹がビルの屋上に降り立つ
「リュウ……?」
テラ、リュウは苑樹を優しく見下ろし、グリーザに向き直る
『……イクサ、ゼット。オレがダメだったら…後のことは頼んだ‼︎』
「ー何をするつもり、リュウ⁉︎」
ーテァァァァァァッッッ!!!!
テラが疾走し、グリーザに刺さったままのベリアロクに手をかけ、力を込める
《小僧ッ⁉︎何をする気だ⁉︎》
『貫けなくても…こじ開けることなら、できるはず…ッ‼︎』
ーアァァァァァァァァァァァァ!!!
【 】
ベリアロクを起点に、グリーザの胸が開いていく
裂けた無限の空隙から虹色の稲光と共に白い人間の手のような触手がいくつも飛び出し、テラの体を掴み引きずり込んでいく
『リュウ‼︎ よせッ‼︎』
『ウルトラヤバい…ッ‼︎リュウ、下がりなさいッ‼︎』
「やめてください…やめてッ、リュウッッ!!!」
ズルリとテラがグリーザに、宇宙の穴に引きずり込まれる
瞬間、テラはベリアロクを力一杯放り投げる
《小僧…リュウッ!!!》
ーごくんっ
グリーザがテラの青い巨体を飲み込む
「ーリュウゥゥゥゥゥゥッッ!!!」
苑樹が悲痛な叫びを上げる
悲痛な叫びはが夜空に消えていく
【 「《 》 」 】
残されたグリーザが奇妙な「音」を上げ、もがき始める
【 】
一瞬グリーザが直立となり、周囲の空間を巻き込んで圧縮
脈動する異形の球体に変貌し、その場に浮遊して動きを止めた
静かな夜の闇がただ広がる崩壊した市街地を見た苑樹が、膝から崩折れた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
スターゲイザーベース
『目下、観測は不可能だがあの怪獣ーナツカワ ハルキとウルトラマンゼットの証言曰くグリーザは形態を退化させ、休眠のような状態になっていると推測される』
モニターに観測映像を映し出しながらランダルが静かに告げる
沈痛な面持ちの面々がモニターを見る中、もう1人加わっていた人物が声を上げる
「押忍。俺たちの世界に現れたグリーザも、ジード先輩が決死の覚悟でその体内に突入した時に同じような球体形態に変化してました」
ハルキの側に突如光の扉が現れ、そこから姿を覗かせた人間大のウルトラマンゼットが言葉を続ける
『ヤツは命あるものを狙い、それを吸収しようとする。恐らくヤツは今、リュウ、ウルトラマンテラのことを吸収しようと消化を始めているはずだ…』
「そんな…なら早く助け出さないと⁉︎」
《無理だ。ヤツにはヤツ自身を縫う針が無ければあらゆる攻撃が届かない》
歩夢の言葉にベリアロクが答える
「針…?それはどこに⁉︎」
《ヤツの中、宇宙に開いた穴のその更に奥にそれは存在しているはず。つまりヤツ自身の中に入らなければならないということだ》
「だから……だからリュウはあいつに飛び込んだっていうの…⁉︎」
作戦司令室を重い空気が包み込む
「……すんません、力になれなくて…」
「謝らないでくださいハルキさん。あんな不条理極まりないもの、どうにかできる方が難しい、ですから…」
「………」
水輝がハルキを慰め、大介が沈黙したまま拳を握りしめる
「信じて待つ…しか無いのね……」
歩夢が重い口を開く
それを聞いた大介がデスクを殴りつけながら立ち上がる
「見ていろって言うんですか…⁉︎ リュウが、命を張っている時に⁉︎」
「今はそれしかできないの…ッ‼︎不条理極まりないあの怪獣に、私たちが外部から手を出して変質したらそれこそリュウがどうなるかわからない…大介も、わかってるでしょう……」
歩夢の言葉に大介も唇を噛み俯く
「信じるしか無い……信じてるわ、リュウ……」
歩夢は自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ
「…死ぬんじゃないわよ。絶対に…お願いだから…」
「…………」
苑樹は部屋の隅で膝を抱え、うずくまっていた
泣き腫らした目で部屋の中央のちゃぶ台を見つめる
色んな本を読み散らかすリュウ
ご飯を美味しそうに黙々と食べるリュウ
社務手伝いに疲れてちゃぶ台に突っ伏すリュウ
ここに押しかけてきた時は面倒さしか感じなかった
迷子の子供のように自分についてきて、色んなことを質問してきて、たびたび上の空になりながら何か思い詰めた顔をして
「……本当に、ほんとに迷惑なんですよ…」
カラカラに乾いた唇から言葉が漏れる
「……自分の立ち位置に、在り方にうじうじ悩んで…質問ばかりで、わたくしのことを知りたいとか言っといて、わたくしがこんな、こんな呪われた血であること気にも止めないで……」
苑樹が両手で顔を覆う
はじめてだったのだ
母親でも親族でもない
歩夢のように度々出会うだけの表面的な付き合いじゃない
苑樹の普段を、呪われた血の力を目の当たりにしたのに
『ー苑樹も、苑樹として選んでいいんだ‼︎ 悩んでることや、辛いことは今度オレが全部聞く‼︎ オレは、お前の味方にもなれるからッ‼︎』
あんなことを、恥ずことなく告げてくれたのは
「……わたくしの、心にここまで勝手にずげずげ入ってきて、今まで迷子のようについてきていたあなたが……」
脳裏に自分を優しくビルの屋上に下ろし、見下ろすテラがよぎる
「なんで、なんでそんなカッコつけをあんなところでするんですか…ッ!!!」
悲痛な叫びが誰もいない社に響く
苑樹が自分の肩をぎゅっと抱く
いつも一人で平気だった
当たり前のように一人を過ごしてきた部屋が
「使命」という拠り所だった神社が
こんなにも寂しく冷たく、怖いことを苑樹ははじめて知った
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
明朝
朝日に照らされゆく半壊した街並みとその中央に浮かぶ球体の姿となったグリーザ
その脈動が加速、変化した時と同様に周囲の空間を捉え込みながら収束、一気に破裂するように拡大し、元の人のような姿に変わる
【 あは ぁははぁ あはぁはは 】
ぐらんぐらんと揺れ動くような、直立しているような不可解な挙動はあいかわらず
だが、今度はその揺れ動く残像の中にウルトラマンテラの姿が、虚空を揺らすだけの「音」の中にリュウの声が紛れていた
【 て ら ジゅ ゥ ム 】
不明瞭な声と共にグリーザの手先が青と紫の光を纏い、無秩序に振り回されると共にその手先に集った光が光弾として放たれ、ビルを倒壊させていく
【 ヒャは ぁはひゃは はは ぁは 】
狂ったような不気味な音を撒き散らしながらグリーザが直立しながら飛行を開始。ビル群を破壊しながら飛び去っていく
指令室にアラートが響き、サイレンが回り出す
「おいでなすったわね…‼︎」
歩夢が立ち上がる
「ランダル、水輝、大介‼︎」
呼びつけた隊員たちが真剣な面持ちで立ち上がる
歩夢は唇を噛み締め、隊員たちを見据える
「みんなの気持ちはわかる。リュウを助けるために力を尽くしたい思いは、よくわかる……」
「ーだけど、相手はーあの怪獣・グリーザは常識の埒外すぎる存在。イクサやゼット、テラの力でも立ち向かうことがやっとの規格外の脅威。私たちGBCTの、人間の力だけじゃきっと犬死にするだけで終わる…」
歩夢がぎゅっと胸を握り締めながら絞り出すように告げる
「ーグリーザ迎撃は私とイクサ、ハルキとゼットで、残るみんなは、周囲の市街地から市民たちを避難誘導・救助してちょうだい。こんな命令でごめー」
『了解ッ!!』
歩夢の想定に反し、隊員たちはしっかりと敬礼し避難誘導のための準備をはじめていく
「歩夢隊長の作戦は筋が通っています。私たちは後方支援に全力を尽くしますから、安心して全力で戦ってください‼︎」
「あれだけの怪獣。避難も救助も俺たちが力を貸さないとより多くの被害者が出てしまう。なら、そこで踏ん張るのが俺たち「人間」側の仕事ですから」
ランダルが歩夢の肩に拳を当てる
『ー勝って取り戻してこい。隊長』
その言葉を聞いて歩夢は微笑む
「そっちも、無茶だけはしないでよ‼︎」
スターゲイザーベースの廊下を並んで走りながらハルキが口を開く
「いいチームですね‼︎」
「は⁉︎急にどうしたのよ⁉︎」
「押忍ッ‼︎思ったことを言ってみただけですッ‼︎」
ハルキの真っ直ぐすぎる言葉に思わず歩夢が吹き出す
「気持ちのいい人ね、あなたも‼︎」
歩夢がイクサファーナスを、ハルキがゼットライザーを構え、それぞれのカードを突き刺す
《アユム:イクサイテッド》
《HARUKI ACCESS GRANTED》
「行くわよ‼︎イクサ!!」
「ゼットさん‼︎行きましょう!!」
2人の勇士の体を眩い光が包む
【 あぁはは ぁは あはぁはは 】
ぐわんぐわんと像をブレさせながら飛行するグリーザ
ーサァッ!!
ーキィアッ!!
そのグリーザを2人のウルトラマンが空から捉え、ダブルキックを直撃させて撃ち落とす
グリーザがぐりんぐりんと身を揺らしながら直立し、デュアルブレイブになったイクサとアルファエッジの姿になったゼットが降り立つ
【 あはぁ はは ははぁは 】
身を揺らすグリーザの像の中にテラの姿を見たイクサが怯む
「テラ…⁉︎ なんで…」
「取り込まれかけてる…‼︎ ジード先輩の時と同じだ⁉︎」
【 あはぁ あははあ はぁは はは 】
グリーザは腕を円を描くように振るい、周囲に光の球と触手を召喚しながら雷光と光弾、衝撃波に白い手の波を放つ
《猛き火!!》
ーサァッ!!
ホシウミノツルギに火の力を纏わせたイクサがツルギを大きく振るい、その攻撃を撃ち落とす
「今はデルタライズクローでも有効打にできない…なら動きを止めることに専念しましょう‼︎」
『ああ‼︎神秘の力でグリーザを止めるぞ‼︎』
《ULTRAMAN Z》
《GANMA FUTURE》
『ガンマイリュージョン…‼︎』
ガンマフューチャーの姿に変わったゼットが指をパチンと鳴らす
そのシルエットから今度はティガスカイタイプとダイナミラクルタイプの幻像が分離し、構える
『ガンマフリーザー‼︎』
ーテァッ‼︎
ーダァッ‼︎
ゼットがガンマフリーザー、ティガがティガフリーザーをグリーザの頭上に放ち、降り注ぐ冷気をダイナがネイチャーコントロールで風を纏わせて増幅し、瞬間的にグリーザの体を冷却ー凍結させる
『凍らせた…‼︎ やるな、ゼット‼︎』
『これなら、しばらくはー』
【 ぁは あはは ひゃあは あはあぁ 】
瞬間、並び立つ2人の背後から現れたグリーザのエネルギーを纏った手刀を喰らい、2人とも大きく吹き飛ばされる
ーサァッ!?
ーグォアッ!?
吹き飛ばされた2人の背後で凍りついたグリーザだったはずのものが砕け散る
「いつの間に瞬間移動を…!?」
『こいつ…とんでもなさすぎるだろ!?』
【 ひぁは ぁは ひゃはは ぁあ 】
グリーザがぐるぐると光を放出し、再び大量の光線と雷光をばら撒く
「うぉおおおッ!!」
《ULTRAMAN Z》
《DELTA RISE CLAW》
イクサの前に飛び出したゼットがデルタライズクローへと変身し、ベリアロクを突き出す
迫る光線を飲み込み、ベリアロクが吐き出してグリーザへと跳ね返す
直撃を受けたグリーザはぐらりと後方に仰向けに倒れ伏す
が、すぐに何ごともなかったかのように起き上がる
『クソッ、こいつマジで手応えがねぇ…‼︎』
『このままじゃ、リュウは…』
「ー絶対帰ってくる!!!」
弱気になり始める2人のウルトラマンを歩夢が一喝する
「あの子は…あの子はただの男の子じゃない。怪獣だらけの島で育って、母親だった怪獣の想いを受け取って、ウルトラマンにまでなっちゃう強い子。私は…私たちはリュウの強さを信じる…‼︎」
それを聞いたハルキも頷く
「そうッスよ…何弱気になってんですかゼットさん‼︎リュウくんは、あのグリーザに飛び込む男ですよ…‼︎」
『…そうだったな…そんな彼がこのまま死ぬわけが、いや死なせていいわけないでございますよな!!』
その時、グリーザの体に目に見えた変化が現れた
胸の発光体を引き裂くように、亀裂が生じて光がこぼれ始めたのだ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ーオマエ、結局一番中途半端なヤツを選んじまったな』
『ー光でも闇でもない』
『ーただそれだけ見れば美徳だが、同時にそれはどちらにもなれないってことでもある。どちらでも死ねない、とも言えるな』
『ーまぁ、いずれにせよ、オレの言葉はもう聞こえちゃいないか』
『ーじゃあな。もうどこで会うこともないだろうが』
「ー中途半端っての、嘘だろ?」
リュウの意識が明瞭になる
朦朧としていた意識が戻り、ふわりとした浮遊感が消え、足がついたのは何故か銭湯の更衣室だった
『…なんだと…?』
リュウの目の前に立つ翡翠の目と胸元の赤い傷が光る黒い人影が驚愕の声を漏らす
リュウはそれを見据え、言葉を続ける
「光でも闇でもない。簡単そうにも中途半端にも聞こえるけど、それが本当は一番難しいし成し遂げるのも大変。歩夢や苑樹たちを、
リュウはキッと人影を見据える
「でも、オレはその道に向き合える。人間でも怪獣でもあり、怪獣でも人間でもないオレ。ウルトラマンになったのにウルトラマンじゃないオレ。『どちらでもないオレ』だから、オレはどちらの為にも戦える。いや違うー」
リュウは首を振り、いつの間にかその手に現れていたコーヒー牛乳を飲み干してニッと笑う
「ーどちらもオレのゴクジョーだから、オレは守りたいんだ」
胸を張って告げたリュウの言葉を聞いた黒い人影はしばし沈黙し、肩を震わせ手で顔を覆って高らかに笑い始めた
『ーッハハハハハハ‼︎ ガキが一丁前にデカい口叩いたもんだ。手のかかる部下以上にとんでもないヤツだなオマエ』
『ーだが、いい目だ。いい芯を見つけやがったな』
人影が手にした刀を振るう
銭湯の更衣室だった空間がバッサリ切り落とされ、無の闇が広がる
『ーさてと、このままここに残ったら戻れなくなる。オレが出口を作ってやるよ』
『ーついでだ。見て盗め…オマエならできるだろうさ』
黒い人影は手にした日本刀を振るい、腰だめに低く構える
紫のオーラが渦巻き、その刀身が赤く光り輝く
『ー
振り抜かれた刀身から赤い斬撃が放たれ、無の暗黒を引き裂く
引き裂かれた闇から光が溢れ出す
『ーオレからの最後の授業だ。目に見えるものだけを信じるな』
『ーバカで無鉄砲な部下だが、あいつらによろしく言っといてくれ。じゃあな、リュウ』
黒い人影は闇の粒子に解け、リュウの手元に集まる
リュウの手にジャグラスジャグラーのテラスパークドールズが握られる
そこに更にもう一人の人影が現れた
それは先程とはうってかわり、光り輝く人影だった
「あんたは…‼︎ オレに力をくれたウルトラマン⁉︎」
光の影は頷く
ゼットのところで見たよりもどこかハッキリした影になっていた
しばらくそれを見据えていたリュウが口を開く
「……また力を貸してくれ。オレには、まだ守りたいものがたくさんあるんだ」
それを聞いた光の影が言葉を放つ
『ーキミは、キミ自身であるウルトラマンに今成った』
『ー受け取るといい、ウルトラマンテラ』
『ー私の、太古に大地と共に戦った光だ』
光の影ー太古のウルトラマンの残滓が光の粒子に解け、その手元にテラスパークドールズの形となる
ジャグラーの闇、ウルトラマンの光
それぞれを象徴するテラスパークドールズがもう一度解け、混じり合い、光と闇を共に纏う一本の剣になる
「ー思い出した…ここは、宇宙の穴…こいつが、この宇宙の穴を縫う針か…‼︎」
リュウが剣を掴む
引き裂かれた闇を目指すリュウ。だが、凄まじい力がそれを許さない
「クソッ…ここまで来たのに…ッ!?」
襲いくる闇に意識が呑まれそうになるリュウ
「リュウッ!!!」
「答えなさい、リュウッ!!!」
そんなリュウを2人の声が引き戻した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ーサァァァァァッ!!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
《猛き火!優しき水!》
《今、一つに!!》
イクサがホシウミノツルギを解放し、突撃、その斬れ目にホシウミノツルギを叩きつける
『「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」』
2人の声が重なり、裂け目に深く切り込まれていく
「リュウッ!!しっかりしなさいッ!!やるって決めたなら、帰るって言ったなら……ちゃんと帰ってただいまを言いなさいよッ!!」
『帰ってこいよ、リュウッ!!オマエはこんなとこで終わらないだろうがァァッ!!!』
【 ぁははは あはあは ひゃはは 】
が、グリーザはその裂け目を閉じ始める
ホシウミノツルギも裂け目から戻され始める
『クソッ…‼︎ このままじゃ…‼︎』
「ーバースト、モンスロードッ!!!」
凛とした声が響く
ーグアァァウゥゥゥゥゥゥ!!!!
跳躍してきた巨体が黄金色の目を光らせ、鋭い爪をグリーザの裂け目に突き立てる
「なー!?」
ーグアァァウゥゥゥゥゥゥ!!!!
新たに現れたのは青い体に勇壮な白銀の体毛とタテガミを纏う二足歩行の肉食獣のような見た目をした怪獣
その橙色の爪を怪獣は突き立てていた
「ーアレだけ叩いた大口を、もう忘れたのですか⁉︎ わたくしの、味方になってくれるのでしょう…ッ!!!」
声は近くのビルの屋上から響いていた
そこに立つのは、バトルナイザー:EARTHを構えた苑樹だった
グリーザの再出現から数時間前
苑樹は分社の本堂で銅鏡に手を当て、怪獣と心をリンクさせていた
ティグリスでも、イツシでもない
もっと深層の、もう一体
一度呼び出して、その呪われた力の象徴と勝手に突き放した一体の元へ
ーグアァァウゥゥゥゥゥゥ…‼︎
鏡の奥底、自身の心の深層に眠っていた巨体が体を揺すり、黄金色の目を開く
「ーわたくしはあなたを許せなかった…葵母さまを殺した、玲武の呪われた血の象徴。暴れる闘争本能の塊……あなたを呼ぶことが怖くて、ずっと封じ込めて見ないふりをしていた……」
苑樹は泣き腫らした目を拭い、キッと怪獣を真正面から見据える
「虫のいい話とはわかっています…でも、でも、今のわたくしにはあなたの力が必要なのです…‼︎ 暴走した母さまのビャクランすら一蹴したあなたのその力が…」
「今度は壊すためじゃない……あの子を、リュウを助ける為に‼︎」
「ーお願い、力を貸して…ホロボロスッ!!!」
怪獣ーホロボロスは黄金色の目で苑樹を見据え、その小さな体に近づいてくるとぺろ、とひと舐めした
「……わたくしに、力を貸してくださるのですか…⁉︎」
ホロボロスは頷く
まるで苑樹を待ち侘びていたかのように喉まで鳴らしている
「……ごめんなさい。わたくし、あなたを誤解していた…あなたは、わたくしを守る為に力を貸してくれたのに…あなたを仇だと思って憎んで……」
ホロボロスの顔に身を寄せ、頬を擦り当てる
「……力を貸してください、ホロボロス」
「あの大馬鹿者を、引っ張り戻す為に…‼︎」
ーグァァウゥゥゥゥゥゥ!!!
ホロボロスが爪を振るい、グリーザの光のバリアや光線をその剛力で叩き割りながら裂け目をこじ開けようと力を込める
「教えてあげます…約束を守れない男の人は最ッ低です!!! あなたは、そんな最低な人じゃないでしょう!!!」
苑樹が叫ぶ
「あなただけなんですよ…ッ、今この宇宙を救えるかもしれないのは‼︎わたくしの、わたくしの救いになれるのは、あなただけなんですッ‼︎」
「ーだからさっさと、戻ってきなさい‼︎ 稲葉 竜ッ!!!」
ーサァァァァッ!!!
ーグァァウゥゥゥゥゥゥ!!!
イクサの斬撃、ホロボロスの爪
2つの一撃が裂け目を穿つ
その裂け目の奥から一筋の光が伸び、大きく裂けると共にテラがグリーザから吐き出される
イクサとホロボロスがその体を受け止める
「リュウ‼︎ 無事、無事なのね…‼︎」
『ってて…イクサ…アユム…‼︎ ああ、なんとかな』
「なんとかなじゃないッ‼︎心配させて…ッ‼︎」
イクサがテラの背中をバシっと叩く
側にいたホロボロスが今度はテラを引っ張り起こし、軽い張り手をぶち当てる
よろめくテラはしばし困惑していたが、ビルの屋上にいた苑樹に気づく
苑樹は安堵し、満面の笑みと涙を浮かべていたがすぐにそれを拭い、テラを睨み上げる
「………大馬鹿者…ッ‼︎」
ーグァァウゥゥゥ……ッ‼︎
拗ねる苑樹
それに加え、「主人を泣かすな」とでも言いたげにホロボロスが顔を近づけて凄む
『無事でよかったでございます…‼︎』
《掴んだのか?針を》
ベリアロクの問いにテラが頷く
『ああ、掴んだよ。この宇宙を縫う針を‼︎』
【 】
蠢くグリーザの前にテラが立つ
『来い‼︎
前に突き出したテラの手の中に、インナースペースのリュウの手元に、光と闇が渦巻き、柄の部分に菱形にV字が刻まれた装飾が付いた黒と金、銀に彩られた刀が握られる
リュウはそれをテライグナイターに当てる
《ウルトラマンテラ‼︎ パワーアップ‼︎》
《ハイパーウルトライブ‼︎》
《ウルトラマンテラ‼︎ビクトリウムジャグラー‼︎》
ビクトジャグライザーを中心に光と闇が吹き出し、テラの体を覆っていく。青と銀の体が新たに金と黒のラインに彩られ、肩にV字のクリスタルが収まったアーマーが、胸に三日月のクリスタルがはまったプロテクターが装着され、更にアルマンドラの力と同じような金の装甲が腕と脚に装着される
最後に金と黒の粒子が首元に纏わりつき、金と黒のマフラーとして靡く
ーテァァッ!!!
グリーザの前に新たに姿を現したウルトラマンテラ・ビクトリウムジャグラーがマフラーを翻し、口元のマフラーを上げる
【 】
『行くぞ‼︎ グリーザッ!!』
グリーザの放つ光線に合わせてビクトジャグライザーの柄をタップし、装飾を大きなV字型に変形させる
《ビクトリーモード‼︎》
ーテァッ!!
鞘から抜くようにビクトジャグライザーから短剣を分離、それを振り回し、光線を撃ち落とす
『テラビクトリウムレイン!!』
短剣で黄金のV字を描き、腕の青いクリスタルにテラジュームを迸らせ、そこを殴りつけて光弾の雨を放つ
降り注ぐ光弾を回避しながらグリーザが迫るが、何発かは直撃し、あのグリーザがよろめく
瞬間移動で消え失せ、背後からテラに迫る
が、その動きが止まるーいや、縫い付けられる
『見えてるぜ。いや、見えなくても意味はない…‼︎』
鞘のように分離していた黒い刀身を背後に向けてテラは突き出し、それが見事グリーザの胸を貫いていたのだ
テラが刀身に短剣を収めると装飾が菱形に変形し、展開されて赤い三日月が覗く
《ジャグラーモード‼︎》
刀身を突き刺したまま刀を捻り、上に斬り上げながら翻り、グリーザを袈裟に斬り裂く
斬り飛ばされたグリーザが胸の発光体からこれまで以上の出力の光線を放つ
ーテァァッ!!
その光線を刀身をかざして受け止める
黒い刀身にオレンジのエネルギーとしてそれがリチャージされ、迸る
刀身をくるくると振り、それを下段から斬り上げのような姿勢で構え、そのテラの姿に夢幻魔人の姿が重なり、翡翠の目が煌めく
『
ーテァァッ!!
吸収したエネルギーをオレンジの斬撃として抜き打ち、Xの字にグリーザの体を引き裂く
【 】
その一撃にグリーザの体が歪み、ノイズが入る
テラはビクトジャグライザーの装飾を三度タップし、一度刀身を抜いてガチン、と戻す
《ビクトジャグライズモード‼︎》
ビクトジャグライザーをX字に振るい、光と闇のエネルギーが描くXの斬線がテラの前で回転、ビクトジャグライザーを地面に突き立てたテラが広げた両腕にテラジュームの青いエネルギーが迸る
『テラクロス、ブラスタァァァァァァ!!!』
十字に組んだ腕から放たれる青銀の光線が光と闇の十字を纏って放たれる
グリーザの胸元に直撃した光線は虚無そのもののはずのその体にエネルギーを迸らせ、爆散。無音の波動と衝撃波が空間に飛散していく
宇宙の穴は、今縫いとめられたのだ
それを見ていた
その下には、いつもの貼り付けたような笑顔ではなく明確な動揺と怒りが現れていた
「…ワタシの、我々の黙示録をまた踏み躙るか…ッ!!!」
火煙の慟哭が青空に消えると共にその姿もかき消えた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
人間の姿に戻ったリュウが歩夢たちの元に歩いていく
照れ臭そうに頬を掻きながらリュウが告げる
「……その、ごめん。心配かけて…」
頭を下げるリュウに歩夢がツカツカと歩み寄り、その頭にチョップをキメる
「ッでっ!?」
「本当よッ‼︎どんッだけ無茶してんのあんたッてヤツは…‼︎」
ヘッドロックを決めてくる歩夢の腕をリュウが目を白黒させながらタップする
歩夢はそのままリュウの体を引っ張っていき、皆の前で離す
「というか、ごめんより先に言うことあるでしょ?」
リュウは首をさすりながら歩夢、ランダル、水輝、大介、そしてハルキとベリアロクの顔を見る
「……その、ただいま」
リュウが照れながら告げたのを聞いて皆が安堵の表情を見せる
『おかえりッ!!!』
そんな皆を掻き分け、現れた苑樹がその肩をいきなりバシッと叩く
「ーなッ⁉︎」
「バカッ‼︎ バカ馬鹿ばか馬鹿、大馬鹿者ッ!!!」
駄々をこねるようにリュウに掴みかかる苑樹を見てリュウがオロオロと手を上下させる
そんなリュウを有無を言わさず、苑樹が力いっぱい抱きしめる
「!?!?!?」
突然の事態にリュウが固まり、GBCTのメンバーが色めきだつ
「……良かった…良かったよぉ……」
涙声で苑樹が漏らす
その背をリュウは優しく撫でた
「いつのまにあんな急接近したんだか…」
2人から離れた歩夢がハルキの元に並ぶ
「色々面倒見てくれてありがとね、ハルキさん」
「押忍‼︎ って言っても、俺はただ思い出話みたいなのしただけッスから…」
ハルキがベリアロクを片手に頭を掻く
「あなたたちは、元の宇宙に帰るの?」
「それなんスけど…少し気になることがあるので、まだもう少し残ろうかと思ってます‼︎」
「気になること…?」
「はい。気のせいだといいんですけど…」
疑問符を浮かべながらも歩夢はハルキに灰色のカードを渡す
「…?これは…」
「GBCTの臨時ID。一応持っておくと色々便利だし預かっといて」
「おおお‼︎ありがとうございますッ‼︎」
ハルキが大袈裟に頭を下げる
皆と別れたハルキたちが歩んでいく
『いいチームだったな、ハルキ』
「ですねゼットさん。俺たちも負けてられません‼︎」
気合い一発、ハルキが走り出していく
「…そういえば、ゼットさん。俺たちなんか忘れてません?」
『……言われてみればたしかに…』
『バロバロバロ…怪獣が無くなってしまっては我が侵略も略奪も不可能…ッ‼︎』
逃げおおせていたバロッサ星人(六代目)が山中をよろよろと歩き回る
『……早く、新たなる怪獣を探さねばーッ!?』
バロッサ星人(六代目)の体を衝撃が襲う
見下ろした自身の胸からは、黒い鋭いツノのようなものが突き出していた
『あ、がぁ…ッ⁉︎』
引き抜かれ、よろめくバロッサ星人(六代目)
瞬間、空をキラリと何かが舞い、それとほぼ同時にバロッサ星人(六代目)の体がバラバラに弾け飛んだ
バロッサ星人(六代目)の青い鮮血が雨のように降り注ぐ中現れた士官服の人物が転がってきたバトルナイザーを拾う
ぺしゃり、と士官服にも返り血が付着する
『……やれやれ、クリーニングが面倒だ』
士官服の人物ー特殊自衛隊司令官・
グリーザを撃破し、五道市に平和な日々が訪れる
GBCTのメンバーたちも各々の休日を謳歌したり、鍛錬を繰り返しているものもいた
そんな中、歩夢はある研究をする青年に出会う
青年は言う「僕はユニジンに会いたい」のだと
次回ウルトラマンイクサ
「願いと或る日の奇跡」
雪の降るその日、奇跡が起こる