ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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第23話「真実と天体の再生」

特殊自衛隊基地 司令官執務室

 

大紋(だいもん) 黒斗(くろと)は書類を整理していた

そこにノック音が響く

 

「どうぞ」

「ー失礼する」

 

執務室の扉を開け、ガウルが入室してくる

機械のような歩みで入室してきたガウルがタブレットを提示する

 

「開発を頼まれていた新兵器の運用実験、及び資材Aの改造が完了した。ヴィクターシリーズへの改造・取り付け機材の量産体制は準備済。資材Aの実戦投入も可能だ」

「ありがとうございます。ハウンダーや戦車部隊では限界のあった怪獣への対処もこれで進みそうだ」

 

黒斗は目録や新兵器の閲覧を進めながら目を伏せる

 

「……願わくば、これを使わないで済めば良いのですがね」

 

黒斗の呟きが聞こえたか聞こえずか、ガウルは無言で礼をし、部屋から退室する

 

 

椅子に腰掛けた士官服の背後から黒い渦が生じ、一人の長身の男が現れる

 

黒髪の前髪を一房白く染めた眼鏡から灰色の眼が覗く青年

スーツに身を包んだ長身をピンと伸ばし、士官服に声をかける

 

「まさかの展開だな。お前からしてみれば気に食わないんじゃないのか?」

 

士官服の男はニヤリと笑う

 

『気に食わない?ハハッ、わかってないな、えっと?「今」はクロードだったか?』

 

おかしげに笑い、肩を揺らしながら士官服は続ける

 

『ーこれだから面白いんじゃないか。知能を付けて、傲慢になり出した病原菌どもはここからが面白い』

 

クロードと呼ばれた青年はメガネをかけ直しながらはぁとため息を吐く

 

「お前もいい加減、悪趣味だな」

 

『クロードの方はどうなんだよ?居残ったイレギュラーの送り返しは』

「つい今しがた、トリガーダークと言ったか?あの巨人は無力化した。あとは我らが主が送り返しているだろう」

 

士官服はニヤリと何やら下卑た笑みを浮かべる

 

『ー残ったもう片方をどうにかしたら、少しこちらの遊びに手を貸してくれよ。もう少しで我らが主に捧ぐ愉快なゲームの場が整うからな』

 

くっくっ、と笑う士官服にクロードは眉根を寄せるが首肯する

 

「仕方がない。我らが主の目的に近づくならば協力してやろう」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

クリスマスの翌日 早朝

五道市(ごどうし)南東の金陵山(きんりょうさん)の山間部

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

空から円錐型の白亜の巨大機構がゆっくりと降下してくる

その機体をぐるぐると定期的なリズムで回転させ、機体表面を走る赤いラインを光らせながら機体はゆっくりと滞空し、その機体表面を光らせる

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

機体から8つの電磁球が離脱

機体の周囲を回転しながらバチバチと放電を始め、周囲の地面に向けて雷撃を放ち始める

 

放たれた雷撃は大地を捲り上げ、そこら一帯を引き裂いていく

雷鳴に打たれた森林に炎が上がり、森林火災が広がっていく

 

更なる雷撃が地面を穿つと共に、その砕けた地面から新たな影が現れた

 

ークオォォォォォォン!?!?

 

驚いたような声を上げ、地面から現れたのは4足歩行の地底怪獣・テールダスだった。大きな音に弱い性質上、とても驚いたように周囲を見回している

 

ーキュエェェェェェェ!?!?

 

テールダスとはまた違う地面からもう一体、熱岩(ねつがん)地底怪獣プルメウスも雷に追い立てられて姿を現す

 

現れた2体の怪獣を捉え、機構はピポピポと電子音声を放つ

 

【・---・ ・-・-・ -・・・- ・--・ -・ ・- --・-・ ・・- ・-・・ ・・・- -・-・ ・-・-・ 】

 

機体表面の赤いラインがオレンジ色に変化し、機構の雷撃が向けられる対象が変化する

 

雷撃はーテールダスとプルメウスに目掛け正確に放たれる

 

ークオォォォォォォン!?

ーキュエェェェェェェ!?

 

高電圧の雷撃に打たれ、2体がたまらず倒れ伏す

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

機構は燃え盛る山間部の上空をゆっくり飛行し、怪獣たちに更なる雷撃を浴びせ始めた

 

 

「ったく‼︎ 休みは終わってたけど、だからっていきなりすぎでしょ⁉︎」

 

家で寝ていた歩夢(あゆむ)はGBCTパッドへの着信で目を覚ました

 

ランダルからの通信で五道市の周辺にあのラテン語に似た文字が記載された機械がまた現れたと報告されたのだ

 

しかも今度の機械は周囲に雷撃を落とし、それに驚いて現れた怪獣たちに優先して攻撃を仕掛けているらしい

 

確認できたのは五道市南西部土玄山(どげんさん)、南東部金陵山(きんりょうさん)、そして北西部花西(かせい)丘陵の3ヶ所それぞれに1機ずつ現れていた

 

水輝(みずき)苑樹(えんじゅ)、リュウには既に連絡済みだ』

「大介とルシルは⁉︎」

『大介は応答がない。ルシルはそもそもGBCTパッドの反応がロストしている…』

「なんですって…⁉︎」

岩神(いわがみ)諸島観測部門にも何も連絡がない。それどころか観測部門から、今の今まで大人しかった彼女のパートナー、エルシアの落ち着きがなくなっていると報告されている』

「大介とルシルに…何かあったの…?」

 

困惑し、言葉に詰まる歩夢

 

『GBCTセンチネル以下の機体は地上基地にある。整備のために下ろしていた機体の積み直しが終わっていなかったからな。整備自体は終わっているからすぐに発進可能だー歩夢?』

「………」

 

事態を整理しようと歩夢が考えを巡らせ、言葉に詰まる

 

『ーしゃんとしてください‼︎隊長ッ‼︎』

 

通信に入ってきた苑樹の言葉が響く

 

『困惑するのはわかります。でも、今あなたが立ち止まってしまえば事態はもっと悪くなる…そうでしょう?』

 

苑樹の言葉に歩夢が頷く

 

「そうね、そうだったわ…」

 

歩夢はパンッと頬を叩く

 

「ー苑樹、リュウは直接現場に向かえる?ツーマンセルが理想だけど、今回は分散して当たってもらいたいの」

『わたくしは神社から近い花西丘陵に向かいます!リュウはどちらに向かえばいいでしょうか?』

「私の方から近いのが金陵山だから…土玄山に向かって‼︎ 水輝もアルバトロスに乗ったらそれでリュウの方に合流を‼︎」

『了解です‼︎』

『了解しました‼︎』

 

水輝の通信からハイルとルプスの声が響く

 

『大介さんとルシルさんの捜索は僕たちも協力します‼︎』

『微力ですまないが、それくらいなら私たちにもできる』

「助かるわ…お願い‼︎」

 

「ランダルはスターゲイザーベースから全域観測を‼︎怪獣たちが市街地に向かい始めたら各所に連絡をお願いするわ」

『了解した。たしかにキャリアーで赴くよりはそれが確実だろう』

 

全員に指示を終えた歩夢はイクサファーナスを構える

 

「GBCTセンチネルを回収してる暇は無さそうだし、行くわよイクサ‼︎」

『おう!!』

 

《リンケージ:ウルトラマンイクサ》

 

ーサァッ!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

土玄山

 

ーゴァァァァァァァァァァ!?

 

機構から放たれる雷撃の直撃を受けたサルファルドが衝撃でそのまま倒れ込む

 

倒れ込んだサルファルドに更に追撃として雷を放つ機構

 

ーテァッ!!

 

その正面にテラが割り込み、雷を受け止め打ち払う

 

周囲の森林に火の手が上がっているのを見てテラが息を呑む

 

『クソッ、まずはこいつを抑えないと…‼︎』

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

機構は電子音の呻きを上げながらテラに向けて雷撃を放つ

テラはそれを側面にダイブし回避しながらテラジュームスラッシュを放ち、機構を攻撃、機体表面に火花が散る

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

追撃を警戒したテラだったが、機構は倒れたままのサルファルドに雷撃を放ち始める

 

『こいつ…こっちのことは無視かよッ!!』

 

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

花西丘陵に出現した個体も周囲に雷撃を放ちながら進撃する

 

ーキュルルルルルルルルルルルルル…!?

 

雷撃に追い回されるようにして2匹のタラトスカが逃げ回っている

 

ーグァァァァウゥゥゥゥゥ!!

 

そのタラトスカを青い疾駆が掴み上げ跳躍、雷撃を放つ機構に蹴りを入れながら跳躍し、その反対に軽やかに着地する

 

ーグァァァァウゥゥゥゥゥッ!!

ーキュルルルル……

 

ホロボロスの両手に抱えられたタラトスカたちはひしっとその強靭な体にしがみつく

 

「ホロボロス‼︎ しばらくその子たちの保護を頼みます‼︎」

 

丘陵の中無事だった展望台から苑樹が燃え盛る周囲の森林地帯を見回しながら叫ぶ

 

ーグァァァァウゥゥゥゥゥッ!!

 

承知した、と言ったように頷くホロボロス

早速降り注ぐ雷撃を素早く回避していく

 

その間に苑樹は鏡面に指を這わせ、鏡の奥に新たな怪獣の意識を呼び出す

 

【ーシィィィィィィ…ッ】

「イツシ、そのお力お貸しください」

 

鏡面に札を置き、その札に文言が刻まれていく

 

「ーモンスロード‼︎」

 

その札を苑樹が投げる

 

札が光を放つとともに大地に落下

その落下した大地の岩盤を破り砕きながら白く細長い体が露わになる

 

ーシィィィィィィッ‼︎

 

蛇の姿をした怪獣ーイツシはその赤い目を青く発光させると、その体の周りに大きな水の玉が浮かび始める

 

その水玉たちが燃え盛る森林たちに降り注ぎ、その火を弱め消していく

 

懲りずに雷撃を放とうとする機構をイツシは更にひと睨みし、念動力を使って地面に叩きつける

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

ーシィィィィィィ…ッ⁉︎

 

が、地面にめり込んだ状態でもなお機構は起動し、その機体を回転させながら電磁球を発生させ、周囲に雷撃を撒き散らして地面を抉っていく

 

ーキシャオォォォゥゥゥ!?!?

 

と、吹き飛んだ山肌からやかましい咆哮と共に新たな怪獣が現れる

 

「な、レッドキング…⁉︎」

 

ーキシャオォォォゥゥゥ!!!

 

野生のレッドキングは溢れる怒りを表すかのようにドラミングをしながら機構に向かって突進していく

 

「ああああ、もうッ‼︎今それどころじゃないのに⁉︎」

 

機構が電磁球からレッドキングに向けて雷撃を放つ

ティグリスも呼び出そうと構える苑樹

 

ーキィアッ!!!

 

そこに青い流星が降り立ち、レッドキングに迫る雷撃を弾いてレッドキングに組み付き押し戻す

 

「あなたは…‼︎」

 

そこに現れたのはウルトラマンゼット・アルファエッジだった

確か、グリーザの事件以来「気になること」を調べに去ったはずだったが…

 

「押忍‼︎作戦中だったかもですが、ピンチに見えたので助太刀に来ました‼︎」

 

「‼︎助かります‼︎そのレッドキングは興奮しているだけですから、どうにか抑えていてください‼︎」

 

「わかりました‼︎ゼットさん‼︎」

『おう‼︎ウルトラ抑えるぜ‼︎』

 

ーキィアッ‼︎

ーキシャオォォォゥゥゥ!!!

 

レッドキングを押し退け、ショルダータックルで更に後退させる

 

《ULTRAMAN Z》

《BETA SMASH》

 

ードリャァァァァッ!!

 

赤い姿ーベータスマッシュに変身したウルトラマンゼットがレッドキングにラリアットをかまし、卍固めのようにして抑え込む

 

ーキシャオォォォゥゥゥ!?!?

 

地面をタップするレッドキング

それを抑えたままゼットが頷く

 

それに頷きを返した苑樹がティグリスを呼び出す

 

ーグァァァァウゥゥ‼︎

「行きますよ、ティグリス‼︎」

 

《ティグリス:レイオニックバースト》

 

銅鏡が機械的なバトルナイザー:EARTHの姿となり、苑樹の左額からツノのような器官が伸び、合わせてティグリスが直立し、赤いオーラを纏うマスラオ・ティグリスの姿となる

 

ーグァァァァウゥゥゥゥゥ‼︎

 

マスラオ・ティグリスが機構に飛びつき、その表面を牙と爪で穿っていく。その奥にコアのようなものが見えてきた

 

「そこか…‼︎」

ーグァァァァウゥゥゥゥゥ‼︎

 

マスラオ・ティグリスの爪が機体内部へと突き込まれる

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ーサァァァァァァッ!!!

 

金陵山の機構にイクサが跳び突き拳を打ち込む

機体表面を大きくへこませ、機構が地面に墜落する

 

そこに更に追撃をしようとイクサが突撃する

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

が、機構は立ち上がりその下端を大地に突き立て立ち上がる

 

ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇……

 

機体が回転を始め、その周囲に雷を放ちながら更に直下にも雷撃を放ち大地を捲り上げていく

 

ーサァァッ!?!?

 

激しい雷撃によるカウンターにイクサが吹き飛ばされる

 

「こいつ…‼︎中々やるじゃない‼︎」

『後ろの怪獣たちもヤバい。さっさと決めるぞ‼︎』

 

イクサがホシウミノツルギを掴み、その姿がデュアルブレイブへと変化する

 

ーサァッ!!

 

イクサが機構の機体表面に刃をぶち当てながら2つの属性を解放する

 

『「デュアルライズ・スラッシュ!!!」』

 

ホシウミノツルギが振り抜かれ、機体が両断

ずり落ちた断面から覗く機械たちの中でコアと思しきパーツが火花を噴き出しながら爆発する

 

 

「リュウくん‼︎お待たせしました‼︎」

 

機構の雷撃から怪獣たちを庇うテラの元に水輝の乗るGBCTアルバトロスが到着。サルファルドの頭上からビームラックを展開して保護する

 

『助かった‼︎これなら‼︎』

 

《ハイパーウルトライブ‼︎》

 

テラがビクトリウムジャグラーに変身、マフラーを翻して雷撃を弾き返すと同時にビクトジャグライザーを構える

 

《ジャグラーモード‼︎》

 

長刀形態に変化させたその刀身で雷撃のエネルギーを受け止め、オレンジ色のエネルギーとして練り上げて刀身に溜める

 

煌月(こうげつ)斬波(ざんぱ)!!!』

 

カウンター気味に放たれた2連斬が機構をX字に斬り裂く

 

膨大なエネルギーの斬撃を受けた機構がスパークし、爆発する

 

 

2つの現場で機構が撃破されるのを確認したランダルは安堵の息を漏らすと共にある疑問にぶち当たっていた

 

(……撃破前に確認したあの機構の表面文字は《FULMEN(フルメン)》、《稲妻》という意味だったか…たしかに機能通りだが…)

 

(……この機体たちは何が目的だったんだ?大地のエネルギーを吸い、気温を降下させ、雷で大地を穿ち怪獣を攻撃する…)

 

その時ランダルはあることに気づく

 

『……大地のエネルギー、寒冷化に、雷ー空中放電…⁉︎まさかー』

 

と、ランダルはある異常に気づく

 

機構ーフルメンを破壊した2地点から宇宙に向けて何やら通信電波が放たれていたのだ

 

発生時期は、フルメン2機が撃破されるその瞬間

 

まるで、自身が破壊されたことを宇宙にいる何かに伝えるかのように

 

『ーまずい、まさか…‼︎』

 

 

ティグリスとリンクしていた苑樹に通信が入る

 

『その機構を壊すな、苑樹‼︎』

「は、はい⁉︎ランダルさん⁉︎ どうしたんですか?」

『先程歩夢とリュウが壊した2機から破壊直前に何か通信が放たれていた。それを破壊した場合、何かが地球に呼びつけられる可能性がある‼︎』

「‼︎ ティグリス‼︎」

 

苑樹の声に応えてティグリスが手を止める

機構から飛び退き、様子を伺う

 

 

『ー気づかれたか。仕方ない』

 

 

「はー」

 

何者かの声が響く

 

瞬間、苑樹の視界が赤く染まる

 

「ーが、ぁあああっ!?」

ーグァァァァウゥゥゥゥゥ!?

 

ティグリスのツノと目に鋭い「何か」の一撃が加えられ、そのフィードバックで苑樹の目にも傷が入ったことに気づいたのはその一撃にティグリスが昏倒し、苑樹も倒れた後だった

 

バトルナイザー:EARTHが手から離れ、苑樹の変化が収まる

 

『難儀なものだな。レイオニクスというものは』

 

現れた何者かはそう呟くとうずくまるティグリスの顎を蹴り上げ、そのまま転がす

 

ーグァァァァウゥゥ……

 

ダメージを負ったティグリスはそのまま札に戻ってしまう

 

ーグァァアァゥゥゥッ!!!

 

そこにタラトスカを逃したホロボロスが迫る

が、何者かはその爪撃を必要最低限の動きで回避し、その目に手刀を振るう

 

視界を奪われ、怯んだホロボロスの胴に貫手が突き刺さる

ホロボロスもダメージにより札に戻ってしまう

 

「ホロボロス……ッ‼︎」

 

目を押さえたまま苑樹が悲痛な声を漏らすが立ち上がれず、倒れて気を失い、それと共にイツシも札の姿へと戻ってしまう

 

 

突然の出来事にゼットが驚き立ち上がる

 

ーキシャオォォォゥゥゥ…‼︎

 

解放されたレッドキングはその乱入者を見るや否や警戒、だがそのまま鼓舞するようにドラミングすると乱入者へと突撃していく

 

乱入者はそれを軽くあしらい、その小さな頭部を掴むと一気に握り潰す

 

だらんとレッドキングが脱力し、地面に巨体が崩れ伏す

 

汚いものを払うように血で汚れた手を振りながら乱入者はレッドキングの死体を鬱陶しげに蹴り飛ばした

 

「やめろォォォォォォッ!!!」

 

《ULTRAMAN Z》

《ALPHA EDGE》

 

ーキィアッ!!!

 

青い格闘形態ーアルファエッジに変身したゼットが肉薄、乱入者にアルファチェインブレードを振りかざし攻撃していくが、ゼットの素早く鋭い格闘、その全てを見切っているかのように乱入者はそれを最低限の動きで回避し、すれ違いざまの手刀でゼットの脇腹を切り裂く

 

ーグゥアッ…⁉︎

 

『こいつ…ウルトラ強いぞハルキ…ッ‼︎』

「なら、闇を飲み込む黄金の嵐でー」

 

ハルキがメダルを取り出す

瞬間、動きの止まったゼットを乱入者の灰色の眼は逃さなかった

 

『ーハルキッ!!!』

 

ゼットは接近に気づくがそれでもなお遅かった

 

乱入者が放った鋭い貫手がゼットの胸部に命中、そのカラータイマーを鷲掴み、引っ掻くようにしてそのエネルギーを奪い取る

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

『ぐぅあっ…力が、抜ける…!?』

 

カラータイマーを高速点滅させながらゼットがよろめく

今しがた奪ったエネルギーを握り潰し、乱入者が告げる

 

『ーさて、必要なデータはもう手に入った。キミたちは元の世界にお引き取り願おう』

 

そう告げると共によろめくゼットの背後に黒い「穴」が開き、そこへゼットが吸い込まれていく

 

『ーしまった⁉︎』

ーキィアッ…!?

 

エネルギーを失った状態では踏ん張ることすら叶わず、ゼットは穴へ吸い込まれ、姿を消した

 

それを確認した乱入者は機構ーフルメンに近づくとティグリスが開けた穴から腕を突っ込み、コードに接続されたコアのようなパーツを無理矢理引き抜き、握り潰す

 

機体表面をショートさせながらフルメンが機能を停止ー乱入者が後退すると同時にフルメンが爆発四散する

 

『……まぁ私の仕事も果たしたからよしとしよう』

 

乱入者は空を見上げる

 

『ーあとは次の「合図」を待つとするか』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

金陵山

フルメンを撃破したイクサはホシウミノツルギの水の力でテールダスとプルメウスを落ち着かせ、その傷を治療していた

 

「お見事だ。アユム、ウルトラマンイクサ」

 

が、聞き慣れたーそれでいて意外な声を聞き振り返る

 

正面の地面に現れた人物を見て歩夢が驚く

 

「ルシル⁉︎」

 

黒いコートのようなものを纏うルシルは薄く微笑む

 

「あなた方なら、必ず天体リプロダクトマシンを退けてくれると信じていたよ」

 

「……何を言ってるの、ルシル…?」

 

信じられない言葉に歩夢が思わず問いを返す

 

ルシルはただ微笑みながら当たり前のように

歩夢たちが一番聞きたくなかったことを答えた

 

 

「ーあの機構、天体リプロダクトマシンたちを作り出したのは、私ということだよ、アユム」

 

 

ルシルの言葉に歩夢は放心する

 

「は、え…?何を言ってるの…?だって、だって‼︎ ルシルたちリンケイド星の人たちは、怪獣と心を繋げて共生してる、友好的なー」

 

「ああ、そうだとも。リンケイド星の民は私と姉が作ったリンクデバイスの普及により、怪獣と一心同体になることが叶った種族…」

 

歩夢の言葉を遮りルシルが淡々と告げていく

 

 

「ーそして、一心同体になってしまったが故に星と文明を荒廃させた度し難い罪を犯した種族だ」

 

 

言葉に詰まる歩夢をよそに、ルシルは続ける

 

「かつてのリンケイド星は、四季のある穏やかな気候とそれ故に穏やかな気性の民がお互いに支えあって暮らす平和な星だった。生息していた怪獣たちも、力はあれど凶暴なものはいなかった故に民は怪獣と寄り添って暮らしていた」

 

「いつしか民たちは、そんな怪獣たちともっと寄り添って生きてみたいと思うようになった。彼らの心や考えがわかるようになれば、と」

 

「私も、私の姉もそう思った。その時から私の友だったエルシアのことがもっとわかるようになれば、と思った」

 

「科学者だった私たちは協力して、遂に夢の発明であるリンクデバイスが完成した。外付け器官として移植し、怪獣と心や感覚を接続して一心同体となる人工器官を」

 

ルシルは胸元をはだけさせ、自身のリンクデバイスーいつもは何色かに発光していたが今は黒く変色したそれを撫でる

 

 

「ーそれが、何もかもの過ちだった」

 

 

がり、とリンクデバイスに爪を立てる

 

 

「普及してしばらくは夢のような日々だった。それぞれの相棒、友と過ごす日々、怪獣たちの力を借りて様々なことが可能になり、楽になり、生活は益々豊かになって文明も発展した」

 

「そんな中、ある国が怪獣の群れに襲撃されて壊滅した。隣国の政治家が、その国の持つ資源を独占しようと怪獣と民の軍隊を作り出して侵攻したんだ」

 

「最初は皆抗議した。制裁も行った。だがその国は報復に様々な国に軍隊を向かわせ、戦争を始めた。多くの人が死んだ、多くの怪獣が死んだ。多くの環境が、汚され失われた……」

 

ルシルは顔を覆い、震える声で続ける

 

「戦争の中で、私たちが作ったリンクデバイスはより都合良く怪獣を支配できるように改造された。ノウハウを知るのは私たちだけだから、何度も改造案の依頼が来て、断ると私たち自身や私たちのパートナーの怪獣が攻撃された。私たちは言われるがままの改造案を作り、もっとそれを「効率よく」したものが採用され、より怪獣は兵器化していった」

 

「より強い怪獣を産むために人工交配や乱獲が進んだ。怪獣自身への改造や武装も施された。もはや、多くの民にとって怪獣はパートナーではなく、「道具」になっていたんだよ…」

 

泣き笑いのような声を上げ、ルシルが笑う

 

「『どうしてこうなっちゃったんだろう』そう言って、姉は笑って自らの首を切って死んだ。私の目の前で‼︎ 怪獣の軍事利用が進み始めて、どんどんやつれて、戦争報道が流される度に泣き喚いて謝ることしか喋らなくなった姉が……あの朗らかに笑いかけてくれた姉さんが……最後に私に向けた笑顔だった……」

 

 

「どうして‼︎どうして姉さんは死ななきゃいけなかった⁉︎ 怪獣とただ寄り添おうと、怪獣と共によりよく生きようと願った私たちの幸せのために、共に努力と長い時間をかけて、完成させた技術で、なぜ誰かを傷つけることしかできなかった!?!?」

 

 

何に向けてでもなく叫ぶように独白するルシルをイクサは、歩夢は見つめることしかできなかった

 

「……家を訪れた軍人が、姉の死体を見た時に『なんてことだ。これじゃあ、他の星に侵略するための開発ができないじゃないか』とだけほざいた時、私は決心した」

 

 

「ーこの星をかつての美しい星に再生しよう。姉さんと私が幸せに過ごしていたあの時に戻そう、そしてー」

 

「ー愚かな人も、文明も、過ちの原因になった怪獣も、何もかもリセットしてしまおうと」

 

 

「大地のエネルギーを吸い上げ拡散させ、怪獣が生まれ育つエネルギーの収束点・龍脈を消すと共に再生のためのエネルギーを得た」

 

「周囲の大気から熱エネルギーを奪って寒冷化を誘引し、巨大な生命体が生きる上で必要な気温を打ち消した」

 

「それでもなおしぶとく残った旧人類と怪獣を殲滅し、空中放電と共に大地を耕して肥沃な土壌にし直した」

 

ハハハハハハハハ!!とルシルが乾いた高笑いを上げる

 

「こうして、リンケイド星は再生した。でも、姉さんのいない星に私一人残っても意味がない。全ての天体リプロダクトマシンに自壊指令を下した私は、リンケイド星を出て当てなく宇宙を彷徨い、ここにたどり着いた……というわけさ」

 

独白を終えたルシルを呆然と見下ろしながらも歩夢がなんとか口を開く

 

「なんで…なんで地球にそのマシンを呼んだの⁉︎」

 

「呼んでないよ、偶然だった。自壊指令が正しく実行されずに残っていたマシンたちがあったのだろう、この星に流れついたのも偶然だ」

 

 

「だが、この星でその機能を実行していくのを見て私は悟った。この星も、私たちの星と同じ道を辿ろうとしていると」

 

「そして思い出したんだ。私が生きる意味を、私の使命をー」

 

 

ルシルは懐からタブレット型のデバイスを取り出し、何かを入力する

 

顔を上げたルシルの顔からは、全ての感情が消え失せていた

 

「ーリンケイド星のように美しい星が滅びる前に、姉さんのように死ななきゃならない優しい人が出る前に、全てを終わらせる。全てを壊してあるべき姿に再生させる!!!」

 

 

「ーそれが!!私の生きる意味で、最大の復讐だ!!!」

 

 

ルシルの背後に青い光の柱が宇宙から降りてくる

 

光の柱が晴れると共にそこには新たな巨影が現れていた

 

深青の装甲を纏う黒い体表の怪獣

長い首を畳み、腕をだらんと脱力させ直立姿勢でそこにあった

肩から伸びたパイプ状の装甲は背中に回り、まるで翼のようになっていた

 

「ーキミたちは3種の天体リプロダクトマシンを全て機能停止させた。無論、文明や怪獣が想定以上の抵抗をすればそうなることは想定済みだ」

 

「その為に、『3種の天体リプロダクトマシンの自壊以外の機能停止』をキーに私の最後の作品を残していた。確実に、星を再生させる為に」

 

タブレットを操作したルシルに向けて現れた怪獣の胸部が開き、そこから放たれた光線がルシルを包み、胸部に取り込む

 

十字架状のカプセルに閉じ込められ、広げられたルシルの手足にコードが絡みつき、その体と接続される

 

皮膚を貫く痛みにルシルが顔を歪める

 

ーギャオォオォォォォォォン……!!

 

怪獣の目に青い光が灯り、その装甲や体表を走るラインが青く発光していく

 

「ルシル……⁉︎」

 

イクサが構え直す前で怪獣は完全に起動し、長い首をもたげながら肩の装甲を展開、背中から格納されていた長方形の翼型器官が4枚展開され、装甲の継ぎ目から光り輝く青黒い粒子が噴出される

 

 

『プラネットルーラー・υ(イプシロン)レナトゥス…‼︎』

 

『これで、この星も再生させる……‼︎』

 

『何もかも、終わってしまう前に……ッ!!!』

 

 

ーギャオォオォォォォォォォォォン!!!

 

υレナトゥスが咆哮する

 

その姿をイクサを通した見た歩夢は、ただ呆然と見据えることしかできなかった






次回ウルトラマンイクサ
「復讐するは我にあり」
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