ーギャォオォオォォォォォォン!!!
狙い澄ましたようにイクサの背後でうずくまっていたプルメウスやテールダスたちを狙う雷光をホシウミノツルギで撃ち落とし、υレナトゥスの肩を掴みその巨体を押し込む
「ルシルやめて!この星をリンケイド星のようにしないようにまだできることはある‼︎だからー」
『ーそう言った人もいた。まだ間に合う。まだ止められる……だが、それも無駄だった‼︎ 怪獣と近づきすぎた文明は、同じ過ちを繰り返す‼︎どう足掻いてもその道は変わらない…ッ‼︎』
ルシルの悲痛な叫びと共にυレナトゥスの左腕が駆動し、レーザービームの爪が伸びその爪撃がイクサに二度三度と撃ち込まれ、その巨体がよろめくと更なる追撃に口からブレスが放たれ、イクサの体を焼く
「ルシルさん…ッ‼︎ やめて……」
『………諦めろ
「イクサ!?」
よろめきながらイクサが立ち上がる
『…あいつは、侵略者と同じだった。それだけなんだよ』
「ーッ、違う、そんなはずない‼︎ ルシルさんは……」
『目ぇ覚ませ歩夢!!』
イクサの一喝に歩夢が言葉を詰まらせる
『お前が守りたいのはなんだ…?それを、見失ってんじゃねぇ』
「……だけど…ッ」
『その通りだアユム。私はお前たちから見れば侵略者だ。この星を攻撃し、そこに生きる命を根絶やしにせんとする存在だ…この星が本当に愛おしいというならば、守ってみせろ…‼︎』
ーギャォオォォォォォォン!!!
υレナトゥスの背面からコードが何本も飛び出し、地面に突き立つ
コードを伝い、エネルギーが吸い上げられはじめ、ディクリナがやったように周囲の森林が枯れはじめていく
『ーそれが、お前たちGBCTの…ウルトラマンの使命だろう⁉︎』
広げた背面の翼から幾条ものレーザーが発射され、イクサとプルメウス、テールダス目掛けて降り注ぐ
ーサァァッ!?!?
数発のレーザーの直撃を受け、イクサが膝を突く
ークォォォォォォォン!?
ーキュエェェェェェ!?
テールダスとプルメウスが攻撃に怯え、イクサやυレナトゥスから遠ざかるように逃走していく
ーギャォオォォォォォォン!!!
咆哮し、コードを格納しながら進撃してくるυレナトゥス
ーテァァァッ!!!
そこにウルトラマンテラが飛来
飛び蹴りを肩にぶち当てながら翻りイクサのもとに着地、υレナトゥスを後退させる
『アユム‼︎イクサ‼︎大丈夫か⁉︎』
「リュウ!!!」
『こっちの怪獣たちの保護はミズキがやってくれてる‼︎こいつは…』
リュウの問いに歩夢が言葉に詰まる
「ルシルよ…ルシルが、操作してる…」
『なっ…⁉︎』
ーギャォオォォォォォォン!!!
その2人のウルトラマンに突撃してきたυレナトゥスが衝突、その2人を押し込んでいく
ーサァッ!!
ーテァッ!!
しばらく押し込まれながらもその手を振り払い、2人がその腹へ拳を打ち込みよろめかせ、イクサがホシウミノツルギを振りかぶるが胸の十字架に収まるルシルを見てその切っ先が止まる
「ーッ!!」
ーギャォオォォォォォォン!!!
υレナトゥスの爪が再びイクサに突き刺さる
が、イクサは後退せずυレナトゥスに掴みかかる
『離せ、離せぇぇぇぇぇぇッ!!!』
「ルシルさん!!お願い止まって!!!あなたは、あなたは本当はこんなこと望んでないんでしょう!!」
歩夢の言葉にυレナトゥスの攻撃が一瞬止まる
直後、再び背中から放たれレーザーの雨が逃げ去るテールダスやプルメウス目掛けて殺到。その狙いを理解したテラがビクトジャグライザーでレーザーを何発か撃ち落とすがそれでも防ぎきれず、テラと怪獣たちに降り注ぐ
ーテァァァ……ッ!?
「リュウッ!!!」
ーギャォオォォォン!!!
振り向いたイクサに間髪入れずυレナトゥスに爪を振り回し、何度も何度その体を引き裂く
膝を突いて倒れそうになるイクサの首根っこを掴み、胸元に近づけるように引き上げる
『わかって、わかってよ…‼︎ 私にはこれしかないんだ…これしか、こうするしかないんだッ!!!』
ルシルの悲痛な叫びと共にビームクローがイクサに突き刺さり、腕のマズルからゼロ距離で高出力粒子砲が放たれ、イクサの体を大きく吹き飛ばす
ーサァァァアァァッ!?
斬り裂かれた傷口から赤い光の粒子を血飛沫のごとく吹き出しながらイクサが転がり、倒れ伏す
手から離れたホシウミノツルギが地面に突き刺さる
イクサを吹き飛ばしたυレナトゥスはその背面からコードを大量に伸ばし、地面に突き立てまた龍脈のエネルギーを吸い上げ始める
それを見たテラがビクトジャグライザーに手をかけるのをイクサが制止する
「待って‼︎あの怪獣の胸元にはルシルがいるのよ⁉︎」
『わかってるけど‼︎でも、あの怪獣を止めないと怪獣や街に被害が出ちまうだろ‼︎』
「でも、でもッ…‼︎」
ークォォォォォォォン!!!
ーキュエェェェェェェェェ!!!
這う這うの体で街に向かって逃げゆくテールダスとプルメウスを見てイクサが拳を握りしめる
ーギャォオォォォォォォォォォン!!!
υレナトゥスがその口にエネルギーを蓄積し、青黒い稲妻を纏う光線として解き放つ
イクサとテラは咄嗟にバリアを張り、2人がかりでその光線を防ぐ
バリアに着弾した光線は菱形の巨大な魔法陣型エネルギーを展開しながらその膨大なエネルギーを2人のウルトラマンに叩きつける
バリアを貫いた光線の残滓が後方に降り注ぎ、多数の小爆発を引き起こす
さらに幾らかの光線はより後方の街にまで到達し、幾らかの建物を吹き飛ばしていく
ーギャォオォォォォォォォォォン!!!
υレナトゥスが咆哮と共に更にその光線の出力を上乗せする
迸るエネルギーがバリアに到達すると共に極大の魔法陣型エネルギーが輝くと共に2人のウルトラマンのバリアを割り砕き、着弾する
ーサァァァァァッ!?!?
ーテァァァァァッ!?!?
2人のウルトラマンが膨大なエネルギーの直撃を受け、倒れ伏した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
特殊自衛隊基地作戦司令室
「
「GBCTの連中は何をやっている!?」
「スターゲイザーベースに連絡不能‼︎ 1名は作戦機GBCTアルバトロスにより別地区の作戦中‼︎」
モニターや計器から報告を続ける部下たちに湯田副司令が怒りを露わに声を荒げる
その隣で沈黙していた黒斗に向き直り、湯田が告げる
「司令、出動命令を。これ以上は街に被害が出ます‼︎」
「………」
しばらく沈黙していた黒斗だが、重い口を開く
「ーハウンダー部隊、及び第四戦車隊出撃」
「加えて、ヴィクターより用意された新兵器を一部使用許可する」
倒れ伏したウルトラマン2人にーその向こうの逃げていく怪獣たちに向かいυレナトゥスは進撃を続けていく
倒れ伏すテラの隣、イクサは渾身の力を込めて立ち上がり、υレナトゥスに再度掴みかかり、胸部の十字架を引き抜こうと力を込める
が、その手はバリアに阻まれる
『何度やっても、何度止めようと無駄だと、言っている‼︎』
レーザークローを肩に当て、袈裟に引き下ろす
イクサの体に派手な火花がスパークする
よろめき、膝を突くイクサ
「……ルシル、あなた、全てを壊してあるべき姿に戻すって言ったわよね…」
イクサの中で歩夢が顔を上げる
「ーじゃあ、何で、何で私たちの仲間になることを選んだの…⁉︎」
『ーそれは、この星で活動しやすくするため。当然だろう?』
「それは嘘よ。リンケイド星を再生させて宇宙に出たなら、この星に不時着する必要はなかったはず。どこか荒廃した星にでも行けばよかった、なのにあなたはここに来た‼︎」
『……理由なんてない。流れ着いた場所がここだっただけだ』
「あなたはッ!!やり直したかっただけなんじゃないの…?」
歩夢の言葉にυレナトゥスが足を止める
「……あなたの星を、リンケイド星を再生させる為にリプロダクトマシンを生み出して、でも再生させた星には何も残らなくて…‼︎ だからあなたは、リンケイド星を離れてやり直す道を選んだ‼︎今度は誰も、自分たちの技術で傷つかない星を、怪獣たちと本当に共存できる星を探し続けて…‼︎」
十字架の中、ルシルが体を震わせながら首を振る
『あなたに、お前に何がわかる…ッ‼︎ 知ったようなことを、言うなぁ!!!!』
ーギャォオォォォォォォン!!!
ルシルの感情にシンクロし、υレナトゥスが吠える
再び背中から伸びたコードで龍脈のエネルギーを吸い上げ、その口にエネルギーが充填されていく
ークォオォォォォォォォォォン!!!!
その時、透き通るような鳴き声が響いた
υレナトゥスの動きが止まるーいや、止められる
背後から組み付かれ、羽交締めにされるような形になっていた
『…⁉︎ これは…ッ⁉︎』
ークォオォォォォォォォォォン!!!
υレナトゥスを押さえ込んでいたのは、ルシルのパートナー怪獣のエルシアだったのだ
「エルシア…⁉︎
『邪魔を、するなぁ!!!』
υレナトゥスは光線のチャージを中断し、エルシアの羽交締めを振り解こうともがく
背中からゼロ距離で光線を放ち、エルシアに攻撃を加える
その身が焼かれ、引き裂かれ、青い血が飛び散る
ークォオォォォ……ッ!!!
だが、エルシアはそれでもυレナトゥスを離そうとしなかった
『お前とのリンクは切断した筈だ!!なんで、なんでお前は!?』
「ーそれは‼︎ ルシルの本当の相棒だからなんじゃないのか⁉︎」
地上から聞こえてきた声にルシルが目を見開く
地上に、υレナトゥスの前に現れていたのは、負傷した右脇腹を押さえて息も絶え絶えながら立っていた大介だった
ハイルに肩を支えられながら、大介はυレナトゥスを真剣な眼差しで見上げていた
『……ダイ、スケ……?なんで、なん、で……』
「ッ……こんな程度で寝たまんまになるほど、俺たちレスキューはやわじゃねぇんだよ…ッ‼︎」
痛みに堪えながら答えるがよろめく大介をハイルが支える
「無茶しないでください大介さん‼︎応急処置をしただけなんですから‼︎」
「はっ、こんなの…無茶のうちに入らない…‼︎」
大介はυレナトゥスを見上げ、その十字架に閉じこもるルシルを見上げる
『今更、今更何をしにきた……私は‼︎ お前たちの星を壊そうとする侵略者なんだぞッ!!!』
「そこに『救助』を求めてるヤツがいるからだッ!!!」
ルシルの言葉に大介が胸を張って答える
『救助……?何を言っている?私は、私は侵略者でー』
「だからなんだ!?こちとら、人間だけじゃねぇ、怪獣も宇宙人も、見えない涙で泣いてやがることを知ったから手を伸ばすのを諦めねぇって決めたばかりなんだよ…ッ‼︎」
『バカかキミはッ!?私は宇宙人でも侵略者だ…‼︎ キミたちの星をー』
「じゃあなんで、なんでエルシアも‼︎ そこにいる怪獣たちも殺さなかった!?!?俺のこともだ!!!」
『ーッ!!!』
大介の言葉に今度こそルシルが言葉を詰まらせる
「俺を撃つ時お前、その言葉が聞けてよかったなんて言ったな…俺がこの星が好きだって言葉を聞いてよかった?それは、お前自身が侵略者になった時、俺たちがお前を殺してくれると信じられたからだろ⁉︎」
「エルシアとのリンクを切るだけで殺さなかったのは、エルシアを殺したくなかった、巻き込みたくなかったからだろう!?自分が侵略者として殺されたら、エルシアも死んでしまうから!!!」
「この星の怪獣たちを殺せるはずなのに殺さないのは、この星のことも好きになったからだろう!?悪者になるために攻撃する仕草だけを見せ続けて、それでGBCTに、ウルトラマンたちに自分を殺してもらうために!!!」
大介の言葉をυレナトゥスは黙って受け止める
正面に立つイクサとテラはそれをただ見守っていた
『違うッ…‼︎違う、違う、違う……‼︎私は、私は…ッ!!』
「私は侵略者だってか⁉︎ならもう一つ根拠を言ってやる!!!」
「本当に血も涙もない侵略者なら!!」
「俺を撃つ時、あんなに涙を流したりなんか、しないだろう!!」
大介の言葉にルシルが目を見開く
その目からは、今も涙が溢れ続けていた
『………私は、侵略者だ。殺戮者なんだ…』
絞り出すような声でルシルが声を上げる
『……リンケイド星を殺した。そこに生きる怪獣たちを殺した。そして…そして姉さんの命を奪ったのも、リンクデバイスを発案した私だ……私なんだ……私があの星をめちゃくちゃにして、私自身の復讐のために皆んなを殺した……』
『……私は、許されちゃいけないんだ……生きてちゃいけないのに、死ねなかった……死ぬ勇気がなかった……どこからならやり直せるかもしれないなんて、都合のいいことを考えてしまった……』
ルシルは大粒の涙を流しながら続ける
『……天体リプロダクトマシンの生き残りも、この星への出現も全部偶然だ。本当に、自壊させたはずだった……それでもそれが現れたということは、私に忘れるな、逃げるなと言っているのだと……お前は罪人だと告げていると私は悟った……』
『……この星でなら、アユムたちとならばッ‼︎ リンケイド星では成せなかった共存の道に行ける、そんな都合のいいことを願ってしまった私を、世界は許してくれなかったんだって……』
「ーそんなことわかんないだろうが!!!」
大介が声を荒げる
「ルシルは、ルシルはただ、怪獣たちと共存したいからリンクデバイスを発案したんだろう…?それが、ルシルの姉さんの命を奪うことになることなんてわかるわけない…」
「天体リプロダクトマシンだって…ただリンケイド星の人々を止めるためにできることをしただけなんだろう…⁉︎なら、ルシルは責められる必要はない‼︎」
大介が手を伸ばす
「例え世界がお前を許さなくても、俺はお前の味方になるッ‼︎ お前がやったことは、罪なんかじゃないって言ってやるッ!!!」
「エルシアもそうだ‼︎ リンクが切れたとしても、お前のことを本当の家族だと思ってるから、だからここに飛んできたんだろう!?」
ークォオォォォォォォ!!
大介に同意するようにエルシアが力強く、優しい咆哮を上げる
『ははっ……はははっ、ダイスケも、エルシアもバカだ…大バカだ……こんな、こんな私の手を掴んでくれるなんて……』
『……私は、私は、やり直していいのかな…?生きていて、いいのかなぁ……?』
「当たり前だ…ッ‼︎人は、どこからでもやり直せる…宇宙人だろうと関係ないんだ!!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ーLondon brige is broken down♪ broken down♪ broken down♪」
朗らかに歌を口ずさみながら煌びやかな黒ドレスを揺らし、1人の女性が森を歩む
「ーLondon brige is broken down……♪」
アップに纏められた白銀の髪、赤い瞳、黒いリップ
まるで社交界に来たかのような姿で、ガウル・エオはυレナトゥスとイクサを見上げ
「ーMy fair Lady…♪」
心底愉快そうに笑みを浮かべた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
スターゲイザーベース 司令室
υレナトゥスとイクサ、テラの攻防を観測・分析していたランダルはあるルシルの言葉に首を傾げていた
『……天体リプロダクトマシンの地球への出現が偶然…?リンケイド星を、結果的にとは言え滅ぼしたマシンで、ルシルが自壊を命じていたマシンが…何故……』
ハッとランダルが思い至り、立ち上がる
『まさか…⁉︎ 意図的に何者かが、この星に害となる存在を呼び寄せている…⁉︎ そう考えれば…以前現れたあの怪獣たちもー』
コンソールを操作し、データベースを立ち上げようとするランダル
「ーほう、聡明だな。だが、それが命取りだった」
スターゲイザーベースの照明が突如ダウンし、大きな振動がランダルを襲う
『ぐっ!?』
光を失い、脱力しながらもなんとか椅子に座ろうとするランダル
その背後に黒スーツを纏う眼鏡の青年が1人立っていた
ーズブリ
大粒の涙を溢しながら微笑もうとしていたルシルの顔が驚愕に歪む
ークォオォォォァアァァッ…!?
突然のことだった
それ故に一瞬時が止まったような錯覚すら覚えた
『ーあ』
ルシルが見たのは、自分の脇腹を貫く黒く鋭い針
背後にいたエルシアの胸を貫通した黒く長い何かが、υレナトゥスの胸を背後から貫いていた
イクサとテラ、大介たちも驚愕し体を硬らせる
『は、は……ほらな……』
ごぷっ、とルシルが青い血液を吐き出す
『……私、は……やはり、死ぬ、べ…き……』
ずしゅりっと2体の怪獣を貫いていた「何か」が引き抜かれ、脱力した2体が倒れ伏す
その背後から現れたのは、異形の存在だった
ーグァァアァァウゥゥゥゥゥゥッ!!!
黒い骨のような外皮の恐竜のような姿の怪獣
だが、そのシルエットは全身に施された改造で歪に歪んでいた
左腕に取り付けられた大口径のバルカン砲
右眼にかぶさり、頭部の右半分を覆ったスコープ型のデバイス
体の各所を這うパイプ群
今しがたエルシアとυレナトゥスから引き抜かれた鋭く研ぎ澄まされた長い尻尾の先からは紫の毒々しい液体が滴っていた
そして、背中に備え付けられたそれには見覚えがあった
長大な砲身を2本備えた巨大砲
かつて苑樹が呼び出したティグリスに向けられ、ルシルたちを瓦礫ごと粉砕しようとしていた悪魔の兵器
ーアンタレスアークV1、その改造砲台
「ーッ、お前ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
歩夢が絶叫。一体化したイクサの体を怒りに震わせながらその怪獣に殴りかかる
が、大型バルカン砲を備えた左腕を盾のように扱い、まるで熟練の兵士のようにイクサの拳や蹴りを受け止めたその怪獣はイクサのガラ空きになった腹にバルカン砲の銃口を突きつける
ーグァァアウゥゥゥ…‼︎
ゼロ距離で放たれたバルカン砲にイクサが吹き飛ばされる
『アユム、イクサッ!!!』
その体をテラが支える
怪獣は腕を広げ、大きく前に体を傾けてその背の巨大砲門をイクサへと向ける
巨大砲門ーアンタレスキャノンXV3に赤黒いエネルギーが充填されていく
ーグァァアウゥゥゥゥゥゥ!!!
破滅の極光が放たれる
ーテァァァッ!!!
テラがイクサの前に割り込み、シールドを展開
だが、放たれた光線はそのシールドを容易く砕き、テラの体を貫いてイクサに着弾、大爆発を引き起こす
「がっ…!?」
リュウの姿に戻され、地面に放られる
その腹からはどくどくと血が滲んでいた
「か、はぁっ…!?」
リュウと離れた地点に投げ出された歩夢が強かに地面に叩きつけられ、転がる
その体はぼろぼろだった
『歩夢……ッ、大丈夫か…ッ!?』
苦しげなイクサの声の問いを無視して歩夢は立ち上がり、イクサへと変身しようとする
『バカ…!?無茶だッ!!!』
「うるさいッ!!!!」
いつもの歩夢とは似ても似つかない、憎悪に塗れた怒声を上げる
「あいつ、あいつを、殺す…ッ、殺さないと…ッ!!!」
『……歩夢…!?』
様子のおかしい歩夢にイクサが驚愕する
その肩を飛来した赤い光線が貫き、地面に体を転がす
「がぁぁぁっ!?!?」
『歩夢ッ!!!』
『ハハハハハハハハハハハハハッ!!!』
哄笑が響く
森の大地を踏み締め、闇から現れたのは黒い人型
「お前……ッ!!!」
現れたのは、イザーティアにトドメを刺したあの異星人ーワロガだった
ヒビの入った頭部の赤い目を点滅させ、冷ややかに倒れ伏す歩夢を見下ろしたまま、その姿を歪ませて黒ドレスを纏いめかしこんだガウルの姿にする
「ハ、ハ、ハ、無様だなぁ、イクサぁ…?」
立ちあがろうとする歩夢を蹴り倒し、ピンヒールで光線が貫いた肩の傷口を踏みつける
「が、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
『歩夢ッ!!!』
痛みで意識の薄れた歩夢の代わりにイクサの人格が表に現れ、歩夢の瞳がオレンジに変わる
「おま、え……‼︎ なんでオレを、狙う…ッ⁉︎」
「なんで、か。教えてやろうイクサぁ」
ガウルは笑みを浮かべたままイクサを見下ろす
「復讐だよ。お前に殺された、ワロガ
「復讐…?ワロガ…033…?」
「知らないか、知らないよなぁ?お前にとっては惑星エルトで行われてた怪獣の改造実験と侵略活動を止めただけなんだもんなぁ」
ガウルから語られた惑星の名前でイクサはようやく思い至る
「ーあの時のワロガの…⁉︎ あのワロガは、あの惑星の連中を使って人体実験や怪獣兵器の実験をしてやがったんだぞ!?」
「ーだから、どうした?」
ガウルはハッ、と鼻で笑う
「我々ワロガは、知的生命を弄ぶことが快楽であり、娯楽だ。怪獣の命を利用して、愚かな知性体が惑い、潰し合い、勝手に死んでいく『箱庭遊び』は我々にとってはお前たちが読書を親しんだり、芸術に親しむことと同じ娯楽であり、呼吸のようなものだ」
「お前は、下らない『
ハ、ハ、ハ、と目を見開き、傷を踏み躙りながらガウルは笑う
「ーだから復讐さ。その権利が、当然私にもあるだろう?」
その胸に手を当てながらガウルが見下ろす
「ーそんな、そんな理由で…‼︎」
イクサと入れ替わり、歩夢が口を開く
「そんな理由で、お前は…ッ‼︎ルシルとエルシアを…ッ!!」
「そうだよ。それ以外にないだろう?」
傷口からヒールを離し、歩夢の頬を蹴り付けて転がしながらガウルは踊るようにくるくる回る
「ザザが死んだ時には身が張り裂ける思いだったよ。あんな愛おしくて愛らしい私のザザが、たかだかひとりの狩人のちっぽけな正義感で殺されたんだ、許せなくて当然だろう?」
ガウルはペロリと唇を舐め、口角を吊り上げる
「だからぁ、まずは惑星エルトをぐちゃぐちゃに滅ぼしたのさ。ザザがやっていた時よりも悍ましく」
『はー』
ガウルは顔を押さえ、腹を抱え、体を曲げ震わせながら、笑いを堪えながら続ける
「エボリュウ細胞を溶かし込んだ雨を惑星全域で降らせてやったのさ。雨を浴びたバカな民衆たちがみーーーんな怪物になって共食いして死んでいったよ面白かったなぁ!!!殺して‼︎殺して‼︎って叫んでるガキがいたからお望み通り蜂の巣にして殺してあげたりしたっけ?」
恍惚に顔を歪めながらガウルは歩夢をーイクサを見下ろす
「これでぇ、お前が正義感で助けた星はパーだ。ハ、ハ、ハ‼︎」
「ーこれで、まず一つ」
『一つ……だと……!?』
「お前の大切にしていたものだよ。私の大切を奪ったんだ、お前の大切を一つも残らず奪って踏み躙るんだよ」
ヒヒヒッと笑いながらガウルは続ける
「ーだがお前には大切なものが少なかったからなぁ。イザーティアに星を滅ぼされて、旅を続けてるからなぁ」
ガウルはギリと歯軋りするが、すぐに笑みを浮かべる
「だが、妙な連中から引き摺り込まれたこの宇宙にイクサが迷い込み、定住して戦ってると聞いてとても面白い『喜劇』を思いついたのさぁ」
「ーイクサが、『大切と思うもの』をたーくさん手に入れた後に順番にそれを踏み躙ってやろう、ってねぇ」
ーキュエェェェェェェェェ!?!?
ークォォォォォォォォォォ!?!?
テールダスとプルメウスの悲鳴に歩夢が顔を上げる
断続的な爆発音や柔らかいものが弾けるような音がしばらく響き、何か大きなものが倒れる音が2つ聞こえた
「この星でそこの地球人と過ごすうちに怪獣も大切な命と思ったぁ?虫がいいなぁ狩人ォ!!!ザザは羽虫を潰すように殺したクセになぁ」
ハ、ハ、ハ‼︎とガウルが心底愉快そうに笑う
「お前たちがもたつくから特殊自衛隊たちは怪獣の殺処分を決定したんだよ。そして、私が作った新兵器で怪獣どもを殺したんだぁクッハハハハハハハハハハハハハぁぁぁぁ!!!」
体を折り曲げて笑うガウルを歩夢は憤怒に顔を染めて睨む
その時、先程蹴り飛ばされた時に転げたGBCTパッドが鳴り響き、ガウルがそれを取って開く
「ーおや、お仲間からの通信らしいぞ?ほらぁ」
歩夢にGBCTパッドをガウルが投げ寄越す
『……歩夢、か…?』
「ランダル…?どうしたの?何か音声がー」
『スターゲイザーベースが、襲撃された…駆動系が全部、壊された…今、五道市に向けて墜落、してい……る……』
息も絶え絶えに告げるランダルの言葉に目を見開き、歩夢が空を見上げる
普段スターゲイザーベースがあるらしき空から黒煙が上がっていることを視認し、それが真実と知る
「ー脱出してランダル‼︎他の機関員も連れて!!」
『機関員は全滅だ……辛うじて艦内スキャンをしたが、私以外の生体反応は、なかった………』
「じゃあ、じゃああなただけでも…ッ!!」
『無理、だな……』
ランダルがふぅ、と息を吐く
『……致命傷だ。いつの間にか侵入していた黒いヤツに、背後から貫かれた……』
「ーッ」
歩夢が絶句する
《ー自爆シークー作動ーあとー秒で本かー爆発ーやかなー》
『安心しろ。お前の信念に背くことは、この艦にもさせやしない』
ランダルの声越しに聞こえてきていたのは、自爆シークエンスの作動アナウンスだった
地上に落ちる前にスターゲイザーベースを爆破して被害を最小限に収めるつもりなのだ
『……お前は、バカだが楽しいヤツだった』
「やめて、やめてランダル……逃げて…‼︎」
『バカだが、大したヤツだ……私なんかいなくとも、お前はー』
「無理よ!!無理だよ…私は、私はッ!!!」
『ああ、言葉がまとまらないな……血が足りなくなったか……』
「ランダル…ランダルッ!!!」
『……こんなことなら、普段から言っておけばよかったな…』
『……歩夢、こんなわた
爆音
ランダルの言葉が遮られる
スターゲイザーベースがあったらしい地点には赤い光条と、赤黒い光球が光っていた
振り返り見上げる
ーグァァアウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…‼︎
煙を上げる背中の砲塔を持ち上げながら、エルシアたちを貫いたあの怪獣が低い唸りを上げていた
「いやぁ、危なかったなぁ。あんな大きな構造物があの地点で爆破されていたら地上が大変なことになるところだった」
芝居がかった嘲笑うような口調でガウルが告げ、歩夢の肩を叩く
「よかったなぁ。私が改造したあのアンタレスキャノンの収束エネルギー光線で無ければ、被害なくアレを壊せなかー」
ーバギィッ!!!
ガウルの顔が歪む
歩夢が、ガウルを殴りつけていたのだ
「なんで……なんで……ッ‼︎」
体を震わせながら歩夢はガウルの胸ぐらを掴んで木に叩きつけ、その顔をさらに殴打していく
「なんで殺したぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ランダルを、ルシルを、エルシアを!!!なんで、なんでッ!!!!」
ガウルは何度も殴りつけられながらも笑みを崩さない
「ハ、ハ、ハ、ハ!!!いい顔になったじゃないか稲葉 歩夢」
「何故か?簡単だよ。お前もイクサの大切な相棒だからだよ」
ガウルの言葉に歩夢が目を見開き、拳を止める
殴打を緩めた歩夢をガウルはワロガの姿に戻ると共に蹴り飛ばす
『言っただろう?イクサが新たに手に入れた大切なものをぜーーーんぶ踏み躙って壊してやる、と。お前もそうだよ』
ワロガは再びガウルの姿に戻る
「ああ、あのスタンデル星人レドルも、今のお前の『大切な仲間』だったからついでとはいえよかったのかぁハ、ハ、ハ!!!」
脱力し、息を荒げる歩夢を見下ろしながらガウルは続ける
「あと、あの怪獣はともかくリンケイド星人はまだ死んでいない」
「!?」
歩夢が顔を上げる
「少しだけ狙いがズレたらしい、まぁあの怪獣ーグルジオアンタレスの尾にはイザーティアの体組織から生成した猛毒が含まれているから、死ぬのは時間の問題だろうがなぁ」
「どうすれば…どうすれば治るの…ッ!!」
クク、とガウルが笑う
「簡単さ。グルジオアンタレスの心臓を使えばいい。そこからワクチンを培養すれば治療可能だよ」
その言葉を聞き、歩夢がイクサファーナスを構える
『待て歩夢‼︎罠だろうが⁉︎ それに、今の体で変身はー』
「急がないとルシルが、ルシルが死んじゃうのよ!!!」
「ああ、急がないと死んでしまうなぁ。まぁー」
「ーグルジオアンタレスをお前たちが倒せるならなぁ」
パチン、とガウルが指を鳴らす
グルジオアンタレスの巨体が急激に縮小し、消失
消失地点から足音が響き、1人の異様な姿の人物が姿を現す
黒い包帯をぐるぐる巻きにしたようなスーツを纏う女性
体の各所には点滴のチューブのようなものが付けられ、口元にも黒い包帯がぐるぐるに巻かれている
色素の落ちた翠の髪、白い肌、持ち上げた顔の瞳には意志の光が宿っていなかった
その顔を見て、歩夢の中のイクサが言葉を失った
『なん、で……なんでお前が……』
「……イクサ…?」
「知らなくて当然だよな。ならば紹介しよう」
ガウルは自慢の人形を見せつけるかのように女性を示す
「これはルテミア。そこにいるイクサの仲間で、最も親交の深かった娘だよ。尤も今は、怪獣グルジオアンタレスになっているがね」
『ルテミア…‼︎目を覚ましてくれ‼︎』
『いい具合に「ゲーム」が盛り上がってきたなぁ』
『絶対、絶対死なせません…‼︎』
『そうだその目だよ。私が見たかったのはぁ‼︎』
『お前たちは許さない…ッ‼︎』
『「獣」はもうすぐ現れる。浄化の日は近いのです』
次回ウルトラマンイクサ
「激情と悲喜劇と」
『目を晒すなよ』
『ーは、オマエのものなんだから』