ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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第28話「暗雲と惑星破壊」

五道(ごどう)市のとある一角

 

昼下がりの市街地の中を風変わりな風体の団体が練り歩く

 

ーキリ・エルト・キリエ・リキエル

ーキリ・キリ・キリエル

 

口々に唱えているのは念仏のようにも、呪文のようにも聞こえる言葉

黒い装束を纏い、顔布で顔を隠した集団とそれに続く私服の人々は手にした鈴を鳴らしながら街を横切る

 

 

「ー今世の中には、悪と罪が溢れている」

 

広場に集められた人々の前で顔布で顔を隠した数珠を首にかけた男が声を上げる

 

「人々はあまりにも邪悪になりすぎた。モノを浪費し、大地を汚し、互いに争い殺し合い…これらは自然に背く立派な悪逆であり、結果この世は、誰が死ぬまでもなく生ける地獄となってしまった」

 

男が大袈裟な身振り手振りで演説を続ける

 

「だからこそ、我々はその魂を大地に返さねばならない。その使徒である怪獣たちに我らの身を捧げることこそ、真なる浄化の儀式なのです‼︎」

 

男の言葉に人々が歓喜の声を上げる

 

「さぁ皆様祈りましょう…‼︎大地の使徒を導く我らが霧慧(きりえ)の神に‼︎来るべき浄化の日は近い‼︎」

 

 

ーキリ・エルト・キリエ・リキエル‼︎

ーキリ・キリ・キリエル‼︎

 

ーキリ・エルト・キリエ・リキエル‼︎

ーキリ・キリ・キリエル‼︎

 

ーキリ・エルト・キリエ・リキエル‼︎

ーキリ・キリ・キリエル‼︎

 

 

狂ったような熱狂が人々を包む

 

霧慧の神を讃える祝詞が辺りにこだましていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

秘匿基地内部 特設司令室

 

ジャケットの前を締め、左胸に手を当てた後に歩夢(あゆむ)が周りを見渡す

水輝(みずき)大介(だいすけ)、ルシル、リュウ、苑樹(えんじゅ)

現GBCTメンバーがそれぞれの制服姿に着替え並んでいた

 

「やっとGBCT再始動って感じね」

「…まだ公的には凍結状態ですが、はい‼︎」

 

水輝が元気に返事し、周りの皆も笑顔で頷く

 

「確かに活動は凍結されてる。後ろ盾も何もない」

「だが、だから引き下がるということができる私たちでもない」

 

「怪獣たちはまた現れる。中には分かり合えるヤツもいる」

「人間と怪獣、これ以上違えないためにもわたくしたちが立ち上がらねば、誰が立つというのです」

 

気合い十分と言ったメンバーを見渡し、歩夢が頷く

 

『守りたいものを守るために戦う。そう決めたからな』

「そういうこと。信頼がなくなったなら、また一から私たちで積み上げていけばいい」

 

GBCTメンバーが決意を新たにしていると特設司令室に駿河(するが)が入室してくる

 

「後ろ盾がないってのは聞き捨てならんのぉ」

 

手にしたタブレットを掲げてニッと笑う

 

「GBCT用のビークルたちは整備完了しとる。ルシルちゃん用のセンチネルも準備完了じゃ」

「私用の…?」

「総動員作戦も少なくないだろうしね。力を貸してくれる?」

「……ああ、もちろんだ」

 

ルシルが確かに頷く

 

「ヴィクターのB班はGBCTを全面支援する。わしだけじゃなく、メンバーも皆賛成しとるけん、安心せぇ」

 

歩夢に駿河がウインクを飛ばす

 

「ヴィクター的には大丈夫なの?それ…」

「まぁ、A班は半ば空中分解しとるみたいじゃし。元々班ごとに分かれた行動ばっかりだったしのぉ…」

「空中分解…やっぱりガウルが…」

「まぁなぁ……」

 

駿河が眉根を寄せながらタブレットを弄る

 

「……だのにまだA班の班員は特殊自衛隊んとこで活動しとるんが引っかかるがのぉ…特に混乱が無いってのも…」

 

その瞬間、基地内にサイレンが響く

司令室内のコンソールを操作した水輝とルシルが状況を報告する

 

 

「大気圏上空に大規模な空間歪曲を確認しました‼︎」

「その中から巨大構造体が落下してきている。数は4、落下予測地点は…五道市蛍火(ほたるび)町、五道市草波(くさなみ)自然公園、モンゴル平原、アラスカの森林地帯‼︎」

 

 

それを聞いた歩夢が隊員たちに向き直る

 

「水輝はGBCTキャリアーを発進待機させておいて。私とリュウと苑樹でそれぞれの落下物を調査し、必要なら追って出動命令を出すわ」

『了解‼︎』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

大気圏上空

宇宙空間と地球の境目にあたる空間がぐにゃりと歪み、そこから青いクリスタル状の物体が4つ降り注ぐ

 

地球に突入した青い巨大石柱は隕石にしてはゆっくりと降下し、くるくると回りながら上空に静止した

 

アラスカ、モンゴル、草波自然公園

そして蛍火町の上空にくるくると回る石柱は不気味に佇んでいた

 

「来た…遂に来た‼︎我らを導く滅びの使徒が‼︎」

 

蛍火町に集まっていた霧慧の信徒が男の言葉にいろめき立つ

 

野次馬たちがスマホやカメラを向けて騒ぐ中、現場のビル屋上に到着した歩夢がキャップを被り直しながら計器を向ける

 

「……内部に高エネルギー生体反応…⁉︎あれ中に怪獣が入ってるってこと!?」

 

歩夢はインカムの通信を隊員たちに繋げる

 

「石柱状物体内部に高エネルギー生体反応‼︎あの中には怪獣がいるわ‼︎」

『怪獣…⁉︎同時に4体も落ちてきたのですか⁉︎』

 

歩夢が油断なく石柱を見上げる

 

 

「ー美しい光景、だと思いませんか?」

 

 

突然背後からかけられた声に歩夢がGBCTマグナムを構えながら振り向く

 

そこに現れたのは黒づくめの法衣のような服を着た人物

めくり上げた中から中性的な美形の顔が露わになる

 

「あなたは…確か霧慧神獣教(きりえしんじゅうきょう)の…⁉︎」

「おや、ワタシどもをご存知でしたか。喜ばしい限りです」

 

黒の人物ー霧慧神獣教教主・火煙(ひえん)は薄く微笑む

 

「改めまして、ワタシは火煙。霧慧の神の教えを皆様に広める役割を担う宣教師でございます」

 

胸に手を当て、火煙が慇懃に礼をする

その様子を歩夢は油断なく睨む

 

「……その宣教師サマがなんの御用かしら?指名手配犯でも捕まえにきた、とか?」

 

歩夢の挑発的な問いに火煙は口元を押さえながら笑う

 

「俗世の定めた罪と罰などに興味はありません。これより始まる審判の日により、人々は皆救われるのだから」

「救われる…?審判の日…?」

 

火煙の言葉に歩夢が眉根を寄せる

 

「稲葉 歩夢様。アナタは、怪獣とはなんだと思いますか?」

「……怪獣は、私たちと同じ地球に生きる命よ」

「ははは、実に素晴らしいお答えだ」

 

火煙は口元を押さえる手に力を込める

 

「ーだが、それは間違いです」

 

火煙が切長の目を細める

鈍色の瞳が歩夢を捉えていた

 

「怪獣とは、我らの偉大なる主が遣わす眷属。愚かなる歩みを繰り返す人間を浄化し、新たな世界を生み出すための審判者なのです」

 

「あらゆる宇宙に怪獣は現れる。文明を破壊し、罪深き人々に牙と爪を立て…そして愚かにも人々はそれに争い、星の巨人たちが退ける」

 

「ですが無駄なのです。例え一度闇を退けても、新たなる深く神聖なる闇は人々にまた襲いくる」

 

火煙が手を広げる

 

「それは何故か?簡単な話です。ヒトが、裁かれるべき罪深い存在だからなのですよ」

 

歩夢は火煙にマグナムを突きつけながら睨む

 

「あんたらは、怪獣はこの世界の白血球だとでもいいたいわけ⁉︎」

 

「その通り。神聖なる闇より来たる霧慧の神は、この世界をあまねく闇で満たし、光という癌細胞を排除するのです」

 

火煙はその首に爪を突き立てる

 

「光、そう光。それこそが愚かにも人類が増長する病気…‼︎未来への希望、明日への道標。それらを盲信し、世界を食い潰すなんと愚かなことか…‼︎」

 

ぎちり、と首に爪を這わせる

 

「ーアナタも、霧慧の神による救済を拒んだ。あの巨人共々‼︎」

 

歩夢が目を見開く

 

「あなた…一体何者なの…⁉︎」

『歩夢、気をつけろ…コイツ、今まで隠してやがったが気配が地球人たちのものじゃねぇ…‼︎』

 

火煙の姿に異形が一瞬重なる

悪魔のような笑みを浮かべた異形の面相だった

 

「…キリエルの民。ある世界より、主の導きにより降り立ったワタシの真の姿です。まぁ…キリエルの神などという紛い物など、とうに信仰していないワタシは、既にキリエルの民では無いのかもしれませんがね」

 

「霧慧神獣教は…あんたの傀儡ってこと⁉︎」

 

火煙は狂った笑みを浮かべたまま首を振る

 

「彼とは違ってワタシは人形劇に興味はありません。ワタシはただ、我らが主の導きと教えを、愚かな人々に受け入れやすく広めたまで」

 

「安らかに、滅びを迎えられるように…ね」

 

「貴様…‼︎」

 

火煙がパチパチと手を叩く

 

「よろしいのですか?来たる使徒が、そろそろ目覚めますよ」

 

歩夢が石柱を振り返る

石柱はゆっくりと降下を始めていた

危機を感じた野次馬たちが逃げ始める

 

「さぁ、歩夢様、ウルトラマンイクサ様。これより来たるは遥か彼方の星よりの使徒。アナタさまは怪獣は共に生きる命と言った」

 

火煙は歩夢を指差し、笑う

 

「ならば、彼ら使徒もまた…そうなのでしょうかねぇ?」

 

火煙が後手に手を組むとその背後の空間が黒く歪む

 

 

「さぁ、今こそ審判の日‼︎ある世界で我らが主が呼び寄せたもうた破壊の使徒の降臨‼︎」

 

「霧慧の神の…根源破滅の意のままに‼︎」

 

 

狂気の哄笑を上げる火煙が消えると共に、石柱は地面に降り立った

 

 

石柱が割れ砕けた中から観測通り怪獣が現れる

 

ー■■■■■■■■■…‼︎

 

耳をつんざく異形の咆哮を上げ、現れた怪獣

湾曲し尖った頭部を持ち、その両手には鋭い鎌を備えていた

更に背部から伸びる尾は鋭く尖り、攻撃的なフォルムを備えている

 

ー■■■■■■■■■■‼︎

 

怪獣はその鎌で目前のビルを切り裂き前進、鎌を体の前で合わせると腹、胸、頭部を眩く光らせ頭部から光弾を放ち、周囲の破壊を開始する

 

 

「ッ‼︎怪獣の活動開始を確認‼︎水輝は分析‼︎リュウ、大介、ルシル、苑樹は逃げ遅れた人の避難補助を‼︎」

 

隊員たちに指示を出し、歩夢がイクサファーナスを構える

 

《リンケージ:ウルトラマンイクサ》

 

ーサァッ‼︎

 

ビルの屋上からそのまま飛び出しながら巨大化したイクサのパンチが怪獣を捉え、その巨体を退かせる

 

ーサァァッ…‼︎

ー■■■■■■■■■‼︎

 

つんざく咆哮と共に怪獣ーコッヴがイクサに迫る

鎌の攻撃を受け止め、その腹に蹴りを叩き込むと反撃の尻尾を回避して拳をその胸に撃ち込む

 

ー■■■■■■■■■■‼︎

 

コッヴは再び体を光らせ、その頭部から光弾を乱射する

 

イクサはビームシールドを展開し、自分と足元の逃げ遅れた人々を保護する

 

そこに駆けつけたGBCTセンチネルがシールド発生ドローンを展開

 

『避難先はあちらです‼︎急いで避難を‼︎』

 

駆けつけたGBCTのマシンに驚き戸惑いながらもルシルのアナウンスと誘導に従い、人々は避難していく

 

が、それとは反対に怪獣に向かっていく集団にイクサと歩夢が気づく

 

『あの服…あいつら‼︎』

「霧慧神獣教の信徒…‼︎」

 

コッヴの足元に向かってどこか恍惚とした顔を見せながら黒衣の信徒たちは足を進める

 

「使徒様…」

「どうかお救いを…」

「我々に浄化を…」

 

縋るようにコッヴに向かう人々を見下ろし、コッヴが光弾の構えをとる

 

『やらせるか‼︎』

 

イクサがコッヴに飛びつき、頭部を上向きにして光弾を空振りさせる

 

「邪魔しないでよ‼︎」

「宇宙人が何をするんだ‼︎」

「私たちは、あの使徒様に滅ばされなきゃダメなのよ‼︎」

 

コッヴに縋らんとしていた人々の抗議の声にイクサがコッヴを押さえたままたじろぐ

 

 

「私たちから、救いを奪わないでくれ‼︎」

 

 

ー■■■■■■■■‼︎

 

油断したイクサの体に鎌を突き立て、一斬

イクサの体に火花が散り、その体が大きく吹き飛ばされる

 

『クソッ、どうすりゃいいんだよ…‼︎』

 

 

草波自然公園

 

ー■■■■■■■■■■■‼︎

 

自然公園の景観を破壊しながらコッヴが進行する

平日なのもあり人もまばらだった自然公園ではスムーズに避難が終わっていた

 

「避難は終わりました‼︎」

「わかった」

 

避難誘導を終わらせたリュウがテライグナイターをスパークモードにして構える

 

その手を苑樹が掴む

 

「……無茶はもう、許しませんよ」

「…あぁ、わかってるさ」

 

笑顔で頷くリュウに苑樹も笑顔を返す

 

《ウルトライブ‼︎》

《ウルトラマンテラ‼︎》

 

ーテァッ‼︎

 

テラがその身を翻しながらコッヴの背後に着地、その長大な尻尾を掴み引き寄せながらその進軍を止める

 

ー■■■■■■■■■■!?

 

『このぉ…ッ‼︎』

 

渾身の力を込めコッヴを引き上げ浮かばせたテラはその巨体をジャイアントスイングで山間部の平野に投げ飛ばす

 

ー■■■■■■■■■■…‼︎

 

体を震わせながら立ち上がるコッヴが反撃に頭部から光弾を放つ

 

『テラジュームスラッシュ‼︎』

 

両腕の鉱石を光らせ、青色の光弾を乱射してテラも迎え打つ

光弾と光弾が衝突、相殺し何発かのテラジュームスラッシュがコッヴに命中。たまらずコッヴが倒れ伏す

 

『よし、これでー』

 

ーゴゴゴゴ…

 

必殺技を構えようとしたテラの足元が揺れる

 

鳴動した大地が割れ砕け、そこから巨体が姿を現す

 

ーゴァァァァァァ!!!

 

現れたのは土色の皮膚と特徴的な装甲に覆われた尖った頭部を持つ怪獣だった

 

『こいつは岩神諸島にも…確か…ゴルメデか‼︎』

「野生個体が、落下と戦闘の衝撃で目を覚ました…⁉︎」

 

ーゴァァァァァァ‼︎

 

現れたゴルメデは周囲を伺うと、起き上がりつつあったコッヴを見つけそこに突撃しラリアットをかます

 

ー■■■■■■■■!?

 

手痛い攻撃を受けたコッヴは悲痛な声を上げるが、すぐに鎌で反撃。取っ組み合いの状態になる

 

それを見ていたテラは思わず動きを止める

 

『こいつら…縄張り争いしてる…?宇宙怪獣だからか…?』

 

リュウの言葉に苑樹もコッヴとゴルメデを注視する

 

「…淀んだ不快な気が感じられない…?あの宇宙怪獣は、ただの怪獣…まさか…」

 

苑樹が目を見開く

その耳を轟音が切り裂き、取っ組み合いになるコッヴとゴルメデに銃撃が降り注ぐ

 

特殊自衛隊のハウンダー隊が到着したのだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

特殊自衛隊司令室

 

「ハウンダー隊アルファ、ベータ現着‼︎対象の怪獣と突発出現した怪獣、更にウルトラマン2体を確認しています‼︎」

 

「更に現場に活動凍結中のGBCTの機体を確認しました‼︎」

 

「まずは怪獣の排除を優先だ‼︎邪魔だてするようならウルトラマンもGBCTも攻撃対象にして構わん‼︎」

 

報告を聞き、副司令である湯田(ゆだ)が命令を下す

苛立たしげに制服の袖を直しながらモニター群を睨む

 

黒斗(くろと)司令が席を外している時にこの始末…クソッ‼︎忌々しい怪獣にGBCTの残党どもめ…‼︎」

 

司令室にサイレンが新たに鳴り響く

 

「なんだ⁉︎状況報告を急げ‼︎」

 

湯田に急かされた隊員が報告する

 

「た、大気圏上空の空間歪曲から新たな石柱が出現‼︎数は4、落下予測地点は五道市花風(はなかぜ)町、五道市土玄(どげん)山、中国崑崙(コンロン)山、オーストラリア近海です‼︎」

 

「な、まだ増えるというのか⁉︎」

 

ギリリと歯を噛み締め、湯田がモニターを睨む

そこに映し出された空間の歪みを見た湯田は獰猛な笑みを浮かべた

 

 

ー■■■■■■■■■!!!

 

アラスカの森林地帯で暴れ回るコッヴ

木々を薙ぎ倒し進む巨獣に不可視の何かが体当たりする

 

ークァァァァァァオォオ‼︎

 

不可視だったそれはぐにゃりと空間を歪ませ姿を現す

灰色の体表を持つ怪獣。その背や頭部からはヤマアラシのような長く鋭い棘が何本も生えている

 

猛吹雪を纏いながら姿を現し、コッヴと激突する怪獣を森の中から見上げた老人が呟く

 

「…シャザック…‼︎」

 

 

ーグァァァァウゥゥゥ‼︎

ー■■■■■■■■‼︎

 

モンゴル平原の真ん中で巨体が衝突する

片や宇宙怪獣コッヴ、もう片方は三日月のツノを備えた怪獣ゴモラ

 

時に光弾を放つコッヴに怯むことなくゴモラは進撃し、その巨体を活かしたタックルや尻尾でコッヴを押し込んでいく

 

 

五道市蛍火町

 

『隊長‼︎土玄山と花風町にも同一個体の怪獣が出現しました‼︎』

「なんですって…⁉︎」

 

イクサのインナースペースで水輝の報告を聞いた歩夢が悲痛な声を上げる

 

『花風町には俺が行く‼︎』

『私は土玄山で怪獣を食い止めます‼︎』

 

ー■■■■■■■■■‼︎

 

こちらの状況はお構いなしに暴れ出すコッヴ

そこに攻撃を加えてくるハウンダー隊の銃撃を弾きながらイクサがコッヴに肉薄

信徒たちに振り下ろされんとするその攻撃を受け止めた歩夢がコッヴの唸りを聞き、顔を上げる

 

「……え?」

 

歩夢が呆気に取られる中、イクサはコッヴに蹴りを撃ち込み退ける

 

『どうした、歩夢⁉︎』

「この怪獣…なんか、泣いてる…?」

 

ー■■■■■■■■■■‼︎

 

凶暴な咆哮をコッヴが再び上げる

が、歩夢にはその鳴き声がどこか震えて聞こえた

 

コッヴの姿に、記憶の中のイザーティア・ゲヘナが重なる

 

イクサをこの宇宙に迷い込ませたあの怪獣も、また泣いていた

 

『……泣いてる?』

「…イザーティア・ゲヘナの時と同じ…もしかしてこの怪獣たちは、無理やりこの星に呼び出されてる…?」

 

歩夢の推測を裏付けるように苑樹の通信が入る

 

『この宇宙怪獣からは邪悪な意志や気を感じません。釣られて出現した他の怪獣たちも、あくまで縄張りに侵入されて気が立っているだけです』

 

『この怪獣たちは、倒すべきなのか…歩夢?』

 

リュウの言葉に歩夢も心が揺れる

 

宇宙怪獣はいわば外来種

地球環境にも地球の怪獣にも間違いなく異物である存在

 

迷い込んだそれは、保護の区分から外れていた

 

でも、何ものかが無理やり連れてきたこの怪獣たちも排除しなければならない存在なのだろうか…?

 

 

『これより来たるは遥か彼方の星よりの使徒。アナタさまは怪獣は共に生きる命と言った』

 

『ならば、彼ら使徒もまた…そうなのでしょうかねぇ?』

 

 

火煙の言葉が脳裏に過ぎる

 

「イクサ…無茶なお願いかもだけどいい?」

『バカ野郎。無茶はいつもの事だろうが』

 

歩夢の言葉にイクサが朗らかに返す

 

『あの空間歪曲…多分コイツらが元いた宇宙、もしくは惑星に繋がってるはずだ。オレとイザーティアも空間の歪みからこの宇宙にやってきたしな』

 

『だから、開きっぱなしの今ならまだこの怪獣たちは返してやれるはずだ』

 

イクサの言葉に歩夢がパチクリと目を瞬かせ驚く

 

「なんでわかったのよ…」

『もうお前が言いたいことはなんだかんだわかるんだよ』

 

イクサが油断せずコッヴを見据える

コッヴは攻撃してくるハウンダー隊を見上げ威嚇するように吼えていた

 

『ーそれに、イザーティアが本当に倒さなきゃならん怪獣だったのか…オレも後悔はあるからな…コイツは、なんとかしてやりてぇだろ‼︎』

 

「ーうん‼︎」

 

イクサの言葉に歩夢が微笑んで頷き、ホシノハバキリを手にする

 

 

《マキシマムリンケージ‼︎》

《ウルトラマンイクサ・五元絢爛‼︎》

 

 

イクサが五元絢爛に変身、コッヴが放つ光弾をワダツミノオビで弾きながらその手に水の力を集めていく

 

「『キャプチャーバブル…‼︎』」

 

イクサが合わせた手から光の泡が無数に放たれる

泡の光線に当たったコッヴの周りが清らかな水球に包まれ、空に持ち上がる

 

しばらくもがいていたコッヴだが、すぐに大人しくなり体を丸めるのを見届けたイクサが頷く

 

「皆、この怪獣は被害者よ。別の環境から連れ去られて興奮してるだけ。そういう怪獣を保護して元の環境に返すのも、私たちの仕事よ」

 

歩夢の言葉に待機していた隊員たちやテラが頷く

 

「対象の怪獣は要保護送還対象とし、保護を開始して‼︎送還は私とイクサがやるわ‼︎」

 

『了解‼︎』

 

作戦を歩夢が伝えると、イクサは腕をクロスさせ力を解放する

 

「『イクサミラージュ‼︎』」

 

イクサの体からシルエットが離脱し、5人のイクサたちが並ぶ

互いに頷き合うと4人は飛翔し、残る1人は目の前で浮かぶコッヴを支えるように腕を広げ、離陸していく

 

「ああ…我らの使徒様が…」

 

それを見上げていた信徒たちが落胆し、膝を突く

中には啜り泣くものたちもいる異様な集まり

 

それを後方から眺めていた火煙は笑みを崩していなかった

 

 

草波自然公園

 

ーテァッ‼︎

 

ハウンダー隊の攻撃をテラが弾く中、苑樹が怪獣たちを見据える

 

「沈静化ならわたくしが‼︎」

 

苑樹が銅鏡を構え、その背後にイツシをモンスロードする

 

ーシィィィィィィ…‼︎

 

イツシがその目を光らせると文字通り蛇に睨まれたかのようにゴルメデたちが固まる

 

それを見届けたテラは腕のクリスタルを白く光らせる

 

『テラジュームキャッチシュート‼︎』

 

放たれたリング光線がコッヴの動きを止める

拘束されたコッヴを抱え上げたテラが苑樹に目配せし、飛翔していく

 

残されたゴルメデを見上げた苑樹が優しく告げる

 

「あなたの縄張りはもう安全ですよ」

 

毒気を抜かれたようなゴルメデはすごすごと地面を掘り返し、大地へ帰っていった

 

 

花風町

 

『キャプチャーソイル展開‼︎』

 

GBCTヘラクレスが光弾を回避しながらビル屋上に器用に着地し、マニュピレーターに装備した大型砲を構える

 

大砲から放たれたコンクリート弾がコッヴの足元に命中し、即座に硬化。その動きを止める

 

そこに空から合流したイクサがキャプチャーバブルを放ち、コッヴを水球に閉じ込めて空へと連れて行く

 

 

土玄山

 

『イクサ‼︎こちらです‼︎』

 

水輝の乗るGBCTキャリアーの目前にビームドローンが展開したレーザーケージに閉じ込められたコッヴにキャプチャーバブルが放たれ、イクサはコッヴを連れて行く

 

その背に水輝は敬礼を送り、イクサも頷く

 

 

五道市の上空

各地に散らばったイクサとテラが捕獲したコッヴを集めていく

 

計8体のコッヴが包まれた巨大水球が完成、イクサは分身を戻す

 

「それじゃあ送ってくるわ」

『ああ。こっちは任せてくれ』

 

イクサとテラが頷き合い、コッヴたちを大気圏外へと連れて行く

 

 

信徒たちの集まりを掻き分け練り歩きながらその様を見上げ、火煙は笑う

 

「なるほど。あなたがたらしい答えです」

 

火煙の口角が深く吊り上がる

 

「ーですが、無駄足でしたねぇ…ウルトラマンイクサ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

大気圏上空

空間の歪みを前にイクサがコッヴたちを隣に浮かべて佇む

 

「これが空間の穴…」

『オレが通ってきた穴にも似てるな、やっぱり』

 

コッヴたちを伴いながら穴に近づく

 

『入るぞ』

「わかった」

 

ーサァッ‼︎

 

コッヴたちと共にイクサは空間の穴に乗り込んだ

 

 

内部は暗雲が渦を巻き、紫の雷が辺りに鳴り響く嵐のような状態だった

 

「めちゃくちゃな嵐…‼︎コイツは中々やばいわね」

 

歩夢が目を細めながら前を向きイクサと共に進む

 

『見えたぞ、出口だ‼︎』

 

嵐の空間の向こうに裂け目が広がる

その先に青く輝く惑星が見えた

 

「あそこがこの子たちの故郷ってことね…‼︎ならー」

 

 

ーキシャオォォォォォォ‼︎

 

 

突然の咆哮

それと同時に裂け目が潰れ、代わりに黒い穴が開く

 

そこから黒い体表の怪獣が飛び出してきた

 

「ーな」

 

ーキシャオォォォォォォ‼︎

 

怪獣は肩部分から鋭く尖ったクナイ型のトゲを乱れ撃つ

 

イクサはなんとかかわそうとするが、何発か直撃をくらい大きく体勢を崩す

コッヴたちを包んでいた水球が割れ、コッヴたちが空間の嵐に投げ出されていく

 

『しまっー』

 

イクサが手を伸ばすがコッヴたちはあっという間に周囲の嵐に呑まれ、その姿を散らしていく

 

「そんな……ッ」

 

ーキシャオォォォォォォォォォ‼︎

 

飛来してきた新たな怪獣がイクサに掴みかかり、そのまま高速で飛翔。空間の穴の外ー歩夢たちの宇宙まで押し戻し、そのままの勢いで月面にイクサを叩きつける

 

ーサァ……ッ!?

 

叩きつけられたダメージに体を震わせながらなんとかイクサが立ち上がる

 

イクサに襲いかかった怪獣はその正面に改めて着陸した

 

黒い表皮に赤黒いマント状の翼とトサカを持つ怪獣

左腕は忍者が使う手甲鉤のような鋭い鉤爪になっており、熟練の暗殺者のように構えられている

 

「なんのつもりか知らないけど…よくもあの怪獣たちを…‼︎」

『ああ…コイツはここで倒す‼︎』

 

ーサァッ‼︎

ーキシャオォォォォォォ‼︎

 

イクサが拳を握りながらホシノハバキリを取り出し構えると怪獣ー宇宙忍獣XV(エクシヴ)サバーガは鉤爪を構えながら咆哮し、突撃する

 

ホシノハバキリと鉤爪を打ち鳴らし、隙を縫って振るわれた鉤爪をイクサが手甲で受け止め、反撃の一閃を放つ

 

が、XVサバーガはその身を黒い霧に変質させ回避し距離を取る

 

《火》《金》

《多元連星‼︎二連星‼︎》

 

ホシノハバキリの力を解放し、その刀身を満月を描くように回していくとその軌跡に赤く燃ゆる鋼の刀身が8本出現

イクサが構えると共にXVサバーガに切っ先が向き、放たれる

 

ーキシャオォォォォォォ‼︎

 

XVサバーガは突如左手を月の大地に叩きつける

その衝撃で四角く捲れた岩盤が屹立し、燃える剣を防ぐ

 

「なっ⁉︎畳返し!?」

 

XVサバーガは岩盤を蹴倒すと共に肩口からのクナイ弾を乱射、イクサはワダツミノオビでこれを防ぐがその隙を見たXVサバーガがニヤリと笑う

 

ーキシャオォォォォォォォォォォォォ‼︎

 

咆哮と共にXVサバーガの姿が分身し、3体になったXVサバーガがイクサを取り囲む

 

「分身の術とか…マジで忍者のつもりってワケ⁉︎」

 

ーキシャオォォォォォォォォォ‼︎

 

周囲の警戒で目線がそれたイクサにXVサバーガの左手首が放たれる

腕とワイヤーで繋がったそれがイクサの体を縛り、体の自由を奪うと共に首にしがみついた手首から電流が放たれる

 

ーサァァァァァァァァッ!?

 

身動きを封じられたイクサに分身の2体が交差するように襲いかかり、鉤爪の攻撃で火花を散らす

 

膝をついたイクサのカラータイマーが赤く点滅を始めていた

 

 

地上に戻ったテラが空を見上げる

 

『歩夢、イクサ……無事送れたのかな…』

 

共に空を見上げていた苑樹に通信が入る

 

「こちら苑樹ー」

 

 

『マズイことになっとる。特殊自衛隊本部で今、改良型の対巨大敵性体大型エネルギー砲・アンタレスアークV4Gが起動しおった…‼︎』

 

 

駿河慌てた声と報告に苑樹とテラが血相を変える

 

「なんですって…⁉︎」

『アンタレスアークって…あのグルジオアンタレスって怪獣の一部じゃなかったのか⁉︎』

 

『グルジオアンタレスの体組織機構を模倣した新型システムで完全独立運用が完成したらしい…ガウルのヤツなんちゅーもんを…‼︎』

 

「一体、あの大砲をどこにー」

 

駿河が緊迫した声で答える

 

『大気圏上空の空間歪曲点じゃ…何をトチ狂ったか特殊自衛隊はあの歪曲点の向こうに一瞬観測された惑星を早々と侵略天体と決定してその破壊を実行に移しよった…‼︎』

 

「なー」

 

あまりのことに苑樹が言葉を失う

 

『早く止めに行かないと‼︎』

 

ーテァッ‼︎

 

テラが飛翔し、基地に向かおうとする

 

 

『ー失礼。そうは問屋が下さないのだ』

 

 

飛翔したテラにすれ違うように黒い影が直撃、テラを地上に叩き落とす

 

『ぐ、ぁっ!?』

「リュウ⁉︎」

 

墜落したテラを見下ろすようにしながら現れたソレはゆっくりと地上に降り立つ

 

黒と白のツートンカラーに彩られた、真っ向から自然に反するような作り物じみた体。その胸にはウルトラマンのカラータイマーのような赤い十字架

まるで人間のような体格だが、その背には黒い翼が生え、頭部はまるでカラスのような形で赤い目玉模様が付いている

 

まるで鴉天狗のようなその人形はコキコキと腕を鳴らしながらテラを嘲笑する

 

『残念だが、我らが計画の邪魔はさせんよ』

 

立ち上がったテラが構えるのを見た鴉天狗ー破滅魔人ブリッツブロッツもファイティングポーズをとりながらテラに手招きし、挑発する

 

『邪魔を、するな‼︎』

 

ーテァァァッ‼︎

ーキュイィィィアァァァ‼︎

 

青と黒白の影が、拳と手刀が交錯し火花を散らした

 

 

特殊自衛隊本部

 

『アンタレスアークV4G、エネルギー充填60%』

『発射シーケンス50%まで到達。システム制御・オールチェックグリーン』

 

惑星すら破壊しうるエネルギー大砲・アンタレスアークV4Gの発射準備が進行。基地の屋上から士官服の男がニヤニヤと砲台を見上げる

 

『さぁ、プレリュードの始まりだ。派手にやろうじゃないか』




テラジュームアンタレスV4G起動‼︎
発射までのリミットはあと1時間

立ち塞がるは闇の主の眷属たち
宇宙忍獣の爪がイクサを切り裂き
破滅魔人の魔手がテラを追い詰める

発射を止めるためもう一度本部に向かった歩夢

そこで告げられる真実とは

次回ウルトラマンイクサ
「人形劇と破滅のプレリュード」

『ショウタイムはここからだろ?』
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