ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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最終回 「地球は皆と生きる星」

あどけなく笑う根源破滅神妃(こんげんはめつしんき)ザハはその手を今度は歩夢(あゆむ)へと向ける

 

空中で新たに歪な槍が形成されていく

歩夢はなんとか立とうとするが、間に合わない

 

槍が放たれる

 

 

ーテァァァァァァッ!!!

 

 

飛び込んできた青い光が歩夢に迫る槍を撃ち落とす

 

『歩夢!無事か⁉︎』

「リュウ!!」

 

テラの姿となったリュウが歩夢の目前で庇うように立ち塞がる

 

ーフフ、フハハ

 

ザハは更に槍を作り出して投擲してくるが新たに駆けつけた影がそれを撃ち落とす

 

ーグァァァウゥゥゥッ!!

 

「歩夢隊長!ここは退くべきですッ!」

 

ホロボロスから苑樹(えんじゅ)が降り立ち、歩夢の手を引く

ザハが君臨する奈落ーイクサが落とされた穴を睨み、歩夢は唇を噛み締めながら頷いた

 

それを見ていたザハは聖杯をくるり、と回す

 

同時に、足元の赤黒い液体が水かさを増し、浸かっていたビルやテラ、ホロボロスたちが沈みはじめる

 

『ぐっあぁ…⁉︎力が、吸い込まれて…⁉︎』

 

青かったテラのカラータイマーが急速に点滅をはじめる

事態の異常さを悟った苑樹はホロボロスを銅鏡へ撤退させ、それを確認したテラが2人を掴んで空へと飛翔する

 

それを眺めていたザハはつまらなそうにあくびを一つ漏らすと、空いた左手を空に掲げる

 

左手の先、空に暗雲が立ち込め、その中央部から赤黒い夥しい数の蟲が飛来し、街を覆っていく

 

同時に世界中の主要都市にも、空から蟲たちが飛来し、赤い柱が乱立しながら赤黒い液体が溢れ出していく

 

 

ーフフフ、アハハハハハ!!

 

 

破滅魔虫ザハ・ドビシたちが空を覆い、玉座の竜たちが沈みゆくビルなどを待ちきれず喰らいはじめ、五道市ーいやそれに収まらず、世界各地は徐々に奈落へと、神妃の腹の中へと沈みはじめる

 

甘美なワインでも味わっているかのように、邪竜の神妃はぺろりと舌なめずりをした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

空が赤黒の蟲に覆われていく中、人々は呆然と立ち尽くしていた

アトラナクアの死により、群衆に紛れていた破滅傀儡ギニョールは液体と化して消滅。だが、それ以上の脅威をテレビ中継を通して見てしまっていたのだ

 

「ウルトラマンが…死んだ…」

 

誰かがぽつりと呟く

 

中継されていたのは、イクサがスクナキリエルを打ち破る姿

そして、その後に現れたザハにより完膚なきまでに惨殺されゆく姿だった

 

「ウルトラマンが手も足も出ないなんて…」

『敵うわけがない…この星は、終わりだ…』

 

今まで争っていた地球人も、宇宙人も、等しく絶望に項垂れるしかない中、人々を押さえていた特殊自衛隊員たちも、ただ唇を噛み締めることしかできなかった

 

 

「ー終わってない…まだ終わってなんかいないよ‼︎」

 

 

群衆の中、少年の声が響く

必死に涙を堪えながら少年ー吉井(よしい) (あきら)は立ち尽くす人々に向かって叫ぶ

 

「ウルトラマンは、ウルトラマンは死んでない‼︎ 死ぬもんか…あのウルトラマンと隊長は、俺の言葉を信じて、怪獣を倒してくれたんだ‼︎」

 

「約束をそのままにして、死んだりなんかしない‼︎」

 

少年の言葉に民衆たちが騒ぎ出す

たじろぐ玲の肩を、シワだらけの優しい手が支える

 

「私も、この少年の言葉を信じる。あのウルトラマンたちは、死んでなんかいない。いや、死なせちゃいけない…‼︎」

 

玲を支える老齢の男性ー墨田(すみだ)老人が静かながら力の籠った言葉でそう告げる

 

固まる皆の元に空から赤黒の蟲が無数に飛来してくる

 

人々が悲鳴と共に体を丸める前、特殊自衛隊員たちがシールドを展開し、身を挺して蟲から人々たちを守る

あまりの衝撃に数人の隊員が吹き飛ばされるが、負けじと立ち上がりシールドを構える

 

「踏ん張れ!!!GBCTやウルトラマンに、負けていられるか!!」

「今ここで人々を守れるのは俺たちだけだ‼︎」

 

特殊自衛隊員たちが守りを固める中、墨田と玲に1人の隊員が声をかける

 

「あなたたちのおかげで、目が覚めました。私たちもまた、諦めません‼︎今は、安全なところに避難を‼︎」

 

その言葉に墨田と玲が頷き、避難誘導に従って離れていく

 

 

ヴィクター秘匿基地

基地入り口に飛び込んできたウルトラマンテラが歩夢と苑樹を下ろすと、その姿を青い光と変えてリュウに戻る

 

「リュウ、ありがとう…」

 

倒れ込むその体を苑樹と支えながら歩夢が優しく告げる

 

「やっぱリュウがウルトラマンじゃったんか…」

 

一部始終を見ていた駿河(するが)が告げる

 

「……となると、歩夢お前も…」

「今は違うわ…隠しててごめん」

「今更秘密の一つや二つでどうこうするか。今はってどういうことじゃ?」

 

駿河の言葉に歩夢が口を固く結び、俯く

が、すぐに顔を上げ告げる

 

「ーそのことについて話すわ…皆んなを集めて」

 

 

「イクサが……⁉︎」

「そん、な…」

 

歩夢からの話を聞き、水輝(みずき)が口元を覆い、大介(だいすけ)たちが沈痛な表情を見せる。リュウと苑樹も悔しげに俯き話を聞いていた

 

歩夢は胸を押さえながら話を続ける

 

「今まで戦い続けて、体に限界が来たんだと思う。それ以上に、奈落の底から現れたあの存在も、過去最悪レベルの強敵だわ」

 

ザハの繰り出していた攻撃を思い返し、歩夢とリュウ、苑樹が更に表情を曇らせる

 

弱っていたとはいえ、ウルトラマンがなす術なく惨殺されるレベルの強大な存在に、皆も足が竦んでしまっていた

 

「……あんな存在に、どうやって…」

 

水輝がへたり込みながら弱音を漏らす

ここにいる誰もが、それを責めることはできなかった

 

『ー現状、あの存在は五道市中央に開いた奈落から動こうとしていません。ですが、あの奈落から溢れ出す赤黒い液体は水かさを増して、浸ったものを際限なく呑み込みながら広がってきている…』

 

「あいつが呼び出した空飛んどる蟲どももヤバい。何匹か撃ち落としたヤツ解剖してみたら、外皮が電波を遮る性質があるみたいで、ほとんどの回線が死にはじめとる。ここの有線回線ならまだギリ生きとるがな。あのクモ野郎が残したテレビ中継だけバリバリ生きとるのは、悪趣味極めとる…」

 

秘匿有線回線で繋がった通信から黒斗(くろと)と、それを聞いた駿河の報告であまりに絶望的な現状が語られていく

 

暗く沈みゆく空気の会議室に重い沈黙が満ちる

 

だが、隊長はまだ諦めていないかのように、拳を握っていた

 

 

「………まだ、イクサは死んでない」

 

 

「歩夢隊長…?」

 

歩夢は顔を上げ、皆に告げる

 

「岩神諸島の地下で、リュウに力をくれた太古のウルトラマン…彼も、太古の昔から眠っていたのに、まだ力は残っていた。なら、イクサだって…エネルギーがあればまだ立ち上がることだって‼︎」

 

『……どうするつもりですか?』

 

黒斗が冷静に問う

 

「どうにか、する‼︎」

「そんなめちゃくちゃな…んなこと言っとる場合でもなかろうが⁉︎」

 

駿河が声を荒げながら反論する

 

「確実性も、何もない…でも、イクサは最後まで諦めなかった…」

 

歩夢は左手の甲、イクサファーナスが装着されていた場所を撫で、ぎゅっと握りしめる

 

「私だって、もう諦めないって決めたんだ…私も、いや、私たちだってここで諦めたら、何もできない‼︎」

 

それに、と歩夢は目頭を拭って不敵に笑う

 

 

「ーあのバカをぶん殴って説教しないと、気が済まないの‼︎」

 

 

歩夢のその言葉を聞いていた駿河はしばし表情を崩さない

が、堰を切ったように笑い出す

 

「ぶっ、はははははは!!!大バカな言い草じゃ‼︎でも、だからこそ…歩夢らしいし、ついていける」

 

やれやれと黒斗も肩を竦める

 

『もともと、どんな勝算も拾わねばならない状況。ならば私たちは、一番前を向いている作戦にかけるべきですね』

 

塞ぎ込んでいた隊員たちも立ち上がり、頬を叩いたり襟元を直したりして気合いを入れ直す

 

 

「今まで、私たちは何度もイクサに助けられました」

「時にはイクサのピンチを俺たちが助けたこともあった」

「彼は、私たちのかけがえのない仲間だ」

「必ず助ける。どんな命も、俺たちは諦めない」

「わたくしも、今こそ彼の想いに応える時です!」

「リーダーが認めたなら、私も力を貸す」

「全く、うちのリーダーといると退屈しないよホント」

『儂らはすることをするまでじゃな』

 

 

GBCTの隊員たち、ヴィクターの駿河、凛、デイズ、ガルブ、モニター越しの黒斗

それぞれが拳を突き出し、合わせる

 

 

「イクサを、必ず助けましょう‼︎私たちなら、絶対届く‼︎」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ヴィクター秘匿基地の格納庫

GBCTセンチネルの歩夢専用機。それに新たな装備パーツが接続されていく

 

 

『ウルトラマンのエネルギーの源が光、とするならば…やはり一番のエネルギーとなるのは太陽光だな』

「あのイナゴみたいなのはそれも見据えてってワケだろうね。全くとんでもない」

 

ガルブの仮説にデイズがうへぇと口をへの字に曲げる

 

「とにかく今はエネルギーとなるものならなんでも考慮していくしかないだろう。あとは、テラジュームもだな」

『特殊自衛隊基地の備蓄は、テラジュームアンタレスV4Gでほぼ空です。補充するとなると、吸い上げるしか…』

「この周辺の龍脈は、先の柱や怪獣たちに吸われて弱っています。これ以上のものは期待できない…」

 

リュウの言葉に黒斗が思案し、苑樹が首を振る

 

「エネルギーが用意できたとしても、それをどうやってイクサに…」

 

 

「それは、私がいくわ」

 

 

歩夢が胸を張る

 

「隊長…それは危険すぎる」

「あの奈落に落ちたら、どうなるかわからんぞ」

 

大介と駿河の言葉に、歩夢は頷く

 

「確かにそうだけど、むざむざ死ぬ気は無いわ」

 

はぁ、と大介と駿河が諦めたようにため息を吐き微笑む

 

「うちの隊長の無茶にはもう慣れた」

「敵わんのぉ、マジで」

 

 

多数のパイプと接続されたタンクをいくつも背負い込んだGBCTセンチネルのコクピットに座り、歩夢は自分のものとは違うGBCTパッドを触る

 

「この作戦はGBCTも、特殊自衛隊も、ヴィクターも全員参加なんだから。あんたも絶対一緒よ。ランダル」

 

ランダルの遺したGBCTパッドをしまい、歩夢が深く息を吸う

 

「行くわよ、皆」

 

 

 

「ーオペレーション、イクサ。スタート!!!」

 

 

 

暗雲ー否、ザハ・ドビシの大群に覆われゆく空の下

ヴィクター秘匿基地のリフトが上がり、地表に巨大なパラボラ1基とテラジューム抽出機2基とGBCTレナトゥス、そしてカスタマイズされた巨大ロケットブースターを背負うGBCTセンチネルが配置される

 

『アンタレスアーク、主砲延伸。照準固定』

 

少し離れた特殊自衛隊基地に再配置された初期型アンタレスアークがパラボラの直上にわだかまるザハ・ドビシの大群に狙いを定める

 

『エネルギー充填70、80、90、100!!』

『アンタレスアーク、発射!』

 

アンタレスアークから赤い凝縮エネルギーが発射される

 

ザハ・ドビシの大群にエネルギーの極光が直撃

丸く大群が焼き払われ、暖かな日光がパラボラへと降りてくる

 

「イクサライズチャージャー、最大稼働!チャンスは短時間。集められるだけの太陽光を集めて、テラジュームエネルギーを増幅する!」

 

パラボラが更に大きく展開。合わせてその周囲の地上でもソーラーパネルが展開され、太陽光を吸収し始める

 

息つく間も無くザハ・ドビシたちが空の穴を塞がんと新たに群がり始めるが、地上からの連続砲火が押し留める

 

「戦車部隊、砲撃を止めるなぁ!!!」

「基地対空砲火、最大稼働。少しでも長く太陽を!」

「レナトゥスレーザー、マルチロック照準よし!」

「アユムのセンチネルにも近づかせない、発射!!」

 

ークォォオォオ!!!

 

GBCTレナトゥス、リュウ、水輝の乗る2機のGBCTセンチネル、特殊自衛隊の戦車部隊、ヴィクター基地の対空砲が雨霰と降り注ぎ、赤黒い蟲たちを次々と焼き払う

 

だが、それよりも蟲たちの増殖の方が僅かに早い

穴はじわじわと確かな勢いで塞がっていく…

 

GBCTセンチネルのコクピットで歩夢がエネルギーの充填量を見守る。既に大都市電力の1週間分のエネルギーが溜まりつつあるが、センチネルに搭載したタンクが音を上げるまで、まだ溜められる

 

「…って、向こうも黙ってるワケ無いわよね」

 

作戦の準備をするGBCTセンチネルの前に蟲たちの大群が2つの塊を作り出す

 

ーギシャウゥゥゥ!!!

ーギュルゥゥゥ!!!

 

塊は蟲たちの姿をそのまま巨大化したような怪獣ー破滅魔虫ザハ・カイザードビシを2体作り出し、咆哮。歩夢の乗るセンチネルに迫ってくる

 

「やらせない!」

ークォォオォオ!!

 

2体とセンチネルの前にGBCTレナトゥスが割り込み、レーザーの大火力でザハ・カイザードビシ2体を焼き払う

 

ーギシャウゥゥゥ!!!

 

が、撃破も束の間、新たな大群がザハ・カイザードビシを形成し、腹部口から伸ばす触手でGBCTレナトゥスを拘束。もう一個体は腕を禍々しい大鎌にし、レナトゥスを切り裂く

 

「ぐっ!?!?」

「うわぁッ!?!?」

 

「大介⁉︎ルシル⁉︎」

 

「集中しろ、隊長!!!俺たちも、死ぬつもりはない!!」

 

レナトゥスのクローが青くエネルギーを纏い、ザハ・カイザードビシの触手を切断。大鎌個体に突き刺しながらエネルギーを流し込み、爆散させる

 

後退する個体のそばに更にザハ・カイザードビシの群れが降り立ち、新たに2個体が作り出される

 

ーギシャウゥゥゥゥゥゥ!!!

ーギュルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

ーシュルルルルルルル!!!

 

「こいつら…キリが無さすぎる⁉︎」

「空のヤツらがいなくならない限り、無限に呼び出せるワケか…足止めだけでも手一杯だ…‼︎」

 

状況を見守っていた駿河の耳にアラート音が響く

 

「ッ、しまった!!!」

 

太陽光を集めるパラボラとパネルにザハ・ドビシが群れで張り付き、物理的に吸収を妨げ始める

それだけじゃない。変換されゆくエネルギーを吸収し、エネルギーの供給すら止め始めていた

 

「ダメ…ッ、私たちだけでは…‼︎」

 

水輝たち地上部隊の攻撃も虚しく、ザハ・ドビシたちの質量に耐えかねてパラボラ群も軋み始める

 

トドメとばかりにパラボラの目前に新たなザハ・カイザードビシが作り出され、両腕の大鎌が振り上げられる

 

ーキンッ

 

瞬間、清廉な金属音が響く

ザハ・カイザードビシの大鎌はパラボラの寸前で止まっていた

 

「……え?」

 

呆ける水輝の前で真一文字に割れ、崩れるザハ・カイザードビシ

その背後から現れたのは、一振りの刀を振るう純白の巨大鎧武者

 

カハァ…と息を吐くその能面のような面には、青い清らかな光が宿っていた

 

【ー今一度、現世に魂を下ろすために助力してくれた影竜(かげたつ)殿に感謝を…】

 

かつて怨霊鬼と呼ばれていたそれは振り返り、パラボラを守るように仁王立ち、刀を構える

 

【この三郎(さぶろう)沙羅(さら)の御子が生きゆく世のため、此度のみ再び戦おう!あの蒼き勇士と、巫女に報わんがために、この刀を振るわん!!】

 

朱戀鬼(しゅれんき)ー否、魂魄武者(こんぱくむしゃ) 白蓮騎(びゃくれんき)は雄々しく告げると、新たに現れたザハ・カイザードビシを一体、また一体と切り捨てていく

 

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

 

GBCTレナトゥスに殺到する3体のザハ・カイザードビシの1体が突如地底に引きずりこまれる

 

ーキュルルルルル!!

ーグェェェェェ!!!

 

更にもう1体も鋼鉄の鉄球の直撃と、白い翼を持つ怪獣の強襲により倒れ伏す

 

「あれは…⁉︎」

「サルファルド‼︎タラトスカに、グエバッサーまで!?」

 

現れたのはかつてGBCTが保護した怪獣たち。更に地底から新たな怪獣たちも現れる

 

ーキュエェェェェェェェェェ!!

ーゴァァァァァァァァ!!!

 

プルメウスと、バデータがもう1体のザハ・カイザードビシにつかみかかり押さえ込む

 

「怪獣たちも、生きようとしてる…‼︎なら、尚更、負けてらんないわ‼︎」

 

歩夢がGBCTセンチネルを起動し、ケーブルをパージする

背中のブースターが点火され、機体が大きく揺れ始める

 

 

「行ってください!隊長!」

「ここはまかせろ、歩夢!」

「この星も、怪獣たちも、人々も必ず守ります!」

「行ってこい、隊長!!」

「私たちの分まで頼む、アユム!」

 

 

隊員たちの激励を受け、GBCTセンチネルが急加速して飛翔する

 

「今行くわよ、イクサァァァァァァッ!!」

 

 

飛んでいくGBCTセンチネルを見遣り、白蓮騎は刀を下ろす

 

【ーご武運を。優しきお方】

 

役目を終え、崩壊していくパラボラ設備と共に、純白の鎧武者も光となって消えていった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

奈落の上に陣取り、優雅に杯を揺らすザハ

その目に、不可解なものが映る

 

高速で飛来する鉄の箱のようなモノ

歩夢の乗るGBCTセンチネルが、こちらに向かってきている

 

それを見たザハはただ手をこまねく

それと共に赤黒い液体から無数の塊が浮上し、怪獣に似た姿を形成し、GBCTセンチネルの前に立ちはだかる

 

ーギシャオォォォォォォン!!!

ーバォォオォォォォォォッ!!!

 

更にザハの周りを渦巻いていた邪竜の首たちのうち二柱も鎌首をもたげ、GBCTセンチネルへと殺到していく

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!道を、開けなさい!!!」

 

ロケットブースターをパージし、バルカン砲を乱射して怪獣もどきを退けながらGBCTセンチネルはただ真っ直ぐ進み続ける

二柱の竜頭も、その軌道を捉えきれずに接近を許してしまう

 

ザハが眉根を寄せ、手を上げる

 

ーオァァァァ…‼︎

ージャラララ…‼︎

ーグルゥァァァァァ…‼︎

 

更に三柱、別の竜頭が伸び、それぞれから光弾、灼熱の息吹、雷光が放たれていく

 

「なめんなァァァァァァァァァ!!!」

 

GBCTセンチネルは勢いを弱めることなく、雨霰と降り注ぐ致死の極大技を避け、奈落の目前へと迫る

 

ザハがニヤリ、と微笑む

 

ーギャオォォォォォォ!!!

ーシィィィィィィッ!!!

 

GBCTセンチネルを挟み込む形で、残る二柱の竜頭が迫り来る

が、その顎はセンチネルを捉えきれずに正面衝突してしまう

 

ザハが微かに、不快感を表情に見せた

 

「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

限界を迎え、スパークする機体を無理矢理翻し、GBCTセンチネルが奈落へと飛び込んでいく

 

それを見たザハは愉快そうに目を細め、ペロリと舌なめずりをした

 

 

「歩夢が、奈落に到達した…‼︎」

 

基地の計器で経過を見ていた駿河が呟く

安堵の息を吐く間も無く、けたたましいアラートが鳴り響く

 

「なんじゃこれ…GBCTセンチネルにチャージしたエネルギーが…ぐんぐん減っとる…⁉︎」

 

モニターに映し出されたGBCTセンチネルのパラメーター

そこのエネルギー数値が恐ろしいスピードで減少していたのだ

 

「まさか…あの奈落の大穴、アレも…ヤツの胃袋っていうんか!?」

 

 

GBCTセンチネルのコクピットでも、喧しいアラートが鳴り響き、歩夢の鼓膜を叩き続ける

 

まるでフルマラソンでも走ったかのような疲労感が歩夢にも襲いかかり、脂汗をかきながら息を切らしていた

 

GBCTセンチネルのエネルギーどころか、歩夢の生体エネルギーもこの奈落は奪い始めていたのだ

 

「……負けて、たまる、かッ!!!」

 

歩夢はギュッと胸を握りしめ、操縦桿を力一杯倒す

だが、想いも虚しく、GBCTセンチネルは徐々に減速していく

 

歩夢も、朦朧とする意識を繋ぎ止める力も枯渇し、次第に視界が闇に覆われていく

 

赤黒く脈動する奈落を、脱力した機体がゆっくりと降りていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ー負けるな、歩夢隊長!!!』

 

 

 

聞こえるはずのない、少年の声が歩夢の鼓膜を揺らす

 

「……玲、くん…?」

 

薄らと目を開けた歩夢は自分の耳の側に青い光の玉が漂ってきていたことに気づく

 

一つ、また一つと光の玉は数を増やしていく

 

 

『歩夢ちゃんならできる、オレは信じてるぞ‼︎』

『歩夢ちゃん‼︎頑張っておいで!!!』

 

 

「田中のおっちゃん……松野の婆ちゃん……」

 

 

『歩夢さんなら、きっとウルトラマンも助けられます!』

 

 

文博(ふみひろ)くん……」

 

 

 

『頑張って‼︎』

   『負けるなよ、GBCT!!』

            『ウルトラマン!!』

  『人間の意地を見せよう!!』

 『俺たちもついてる!!』

      『届いてくれよ、この声!!!』

 『グァァォオゥゥゥ…‼︎』

    『キュイィィ!!!』

 

 

 

たくさんの声が、人間の、宇宙人の、怪獣の、ありとあらゆる命の声がGBCTセンチネルを優しい青い光と共に満たしていく

 

「皆んなが…一緒に戦ってくれてる…‼︎」

 

 

ザハは明確に戸惑いを見せていた

 

ザハの君臨する奈落の大穴。今し方矮小な存在を飲み込んだその穴に向けて、無数の青い光の光線が注ぎ込まれていた

 

五道市の各地から、あるいは海を超えた先から、中には衛星軌道からも届いてきているものまで

 

神妃は困惑していた。その光は、食べても食べても減ることがない

竜頭たちと共に貪っても、いつまでも減らないのだ

 

その青い光を送り込む中継ドローンたちは静かに奈落の先を見つめていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

数時間前 オペレーション・イクサ開始が決まった同時刻

 

大学の研究室でたくさんの機械を漁りながら、(あらた) 文博(ふみひろ)はある機械を大急ぎで作っていた

 

「こんなもの、どうする気だよ文博⁉︎」

 

それを手伝っていた友人たちが疑問の声を上げる

 

「僕たちも、ウルトラマンを助けられるかもしれない…だから、僕にできることをしたいんだ‼︎」

 

文博の必死な様子を見た友人たちは、しばらく顔を見合わせていたがやがて悪戯っぽく笑って頷き合うと、それぞれのことをやり始めた

片方は図面に従って部品の組み上げを、もう1人は電話とメールを

 

「2人とも、手伝ってくれるの⁉︎」

「ダチが悩んでたら助けるのは当たり前だろ?」

「どうせなら、俺の他の友達とかにも声かけてみる。留学してるヤツにもなんかできないか…テレビ回線は生きてるらしいからそれで…」

 

文博の肩を友人が叩く

 

祐希(ゆうき)さんが亡くなってからお前、ずっと上の空なこと多かったのに、そんなお前が一生懸命に力になろうとしてるのって、あのウルトラマンとかGBCTの人らが恩人だからって話だろ、どうせ」

 

「GBCTならちょうど、俺も恩人なんだわ。足腰の悪い婆ちゃんのこと、しょっちゅう隊長さんが気にかけてくれて。中々笑わない婆ちゃんがその隊長さんのことは笑って応援しててさ。俺も、いつか力にならなきゃって」

 

友人ー松野が照れ臭そうに笑う

 

「とにかく!俺たちにできることなんかまだまだ少ないからやれるだけのことやってこう!指揮頼むぞ、文博!」

「ーうん!」

 

「大変だ!」

 

ゼミ室にあわてた様子でもう1人入ってくる

回線が使えないために直接人を集めてくる、と言っていたもう1人の友人。その背後からゾロゾロと多くの人が入ってくるが、その顔を見て文博たちはぎょっとする

 

地球人の中に紛れて、明らかに異形な者たち。宇宙人まで多くいたのだ

 

「おい、堺!なんでこんなー」

「いや、この人たちは…」

 

『話は聞かせてもらった』

 

一団から1人のレイビーク星人が歩み出る

 

『何か機材を作り出す必要があるのだろう。私や、ルパーツ星人、ペダン星人たちなら機械に明るい。量産も手伝えるだろう』

 

その言葉に文博が目を丸くする

 

「僕たちを、手伝ってくれるんですか⁉︎」

『ああ。そのつもりだ』

 

一団の中にいたバルキー星人が声を上げる

 

『確かに…地球人は俺たちを差別してるし、酷い目にあった仲間だって多い…けど、そんなヤツらばっかりじゃないことも、俺たちは知ったんだ!』

 

『こんな美しい星が、何の理由もなくただ滅ぼされるなんて間違ってる!僕たちも、今はこの星に共に生きる仲間ですから!』

 

続けて声を上げたザム星人の言葉に宇宙人たちが皆頷く

 

「……俺たちの方こそ、ウルトラマンや宇宙人に…ひでぇことしちまった…どんな時でもウルトラマンは守ってくれて、宇宙人だって、ただこの星が好きなだけなのに…」

 

今度は一緒にいた地球人の男性の1人がレイビーク星人と並ぶように前に出て頭を深々と下げる

 

「すまなかった…‼︎」

 

レイビーク星人ールプスは黙って男性の手を取り、握手する

 

『私たちの関係は、まだまだ難しいけれど、変えていくことはきっとできる。私も、ある地球人たちにそれを教えられた。共に、この星を守ろう!』

 

ルプスの言葉に男性が深く頷く

 

ゼミ室の、様々な人々が今、ウルトラマンやGBCTのために、それ以上に地球のために、一つになっていた

 

 

神代(かみしろ)博士、という研究者が残していた手稿にありました。地球の内部を流れるエネルギー源流・テラジューム。怪獣たちは食物などからそれを得て、あらゆる生き物の中でそのエネルギーを最も使いこなしている種族だと」

 

機材を接続し、ドローンの図面を皆に見せながら文博が説明する

 

「怪獣たちが、食物などからテラジュームを得ているなら、同じ地球から生まれた食物を食べている僕らも、微量ながらテラジュームを持っているはず…それを集めて送るんです!」

「何度聞いてもとんでもない話だよなぁ…テラジュームの波形を吸着できるドローンを町中に飛ばして、みんなの声援っていうエネルギーを集めてって…」

 

隣で聞いていた松野が乾いた笑いを漏らす

 

『理屈は…とりあえず理解した。だが、声はどう集めるんだ?私たちだけではたかが知れているぞ』

「それは…どうにか皆さんに知らせていくしか…」

「まぁこの状況だ。また俺たちで人海戦術してー」

 

「それなら俺たちに任せな!」

 

そこに現れたのは新たな一団

その手には多くの放送機材と、GBC(五道市放送局)の腕章がはめられていた

 

「テ、テレビの人ら!?」

「テレビが生きてるなら、今こそ俺たち記者やテレビ屋が体張る時ってな!元同期の元気娘が、別んとこで頑張ってるんだ。負けてられねぇよな」

 

おーっ!とテレビクルーたちが声を上げる

 

「腕っぷしが必要なら俺たちも使ってくれ!」

「俺たちはレスキュー隊員。俺たちも元同僚に負けてらんないのさ!」

 

前に出てきたがっしりした数人の男たちがそう名乗ると、後ろから1人の女性がその肩をはたく

 

「気合いはいいけど、無理は禁物よ。あなたたちも怪我して引退とかなったら大介もショックだろうし」

 

女性ー雨水(うすい) (あおい)は文博に改めて告げる

 

「私も含めて力仕事なら任せてちょうだい。弟には負けてられないわ」

 

 

暗く沈みゆく町中

ザハの姿のみを映し出していたテレビの映像が切り替わり、文博たちの姿が映し出される

 

『皆さん、まだ、まだ諦めないでください!』

 

文博の言葉に人々がぽつり、ぽつりと顔を上げる

 

 

『僕たちは、確かに一人一人はとても弱い。僕だって、一人じゃ何もできない。でもそれは、ウルトラマンやGBCTの皆さんもきっと同じなんです!』

 

『だからこそ今、僕たちの声が、ウルトラマンたちに必要なんです!』

 

『僕たちの、生きる意志が…生命の力が、彼らの助けにきっとなる!彼らに届かせるために…僕たちのドローンを町中に飛ばしています!』

 

 

文博が頭を下げる

 

 

 

『皆さん、もう一度…ウルトラマンとGBCTを、いや…皆さん自身の力を信じてください!!!生きることを、未来を、諦めないで!!』

 

 

 

文博がギュッと目を閉じながら祈るように告げる

 

しばし町中を沈黙が包む

荒唐無稽な願いだ。そんなもの、信じてくれる人がいるわけがない

 

 

『ウルトラマン、負けるな!!!』

 

 

文博たちの耳に声が響く

今しがた、文博たちが協力してなんとか完成させたドローンたち。その中継装置が声を拾ってきていたのだ

 

 

「負けるな、歩夢隊長!!!」

「リュウくん、私は君たちを最後まで信じる…私たちにはこれくらいしかできないが、負けないでくれ!!!」

 

玲と墨田老人が遥か彼方、奈落に向けて祈る

 

「歩夢ちゃんたちならなんでもできるさ!」

「あんたの頑張りは、誰よりも私らが知ってる!!」

「怪獣たちだって助けてきたんだ、ウルトラマンだって!」

「俺らの声がその力になるなら、いくらでも協力させてくれ!!」

 

「水輝、負けんじゃないぞ!!」

「報道魂を見せてやれ!ウルトラマンたちの勝つところ、届けようぜ!!」

『俺たちを助けようとしてくれたあんたらに、今なら恩返しができるんなら、俺たちも負けない!!』

『頑張ってくれ!!ウルトラマン!!GBCT!!!』

 

「大介、あんたなら大丈夫だろうけど私らもついてるわよ!!」

「行けぇ!!お前たちなら全部レスキューできる!!」

「負けんな大介!!!」

 

 

各地からウルトラマンを、GBCTを、今も戦い続ける皆を応援する声が、祈りが響いていく

 

「歩夢さん、イクサさん…僕たちにはこれくらいしかできません…きっと、歩夢さんはイクサさんを助けに全力で戦ってるんですよね」

 

「歩夢さんならきっと、ウルトラマンも助けられます!絶対、絶対に諦めないで…僕たちも力の限り祈ります!!!」

 

 

皆の声が、祈りが、沈みゆく町に響き、満たしていく

 

暗く澱んでいた空に青い清らかな光が浮かびはじめる

祈り、声援を上げる人々の体から立ち昇る青い光がー人々が持っていたテラジュームの輝きが、中継ドローンへと集まって奈落へと送られていく

 

 

ザハはその声に不快さを露わにし、赤黒い液体から怪獣もどきを何体も生み出し、空からはザハ・カイザードビシの大群を向かわせてくる

 

 

ーキュオォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

清廉な咆哮と共に、火炎弾が怪獣もどきたちを薙ぎ払い、ザハ・カイザードビシたちを撃ち落とす

 

鈍色の鱗を纏う龍ーリュウミャクノオロチが空から舞い降り、念動力で浮遊しながらザバを睨む

 

 

【ーこの星に生きんとするものを舐めすぎだ、魔の者よ】

 

【我らの鼓動は、途絶えはせぬ。この星の命は皆、貴様らが思うよりもはるかに力強い!!】

 

 

ーキュオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

リュウミャクノオロチがその体を青く光らせ、大量のテラジュームのエネルギーが放たれていく

 

ーゴァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

 

五道市から離れた岩神諸島でも、ガイアルドを筆頭に怪獣たちが咆哮し、テラジュームのエネルギーを送っていく

 

世界各地の怪獣たちも天に向けて吠え、その体からテラジュームを放出していく。それに合わせて空のザハ・ドビシたちを、迫り来るザハ・カイザードビシたちを撃ち落としていく

 

 

ーギャオォォォォォォォォ!!

ーキュイッ、キュイィィィ!!!

 

北米の森から、ハリネズミのような棘状の体毛を逆立たせる怪獣ーシャザックが子供らと共に天に吠える

 

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

ーキュイィィィィィィァァァァァァ!!!

 

モンゴルの大地を巡りあげ現れた古代怪獣たち、ゴルザは着陸したザハ・カイザードビシにタックルで応戦し、メルバは天空を舞いながらザハ・ドビシの大群を焼き払う

 

 

ークォォォォォォォォォ!!!

 

太平洋から飛び出したのはエイのような怪獣ーレイジャ

3匹の群れは、口から放つ青い光線でザハ・ドビシたちを焼き落としていく

 

 

「影法師よ!地上のイナゴどもは任せたぞ‼︎」

『おうさ!!』

 

宙舟(そらふね)村を背に立ち上がるは大妖怪オビコ

村に近づくザハ・ドビシの群れは影法師に飲み込まれ、ザハ・カイザードビシはオビコが投げ飛ばして火炎放射で焼いていく

 

『闇で包んだのが間違いよ!わしの本調子を引き出しおったのじゃからな!!』

 

オビコは彼方の空、五道市の方角を見据えて拳を掲げる

 

『負けるでないぞ、当代の玲武の‼︎それに、光の巨人ども‼︎』

 

 

人々の声、祈り

そして怪獣たちの命の鼓動が、テラジュームエネルギーとしてドローンの許容量すら上回る勢いで集中していく

 

バチバチと火花を上げながら、各地から光が、命の脈動がザハの下の奈落へと注がれていく。今や、奈落の闇は青い光で満ちんとしていた

 

 

【ーいつまで寝ている?貴様らの意志も、我らに見せてみよ、光を抱く者よ!!!】

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ーキュアァァァァ…‼︎

 

青い光に満ちていく奈落の中

歩夢は確かに、その目前を純白の羽を持ち、背に一人の女性を乗せた神話の怪獣が飛び去るのを見た

 

歩夢しかいないはずの奈落の中、GBCTセンチネルに誰かが並び飛ぶ

 

『また会えたわね。歩夢さん!』

 

そこにいたのは、イクサが救わんとしたルテミアだった

 

「ルテミア…⁉︎どうしてここに⁉︎」

『ユニジンに連れてきてもらったの。魂の残滓だから、長くはいられないけど…』

 

淡く輝くルテミアはその手にジャイロを取り出し、クリスタルをはめて起動する

 

《深化!グルジオアルテミス!!》

 

純白のグルジオへと変身したルテミアはセンチネルを優しく抱きしめ、背中のブースターを吹かせて駆け抜ける

 

だが、徐々にその光は崩壊していく…

 

『そろそろ限界みたい…』

「ーッ」

『そんな顔しないで。今イクサを救えるのはあなただけ』

 

グルジオアルテミスはセンチネルを奈落の奥へ投げ出す

 

『ーイクサを、お願いね‼︎』

 

 

消えゆくグルジオアルテミスとすれ違うように、新たな純白の翼が飛来してセンチネルを捕まえて飛んでいく

 

ークォォォォォォォォォ!!!

 

「エルシア!!」

 

ルシルのパートナーだった純白の怪獣ーエルシアが青い光を纏って奈落を飛ぶ

 

センチネルの機体も限界を迎えて崩壊、エルシアもすぐさま崩壊していってしまう

 

ークォォォォ……‼︎

 

悔しそうに、それでいて満足したようにエルシアの姿が消えていく

 

 

投げ出された歩夢の左手に輝きが灯る

 

青い輝きを放ち、それは失われたはずのイクサファーナスを作り出していく

 

 

その左手を、大きな手が掴み、そのまま奥へと放り投げる

 

一瞬すれ違うその姿に、歩夢が目を見開く

 

 

『……振り返るな。そのまま、行け』

 

『……お前は、それでいい。それが、俺の知る稲葉(いなば) 歩夢(あゆむ)というー愛すべきバカな隊長だからな』

 

 

頼もしい副隊長の優しい声が響く

歩夢は目尻を伝う涙を拭い、笑って前を向く

 

落ちていくその先、光を失ったイクサの姿を確かに捉える

 

 

 

「ー迎えにきたわよ。バカイクサァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

歩夢が、左手を伸ばす

 

 

眩い光に包まれた中に歩夢は立っていた

 

『ーったく、訂正するぜ』

 

その目前に、1人赤い人影が姿を現す

 

 

『ーお前ほどのバカはいないな、歩夢』

「ーどの口が言ってんのよ、イクサ」

 

 

歩夢が左拳を突き出す

 

「ーいつも通り、行くわよ‼︎」

 

イクサがそれに左拳をぶつけて応える

 

『ーああそうだな、相棒‼︎』

 

2人が共に、拳を空に突き上げる

 

 

《リンケージ!ウルトラマンイクサ!!》

 

ーサァァァァァァァァァァッ!!!

 

 

真紅の体に、青いラインを再び纏い

光の巨人が奈落より飛び出した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

奈落より飛び出した光を見て、ザハが愕然と目を見開く

 

「最初から全力で行くわよ、イクサ!!!」

『おし、来い!!!』

 

《マキシマムリンケージ!》

《ウルトラマンイクサ・五元絢爛(ごげんけんらん)!!》

 

ーサァァァァァァッ!!!

 

自身を喰らわんと伸びてくる竜頭を、五元絢爛と化したイクサが真正面から切り裂いて吹き飛ばす

 

ーグォォアアァアアァアアアァァァァ!!!

ーギシャウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

更なる邪竜が迫り来るが、ホシノハバキリによりその一撃を難なく受け止め、返す刀で二柱を切り裂く

 

そこに空からザハ・カイザードビシの大群が飛来してくるが、黄金と青の斬撃が撃ち落とし、白い旋風が薙ぎ払う

 

『歩夢、イクサ、おかえり‼︎』

 

イクサの隣にテラがビクトリウムジャグラーの姿で並び立つ

近くのビルの屋上に苑樹を肩に乗せたホロボロスも降り立つ

 

『ああ、ただいまだ!』

 

揃い立つウルトラマンたちに、人々が歓喜の声を上げる

 

 

ーグ、グゥゥゥッ!!!

 

明確に怒りを見せたザハが薙ぎ払うように腕を振るい、槍を無数に生み出して雨霰と降らせていく

 

ーサァァァァァァッ!!!

ーテァァァァァァッ!!!

ーグァァァァァウゥゥゥッ!!!

 

だが、もう2人のウルトラマンとホロボロスには通じない

難なく槍の雨を薙ぎ払い、ザハに3体が相対する

 

怒り狂うザハは、空からザハ・カイザードビシたちを集めんとするが、異変に気づく

 

闇に覆われた空から、光が漏れ出していたのだ

 

 

『ワイドゼロショット!!!』

「『ゼスティウム、光線ッ!!!』」

 

 

青い光の爆発が、蟲の暗雲を吹き飛ばす

 

世界各地でも、同じように光たちが蟲を薙ぎ払っていた

 

 

『オレたちを締め出したと思ったか?ざーんねん。オレたちも諦めが悪いのさ‼︎』

ーヌゥアッ!!!

 

『待たせたな後輩。空は俺たちと、諸先輩方に任せな‼︎』

『オーブスプリーム、カリバー!!!』

 

 

ザハの直上のワームホール越しに声が響く

 

押忍(オス)!遅くなってすみません‼︎」

『ワームホールの番犬みたいな怪獣にウルトラ手こずってしまったぜ…』

 

「ハルキさん!?」

『ゼット!!』

 

『あの程度で手こずるならまだまだだな、お前らは』

 

ゼットの隣に並び立つ鋭い目つきのウルトラマンーウルトラマンゼロがやれやれと首を振る

 

『こっちの蟲たちはオレたちが倒しといたぜ、後輩。そっちの地球は、お前たちに任せられそうだな』

 

閉じゆくワームホール越しに手を振るゼットと、ポーズを決めるゼロ

2人に確かに頷きを返し、イクサとテラがザハを睨む

 

ザハは自身の目前に赤黒い極大のエネルギー球を生み出し、イクサたちに向けて極大の光線を放つ

 

 

《束ねるは想い、重ねるは星の命!!》

 

《ウルトランス‼︎》

《ティグリス・ソウル‼︎》

 

《ホロボロス・レイオニックバースト‼︎》

 

 

イクサたちもそれぞれの最強技の構えを取る

 

 

「『フィフスライズ、光線!!!』」

『ティーゲル・テラ・シュトローム!!!』

灼炎豪烈爪(しゃくえんごうれつそう)!!!」

 

ーサァァァァァァッ!!!

ーテァァァァァァッ!!!

ーグァァァウゥゥゥッ!!!

 

 

3つの技が重なり、真っ向から光線に衝突

拮抗しながらも光線をそのまま押し込み、三重の一撃がザハの体を貫き、純白の衣を赤く染める

 

 

ーグ、グゥゥゥッ!!!

 

よろめきながら玉座の上に立ち上がるザハ

 

 

ーキァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!

 

 

絶叫がこだまする

破滅をもたらす神妃の体はそれと共に縦に裂け、中から赤黒い蛇のようなものがのたうちながら溢れ出す

 

蛇ー否、それは目も鼻もない、ただ貪り食う口のみを備えた悍ましい魔獣が渦を巻きながら、玉座の七竜を巻き込みその体積を膨れ上がらせていく

 

のたうつ肉塊の竜は次第にその姿を強靭な四つ脚を持つ超巨大な獣の姿に変え、赤黒き海へその巨体が降り立つ

 

 

 

ーキィアァァァァァァァァァァァァッ!!!!

 

 

 

女の金切り声にも似た身の毛もよだつ産声を上げ、両腕を振るう竜神の頭部から、新たに竜の首が枝分かれしながら伸び出し、天をも覆わんばかりの大角を形成する

 

姿を変えた神妃ザハは両手からエネルギー弾、体中の口から赤黒い光線を出鱈目に放ち、イクサたちの姿がその奔流に沈んでいく

 

 

眩い光の中、歩夢はただその異形の竜神を睨む

 

「どんな姿になっても無駄よ。一つになった私たちは、あんたらの空虚な滅びに負けたりなんかしない‼︎」

『例え大きな力が無くたって、何度ぶつかっても、オレたちはきっと繋がっていける!』

 

そこにリュウと苑樹が並び立つ

 

「形も意志も違っても、俺たちは同じ星に生きる同じ命。きっとどこかで手を取り合える!」

「何度間違えても、何度つまづいたとしても、きっとわたくしたちは、共により良い道へ歩んでいける!」

 

苑樹がバトルナイザー:EARTHを、リュウがテライグナイターを、そして歩夢とイクサがイクサファーナスを、それぞれ突き出し重ねる

 

天、地、人の力が束ねられ、新たな光を成して歩夢の左手に集まり、イクサファーナスがトライアッドファーナスへと姿を変える

 

前に歩み出た歩夢がトライアッドファーナスのレバーを引き、天高く掲げて放つ

 

トライアッドファーナスが展開し、青く輝く弓を成す

 

 

 

《トライアッド・リンケージ!!!》

《ウルトラマントライア!!!》

 

 

 

ートゥアァァァァァァァァッ!!!

 

赤黒い爆煙を青く輝く流星が地上から引き裂き、ザハの前に降り立つ

力強い4つの足が、赤黒き海の水面を踏み締め、光の中からその姿が露わになる

 

深い青のクリスタルがはまるプロテクターを、白銀の体に纏う雄々しき人馬。肩には、流星のようなアーマー、その左腕には大弓に似たトライアッドファーナスが輝く

 

それをモニター越しに見ていた皆が感嘆の声を漏らす

 

「ウルトラマンたちが…変わった!」

「隊長たちが、一つになった!!」

 

ートゥアァァァッ!!

 

前脚を振り上げながら、人馬一体の巨人ーウルトラマントライアが駆ける

 

ーキィアァァァァァァァァァァァァ!!!

 

ザハは悍ましい咆哮と共に前脚の付け根から竜頭を二柱解き放って襲い掛からせる

 

竜頭がトライアを飲み込む

 

《トライアッドファーナス‼︎》

《アローモード‼︎》

 

ートゥアァァァァッ!!

 

が、左腕のトライアッドファーナスを弓へと変形したトライアが放つ光の矢により貫かれ、迫るもう一方の竜頭共々弾け飛ぶ

 

脱力した竜の首を足場にしてトライアが駆け上がる頭部と大角を成す無数の竜頭の口から破壊光球が放たれていくが、トライアのスピードの前にはそれも追いつけない

 

ーキィアァァァァァァァァッ!!!!

 

竜頭が変じた右腕が叩きつけられるが、それすら軽やかに交わして足場がわりにして跳躍、右大角に狙いを定める

 

ートゥアァァァァッ!!

 

トライアの右腕から青い光の爪が伸び、一閃にして大角を切り落とす

 

ーグァァァウゥゥゥッ!!!

ーギャオォオォオォオンッ!!!

ーギシャォォォォォ!!!

 

苦悶するザハの背面がのたうち、邪竜の首が三柱解き放たれる

ザハの巨大な背面を足場に着地したトライアは華麗にターンしながら矢を乱射し、一柱を蜂の巣にして撃破すると迫る噛みつきを回避して股下へと移動。巨体を潜り抜けながら矢と爪撃を放ちながらザハの体勢を崩して、後方から迫る邪竜の頭を極大の一矢で貫きながら再度飛翔

 

ーキィアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!

 

右大角から襲い掛かる無数の顎を全て切り伏せ、右大角もそのまま切り落としてザハの真正面に着地する

 

ーキ、キ、ギィィ…キィアァァァァ…ッ!!!

 

ザハは満身創痍となった体を引きずりながらも頭部の顎を三叉に開き、今まで以上に高密度のエネルギーをチャージしていく

 

ートゥアッ!!!

 

トライアはそれに相対しながら右手を天に掲げる

 

 

『《天》に生きる命!』

 

「《地》となり息吹く命!」

 

「「《人》として歩みゆく命!!」」

 

 

イクサ、苑樹、歩夢とリュウの宣誓に呼応して、掲げたトライアの右手の先に赤、青、そして緑の光の巨大な矢が出現し、渦巻きながら一本の極大矢を作り出す

 

トライアッドファーナスから分離した弓部分を左手に掴み、極大矢を番えたトライアは四脚で大地を踏みしめながら、その矢を引き絞る。肩のアーマーが展開され、青いテラジュームの極大光が吹き出して輝く

 

星と共に生きる命をたちを束ねた矢が螺旋に渦巻き、極光を放つ

 

ーキィアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!

 

ザハの口から禍々しい極光が放たれる

 

 

 

『「「「トライアッド・アローレイ!!!」」」』

 

ートゥアァァァァァァァァッ!!!

 

 

 

4人の声が重なり、極光の矢が放たれる

破滅の光を難なく引き裂きながら、三重の流星は空へと駆け、ザハの頭部を撃ち抜いた

 

破滅の赤き竜は、断末魔すら上げることなくボロボロと崩壊をはじめ、耐えきれなくなった体が頭から爆散していく

 

ザハの肉片が降り注ぎ沈みゆく赤黒い海も次第に水かさが引き、奈落へと流れ落ちて固まり、ぽっかり空いた大穴も元の大地へと戻る

 

 

その様子を眺めていた駿河が顔を覆って大いに笑う

 

「やりよったわ、あの大バカめ‼︎」

 

 

特殊自衛隊基地で黒斗も安堵の息を吐き出す

 

「やはり、君には敵わない」

 

 

トライアの姿が光に包まれ、イクサとテラ、苑樹が背に乗るホロボロスに分離して頷き合う

 

その姿を見た人々は、歓喜の声を上げた

 

闇に包まれつつあった五道市を、爽やかな太陽の光が包み込んでいった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

根源破滅神妃の撃破から数ヶ月

 

GBCTと特殊自衛隊、ヴィクターは町の復興や組織の再編に大忙しの日々がしばらく続いた

 

黒斗は操られていたとはいえ、侵略者に与した責任を取り職を辞そうとしたが、特殊自衛隊員の多数の声により、しばしの謹慎で許された。これからも黒斗自身のやり方で平和を守る組織として安泰に続いていきそうだ

 

GBCTはこの騒動で判明していた潜伏していた友好異星人たちや怪獣の保護に追われることになった。異星人たちは水輝やルシル、怪獣たちは歩夢やリュウ、大介たちで分担してようやく保護が完了した

 

滞在が認められた異星人たちに、戸惑う人は多くいたものの歩夢の知り合いや水輝の手引きで打ち解けていく人々も少なくない。多くの種族が助け合っていける町に五道市が変わっていくのも、遠い未来ではないのかもしれない

 

ヴィクターはガウルの不始末などの清算のために一度本部への帰還が余儀なくされ、既に五道市からは去っていった

 

五道市の復興はGBCTや特殊自衛隊だけでなく、多くの住民や異星人との協力もあって想定よりも早く進んでいる

 

 

水輝は自立のためにハイルたちから離れて暮らしてみることを選んだホシとルームシェアをはじめた。同時にホシが興味を示していた動画サイトで動画投稿も2人ではじめたらしい。ホシのあどけない様子と、それに妹のように接する水輝のおかげで、今や大人気配信者にも届こうとしているとか

 

諸々のことが落ち着いた後、大介はルシルを連れて両親とお姉さんに結婚を望んでいることを告白しつつルシルを紹介した。宇宙人故に反対されることを覚悟していたが、「こんな美人さん二度と会えないかもしれないわよ‼︎」とほぼ二つ返事で認められ、あれよあれよと結婚式まで行った。家族や仲間たちから祝福され、最高に幸せな笑顔を浮かべていた2人の写真が、新しく用意したリュウのコルクボードに大切に飾られている

 

リュウは苑樹と共に通信制の学校で本格的に勉強をはじめ、その関係で歩夢の家から苑樹のいる玲武神社に居を移していた。まだまだ若く初々しい2人だが、その心の距離はもう相当近いのだろう。ヤキモチを妬いたホロボロスにたまに吠えられるのは困りものらしいが

 

 

駿河はヴィクターに帰る前に文博と友人たちを訪ねていた

なんでも空いたA班の代わりの部署を作るために、若い人材として文博たちが欲しいらしい。神代博士の断片的な論文をもとに人間たちからテラジュームを抽出・収集したドローンを作り出した技術力と閃きが駿河目に止まったのだ

文博自身はまだ困惑していたが、友人たちは乗り気だったところを見るに、そのうち本当にGBCTの新たな頼もしい仲間になってくれるかもしれない

 

「部署の名前?新しい風を吹かす、新たな星ってことで『ブランニュースターズ』って決めとるわ。いい名前じゃろ?」

 

 

霧慧神獣教自体は火煙の死で空中分解したが、まだその教えを元に活動を続けている残党はいるらしい。破滅魔人でもあった火煙亡き今、何かしでかすとは思えないが、特殊自衛隊とGBCTは目を光らせて監視している

 

怪獣たちの出現はひとまず落ち着きを見せ、たびたび現れる怪獣たちもGBCTにより無事保護されるものがほとんどである。保護の難しかった怪獣たちも研究が進み、毒ガスを放つエリガルや気性の荒いフランベルス、そしてルーガルフも新たに岩神諸島の仲間入りを果たした

ガイアルドが優しく見守る岩神諸島はますます賑やかさを増している

 

 

最大の滅びを退け、地球はまた数多の命が共に生きる星として、青く輝きながら回っていく

 

そんな命ある星を救った勇者の1人は、ある決断をしていた

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

大きなコンテナとブースターを装備した宇宙仕様のGBCTセンチネルを前に、リュックを背負った歩夢が立つ

 

そこに水輝たちGBCTの仲間が並ぶ

 

「本当に…行ってしまうんですか?隊長」

「まぁね。地球もまだまだ色んな問題山積みだけど、それ以上にほっとけないこともあるからさ」

 

水輝の言葉に歩夢が笑って頷く

 

 

歩夢は、イクサと共に宇宙にーイクサの故郷でもある宇宙に向かうことを決めていたのだ

 

かつてイクサが言っていた、弱い者が虐げられるだけの宇宙

それを歩夢は黙っておけないから、と旅に出ることにしたのだ

 

 

「前に言った通り、GBCTの隊長は大介、副隊長は水輝に任せるわ。レスキュー経験もある大介ならきっと皆をきっちり動かせるでしょうし」

 

大介はルシルと並んでその言葉を静かに聞いていた

 

「いやー、無責任なことするようだけどごめんね。どうしても私は、私の相棒の宇宙が酷いことになってるままなのが許せないみたい」

『歩夢…』

「じゃあ、私がいない間のGBCTは任せたわよ。皆」

 

はぁ、と大介が大きく息を吐き、水輝と頷き合って口を開く

 

 

「「お断りだ(です)」」

 

 

「ーは?え!?」

 

予想外の答えに歩夢が固まる

意図を理解したのか、ルシルが微笑みながら口を開く

 

「確かに、無鉄砲で無責任で無茶苦茶だが、だからこそ色々な奇跡を起こして、私たちが集まれたんだ。そんなGBCTの隊長枠に代わりなんかいないだろう?アユム」

 

大介がルシルに続けて口を開く

 

「そういうことだ。俺は隊長なんかには、まだなれない。隊長代理くらいがちょうどいい」

「私も副隊長なんて荷が重いですから、大介隊員と2人で隊長代理になります。歩夢隊長は、隊長のままで行って来てください!」

 

「え、いやそんなこと…」

 

苑樹がリュウと共に歩み出る

 

「どうせ向こうでも、いつも通りに戦って助けて来るなら、問題ないでしょう?あなたの意志は、GBCTの意志でもありますから」

「苑樹の言う通りだ。どこに行っても、きっと歩夢は歩夢だ」

『お、わかってんじゃねぇか、リュウ』

 

リュウがテライグナイターを構えながら告げる

 

「この星は俺が、いや俺たちが必ず守る。人々も、怪獣も、必ず救っていく。だから安心して、別宇宙でもGBCTの隊長をやってくれ」

 

リュウの言葉を聞いて、照れくさそうに笑いながらその頭を撫でる

 

「ー言うようになったじゃない!」

 

歩夢はGBCTの面々を見つめて、確かに頷く

 

「わかったわ。じゃあ、向こうでもGBCTとしていっぱい、色んな人を、怪獣を助けてくるわ!お盆と正月くらいには、帰ってくるから!」

 

歩夢がイクサファーナスを構える

 

《リンケージ・ウルトラマンイクサ》

 

赤い巨人がGBCTのメンバーの前に姿を現す

イクサは、GBCTセンチネルを抱えて手を上げる

 

『ーへへっ、じゃあな。って言っても、歩夢の言う通り盆とか正月には帰ってくるけどよ』

 

イクサは空の彼方を見上げ、飛び立つ

 

ーサァァァァァァァッ!!!

 

その赤い流星を見届け、GBCTの頼もしい仲間たちは笑顔で手を振り続けていた

 

 

地球から飛び出したイクサはある星を目指していた

 

『まず最初の目的地は、スタンデル星だろ?』

「そうね。ランダルのお墓は地球に作ったけど、やっぱり故郷にもお墓を立ててあげないと」

『だな。大切な仲間だしな。だけど、あの星に墓作る文化なんてあったっけな…』

「なかったら、私たちが初めての人になればいい。戦争がずっと続いてるらしいあの星に、死を悼む文化ができたなら…」

 

「ー戦争もいつか、やめようって思ってくれるかもしれないしね」

 

『…多分気の長い話だぞ。墓作るとこでも、そんな簡単に戦争はなくならねぇし』

「それでいいの。私たちはきっかけを作るくらいで。道を正していくのは、その星の人たちの仕事だから」

 

 

「さぁて、これからもいつも通り行くわよ、イクサ!」

『ああ、とことん付き合ってやるさ、相棒!』

 

 

ーサァッ!!!

 

生命溢れる星ー地球

あらゆる命が、皆共に生きる青い星から、赤い流星が宇宙へと旅立っていった




ご愛読ありがとうございました

イクサたちのこれからも、お楽しみに
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