閑話1「好敵手と夜明けの旅立ち」
地球から遥か離れた先の宇宙空間
闇の広がるその先へ、赤い流星が駆け抜ける
「地球から何百光年も離れてる分、ウルトラマンの力でもかなりかかっちゃうのね、やっぱり」
『だな。ワープで距離を詰めないと最高速度でも何百年かかっちまうからな』
赤い流星ーウルトラマンイクサ。その内で
イクサと共に、地球の外でGBCTの活動を広げていくことを選んだ歩夢はまずある惑星へと向かっていた
『見えたぞ。ランダルの記録データが間違ってなきゃ、アレがランダルの故郷のー』
イクサが制動し、ある星の上空で止まる
スタンデル星
地球で命を落としたかけがえのないGBCT副隊長、ランダルの故郷となる星である
ちょうど夜になっていたその星の表面でいくつもの赤い光が瞬いていた
『スタンデル星は昼の種族レドルと夜の種族アボルバスとの戦争が続いてる星だ。まだドンパチやっているみたいだな、やっぱり』
戦争によって夜が彩られる。幻想的ながらも血生臭い光景に歩夢がわずかに眉を顰める
「……戦争中のところにいきなり飛び込むのはまずいわね。どこか戦火が見られないあたりに降りましょうか」
『だな。せっかく墓作っても、いきなり壊されたりしたらランダルもたまったもんじゃないだろうしな』
「違いない…」
ーサァッ!!
その身を赤い光と変えながら、イクサと歩夢がスタンデル星へと降り立っていった
その赤い流星を気にも留めず、夜の種族アボルバスたちは昼の種族レドルたちが作り出した自動兵器や捕虜の宇宙種族たちと戦闘を続けていた
ただ一人を除いて
『…なんだありゃ?面白そうな予感がするなぁ…‼︎』
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スタンデル星 ポイントR-1056
イクサから歩夢に戻り、センチネルを操縦してスタンデル星に着陸する
「大気組成は地球と近いし、重力もそこまで変わらないのねスタンデル星って」
『この宇宙でも変わらないなら、連中は昼と夜、どちらかにしか活動できないからどちらでも活動が可能な他の星の種族を拉致して戦わせてる。捕虜の連中にいちいち宇宙服なんか作ってられないから、そりゃ自分たちの星に近い環境から攫ってくる方が早いからな』
「うっわ嫌な都合…」
うげぇ、と顔を顰めながら歩夢が装備を整えていると、センチネル内のアラートが鳴り響く
「5時方向から急速接近する生体反応…まさか、もう見つかっちゃったの!?」
驚く歩夢を衝撃が襲う
5時方向からの砲撃。センチネル周辺に着弾したそれで機体が大きく揺れていた
「ランダルから好戦的な種族って聞いたけど、ここまでなのは聞いてないんですけどーーーーーー!?!?!?」
歩夢が目を回しながらもセンチネルから飛び出し、近づいてきたそれを目視する
ホバーで推進する細身のバイクに跨っていたのは、ランダル同様の姿をしたスタンデル星人。違うのはその体色は青く、目は獰猛な赤色に輝いているということ
青色夜型宇宙人スタンデル星人アボルバスの一個体はホバーバイクのエンジンを止めると、手にしていた改造ライフルを肩に乗せ、黒い腰布をはためかせながら大股に歩夢たちに歩み寄ってくる
『◇◇‼︎ ◇◇◇◇◇ー』
「ちょいちょい、待って、いやまぁそうか…スタンデル星の種族だから地球語なんか話さないわよね…」
独特な発声の言葉に歩夢が困惑している様子を見たスタンデル星人アボルバスは懐から何やら装置を取り出し歩夢にかざすと、ツマミを操作しながら再び口を開く
『◇◇ーあー、あー。聞こえるか?というか、言葉の意味が伝わるか?』
「!?」
『オーケイ、悪かったなビジター。これなら喋れるだろ』
驚きながらも歩夢が頷いたのを見てアボルバスは装置をしまう
『改めて…よォビジター。こんな硝煙くせぇ星にわざわざ降りてくるたぁ、面白そうなヤツだなお前!』
アボルバスは饒舌ながら荒々しい口調でこちらに話しかけてくる
『俺様はダーニッド。アボルバス最高峰のメカニック様だ』
わざわざ自己紹介してきたアボルバスをキョトンとした顔で見つめる
「……話のできるヤツ?もしかして…」
『確かにそんな感じするな…』
アボルバスーダーニッドはイクサと会話する歩夢を興味深く眺めながら、手にしたライフルの銃口を向ける
『ーテメェ、いやテメェらか?面白ぇ匂いがプンプンしやがる』
ダーニッドは獰猛に笑うとその身を輝かせ、巨大化させていく
『本気でかかってきてみろやビジター‼︎俺らの夜側に殴り込んできたなら、それくらいの実力はあるだろうが‼︎』
巨大化したダーニッドを見上げて歩夢が頭を抱えながらため息を吐く
「マジで血の気が多いのねコイツら…」
表情を正し、歩夢がイクサファーナスを構える
「しゃーない、いつも通り行くわよ、イクサ‼︎」
『ーああ、オレたちの力見せてやろうぜ相棒‼︎』
《アユム:イクサイテッド》
イクサファーナスをはめた左拳を歩夢が突き出し、イクサの左拳が受け止め、背中合わせになった2人が拳を空に突き出す
《リンケージ:ウルトラマンイクサ》
ーサァッ!!!
巨大化したダーニッドの前にイクサが姿を現し、構える
『行くぞオラぁ!!!』
ダーニッドが手にしたライフルを乱射する
イクサはそれを避け、叩き落としながら肉薄し、ダーニッドに組み付く
ーサァッ‼︎
そのまま膝鉄を撃ち込み、連続で拳を撃ち込んでいく
『しゃらくせぇッ!!』
ハイキックをライフルの銃身で受け止めると、ガチャリとそれを展開して撃鉄だったレバーを引く
銃身側面から飛び出した刃が高速で回転し始め、火花を散らす
『いってぇ!?そんなのアリかよ⁉︎』
慌てて脚を引っ込めてさすりながらイクサが構え直す
『ハハハッ‼︎オレ様謹製のイカすライフルだ‼︎』
「確かにカッコいい…私も欲しいかも…」
『おおいどっちの味方だ歩夢!?』
チェーンソーに変形したそれを振り回しながらダーニッドは愉快そうに笑う
『いいねぇ‼︎やっぱビジターは退屈しねェ!』
「こんな争い続けて、楽しいっての⁉︎」
『楽しい?楽しくねェ、面白くなんかねェ、さッ‼︎』
チェーンソーを白刃どりしたイクサを蹴り飛ばしながらダーニッドが猛り、夜闇の空に吠える
『この星は寝ても覚めても戦争、戦争、戦争!そればっかだ‼︎まぁバトるのが楽しいのはオレもそうだがな』
『だけど、どいつもコイツも進歩しねェ‼︎技術の使い方も変わりゃしねェ!!!壊して、作って、壊しての繰り返しッ‼︎ああつまらねぇ‼︎最高につまらねぇ!!!』
ダーニッドの叫びを聞いて歩夢はその手を下ろす
「…そこまで思うなら、なんであなたは戦いをやめないの?ランダルみたいに…」
歩夢の言葉を聞いたダーニッドが、ピタリと動きを止める
『……なんだと?』
「あなたは、なんで戦いをー」
『そうじゃねぇ‼︎その次だ‼︎誰みたいにッつった⁉︎』
思わぬ剣幕で詰め寄ってきたダーニッドに面食らいながら、歩夢が答える
「い、いや、ランダルって…」
その名前を改めて聞いたダーニッドは左手を額に当てるようにして天を仰ぐと、チェーンソーを再びライフルに戻し、腰にしまう
『……おい、テメェら。少し面貸せ』
『……は?』
『そのランダルってヤツの話、聞かせろや』
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人間大まで戻ったダーニッドは歩夢と共にセンチネルの傍に腰掛け、ランダルのことについて聞かれるままに話して聞かせた
ダーニッドは先程までの饒舌さが嘘のように、静かに話を聞いていた
歩夢の話が終わり、ランダルが亡くなったことを聞いたダーニッドははぁ、とため息を吐く
『……野郎め、勝手に満足して逝きやがって…』
ダーニッドは夜闇の中、静かに口を開く
『ランダルは、オレのただ1人のライバルだった。戦争ばっかのくだらねェこの星で唯一。ヤツの作戦や作るものはどいつもコイツも最高に面白かった』
『レドルとアボルバス。面合わせて話したことなんか無いが、ヤツはオレの作ったもんにバカ正直にぶつかって、バカみてぇなやり方で追いついて乗り越えて、それをまたオレが乗り越えて…』
ククッ、と寂しそうに、それでいて愉快そうにダーニッドは笑う
『ー最高に面白ェ時間だったよ。あの時は』
それを歩夢はどこか寂しそうに眺めていた
『フラッといなくなったかと思いきや、テメェはテメェで最高に楽しんで逝きやがって、ズルい野郎だ』
「……ランダルは最期まで真剣だった。そんな遊び半分みたいに…‼︎」
ードンッ!!!
歩夢の反論に、ダーニッドがセンチネルの機体側面を殴りつけて応える
『オレにとっては「面白さ」が命を燃やすほど価値のある宝なんだよ…ッ‼︎』
真剣そのものなその言葉に、歩夢がハッと目を見開く
ダーニッドは歩夢たちに背を向けて去っていく
『邪魔したな、ビジター。ヤツの墓とやらを作るなら邪魔なんかしねぇさ。丁度ここらは廃棄区画でバカな戦争野郎どもが暴れることもねぇからピッタリだろうさ…』
去っていくその背を見ていた歩夢が立ち上がり、ダーニッドの背に問いかける
「もう一度聞くわ、ダーニッド。そこまで思うなら、なんであなたは戦いを辞めないの?」
ダーニッドが脚を止め、ため息を吐き出す
『オレは、これ以外に今は面白いことを知らん。だから…どのみちこう生きるしか無いんだよ』
諦めたように告げるその背を見たまま、歩夢は両手を腰に当てて胸を張って告げる
「じゃあ、それ以外を知ったら、この星の争いも止めてくれる?」
『……何の話だ?』
振り返るダーニッドに歩み寄り、笑顔で右手を差し出す
「ー私たちについてきてよ。新しいGBCTの、臨時メカニックとしてさ」
『…………は?』
困惑するダーニッド。だが歩夢はその手を下げない
『おい歩夢⁉︎いいのかよ、そんないきなり』
「いきなりじゃないわよ。GBCTとして活躍していこうと思ったら、私機械オンチだからメカニックは欲しかったのよ。ランダルと肩を並べてたってなら、申し分無いわ」
歩夢がふふん、と得意げに答え、どこか懐かしむように胸ポケットをーランダルの形見が入ったところを撫でる
「それに、放っておけないのよ昔から。こういうつまらなそうな顔してるスタンデル星人は」
『テメェ、勝手に何決めてー』
詰め寄りかけるダーニッドの前に歩夢が人差し指を突き出す
「あなたは、退屈なこの星から出て変われるかもしれない」
そして、中指も伸ばしてピースを作ると、自分にも向けてニッと笑う
「私たちは、この星の戦争を止めるきっかけを作れるかもしれない」
「こんなwin-winな取引、最高峰のメカニック様なら、逃がしちゃうワケないわよね?」
しばし歩夢の話を黙って聞いていたダーニッドが諦めたように笑う
『クソが。なるほど…そりゃあ帰ってこねぇわ。こんな面白ェヤツに出会っちまったら』
ダーニッドが顔を上げ、歩夢を見据える
『聞き忘れてたぜ。テメェら、名前は何だ?』
「大型生物対処部隊、GBCT隊長の
『オレはイクサ。元怪獣ハンターで、今はコイツの相棒でGBCTの一員みたいなもんだ』
「みたいもんじゃないでしょ?もう立派な隊員よ」
歩夢の手を、ダーニッドの大柄な手が掴む
『ハッ、精々退屈させてくれんなよ、歩夢の大将にイクサ』
「交渉成立!あ、でももう一つだけ約束!」
歩夢がまた人差し指を立て、ダーニッドに告げる
「無闇に壊したり、殺したりはしないこと!余程のこと以外は、私たちは平和的解決が主だからね」
『成る程、それがテメェらの流儀ってワケだ。いいぜ、隊の規律を守るのは基本の中の基本だ』
ダーニッドが伸びをしながら肩を鳴らすと、GBCTセンチネルを振り返りながら告げる
『さて、と。ここを出るならオレ用の部屋がいるな。オレは光の下じゃ最悪死んじまうし。このコンテナ借りるぞ大将』
「いいけど…地球製の機械わかるの?」
『んなもん、ちょいと見ていじりゃ全部わかるから心配いらねぇよ』
コンテナに乗り込もうとするダーニッド
ふと、何かを思い出したように振り返る
『いや、ちょっと待て。先にすることがあったな』
歩夢はダーニッドの言葉に首を傾げる
『大将。テメェの言う「ハカ」ってヤツはどんなもんだ?』
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しばらくして、改造の終わったGBCTセンチネルが離陸。夜明けの太陽が見えてくるスタンデル星の地表から離れていく
『遮光機能はオールグリーン。問題ねぇ、さすがオレ』
コンテナの内部を改造して作り出した専用工房からの通信を聞き、歩夢が感嘆の声を漏らす
「最高峰のメカニックって伊達とかシャレじゃなかったのね…」
『ったりめぇよ。このくらいできなきゃどうする?』
遠ざかっていくスタンデル星を振り返って眺める歩夢が胸ポケットを掴む
「……おやすみ。ランダル」
それだけ告げて、GBCTセンチネルはスタンデル星に背を向けて去っていく
工房でその言葉を通信越しに聞いていたダーニッドはフン、と腕を組みながら愉快そうに笑う
『ゆっくり眠れや、好敵手。テメェのお気にには傷一つ付けさせねぇからよ』
スタンデル星の廃棄区画、その片隅
廃材で作った十字架と板だけ備わる簡素な墓がひっそりと一つ立っている
そこの板には、スタンデル星の言葉と地球語が並んで書かれていた
『最高の好敵手・ランダル ここに眠る』
『頼れる副隊長にして最高の友人・ランダルの安らかな眠りを祈る』
イクサの宇宙に向かう歩夢たち
その旅路を、次元の狭間より翠の凶星が襲う
流れ着いた先は、別宇宙の地球
そこで歩夢たちは、新たなる光と虹の神と邂逅する
次回ウルトラファイトイクサ
PHASE:BLAZAR 01
「邂逅と神との対話」
神との対話の果てに、何を見る