ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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ウルトラファイトイクサ PHASE:BLASAR
邂逅と神との対話


歩夢(あゆむ)を乗せたGBCTセンチネルが虹色の空間を行く

 

「はぇー…これがワームホール移動…前に突入した時とはやっぱり雰囲気違うのね‼︎」

『この宇宙には様々な綻びがある。そこを見つけてしまえば、色んな宇宙に移動していけるワケだ。ただ開くのにも結構エネルギーがいるから短期間に何度も使うのはムリだがな』

 

地球を飛び出したイクサはスタンデル星に向かい、ランダルのお墓を作り終わった後にイクサがかつていた別宇宙を目的地としていた

 

宇宙空間に見つけた「次元の綻び」にイクサがイクサファーナスでアクセスし、ワームホールを開いてその中を移動している

 

 

『ウルトラマンってのは神秘の巨人って話だが、ここまでデタラメできんのかウルトラマン様は…とんでもねぇが、最高に面白ぇな。ハハッ‼︎』

「…楽しそうで何より」

 

コクピットに響いてくる「もう1人」の愉快そうな声に歩夢が苦笑しながら応える

 

その声の主は、センチネルが背中にドッキングした大型コンテナの中ー自分で改造して作り出した「自室」の暗闇にて赤い目を光らせていた

 

『いきなり別宇宙の旅ができるたぁ、テメェらについてきてやっぱり正解だったぜ』

 

 

暗闇の中にいたのは、ランダルと同じスタンデル星人

だが、彼は昼の種族レドルではなく、より粗暴で好戦的な夜の種族アボルバス

 

歩夢たちが新たな旅の出発点としてスタンデル星に降り立った時に突然ケンカを吹っかけてきた自称アボルバス最高峰のメカニック、それが彼ダーニッドだった

 

紆余曲折あって仲間入りを果たした彼は、左腕にGBCTの腕章が巻かれている

 

 

ートゥルルル……ピッポ、ピッポ…

 

と、音が聞こえるはずのないワームホール内に電子音のような不可解な音が響く

 

「…?何の音?」

『音…?』

 

GBCTセンチネル機内に唐突なアラートが響き渡る

 

『強烈な電磁波反応だぁ…⁉︎ EMP兵器でも飛んできてんのか⁉︎』

「EMPですって⁉︎」

 

歩夢がコクピットから外を見やる

 

ートゥルルル……ピッポ、ピッポ…

 

前方から黒色の隕石のようなものが迫ってきているのが一瞬見え、その隕石から放たれた緑の稲光にGBCTセンチネルが包まれる

 

コクピット内の計器類がショートし、火花を散らす

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

機体制御を失ったGBCTセンチネルがワームホール内を落下していく

 

『クッソが…ッ⁉︎直撃だ‼︎機器類全部イカれちまった‼︎』

「え、ちょっそれってまずくない⁉︎」

『このままじゃ、どこに飛ばされるかわからない…ッ⁉︎オレもまだ巨大化できるだけのエネルギーが…‼︎』

 

バチバチとショートしながらGBCTセンチネルが落下していく先には、ある宇宙に繋がってるらしい穴が偶然に開いていた

 

その先に、見慣れた星と似たものがあることに歩夢は気づく

 

「あれって…地球⁉︎」

『大将の星か⁉︎ならギリギリ都合がいいが…』

『歩夢の宇宙の地球とは違う地球だぞ。色々と未知数な…』

「とはいえ、地球ならまだ勝手知ったる星だし何とかなる‼︎」

 

歩夢たちはそのまま、どこかの宇宙の地球へと落下していく

 

ートゥルルル……ピッポ、ピッポ…

 

GBCTセンチネルを襲撃した凶星も、またその穴へ向かってゆっくりと移動していた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ある山間部エリア

 

ーキシャオオオゥゥゥゥゥゥッ‼︎

 

咆哮と共に黄色の体表を持つ首の長い怪獣が暴れ、山を崩し始めていた

 

遠景にその怪獣を見上げながら、白いハイエースが走っていく

その車体の側面には「SKaRD」の文字が見られた

 

「こちらモッピー、50m級怪獣・個体名レッドキング、目視で確認」

 

ハイエースを運転していた機動隊風のプロテクターを含む服の男性が通信越しに伝える

 

暴れるレッドキングの目前、そこにジェット噴射しながら飛行してきた巨体が着陸して相対する

 

ーグォォォォオン…‼︎

 

駆動音を鳴らしながら立ち上がるそれは、怪獣のようなシルエットをしていたが、機械で構成されているらしく、体の各所には砲門やブースターのようなものが見られる

 

「こちらアースガロン、現着」

「前の個体と同じく暴れん坊な個体…ここで食い止める‼︎」

 

アースガロンと呼ばれた機械の怪獣の足元付近に停車したハイエースから機動隊服を着た男性2人と女性が1人、手にライフルのような大型武器を持って降りてくる

 

「作戦通り、テルアキとアンリはアースガロンでレッドキングを攻撃!俺とエミ、ヤスノブは地上から援護に回る‼︎」

『ウィルコゥ‼︎』

 

『ウィルコゥ‼︎』

「アースガロン、CQCモード‼︎」

 

アースガロンとが疾走し、レッドキングとぶつかる

 

ーグォォォォオン!!

ーキシャオオオゥゥゥッ!!

 

巨体の衝突により大地が揺らぐ中、地上部隊が山肌を登りながら射撃を行い、レッドキングの注意をばらけさせる

 

ーキシャオオオゥゥゥッ!!

 

鬱陶しげにレッドキングが振るう尻尾をアースガロンが掴み、巨体を引きずる

 

『おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎』

 

アースガロンを操縦する女性ーミナミ・アンリ隊員の気合いが乗った叫びと共にレッドキングが投げ飛ばされる

 

ーキシャオオオゥゥゥッ!?

 

山肌に叩きつけられたレッドキングは体を震わせて立ち上がると、首をドラミングしながら近くの山肌を殴りつけ、転がり出た岩を掴んでアースガロンへと投げまくる

 

「アースショットで迎撃しながら再接近‼︎」

「ウィルコゥ!!!」

 

アースガロンに同じく乗り込んでいた機長のナグラ・テルアキ副隊長の指示に従い、アンリ隊員の操縦でアースガロンが両腕のバルカン砲を斉射しながら接近してタックルを喰らわす

 

よろけたレッドキングは苛立たしげに首をバシバシ叩いてドラミングすると、足元から巨大な岩を掘り起こして両手で持ち上げる

 

そこを、山肌から3人の隊員が狙う

 

「手元がお留守だよ」

「発射ぁ‼︎」

 

アオベ・エミ隊員とバンドウ・ヤスノブ隊員、そしてヒルマ・ゲント隊長の射撃が岩を掴むレッドキングの両掌に当たる

 

岩を取り落とし、巨岩がレッドキングの足に落下する

 

ーキシャァァァァァァァァァァ!?!?

 

レッドキングが足を押さえて痛そうにぴょんぴょん跳ねる

 

「今だアンリ‼︎」

 

『アースファイア、発射ァ‼︎』

 

ーグォォォォオン!!!

 

アースガロンの口が開き、大口径の主砲が延伸

青いエネルギー光が収束して大出力の光線が放たれる

 

光線が直撃し、レッドキングの体でバチバチとエネルギーがショートし、そのまま仰向けに倒れながらレッドキングが爆散する

 

それを確認した隊員たちが安堵の息を漏らす

 

「作戦終了、だな」

 

「作戦、終了」

「お疲れ様でした」

 

《お疲れ様でした。皆さん》

 

アースガロンコクピット内に落ち着いた青年のような声が響く

 

「アーくんもお疲れ様。大活躍だったね」

《いえいえ。テルアキ副隊長の指示とアンリ隊員の操縦があってこそです。本日も見事な指揮と操縦でした》

 

AI対話システム「EGOIS」により話しかけてきたアーくんことアースガロンの言葉にテルアキはくすぐったそうに頬をかき、アンリは満面の笑みを見せる

 

《……そんな中ですが》

 

アースガロンが空を見上げる

 

《上空から飛翔体が接近してきています。恐らく大気圏外より突入してきたものと思われます》

「!?ゲント隊長‼︎」

 

アースガロンの言葉を聞くが早いか、テルアキがゲントに通信を繋ぐ

 

「こちらでも確認した‼︎アースガロンから見て10時方向‼︎」

 

アースガロンのカメラが赤熱化して落ちてくるそれー金属の箱のようなものを捉える

 

「…何ですかね、この箱?」

「見たところコンテナのようだが…」

 

『宇宙船の可能性もある。アースガロンで何とか落下前にキャッチできないか⁉︎』

 

「やってみます‼︎」

 

ーグォォォォオン‼︎

 

テルアキがすぐさま落下予測地点を割り出し、アンリの操縦によりアースガロンが急行する

 

落下してきたそれを、アースガロンは上手く両手で掴み、衝撃を殺して持ち上げる

 

《機内に生体反応2。ゲント隊長の予測通り、どうやら宇宙船のようですね》

 

「でかしたアーくん、アンリ。すぐに宇宙船を保護して内部の宇宙人たちとコンタクトを取る」

 

アースガロンとの通信を切り、エミとヤスノブを連れてハイエースーモッピーへと帰還をはじめるゲントはアースガロンが掴み上げた宇宙船を見つめながら眉を顰める

 

「……話の通じるヤツなら、いいんだがな」

 

 

「いてて…酷い目にあった…ダーニッド、緊急シールド展開助かったわ。よく復元間に合ったわね」

『応急的なヤツだ。他は腰落ち着けねぇと無理だぞ』

「ははは、腰を落ち着けて…ね…」

 

歩夢はシートに座りながらコクピット外の光景を見て苦笑いを見せる

 

ーグォォォォオン…

 

そこには、GBCTセンチネルを掴み上げる怪獣の顔があった

 

「……食べられたりとか、しなかったら…かな?」

『……もしかしていきなり詰んでんのか、今?』

 

《はじめまして。宇宙からの方。僕は23式特殊戦術機甲獣アースガロン。気軽に、アーくんとお呼びください》

 

青い瞳のディスプレイを笑顔に変化させながら、気さくに話しかけてきた「怪獣」に歩夢が目を丸くする

 

 

「ーしゃ、しゃべったぁぁぁぁ!?!?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

地球防衛隊「GGF」

怪獣や宇宙人による災害に対処するべく世界各国が共同で作りだされた組織

 

その日本支部に設立された新たな部隊

Special Kaiju Reaction Detachment

通称「SKaRD(スカード)

 

その作戦指揮所が、GGF日本支部教江野基地内に存在する

 

 

そんな作戦指揮所の中央、パイプ椅子に座らされた歩夢をSKaRDの隊員のゲント、エミ、アンリが周囲から見つめていた

 

居心地悪そうに歩夢が手を上げる

 

「えーっと……一応、私の説明は理解して…もらえました?」

 

アースガロンに護送される形でSKaRD指揮所まで連れてこられた歩夢は、当然といえば当然だが、簡易的に身柄を押さえられていた

コンテナ内の工房住まいのダーニッドについては歩夢が必死に事情を説明し、アースガロンと同じ格納庫に納められたまま映像通信だけ繋げられた形でダーニッドとの交流も確立されていた

 

「……別の宇宙から来た地球人で、宇宙間の移動中に電磁波による攻撃を受けて乗機が破損…この宇宙の地球に墜落する形になってしまった…」

「そうそう、かいつまんで話すと、そんな感じで…」

 

あはは、と苦笑する歩夢を見ながら、ゲントは難しい顔で目を閉じてこめかみに人差し指と中指を当てる

 

「……えっと…何かの妄想…?」

「異星人の変装とかにしては…リアリティ無いし…」

 

アンリとエミの訝しむような視線が突き刺さる

 

『まぁ、しゃーねぇ反応だわな。大将』

『オレたちならともかく、普通別宇宙なんか言われたらこうなっちまうよなぁ…』

(呑気なこと言って…‼︎私の身にもなりなさいよ…ッ⁉︎)

 

脳裏に聞こえるイクサの言葉に心の内で猛抗議する歩夢を見たゲントが何やら眉根を上げる

 

「あっつ⁉︎」

 

と、何故か突然ゲントが熱がりながらズボンのポケットを押さえて跳ねる

アンリ、エミと共に不思議そうな表情をしていた歩夢に「なんでもない…」と手を振るゲント

 

「隊長、終わりました」

 

席を外していたテルアキとヤスノブが戻ってくる

手にしたタブレットをゲントに渡しながらテルアキが説明する

 

「血液検査と体組織検査の結果、そこの女性…稲葉(いなば) 歩夢(あゆむ)という人物は99.9%地球人であることがわかりました。未知の成分や、宇宙由来の成分は体内に含まれていません」

「なるほど。地球人というのは嘘ではないんだな」

 

ゲントの持つタブレットに表示された結果をアンリとエミも興味深そうに眺めながらテルアキの説明を聞く

 

「加えて…念の為にデータベースを照合しましたが、彼女の住民票や戸籍の類は見つかりませんでした。ですが、彼女の持ち物の財布内には免許証や健康保険証も見つかっています。こちらの地球には無い住所が記載されていましたが…偽造の形跡はありませんでした」

「偽造の形跡の無い、未知の住所が書かれた身分証持ちの地球人…確かに別の宇宙にある地球から来た、というのが一番説得力がありますね」

 

エミが頷くと共にテルアキも頷く

 

「ボクはあのマシンを分析してみました。どのパーツも地球のもの…内部の宇宙人がいる一画以外は全部、地球の技術体系にあるものですね。すっごく興味深いですわ…‼︎」

 

目を輝かせながら告げるヤスノブの言葉も聞き、ゲントは歩夢に向き直って咳払いをする

 

「事態はまだ飲み込めない…だいぶ飲み込めないが…あなたが宇宙人の擬態とかそういったもので、俺たちを騙そうとかそういう訳じゃないのはわかった」

「……よかったぁ…」

 

安堵の息を漏らした歩夢が立ち上がり、手を差し出す

 

「巨大生物対応部隊GBCTの隊長、稲葉 歩夢よ。まぁこの地球に無い部署だから意味無い自己紹介かも、だけど…」

 

照れ臭そうに笑う歩夢の手と顔を見比べながら、ゲントがばつが悪そうに頬をかく

 

「……こちらの身分もわかりきっていないのに、そこまで明かしてくれるのか?」

「この地球で、怪獣とかの対処してるチームなんでしょ?SKaRDって。なら、私は信じるだけ。それが私のやり方です」

 

歩夢の言葉にゲントは苦笑を漏らしながら、握手を返す

 

「特殊怪獣対策分遣隊SKaRDの隊長、ヒルマ・ゲントだ。同じ怪獣対策部隊隊長としてよろしくお願いします」

 

握手を交わす2人を見て、隊員たちも肩の力を抜く

 

『あー、一応オレの方も紹介、いるか?』

 

机の上に立てかけられたタブレット端末からダーニッドの声が響く

 

『オレは、スタンデル星の夜の種族アボルバス、その最高峰のメカニックであるダーニッドだ。今はそこの大将の下、GBCTに所属している。光には弱いからこっから挨拶失礼するぜ』

 

ダーニッドの言葉にテルアキが目を丸くする

 

「宇宙人が隊員の1人…なんですか⁉︎」

「まぁね。他にもあと1人いるわよ」

 

テルアキとゲントが興味深そうに頷く

 

はっ、と思い出したようにゲントが手を叩く

 

「この場合、歩夢さんとダーニッド…くん?の処遇をどうするかだが…」

「上に報告したら余計に話が拗れそうですよね…」

「どうしたものか…」

 

うーむ…と再びSKaRDの面々が悩み始めるのを歩夢はただ眺めるしかできなかった

 

『……そんな難しい話なのか?』

(難しい話よ。組織ってそういうものだから)

『の割には、歩夢は割とホイホイ異星人でもGBCTに着任させてた気するんだが』

(あれはランダルって前例がいるからの話。というか、リュウにしてもルシルにしても、私結構な説得したんだから…)

 

昔の苦労が伝わるのか、歩夢が「ご苦労様です…」と小さく呟きを漏らした

 

その時、作戦指揮所の電話が突如鳴り響いた

テルアキがその電話を取る

 

「はい。こちらSKaRD……」

 

電話からの言葉を聞いていたテルアキが眉根を寄せ、驚きに目を見開く

 

「……了解しました」

 

電話を置いたテルアキがすぐさまモニターを操作して観測データを映し出す

 

「みんな、これを…これが先程各地の観測所で確認されました…」

 

モニターに映った各地の画像を見たゲントたちも驚きを見せる

 

「これは……」

 

 

逆さ虹

 

 

青空の下、逆さにアーチを描く虹が各所の画像に写っている

隊員たちの後ろから見ていた歩夢が首を捻り、ゲントたちに訪ねる

 

「……確かに珍しい現象だとは思うけど、驚くほどの事態、なの?」

 

ゲントとテルアキがごくりと唾を飲み込みながら頷く

 

 

「…詳しくは言えないが、最悪に近い事態かもしれない」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

SKaRDの格納庫

臨時でアースガロンの隣に格納されたGBCTセンチネルのコンテナ内工房でダーニッドは暇そうに微睡んでいた

 

《こんにちは、ダーニッドさん。起きていますか?》

 

工房内に爽やかな青年のような声の通信が入る

 

『ーお前は確か……』

《はい、23式特殊戦闘機甲獣アースガロンです。気軽に、アーくんとお呼びください。ヤスノブさんたちは僕のことをそう呼びます》

『なんだ、随分親しみやすいマシンじゃねぇか。面白ぇ』

《何やら喜んでもらえたようで、何よりです》

 

ダーニッドがカカッと笑いながら膝を叩く

 

『……で?そんなマシン様がオレに何の用だ?』

《用と言っても、大袈裟なことはありません》

 

《単純に、あなたと話をしてみたかったんです》

 

アースガロンの言葉にダーニッドがほう、と顎を撫でる

 

《僕たちの地球にも、多くの宇宙人が現れました。例えば機械を操るカナン星人。彼らは、地球の機械を暴走させて侵略を行うつもりだったようですね》

『へぇ、この宇宙にもあの陰険どもいるのか。ヤツららしい愚策だなぁ。大方、機械は無能な人間に対して怒りを募らせてる〜とか言って騙そうとしたんだろ?』

《鋭いですね。勝手に僕らの気持ちを代弁するなんて失礼な話です。ヤスノブさんは、そんな人ではありませんし》

『お前さんがそこまで信頼するなら、あのヤスノブって地球人のメカニック相当なやり手だな?』

《はい。僕たちに寄り添っていつも修理・調整してくれる、最高のメカニックであり、大切な仲間のひとりです》

 

ダーニッドがアースガロンの言葉にぴくり、と反応する

 

『仲間、ねぇ…』

《ダーニッドさんにもいるじゃありませんか》

『オレに?』

《歩夢さんは、あなたの大切な仲間ではないのですか?あなたの体質を考慮して欲しいことを、SKaRDの皆さんに必死で説明していた歩夢さんは、きっとあなたを大切に思っています》

『……考えたこともなかったなぁ。生憎と、オレの星は仲間なんざではなく、軍として繋がっていたからな』

 

アースガロンが優しい声色で続ける

 

《僕は歩夢さんとダーニッドさんの関係を、羨ましいと感じます。かつてこの星には、V99という宇宙船団が訪れましたが、悲しいすれ違いで結局交流は行えませんでした》

 

《あなたと歩夢さん、SKaRDの皆さんとブレーザーさんがそうであるように、きっとこの地球の皆さんも、どこかの星の人と友達になれる。僕はそう願っています》

 

『奇特な願い事するんだな、お前さんは』

 

《だって、戦わずに済むならその方がいいじゃないですか》

 

そんな談笑をしている格納庫に慌ただしく人が出入りを始め、出撃準備を知らせるサイレンが鳴り響いた

 

 

逆さ虹が各地で確認されて間も無くして、富士山麓の樹海では逆さ虹に照らされた下で異変が起こっていた

 

湖の水かさが急速に減り、その中から巨体が姿を現す

 

灰色の甲殻。肩や胸、足などの一部は赤とオレンジのグラデーションの入った警戒色のような配色をしていた

特徴的なのはその頭部。まるで鎧兜のようなもので覆われ、表情を見ることはできない

 

生物だが、異質な存在を放つそれは、静かに湖だった場の中央に佇んでいた

 

 

「ニジカガチ、現出…‼︎」

「やはりか…‼︎だが、現れるまでが早すぎる⁉︎」

 

中継画像に出現した怪獣を見たゲントが驚愕しながら机を叩く

 

「まさか…また横峯(よこみね)教授が⁉︎」

「それは……」

 

エミの言葉にテルアキが声を漏らす

 

「……それは、違うと信じたい…」

「…………」

 

項垂れるテルアキの肩をゲントが叩き、隊員たちを見渡して指示を下していく

 

「エミとアンリはモッピーで現場に急行‼︎ヤスノブとテルアキはアースガロンMod.2に搭乗して出撃‼︎原因はどうあれ、ニジカガチは無視できない脅威に変わりない。心してかかれ‼︎」

 

『ウィルコゥ‼︎』

 

姿勢を正す中、テルアキがゲントに問う

 

「ゲント隊長はどちらに?」

 

「……どちらにせよ、意味のあることを信じて俺は横峯教授の下に向かう。先生以上に、ニジカガチを知る人はいるまい」

 

「ーわかりました。頼みます、ゲント隊長」

「ああ。すぐに俺も向かう。そちらのことはしばらく頼むぞ」

「ウィルコゥ‼︎」

 

テルアキ、ヤスノブ、エミ、アンリがそれぞれの持ち場へと移動していく中、ゲントと歩夢が残される

 

「ゲント隊長!」

 

歩夢の言葉にゲントが振り返る

 

「私にも何か手伝えることはない?」

 

しばらく逡巡するように視線を泳がせ、ゲントは口を開く

 

「すまないが、この地球で起こる怪獣災害への対処は俺たちの仕事で、俺たちなりのやり方がある。いくらそちらも怪獣対策のプロだとしても、作戦に関わってもらうことはできない」

「あう…まあ…そうよね…」

 

無念そうに手を下げる歩夢

その左腕のイクサファーナスを見て、ゲントは続ける

 

「ーだが、俺と同行して、横峯教授から話を聞くくらいなら、誰も文句は言うまい。手伝ってくれるか?」

「!!喜んで‼︎」

 

ゲントの言葉に頷き、歩夢が共に出撃する

 

 

現場へと急行する移動指揮車両モッピーの中でエミがモニターに映るニジカガチの様子を注意深く観察する

 

出現した場所からニジカガチはほとんど動いていないが、鎧兜のような甲殻の下から周辺の空気を思いっきり吸い込んでおり、あたりのものがニジカガチの口内へと吸い込まれていく

 

急な減圧の影響か、にわかに暗雲が空を覆い始め、雨が降り始めていた

 

「急な登場の割には、はじめて現出した時と同じくほとんど動かない…」

 

見ていた映像の中に飛行してきたアースガロンが着陸、ニジカガチに向けて相対する

その背には右肩の大型のレールキャノンと、左肩の多目的レーザー砲が接続された大型バックパックーMod.2ユニットが装着されている

 

ークォォォン…

 

「アースガロン現着‼︎ヤスノブ、あの個体が以前のニジカガチと同じなら、頭部の結晶の破壊が最優先だ。あそこを壊せば、ニジカガチは大きく弱体化するはず…‼︎」

「ウィルコゥ‼︎まずは兜を開かせないとですね‼︎」

 

ーグォォォォン!!!

 

アースガロンMod.2の左肩の砲門が稼働し、ニジカガチがロックオンされる

 

「行くぞアーくん‼︎多目的レーザー砲、連続発射‼︎」

 

砲門から放たれた収束レーザーの連射がニジカガチに突き刺さる

その威力は分厚い甲殻の上からでも相当なものなのか、ニジカガチの体が直撃の度に大きく揺らぐ

 

不動の構えを崩さなかった虹の神が、ついに動き出す

 

鎧兜の正面、縦一文字に虹色の淡い光が走ると共に、割れた兜が持ち上がっていく

 

その下から現れた面は、よりカラフルな色彩に彩られた警戒色。横に長い瞳孔を持つ瞳はただものではない「魂」を感じさせる圧力を放っている。名前の如く、虹のような色合いに彩られた極彩色の兜ー否、鎧角を「御立角」させ、虹蛇神(ニジカガチ)が吠える

 

ーキュオォォォォォォン!!!

 

アースガロンMod.2に乗るテルアキとヤスノブは、その露わになった面の額にある結晶体を確認する

 

「早いお披露目やな…‼︎」

 

ヤスノブが結晶体をロックオンし、レールガンを向ける

アースガロンが姿勢を若干低くし、脚を開いて構える

 

《姿勢制御良好。ヤスノブさんいつでも大丈夫です》

「ありがとなアーくん‼︎レールキャノン発射‼︎」

 

アースガロンの右肩から高速で弾丸が放たれる

安定した姿勢から放たれた弾丸は狙い過たず、ニジカガチ額にある結晶へと吸い込まれるように直撃しー

 

ーキィィィィィィンッ!!!

 

「は…⁉︎なんやアレ…⁉︎」

 

想定外の光景にヤスノブが驚きの声を上げる

 

レールガンから放たれた弾丸はニジカガチの額の目前で静止していた

怪獣の目前、そこには虹色に波打つ不可視の壁のようなものがあった

 

「ニジカガチの不明エネルギー…それが、体の周囲に広がっている…まるで、障壁のように‼︎」

「なんやそれ…前ん時はそんなもんなかったはず⁉︎」

 

ーキュォオォオォオォオン!!!

 

ニジカガチが嘶く

その体が虹色に煌めき、その煌めきが額の結晶へと集まる

 

「ヤスノブ、来るぞ!!!」

「くぅっ⁉︎」

 

ーグォオォオン!!

 

ニジカガチが結晶から虹の光線を放つ

間一髪で回避したアースガロンがいた場所を極彩色の光線が薙ぎ払う。薙ぎ払われた大地から虹色の光が吹き出し、天に向けて光の柱が乱立する

 

「光線の出力まで上がっている…このニジカガチは、以前に出現した個体よりも遥かに脅威的…それこそまるで、神そのものこような…」

 

動揺しながらも冷静に分析を続けるテルアキの言葉を通信越しに聞き、エミが思わず呟く

 

「荒神じゃない……本物の、神たるニジカガチ…」

 

アースガロンが立ち上がり、体勢を立て直して「怪獣」へと向き直る

 

ーキュォオォオォオン…‼︎

 

 

清廉たる咆哮を上げた虹蛇神(ニジカガチ)

その背に、逆さ虹の円環が後光のように輝いた

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

とある小川

その側に折りたたみ椅子に腰掛け、釣り糸を垂らしている初老の男性が1人静かに佇んでいた

 

「お久しぶりです。先生」

 

そこに背後から声がかけられる

ゲントと歩夢が並んでその背中を見つめていると、男性ー横峯 万象は少しだけ首を動かして口を開く

 

「ヒルマ・ゲントと……もう一人は初めて見る顔だな」

 

釣竿を立てかけ、横峯が振り返る

深くしわの刻まれた顔に、眼鏡をかけた穏やかながら大きな貫禄を感じる好々爺と言った印象の横峯が優しく微笑む

 

「はじめまして、横峯(よこみね) 万象(かずのり)だ。今はしがない暇人だ」

「は、はじめまして!稲葉 歩夢と言います。私も、えーと…ここでは暇人…かな…?よろしくお願いします!」

 

勢いよく頭を下げる歩夢を横峯は不思議そうに見つめる

 

「ここでは、か。何やら哲学的な響きだな」

 

横峯はゲントに顔を向ける

 

「……ここに来たということは、何か私に聞きたいことがあるんだろう?尤もー」

 

ちらと彼方から広がる暗雲に目を遣りながら横峯は確かな言葉で告げる

 

「ーキミが信じるかどうかはわからんが、今回は私は何も関係していないよ」

 

メガネにどこか剣呑な輝きを見せながら確かに告げた横峯の言葉を聞き、緊張した面持ちだったゲントがほう、と安堵の息を吐いて頷く

 

「信じますよ。先生は、二度もそんなことをする人じゃない」

「……買い被りすぎだ」

 

横峯は立ち上がり、彼方に広がりゆく暗雲を見上げる

 

「ニジカガチは、私がかつて行った儀式もしくは生贄を使うことで呼び出すことができる。しかしその場合は…その『願い』を表す逆さ虹が空に七日七晩現れ続け、その『願い』を聞き届けた上でニジカガチは顕現を果たす」

 

横峯がゲントを再び見据える

 

「此度の顕現は、その逆さ虹は顕現の瞬間にだけ現れた。それは、『願い』の証ではない。虹蛇神(ニジカガチ)自身の威光の現れ……今現れたニジカガチは、純粋たる神そのものの虹蛇神(ニジカガチ)だろう」

 

「純粋たる神……そのもの……‼︎」

 

ゲントが共に暗雲を見上げながら言葉を漏らす

 

「止める方法は簡単だ。前にキミたちがそうしたように、ニジカガチを討ち果たせばいい。投げたものが、人であろうとそうで無かろうと、投げられた賽を止める方法はそれしか有り得まい」

 

「だが、此度のニジカガチは…以前のものとは比べることすら烏滸がましい存在だぞ……ヒルマ・ゲント」

 

その言葉を聞いたゲントの頬を汗が伝う

一度歩夢に視線を向けたゲントだが、そのまま振り返ると一人走り出していく

 

 

ーキュオオオオォォォォォォン!!!

 

ニジカガチが咆哮し、それと共に周囲に竜巻が巻き上がり、アースガロンへと襲い掛かる

 

「飛べ!ヤスノブ!」

「ウィルコゥ!!!」

 

竜巻を回避し、アースガロンが空中へと飛び立ちながらアースガンと多目的レーザーによる斉射を放つ

が、額どころかその体全体を覆うバリアはその攻撃を一つも通すことなく弾き返していく

 

「めちゃくちゃやこんなの⁉︎」

 

地上から23式電磁小銃によるエミとアンリの射撃もニジカガチには到達しない。地上の矮小な人間には一瞥もくれず、ニジカガチは進軍を続けていく

 

「以前のニジカガチと比べものにならない…どうにかあの障壁を破壊しないと攻撃すら届かない…‼︎」

 

「Mod.2のレールガンすら届かないとなると、メガショットでチルソナイトスピアを撃ち込むしか…」

「それでも届くかの確証は無い…いったい、どうすれば…‼︎」

 

激戦を繰り広げているニジカガチとアースガロンを遠目に見上げ、駆けつけてきたゲントがズボンのポケットから光るクリスタルを取り出す

 

それと同時に、ゲントの左腕に勾玉のような形と大きなモニターを持つデバイスーブレーザーブレスが光と共に現れ、モニター内を光が波打つ

 

「待たせたな…‼︎行くぞ、ブレーザー‼︎」

 

ゲントがクリスタルーブレーザーストーンをブレスに差し込み、展開されたブレスを胸の前に構えてスイッチを押し込む

 

モニターに渦巻く光が大きくなり、その中心から光を纏う戦士が左手を突き上げながら現れる

 

 

ールォッ、ルゥゥゥゥオォォォォォイィッ!!

 

 

迫り来るニジカガチと相対するアースガロン

そこに並び立つ形で銀色の巨人が姿を現す

 

ーフゥゥゥゥゥゥン、ルォイルォイルォイ…

 

現れた巨人はDNAの二重螺旋のように左半身に刻まれた赤と青のラインを輝かせ、片足を上げ両手を胸の前で合わせながら突き出し、頭を垂れて祈祷のようなものをニジカガチに捧げる

 

「ウルトラマン、ブレーザー…‼︎」

「来てくれたんやな…‼︎」

 

独特な構えを取り、並び立つ巨人ーウルトラマンブレーザーを見たテルアキとヤスノブが安堵の声を上げる

 

ーキュオオオオォォォン!!!

 

ニジカガチが額から虹光線を放つ。ブレーザーとアースガロンは素早く散開し、その攻撃を避ける

 

ールゥオォォォイッ!!!

 

同時にブレーザーは手から光弾を連続して放ち、牽制しながらニジカガチへと駆ける

 

「ブレーザーを援護する!バリアの破壊方法はわからないが、とにかく我々とブレーザーの火力を集中させろ‼︎」

「待ってました‼︎行くぞアーくん!!!」

 

ーグォォォォォォン!!!

 

アースガンと多目的レーザー、更にはレールガンの射撃や尾からの誘導ミサイル・テイルVLSも含めて発射できるだけの火力を放ちながらアースガロンも進撃する

 

ールォイッ!!!

 

肉薄したブレーザーが手のひらから出現させた光の槍ースパイラルバレードをニジカガチに突き出す。その切先もバリアに弾かれ、槍が砕けていく中、ブレーザーは右手を構え、虹色の戦輪ーレインボー光輪を出現させて回転させながらバリアへと叩きつける

 

ニジカガチの光に由来する光輪の刃と、同じ由来の虹のバリアがぶつかり合い、七色の火花を散らす

 

ーキュオオオオォォォン!!!

 

拮抗していたそれは、ニジカガチのひとなぎと共に破れ、ブレーザーの光輪とスパイラルバレードが割れ砕ける

 

ニジカガチの揺らめく尾の先から虹色に煌めく刃が閃き、ブレーザーを切り裂いて吹き飛ばす

 

ーキュオオオオォォォォォォンッ!!!

 

吠えるニジカガチにアースガロンの援護射撃が殺到するが、揺らめく虹のバリアは壊れる気配を見せない

 

それをアースガロンと共に見据えながら、油断なくブレーザーが構え直した

 

 

「本当に、止める方法はあの怪獣を倒すことだけなんですか?」

 

残された歩夢が横峯に語りかける

 

「……何が言いたいのかね?」

「……私は、以前に一度神とさえ呼ばれるような怪獣と相対したことがあります。詳しくは言えませんが…」

 

歩夢は左手のイクサファーナスに手を添えながら続ける

 

「その怪獣は、人類へ深い憎しみを持っていた。でも、語り合うことができた。神と呼ばれるような、大いなる存在だからこそ、対話できる意志がその怪獣にはあった…」

 

歩夢が一歩横峯に向けて踏み出す

 

「……神との対話、か。人間如きが大自然の化身と対話して、分かりあうことができるとでも?」

 

横峯の厳しい言葉に、歩夢は首を振る

 

「人間如きなんかじゃない。神のような存在でも、ちっぽけな人間でも、そこに生きているならきっと、話し合うことも分かり合うことだってできる!私は、そう信じたい…」

 

横峯はその言葉を聞き、顔を下げる

 

「……ヒルマ・ゲントや、彼の連れてきたナグラ・テルアキとも違う。なんとも甘く、それでいて夢想的な考えだな」

 

横峯は顔を上げ、微笑む

 

「ーだが、私は…そんな考えを胸を張って言えるキミが、とても眩しく思えるよ」

 

懐を探り、横峯はあるものを取り出す

ガラスのような材質の純白の腕輪。それを歩夢に歩み寄って差し出す

 

「ニジカガチが現れた記録の中に、それを討ち果たしたもの、それを封印したものと並んで、ある小さな文献にこんな記録があった」

 

「心清きもの、純白の腕輪を持ちて虹の神と対話し、その心の一部を受け取りて怒りを鎮める。晴れた空には、誓いの虹が聳え立った。と」

 

優しく微笑みながら横峯は歩夢の手にそれを握らせる

 

「かつての私は、神との対話など有り得てはならないと一蹴していただろう。正しさは同時に二つ存在しえない。神か、人か、より正しいものが生き残り、敗れたものは淘汰される。だが……」

 

左手をなぞりながら横峯は続ける

 

 

「ー共に真理を語ったものがいた中で、敗れた私は淘汰されず生き残っている。ならば……正しさは決して一つだけじゃないのだろう。かつて、ゲントたちが成し遂げたように、まっすぐな瞳を持つキミならば…あの虹の神との対話もできるやもしれん」

 

 

横峯が頭を下げる

 

「ーニジカガチを頼む。一度は、私の願いが呼び出したとはいえ、人間の身勝手で何度もかの命が奪われることは……真理であっていいはずがないからな」

 

「……わかりました‼︎」

 

歩夢が右腕に腕輪をはめ、頭を下げて駆け出す

その背を穏やかに見送りながら、真剣な面持ちに変わった横峯が独白する

 

「神が自らの意志で顕現する、ということは今を生きる人々に見限りを付けた時。あるいは……」

 

 

「ー地獄の蓋が開いたかのような、厄災がこの地に降り立たんとしている時、か。気をつけろよ、ゲント、歩夢さん」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ールォイッ!!

 

その手に鋭い長剣ーチルソナイトソードを取り出し、緑の雷光を纏いながら斬りつけ、アースガロンがその反対から組みつきゼロ距離からありったけの火力を叩き込む

 

ーキュオオオオォォォォォォン!!!!

 

が、ニジカガチは七色の波動を放ち両者を吹き飛ばす

 

ールォイァァッ!?

ーグォォォォォォンッ!?

 

ブレーザーは湖に、アースガロンは山肌に叩きつけられ大きな火花を散らす

 

《機体損傷率45% かなり危険な状態です》

「怯むな…まだ撃てるだけの武装を撃て‼︎」

「行くでアーくん‼︎踏ん張れぇッ‼︎」

 

負けじとシステムを再起動させたアースガロンが立ち上がり、ブレーザーも共に立ってチルソナイトソードを構える

 

 

それを見上げながら歩夢が走り、辿り着く

虹の神たる怪獣を見上げ、歩夢が腕輪とイクサファーナスを交互に見る

 

「ニジカガチ…絶対、あなたに言葉を届かせてみせるッ‼︎行くわよ、イクサ!!!」

『待ちくたびれたぜ、相棒ッ!!!』

 

《リンケージ:ウルトラマンイクサ》

 

ーサァァァァァッ!!!

 

激戦を繰り広げる中、光と共にウルトラマンイクサがニジカガチの前に現れる

 

ールォイ…!?

 

それを見たブレーザーが驚愕に手を止め、アースガロン内や地上のSKaRDの面々も目を丸くする

 

「宇宙人…いや、この姿は…‼︎」

「ブレーザーと同じ、ウルトラマン⁉︎」

 

「まさか、新しいウルトラマンが…⁉︎」

「こんなタイミングで⁉︎」

 

ーキュオオオオォォォンッ!!!

 

イクサを新たな敵とみなしたニジカガチが咆哮し、虹光線を放つ

それを回避しながらイクサはニジカガチへと跳躍し、その体に組み付き押さえ込む

 

「ニジカガチ…お願い、話を聞いてッ‼︎」

 

インナースペースの中、歩夢が腕輪をはめた右手を伸ばす

 

ーキュオオオオォォォンッ!!

 

だが、ニジカガチは七色の波動でイクサを引き剥がし、更に虹光線で追撃を撃ち込んでイクサを吹き飛ばす

 

ーサァァァァァッ!?!?

 

吹き飛ばされゆくイクサを見たブレーザーがニジカガチへ組み付き押さえ込む

 

「‼︎あの新しいウルトラマンを……援護する‼︎」

「ウィルコゥ‼︎」

 

『そうこなくっちゃ‼︎』

『その言葉を待ってました、テルアキさん‼︎』

 

倒れたイクサの前に躍り出たアースガロンと地上部隊からの射撃がニジカガチを押さえ込む

 

 

ートゥルルル…ピッポ、ピッポ…

 

 

《テルアキさん。上空から強力な電磁波反応と生体反応を検知しました。間も無く、ここに飛来します》

「何!?」

 

アースガロンの宣告と共に空から黒い隕石が飛来、ブレーザーの体に緑の稲妻を纏いながら衝突して吹き飛ばす

 

ールォォォイァァッ!?

 

吹き飛ばされたブレーザーの目前、飛来した隕石はターンを描いて急制動してランディングする

 

現れた隕石がぱかり、と開き、金色の体表に覆われた内部が姿を現し、その中央で意思を感じない二つの瞳と口が歪な配置で蠢く

まるでヒトデが立ち上がったかのような異様な姿を見せ、腕を振るいながらそれが立ち上がる

 

「ゲバルガ…⁉︎何でこんなタイミングで⁉︎」

 

現れた隕石ー否、宇宙電磁怪獣ゲバルガは吹き飛ばしたブレーザーへと歩みを進め、覆い被さるように捕まえる

 

「ニジカガチだけでも大変なのに…ゲバルガまでどうして⁉︎」

「V99がまたこちらに敵意を…いや、そんなはずは⁉︎」

 

ゲバルガと交戦をはじめたブレーザーを無視し、ニジカガチは更に歩みを進めていく

 

その前にアースガロンと、立ち上がったイクサが並び立つ

 

ーサァァッ…‼︎

 

イクサはもう一度、歩夢と共に右手を突き出す

 

「お願い、話を聞いて…あなたの意思を…伝えて‼︎」

 

歩夢が強く祈りを込める

それと同時に歩夢の右手から淡い虹色の光の粒子が漏れ、白い腕輪へと入り込んでそれを青白く輝かせる

 

イクサの体が青く一瞬変化し、突き出していた右手を一度胸の前に戻して力強く、それでいて優しく開く

 

その掌の先から優しい金色の光が吹き出し、ニジカガチを覆う

 

虹の神はその歩みを段々と弱め、遂には立ち止まった

 

ーキュオオオオォォォ……

 

雄叫びにも似た咆哮じゃない。穏やかな声を上げ、ニジカガチが開いていた鎧角を下ろす

 

「ニジカガチが…止まった…?」

 

アースガロン内でテルアキが驚嘆の声を漏らす

 

「……今のは?」

 

イクサのインナースペース内で歩夢が自分の手を不思議そうに見る

光を失った腕輪は黒く変色していく

 

そんな歩夢の脳裏に、何かが響く

 

「……え?」

 

不思議そうに歩夢がイクサを通してニジカガチを見つめる

その様子がわかったかのように、ニジカガチはただゆっくりと頷いた

 

 

ールォイッ!!!

ートゥルルル…ピッポ、ピッポ

 

電子音声のような不気味な声を響かせながら電磁波を放つゲバルガに対し、雷を断つ刃を振るいそれを弾きながらブレーザーがゲバルガへと斬りつける

それを弾いて距離を取ったゲバルガとブレーザー。油断なく剣を構えるブレーザーの前でゲバルガに異変が起きる

 

突如、構えを解いたかのように脱力したゲバルガが、立ち止まるニジカガチの方へ顔を向けていたのだ

 

ールォ…?

 

ブレーザーは一瞬警戒を見せたが、すぐさまチルソナイトソードを構え、レバーを何度も引く。稲光の音とともに、柄のガラダマが回転して緑の雷光がチャージされていく

 

チルソナイトソードの刀身に、緑の雷光が走った

ブレーザーがトリガーを引き絞る

 

 

ールゥゥゥゥゥゥオィアァァッ!!!

 

 

緑の雷鳴を纏ったブレーザーが超加速し、すれ違いざまにゲバルガを切り裂く

 

ートゥルルル……ピッポ……ピッポ……

 

切り裂かれた傷跡から緑の雷光をスパークさせ、ゲバルガがよろめき倒れて爆散する

 

それを振り返りながら見ていたブレーザーが何かに気づき、ニジカガチの方を振り向いた

 

 

ーグォォォォォォンッ!?!?

 

ニジカガチの周囲の地面から触手のようなものが飛び出し、ニジカガチの体が絡め取られる。絡みつく触手にニジカガチが悲鳴のような咆哮を上げる

 

「ニジカガチッ!!!」

 

イクサがニジカガチを助けようと駆ける

 

ーキュエェェェェェェァァッ!!!

 

そこを阻むかのように、地下から新たな触手ー否、上下どちらとも取れる不気味な4対の目を持つ蛇のような赤黒い体表の怪獣が2体姿を現す

 

ブレーザーの前にも同じ怪獣が2体現れ、進路を阻む

 

「まさか、イルーゴ…⁉︎」

「いや、こちらは以前現れた個体と…姿が違う⁉︎」

 

ブレーザーがチルソナイトソードで、イクサがホシウミノツルギでイルーゴたちを薙ぎ払うが、それも虚しくニジカガチは地下へと引き摺り込まれ、その姿を消してしまった

 

取り残された巨人たちとアースガロンは、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『死しても怨霊になりうる規格外の強度を誇る魂を持つ神と呼ばれた怪獣かぁ…うふふ…とても素晴らしい命だ♪』

 

『やはり、命は素晴らしい。命はかけがえのない』

 

『だからこそ、ボクが一つ残らず掬ってコレクションしてあげなくちゃあならないねぇ…』

 

『これほどの魂なら…キミもようやく、誰もが認める本物の命を得ることがきっとできるはずだよ』

 

 

『ーハッピーバースディ♪ ゴンギルガン』

 

 

 




ニジカガチを飲み込んだ渦巻く恐怖
それは、開かれた地獄の蓋から漏れ出した一部に過ぎなかった

仮初の体に神の魂を取り込み
地獄の蓋を砕いて邪悪なる妖骸の獣が姿を現す

滅びをもたらし、命を嘲笑う魔獣
それを前に立ち上がる者たちがここに集う

次回
ウルトラファイトイクサ PHASE:BLASAR
「俺たちが、行く」

その命を、魂を救うために
2人の巨人が並び立つ
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