ウルトラマンイクサ   作:リョウギ

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第7話「救うべき命と救いたい命」

霧慧神獣(きりえしんじゅう)教教主・火煙(ひえん)は薄暗い部屋の中に1人佇んでいた

 

怪しい光と存在感に満ちた広い部屋の中に、新たな気配が現れる

 

「ーやぁ、久しいですね」

 

現れた気配に火煙が慇懃に挨拶をする

気配は特に何をするでもなく、火煙に二、三言葉を投げかける

 

「貴方の望むものなら一つはここに」

 

火煙は人影に小さな何かを投げ渡す

人影が受け取ったそれはガンQの姿が描かれた小さなメダルのようなものだった

 

「我らが神、我らが主の遣わせた獣。有効活用されているようで何よりです」

 

立ち去ろうとする気配を火煙は微笑み、見送る

 

火煙は部屋の奥に広がる広大な空間に視線を向ける

 

「浄化の日は」

 

「ー翠の星獣の覚醒は近い」

 

広大な空間ー穴蔵となったその奥に胎動していたそれ

 

遥か彼方の宇宙でイザーティアと呼ばれた怪獣の微睡(まどろみ)を見て、火煙は怪しげな笑みを浮かべた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

特殊自衛隊基地・臨時作戦本部

 

大きなモニターに映し出されていたのは土煙を上げている半ば崩壊した岩山だった

 

「今朝方、五道市(ごどうし)郊外に落下してきた隕石による損害状況です。金剛山(こんごうさん)が半分ほど崩壊しており、件の落下物体は土砂に埋もれた状態です」

 

特殊自衛隊司令官・大紋(だいもん) 黒斗(くろと)が淡々と説明を述べる

 

『……分析を行った結果、この破壊をもたらしたのは隕石では無いことがわかった。土砂の内部に今埋まっているのはルデルチウムーコイド星系の星々で一般的に用いられている金属で構築された大型の宇宙艇。そしてその内部には大型の生体反応と小型の生体反応、2つが確認されている』

 

GBCT副隊長のランダルが追加解説し、追加の情報がモニターに映し出される

 

岩山の内部には体を丸めた怪獣らしいシルエットとその近くに小さな人間に似たシルエットが熱源反応として確認されている

 

「要するに、落下してきたのはどこかの星の怪獣を連れた異星人というわけね……で、現状は土砂に埋もれて身動きが取れなくなっていると」

「……例え異星人でも、閉鎖空間の中に閉じ込められたままは危険だ。早く救助計画をー」

 

 

「ーその必要はない」

 

 

大介(だいすけ)の言葉を向かいの長机に腰掛けた男が遮る

黒斗の隣に座る同じく自衛隊高官の制服を纏い、銀縁のメガネをかけた男はメガネを正しながら爬虫類じみた嫌悪感のある目線を歩夢(あゆむ)たちに向ける

 

「……湯田(ゆだ)副司令、それはどういうことです?」

 

目をスッと細めながら歩夢が男ー特殊自衛隊副司令官・湯田(ゆだ) 十六夜(いざよい)を睨む

 

「どういうこと?救助の必要はないということだよ。土砂に埋もれた宇宙艇は、我々の新造兵器によりこのまま殲滅することが決定した」

「なー」

 

湯田が吐き捨てるように告げた言葉に歩夢が言葉を失う

 

ーバンッ!!!

 

その隣に座っていた大介が長机を叩きながら立ち上がり、怒りを滲ませた瞳で湯田を睨む

 

「埋まってる異星人もろとも、怪獣を殺すっていうのか!?」

「それ以外になんだというのだね?埋まっているのは異星人と宇宙怪獣。わざわざ宇宙艇に怪獣を乗せて飛来するなど、侵略目的の異星人に決まっているではないか」

 

激昂する大介を鼻で笑いながら湯田が身を乗り出す

 

「キミたちの方針としても、外来種でもある宇宙怪獣は特定の事例を除いて優先的に駆除するのだろう?何も破綻はないじゃないか」

 

湯田の言っていることは事実である

 

宇宙より飛来する怪獣はこの惑星にとって外来種

生態系や環境への影響が未知数の存在であることが多いため、保護や非武力対処よりも駆除・殲滅を優先するように行動指針が決められている

 

「ですがそれはあくまで優先というだけです。怪獣だけなら致し方ない判断だとしても、異星人も巻き込まれているなら事はもっと慎重に行うべきだと思いますが」

 

大介の肩に手を置き制して座らせながら歩夢が静かに問い詰める

 

何か言おうとする湯田を黒斗が制し、口を開く

 

「もちろんこちらとしても理由はあります。金剛山から3kmほど南東には我々が管理する弾薬保管庫が存在し、そこから僅か2km先程には黒金町があります。仮に侵略者とそれが制御する怪獣兵器であった場合、最悪弾薬庫が襲撃され、市街地への被害が発生する可能性もある」

 

黒斗は歩夢を静かに見据えながら続ける

 

「人命への多大な被害が発生する危機であると言える状況、悠長な判断はこちらとしても避けるべきと判断してこの作戦立案に至った。というわけですよ」

「……だけど、怪獣と宇宙艇を丸ごと葬るには相応の火力が必要なはず。対処の時点で弾薬庫に危険が及ぶんじゃないの?」

「ハッ、その程度の事態予測済みだ。それでも可能だからこその作戦なのだよ」

 

湯田がモニターの画像を切り替える

 

そこに映し出されたのは一つの映像

 

巨大な大砲と思しきものに赤黒いエネルギーが収束、砲門に形成されたエネルギー球が発射され、数km先で炸裂。半径数百m程の赤黒い爆炎の球体が瞬間的に現れ、中央に向けて収束・消滅した

 

「対巨大敵性体用殲滅兵装、アンタレスアークV1。我々特殊自衛隊が誇る技術官たちが作り出した新兵器だ。爆発エネルギーを収束・凝縮させ、半径数百m範囲ごと対象を殲滅する。これならば、弾薬庫に被害を出すことなく対処が可能になるというワケだ」

 

くっくっく、と勝ち誇るような含み笑いを上げる湯田に今一度大介が抗議する

 

「ー目覚めていない今なら、怪獣も異星人も救助して弾薬庫から離すことも可能なはず。なら、何も有無を言わさずに命を奪うなんてー」

 

「くどいんだよ……キミは確か元レスキュー隊員だったな?トリアージという言葉があるだろう?」

 

はぁ、と面倒そうに湯田がため息をつき、眉間を押さえる

 

「怪獣とどこぞとも知れぬ宇宙人1人の命と、市民数千人の命、救うべき命がどちらかは明白ではないか。何を迷う必要がある」

 

ーガンッ!!

 

「命の価値を、勝手に選別するな…ッ!!」

 

今まで以上に強く長机を殴りつけ、大介が怒りを滲ませる

湯田はそれに一瞬たじろぐが、黒斗が返答する

 

「GBCTも、我々の理念も同じ。地球に生きる人々の命を守ること。あなたたちが掲げる理念の怪獣保護は…それが守られた上で行われることだということですよ」

 

黒斗のその言葉を聞いて歩夢は静かに立ち上がる

 

「……作戦開始予定時刻の午後6時まで作戦エリアから離れていればあなたたちは文句ないわけよね?」

「……それ以降は、作戦エリアに残っていて巻き込まれても…我々は責任を負えませんがね」

 

それだけ言葉を交わすと、歩夢は隊員たちと共に臨時本部を後にした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「はぁ〜あいつマジで苦手……」

 

スターゲイザーベース指令室に戻ってきた歩夢がため息と共に愚痴る

 

「あいつというと…湯田副司令のことですか?」

「そうよ。あいつだけはマジで苦手……高圧的だし、ネチっこいし」

 

ひとしきり愚痴った後、歩夢はパンパンッと頬を叩く

 

「ってことで、黒斗からも言質取ったし私たちの作戦に移るわよ!」

 

指令室の隅で難しい顔をしていた大介の肩を歩夢が叩く

 

「大介、今回の作戦はキミの経験とノウハウが必要。頼んだわよ」

 

歩夢から笑顔で声をかけられ、大介がしかと頷いた

 

 

金剛山付近

GBCTキャリアーが到着し、下部格納ユニットが展開。格納状態のGBCTヘラクレスが現れる

 

「GBCTヘラクレス、オールチェックグリーン。スタンディングバイ」

 

大介の機体チェック完了を聞いてランダルがGBCTヘラクレスを投下する

 

投下されたGBCTヘラクレスから4脚が展開され、大きな衝撃と共に着陸。近くにあった廃棄自転車の山が崩れる

 

「ブレイブアーム、展開」

 

格納されていた4本の腕が展開され、同時にヘラクレスに備わるスキャン能力により崩れた岩山がスキャンされ、埋もれた宇宙艇の推定位置などが表示される

 

「これは便利だな。これならいける」

 

コクピットのレバーを操縦し、ヘラクレスのブレイブアームが順繰りに稼働。繊細かつ迅速に土砂が除去されていく

 

 

『……今のうちに準備を進めておこう』

 

キャリアーに乗るランダルが機体の高度を下げる

 

『パルスドローン、発進』

 

キャリアー側面から小型のドローン2機が出撃し、岩山の周辺をホバリングする

 

水輝(みずき)隊員』

「了解です!」

 

ランダルの隣の座席に座る水輝がGBCTパッドをコンソールに接続し、操作していく

 

「…微弱ですが通信用らしい電波は確認できます。もう少し土砂を取り除けたらこちらからも交信が可能になりそうです」

『よし。大介隊員、相手側の通信を受け取ることが可能になったらそちらにも通信を繋げる。土砂の撤去を頼む』

『了解しました』

 

 

その作戦の様子をGBCTセンチネルに乗り待機していた歩夢がコクピットから見つめていた

 

『……あの湯田ってヤツが言っていたように、不時着してきた異星人が侵略者だった場合はどうするんだ?』

「そうだったなら、そうだったで然るべき対処はするわ」

『なら、わざわざここまでして助けることはないんじゃないのか?』

「それは違うわね。例え悪人でも、その命を見過ごしていいなんて事はない」

 

左腕のイクサファーナスを弾きながら歩夢が微笑む

 

「あんたも、怪獣じゃないなら今でもわかるんじゃない?」

 

歩夢の言葉を受け、思案していたイクサが答える

 

『………わからないな。オレは』

 

『オレの育った宇宙は、お人好しや弱者は奪われていくしかなかった宇宙だった。オレたち自身を守るだけで精一杯。悪人ならこちらが殺さなければ殺される。そんな宇宙だったからな…』

 

イクサの言葉を受け、歩夢がバツが悪そうに目を伏せる

 

「……ごめん。無神経な言葉だったかもしれない」

『謝るなよ。オレも、お前らのやり方を知らなかった。今でもまだ理解しきれちゃいないしな。生まれた星どころか宇宙も違うんだから、知らなくて当然だ』

 

イクサは言葉を続ける

 

『……こうは言ったが、お前らの思いも今なら少しはわかる気はする。まだ少しだけだけどな』

 

その言葉を聞いた歩夢は嬉しそうに笑った

 

 

金剛山の麓の山林

火煙はその地面に膝を突き、得体のしれない緑の肉塊が入った瓶を取り出して蓋を開け、逆さにして地面に突き立てる

 

瓶から抜け出した肉塊はまるで生物のように蠢きながら地面に潜り、その姿を消した

 

その様子を見届けた火煙は満足そうに笑みを浮かべ、遥か遠くの地平線

そこに見える巨大な砲身ーアンタレスアークV1を眺めていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

キャリアーで作戦の様子を注視していたランダル

その隣の水輝が持つGBCTパッドが拾っていた電波の一つが音声に変化する

 

《…こちら……星…者のルシル……か……して……‼︎》

 

「ランダルさん!キャッチしました!」

『上出来だ。調整は私がやろう』

 

 

『大介隊員。土砂の中の異星人と通信が繋がった。そちらとも会話できるようにチャンネルを繋げる』

「!了解です」

 

ヘラクレスのコクピットに通信が繋がり、女性らしい声が響く

 

《私はリンケイド星から星間航行をしてきた。名前はルシル。通信に応えてくれて助かった…ありがとう》

「初めまして。俺は雨水 大介、この星…地球の宇宙人や怪獣に対応する部隊に所属する隊員だ。今、あなたたちを閉じ込めている土砂を撤去している」

 

その言葉を聞いた異星人ールシルはしばし沈黙し、口を開く

 

《ここは地球…なのか……》

「…どうした?」

 

ルシルの声色から不安のようなものを感じた大介が問いかける

 

《……地球は文明の発達が遅い星と聞いた。それに星の大きさも小さいために、怪獣たちとの争いも絶えないと》

「……文明の良し悪しはわからないが、怪獣との争いはたしかにまだ多い」

《……そうか…》

 

再び押し黙るルシル

大介は淡々と作業を続けながら口を開く

 

「ルシル。あんたの宇宙艇に乗ってる怪獣は一体なんなんだ?」

《……もう知られていたか…白状しよう》

 

《……この怪獣は、私のパートナー怪獣。名をエルシアと言う》

「パートナー…ペット…とはまた違うのか?」

《ああ。エルシアは私の家族…恋人のようなもの、と言ってもいいかもしれない》

「そうか…ならそっちの怪獣も、無事助けないとな」

《えっ……》

 

呆けた声を上げるルシルに大介は言葉を続ける

 

「あんたとそのパートナーは、別にこの星を侵略する気はないのだろう?」

《あ、ああ。この星に来たのは私の宇宙艇が故障してしまったからで、侵略なんて考えていない》

「それなら心置きなく救助できる。救助したヤツを倒すとか排除するとか、覚悟はしてても嫌だからな…」

 

《……キミは、怪獣が怖くないのか?》

「怖かったよ。少し前までは」

 

自嘲気味に笑いを漏らす大介

 

「だけど、つい最近ある人に教えられて理解したよ。怪獣も怖がるし、びっくりする。助けを求めるヤツだっている生き物なんだって」

 

ルシルはその言葉を黙って受け止めていた

 

「俺は、元はレスキュー隊員…で伝わるか?だったんだが、何度も何度も、救いたかったけど救えない命に会ってきた」

 

「手を伸ばしても届かなくて、零れ落ちて……」

 

「そういう仕事だから、と自分に言い聞かせて、な」

 

「だからこそ、救えるはずの命なのに見捨てるなんて俺はしない。例えそれが異星人でも、そして今の俺にとっては怪獣だとしても、な」

 

大介の言葉を受け取ったルシルの通信から微かに笑い声が漏れる

 

《優しいんだな。キミたちは》

「俺らの隊長さんの影響が大きいがな」

《……ありがとう。初めて会った地球人がキミたちで助かった》

 

《……頼む。エルシアを助けてやってくれ》

「バカ言ってんじゃねぇ。あんたも助けるんだよ」

 

対話の間も作業を続けていたヘラクレスが大きな岩石をどかすと、今までの岩石とは明らかに違う硬質な鋼色が見えた

ルシルたちの宇宙艇に到達したのだ

 

「よし!宇宙艇が見えた…もう少しー」

 

ーズンッ!!!

 

安堵の声を上げた大介の乗るヘラクレスに大きな振動が伝わる

いや、揺れていたのはヘラクレスだけではなかった。金剛山周辺の大地が鳴動していたのだ

 

『大介さん!金剛山地下から大型の生体反応が急上昇してきてます!』

「な、こんなタイミングで怪獣か!?」

 

それを聞くが早いか、金剛山を挟んでヘラクレスの向かいの位置にあたる大地から巨大な土煙と共に巨大なシルエットが出現。大きな翼のようなものを展開する

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

 

現れたのは恐竜のような胴体に翼竜のような翼が生えた異形の怪獣

恐竜のような面相の上に嘴を備えた翼竜のような頭部も備えていた怪獣は4つの目を不気味に赤く光らせる

 

『あの怪獣は…化石が確認されているタイプR怪獣、ゴルザとメルバの特徴が混ざっている…? 何ものかに人為的に生み出されたのか⁉︎』

 

出現した怪獣ーゴルバーは頭部のメルバ側の目から光弾を周囲にばら撒き、たまらずヘラクレスも後退してしまう

 

「くそっ!?」

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

 

更にゴルバーは頭部からエネルギー波を金剛山に向けて放ち、その表面を崩れた山肌ごと抉っていく

 

《きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!》

「ルシル!!!」

 

壮絶な悲鳴と轟音と共にルシルとの通信が途絶

 

ーコァァァァ……

 

更に崩壊した山肌から覗く壊れた宇宙艇の外壁

そこから銀色の体表を持つどこか鳥獣型に似た怪獣ーエルシアが姿を現してしまう

 

弱っているのか足取りはおぼつかず、うずくまってしまっている

 

 

「新手の怪獣…⁉︎ 大介と合流しないと…‼︎」

 

ゴルバーの出現を確認した歩夢がセンチネルを向かわせようとし、センサーに高エネルギー反応が表示される

 

「高エネルギー反応……この座標、まさか!?」

 

センチネルごと振り向き、歩夢は最悪の光景を目にする

 

現在時刻は午後3時。特殊自衛隊の作戦開始時間にはなっていない

しかし、配置されたアンタレスアークV1は起動され、エネルギーチャージをはじめていたのだ

 

「ーこちらGBCT歩夢!作戦開始はまだのはずでは⁉︎」

『前倒ししたのだよ。地下の巨大生体反応を検知してね』

 

聞き慣れた、それでいて今一番聞きたくない声の返答に歩夢が顔を顰める

 

「湯田…副司令…‼︎ 黒斗司令には許可を取ってるの⁉︎」

『ああもちろん。司令も被害の拡大を防ぎたいという意思は同じだからな。怪獣が出現して弾薬庫が危機に晒された以上、早急な撃滅あるのみだ』

 

一方的に切られた通信に舌打ちをしながらも歩夢はイクサファーナスを構える

 

アンタレスアークV1から極光が、今にも放たれようとしていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ふん!博愛主義者はこれだから面倒だ…」

 

通信を終えた湯田が吐き捨てるように告げると側で作業をしていた部下が告げる

 

「アンタレスアークV1、エネルギーチャージが完了しました。いつでも発射可能です」

「ご苦労」

 

部下を下がらせ、手元のコンソールにあるカバーを開き、中のスイッチに指をかける

 

「ーアンタレスアークV1、発射ァ!!」

 

無情にもそのボタンは押し込まれ、極大の兵器が起動した

 

 

延伸した巨大な砲門にエネルギーが収束。装填された特殊弾頭にエネルギーが充填され、真紅の輝きを放つ

 

金剛山の中央ー露出した宇宙艇の外壁に照準が合わされ、極光の弾丸が放たれる

 

ーサァッ!!!

 

金剛山の前で体勢を立て直していたGBCTヘラクレスの後方にイクサが着地、青いエネルギーの障壁を作り出し、アンタレスアークV1の真紅のエネルギー弾頭を受け止める

 

ーサァァァ……ッ‼︎

 

その膨大な出力に押されながらもなんとかシールドのエネルギーごと弾頭を丸く圧縮し、その勢いそのままに身を翻しながら空へと放り投げる

 

圧縮されたエネルギーが上空で爆発し、真紅の球体を一瞬作り上げ、急速に消滅して消えた

 

イクサがよろめき、膝を突く

 

『全く…無茶苦茶しやがって…‼︎』

「ごめんイクサ…っと、まだ終わりじゃないんだった」

 

立ち上がり、振り返るイクサ

 

ーゴァァァァ!!!!

 

ゴルバーが新たな敵と認識したのかイクサに向けて咆哮を上げる

 

ーサァッ!!

ーゴァァァァァァァァ!!!

 

イクサがゴルバーにショルダータックルを当てつつ、その巨体を押し込み金剛山から遠ざける

 

体勢を立て直したヘラクレスにイクサが目配せし、それを受け取った大介が頷く

 

『大介!無事か⁉︎』

 

ヘラクレスの上空にGBCTキャリアーが滞空、ランダルから通信が入る

 

「はい!ルシルとの通信は⁉︎」

『それがさっきの怪獣の攻撃と爆風でドローンが撃墜されてしまってて…まだ復旧の目処が立ちません…』

「わかった…ランダルさん、ドリルユニットを!」

『了解した』

 

キャリアーから投下されたコンテナをヘラクレスが受け取り、右下腕に装着。コンテナ部分をパージすると内部から大型のドリルになったアームが姿を表す

 

もう一度埋まった宇宙艇をスキャンし、ルシルらしい小さな熱源の近く、かつ衝撃が届かない位置に狙いを定め、ドリルを突き立て、4脚のアンカーを展開し固定。掘削を始める

 

「宇宙艇までの経路貫通を確認!」

 

コクピットから飛び出した大介は支給されたワイヤーガンでドリルアームに飛び移り、ハッチを開いてドリルアーム内部のスロープを降下、土砂で埋もれた宇宙艇内部へと突入する

 

土砂の崩壊を二度経験した船内は各所が崩壊し、火花を上げていた

その中をヘッドライトで照らし、ルシルらしい銀の長い髪の女性異星人を見つける

 

「ルシル!大丈夫か⁉︎」

 

極力体を動かさないようにし、傷が無いか確認する

黒いコートのような服を着たその姿は地球人によく似ているが、頭部や腹部から流れていた血は青かった

 

傷が痛むのかルシルがみじろぎする

息があることを確認した大介は少し服を裂き、止血用のパッチをあてがって大きな腹部の傷と額の傷を塞ぐ

 

「しばらく持ち堪えてくれ…‼︎」

 

ルシルをゆっくり抱えた大介はスロープの方へと戻り、脱出した

 

 

土砂の山からヘラクレスが離脱し、うずくまるエルシアをキャリアーがレーザーラックで保護したのを確認し、イクサは押さえていたゴルバーを蹴り飛ばす

 

ゴルバーは翼を広げ、飛行しながらイクサに迫るがその突進を回避しながら放たれた蹴りがゴルバーを大きく吹き飛ばす

 

金剛山に叩きつけられたゴルバーはよろめくが、突如その体を緑に発光させ、もがき苦しみ始める

 

『…⁉︎あのエネルギーは…‼︎』

 

発光が収まっていくとともに、ゴルバーの体は大きく変化していた

 

体表には赤い管状のものが這い、エネルギーが脈打っており、体色はドス黒く変色していた

 

ーゴァァァァァァァァァァァァ!!!

 

「!?変化した…⁉︎」

 

ゴルバー、改めてボルケーノゴルバーは額に燃えたぎるエネルギーを集中させ、イクサに向けて赤い光線として放つ

エネルギーバリアで防ぐが、それは容易く破られ、肩口に命中し巨体を大きく吹き飛ばす

 

ーサァッ…‼︎

 

ーゴァァァァァァァァ!!!

 

ダメージを受けた肩口を押さえたイクサがよろよろと立ち上がる

 

『あの怪獣…体全体が限界を超えて変異してやがる…もう倒すしかない…‼︎』

「そう、なのね……まだ何も調べられてないけど、それなら…私も覚悟を決めないとね!!」

 

構え直したイクサはEXエレキングのタリスマンを取り出し、ファーナスに読み込む

 

《フォージング:EXエレキング》

《エンチャント:エレクトリック》

 

イクサの拳に電撃が迸る

 

ーサァッ!!

ーゴァァァァ!!!

 

再び放たれる熱線を回避し、懐に潜り込んだイクサの拳がボルケーノゴルバーの鳩尾を穿つ

拳から電撃のエネルギーがボルケーノゴルバーを貫くように走る

 

その一撃でよろめき、痺れたのか膝を突くボルケーノゴルバーに向けてイクサが跳躍。雷撃を纏ったキックをその胸元に放つ

 

『雷神流星脚!!!』

 

稲妻のごとき一撃がボルケーノゴルバーの体表を貫き、イクサが着地する

 

貫かれたボルケーノゴルバーは体をスパークさせながら、粉々に砕け散っていった

 

その破片から吹き飛んできたEXレッドキングのタリスマンを掴み、イクサはゴルバーが現れた大地の大穴を見やる

 

(今、あの怪獣が放ったエネルギー……どこかイザーティアに似ていたが……)

 

タリスマンを握りしめながらイクサは空を見上げ、飛び立つ

 

(この星で一体……何が起こっているんだ……)

 

 

「バカな…‼︎ 我々の新兵器の一撃をこうも容易く防ぐのか…‼︎」

 

事の始終を眺めていた湯田がコンソールを殴りつけながら苛立たしげに叫ぶ

 

「あの巨人……GBCTどもの報告にあったウルトラマンとか言ったか…ヤツの目的はなんだ…」

 

銀縁のメガネを震える手で外し、癇癪を起こしたかのように握り潰す

 

「首を洗って待っているがいい…貴様も所詮、害獣の一部だ…‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

スターゲイザーベース内部

医療フロア内の入院スペースを大介は果物籠を手に訪れていた

 

病室の扉をノックする

 

「どうぞ」

 

返答を聞いた大介は病室へと入る

ベッドに横たわり、上体を起こしていたのはリンケイド星人ルシルだった

 

あのコートのような服装を病院着に着替え、体にはいくつか包帯が巻かれていた

 

「ああ、ダイスケか。来てくれて嬉しいよ」

「そちらも、元気になったようでよかった」

「まだ体があちこち痛むがね」

 

ルシルは愉快そうに微笑み、その様子を見た大介も満足そうに微笑んでいた

 

大介の応急処置もあり、ルシルは大事には至らなかった

GBCTの医療班たちの治療を受け、意識は無事回復。しばらくの療養は必要だが、命に別状はなかった

 

「エルシアの方も今は落ち着いている。狭いところに押し込めてしまっているのは申し訳ないが…」

「いや、大丈夫だよ。エルシアも安心しているのがよく伝わってくる。キミたちがくれたこの端末で様子も見れるから助かっているよ」

 

ルシルと共に保護したエルシアは大破した宇宙艇と共にGBCT地上基地の格納庫に一時保護されている

検疫の結果も問題なく、こちらもしばらくの療養で回復すると見込まれている

 

「伝わってくる…?怪獣の気持ちがわかるのか?」

 

大介の問いにルシルは少し胸元をはだけさせ、胸元に埋まった緑の菱形の結晶を見せる

 

「私たちリンケイド星の種族は、このリンクデバイスで怪獣と感覚を共有して生きているんだ。文字通り、共に苦楽を共にする…とこの星の言葉では言うんだったな」

「なるほど…正しく一心同体、って感じなんだな…そりゃ家族同然だ」

 

しばらく大介のことを見据えていたルシルは突然、深々と頭を下げた

 

「改めて、心から感謝を。私だけでなく、エルシアを含めて命を助けてくれてありがとう」

 

大介は照れ臭そうに鼻の頭をかく

 

「……俺は当然のことをしたまでだ。そちらこそ、無事でよかった」

 

その言葉を聞いてしばし見つめ合っていた二人は、どちらからとも分からずクスッと吹き出し、しばし朗らかに笑っていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

GBCT地上基地

 

怪獣の遺骸を保管する管理官の元に特殊自衛隊の制服を着た人物が訪ねてくる

 

「失礼します。黒斗司令官より、依頼されていた先の怪獣の遺骸サンプルの回収に参りました」

「ああ、ご苦労様です。すぐにお持ちしますね」

 

管理官は一旦奥へ引き上げ、大きなジュラルミンケースを取り出す

 

「こちらですね」

 

ケースの中身、ゴルバーから採取されたゴルザとメルバの生体サンプルが封入されたカプセルを確認した自衛官はそのケースを受け取り、その場を後にした




リンケイド星人ルシルとそのパートナー・エルシアの保護のため、怪獣の保護区とできる土地の捜索が開始される

捜索の中、絶海の孤島である岩神諸島から謎のエネルギー波が確認され、調査に向かった歩夢たちは多数の怪獣に襲われる

岩神諸島には何が潜むのか
怪獣の楽園に降り立つ歩夢たちの裏で大きな闇が胎動を始める…

次回ウルトラマンイクサ
「怪獣の楽園と岩の神」
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