呪霊じゃないです、神官幼女です。   作:かりん2022

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それは勘違いというものよ(夏油TS)
転生者だからって神様と勘違いしてない?


「空ちゃん。あなたはお姉ちゃんになるのよ」

 

 私は若い通り越して幼さすら残る母の言葉に崩れ落ちた。ちなみに成人してない。

 計画して。計画して!! せめて結婚約束してからにして!

 それが出来たら私は生まれていないのだが。

 

「父親は?」

「わかんない! 多分、あの超格好いい男の子だと思うの。だったらいいなー♪」

 

 はい、父親不明ですね。

 またか、またなのか。むしろ三年もよく我慢したと言うべきか。

 私はため息をついて、仕事を増やすことを検討した。

 この世界に生まれ落ちて三年。生き延びるのに毎日必死だ。

 やはり占いだけではなく、お守りを売りに出すべきか……。

 

「いいわ。食事にしましょう。妊娠したなら、仕事を減らさないとね。産婦人科には行った?」

「明日、行ってくるわ!」

「そう。仕事減らす分、お勉強も増やさないとね」

「えー?」

「これからは、親子3人分の食い扶持を稼がないとだもの。当たり前でしょ」

 

 それから、数ヶ月後。

 私達のボロアパートの前に、黒塗りの車が停まっていた。

 着物姿の人が降りてきて、ジロジロと私達を見る。

 

「愛野 輪廻さんですね? ……なるほど、お見えにならないと」

「な、なんですか?」

「お腹の子を買い取らせていただきたい」

「えっ 嫌です」

「育てられるつもりですか。身寄りも無い1人親が、悟様のお子を」

「空ちゃんがいるから、大丈夫です! そもそも、悟様って誰ですか!」

「貴方が手を出した中学生です」

「ちゅっ……!? ママンがごめんなさい!」

「えっえっ!? あの、えと、どの子!?」

「ママン!!! 誰かわからないほど沢山、偉い人の子供に手出ししているの!? 法律わかる!? 大人は18歳以下の子とはエッチしちゃダメなんだよ!?」

「ふ、ふえええ」

「あっ ごめんね。そうだよね。今勉強しているんだもんね。そもそもママンも子供だし」

 

 慌ててママンを抱きしめる。でもなおさら駄目じゃない? 子供が私じゃなかったら詰んでたよ?

 

「えっと、まずは父親に会わせてください。生まれてからのDNA検査も。父親が本当にその、悟様の子かわからないですし、その悟様にも知る権利はあるかと思います。流石に初対面の方に弟なり妹なりをお渡しするのは出来かねます。私達も、お腹の子を育ててもらえる確信が欲しいです。話し合いは、DNA検査が出てからということで如何ですか?」

「そう、ですね。確かに検査は必要です。しっかりした子ですね」

「わ、私の子は渡さないから!!」

「だってママン、ちゃんと資格勉強してないじゃん! バイトだってサボり気味だし、私が小学校に上がったら、この子の面倒どうするの!? お金だってもっと掛かるんだよ!? 家庭環境見て、育ててもらえそうだったら預けた方がずっと幸せになれるかもでしょ!?」

「が、頑張るもん!」

「本当に〜?」

「本当だもん!」

「覚悟が出来てるならいいよ。でも、子供は2人で作るものだから、やっぱりお父さんの意見も聞かないとね」

 

 そうして、お父さんの意見を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

「はあ!? 避妊してなかったの!?」

 

 なるほど。避妊は主に男の側がするものですよ。

 そして、お父さんはママンのお腹をジロジロみる。

 

「あー。確かに俺の子じゃん。無下限じゃねーけど術式もある。ついでに男」

「おお!」

「さすがは悟様のお子!!」

「この子は五条家で育てます!」

「娘については無関係ですし、孤児院に」

「あ? ガキ1人養えねーほど貧乏なの、うちって」

「あ! 私は自分の食い扶持は自分で稼ぐので!!」

「ガキにこんなこと言わせて恥ずかしくねーの」

「いえ! では、この子も一緒に養育すると言うことで」

「そーして。どうせガキが産まれるまでだろ。後ガキ、お前ガキなんだからパソコン控えてちゃんと寝ろよ」

 

 ふむ。いい子じゃん。口は悪いけど、私の事庇ってくれたんだ。

 子供が生まれるまでと限定したのは、私達親子にとって、この環境が良くないからだろう。

 目の隈の心配もしてくれた。

 五条 悟。六眼。無下限。術式。ぐるぐる回るのを振り払って、私は声を投げかけた。

 

「一宿一飯の恩。忘れないからね!」

「変なガキ」

「私、絶対役に立って見せるから!」

「そーかよ。期待しないで待ってる」

 

 そして、私はせっせと準備をするのだった。

 

 子供が産まれると、お祭り騒ぎとなって私達は手切れ金を貰ってお役御免となった。

 五条悟と、後は親友と、いつか出会う黒の女の子と、天の女の子に渡して欲しいとお守りを渡す。

 私の占いだ、というと、「占い得意らしーな」とのお言葉。監視はされてるでしょうね。

 ついでに硝子の分のお守りも強請られた。良き良き。

 

 そして、ドキドキしながら過ごすこと数ヶ月。

 

 まず、五条 悟に渡したお守りが壊された事を感知する。

 一つ目は幸運のお守り。私というイレギュラーがいる以上、原作のように「偶然」蘇生出来るなんてないかもしれない。だから運で補強する。

 

 次に、黒のお守りが壊れる。

 これはダメージをMPに鞍替えすると言うもの。気絶するだろうけど死んでいるか気絶しているかなんて、ターゲットでもない黒井さんのことだ、気にされる事はないだろう。

 

 は、早いよ!

 

 三つ目のお守り。これは私のお守りと対となっていて、私が壊す事で、居場所を入れ替えることができる。

 私は、慌てて準備を終えると、急いでお守りを壊した。

 

 パン!

 

「ピャッ」

 

 銃声に、変な声が漏れた。危機一髪だ。

 銃弾は私の真上を通り抜けた。

 

「あん?」

「は?」

「せっ拙者、弟好き好き侍。義によって助太刀致す!」

 

 ガクブルしながら、私は玩具のマジカルステッキを掲げた。

 変装(コスプレ)と仮面は準備万端だ。

 

「幼児!? 理子ちゃんは? 言ってる場合じゃない、避難させないと!」

「彼女は安全な場所に避難させたでござる」

「吐け」

 

 幼女に容赦なく撃たれる弾丸。それを見えない何かが防いだ。

 弾丸も防ぐなんて呪霊凄すぎる。伏黒 甚爾の容赦なく銃を幼女相手に撃つ残酷さも凄いけどね!

 

「じゃあ、こうしよ。貴方が勝ったら理子ちゃんはあなたのもの。私達が勝ったら、貴方が奥さんに託された息子さんと津美紀ちゃんは私達のもの。時間切れは私達の勝ちってことで」

「はっ ガキが吹かしやがる。お遊戯ごっこは他所でやれ」

 

 ナイフを持って走る。私は聖印を切って、瞳を下ろした。

 

「「!?????」」

 

 四つ目のお守りが作動する。

 それは夏油 傑の姿を隠した。

 

 だから、今、見えるのは、伏黒 甚爾と夏油 傑の操る呪霊、そして私。

 そう、今の私には呪霊が見える。

 呪霊達がはじけて消えていく。うわあっ これは予想してなかった! ごめん!!

 

「なんだテメェ……このプレッシャーは……違うな。テメェじゃねぇ」

 

 私は、両手に刃を作り出した。ブーストは掛けるだけ掛けた。

 

「ござるござる!」

 

 あっという間に伏黒 甚爾に肉薄し……真っ二つに切られた。

 あのプレッシャーの中で動けるなんて!?

 

 でもお生憎。

 私の体は無数の蝙蝠になる。

 

 一部を腕に戻し、振るうが簡単に防がれる。強いなマジで!!

 戸惑っていた夏油が戸惑いがちに手助けしてくれる。呪霊は弾けるので、肉弾戦で。

 

「テメェ呪霊か!!」

「弟好き好き侍だってば。別名、しがない神官」

 

 そうして時間を稼いでいるうちに、五条悟が駆けてきた。

 私は「瞳」を引っ込める。

 

「時間切れだよー」

「ちっ」

 

 ナイフを投げられ、夏油 傑が咄嗟に庇ってくれた。

 夏油の肩に深々とナイフが刺さる。

 

「傑!!」

「良いしょっと」

 

 あとはお守りを破壊して、再度理子ちゃんと入れ替わる。

 

「ふぅー!」

 

 ぺたりと座り込む。私、頑張った! ベストを尽くしましたぞー!

 恩義は確かに返した!! 手切金の分まで確かに働いた!

 私はべったりと血のついた服をゴミ箱に捨て、証拠隠滅完了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条悟が来るのは早かった。変装したのに。名乗らなかったのにその日の夜にはメールが来た。

 どうやら、4歳で戦場に出た事に非常にお怒りらしい。

 とにかく会う事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 公園に来ていたのは、黒井さんと理子ちゃんと夏油さんと悟様。

 黒井さんと理子ちゃんがいるって事は、同化失敗したのね。

 

「空、説明」

「空は一宿一飯の恩義を果たしたの」

 

 五条悟はめちゃくちゃ怒っていた。

 

「この子、知り合いだったのかい?」

「俺の子供の母親の子供」

「は?」

「子持ちじゃったのか!?」

「さすがは五条家ですね」

「避妊失敗して、空も母親の輪廻も非術師だったから、手切金払って放逐したんだよ」

「それは屑すぎないかい? 後、彼女は非術師ではないよ」

「ありえんじゃろ……」

「ああ、まさか呪力を誤魔化すなんてな。今も俺の目にはこいつは一般人に見える」

「いっぱんじんですが」

「あの蝙蝠に変わる凄い術式は?」

 

 むーん。いいか。話しちゃおう。

 

「空は、神官なの」

「神官?」

「それで、悟様の未来を占ったら、10年後に親友の夏油傑の死体を使われて封印されると出たの」

「私の? 悟が封印されるのも信じ難いけど」

「傑が死ぬってことか」

「そう。そして、その全ての始まりが今日なの。ここで天内のお姉ちゃんが同化出来なければ、悟様の親友の死亡率がすっごく上がるの。70%が150%なの。ぶっちぎりなの」

「転移した先の手紙にそう書いてあったのじゃ。じゃから急いだのじゃが……すまぬ。間に合わなんだ」

「……なんで私の死亡率が?」

「同化出来ないと、天元様が進化して人間じゃなくなって、呪霊操術の対象に」

 

 ばちんと口を抑えられた。

 

「……ヤベェじゃん」

「プハッ 上層部からも呪詛師からも狙われるの。狙われてるの。過労で弱らせて陥れて呪詛師に落とす計画も始動するの。だから今日、同化させないといけなかったの」

「それ、お前の占い?」

「そう。一宿一飯の恩義を果たした」

 

 私は重々しく頷いた。

 

「たかが一宿一飯の恩義で命かけんなよ、ガキ」

「いや、手切金なかったら飢え死にしてたもん。まあでも借りは返したよ」

「こっちの借りができたっての。お前、なんなの。位置の入れ替え、術式の秘匿、蝙蝠への変形、いくつ術式持ってんの」

「いや、だから神官だから呪術師じゃないよ」

「これ見える?」

「神様から眼を借りれば、呪霊も見えるけど。今は見えないよ」

「神様って何」

「神様は神様。覚悟を持って改宗するのでもない限り、これ以上は言えない」

「……」

「命の恩を命で返しただけだから、お礼はいらない。呪術師といたら命がいくらあっても足りないしね。手切金くれてありがと。もう会わないのがお互いの為だと思う。じゃあね」

「待ってくれないか!」

「気をつけなさい。あなたも悟様も呪詛師に狙われてる。周囲の弱者から巻き込んでいくでしょう。弟をよろしくね」

「「!!」」

 

 そういえば、それ以上踏み込まないと確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから二年後。

 火葬場で煙になった母をみあげる私に、子連れの男が近づいた。

 

「自分が情けないってわかってる。卑怯だって、恥ずべきだって知ってる……!!」

 

 慟哭する特級術師。最強の片割れ。壊れた理想を抱くもの。

 

「私に、力をくれないか……! 友とこの子達以外の何を失ってもかまわない。改宗をするよ」

「人外との契約を甘く見てない? 覚悟は出来てるの」

「出来てる」

「私は貴方を仇を討つ為の駒にするよ」

「それでもいい。普段見えない君には呪術師が必要だ。そうだろ」

「空よ」

「夏油傑だ」

 

 ここに取引は結ばれた。

 

 自業自得? 知ってる。無関係でまだ子供だったママを死なせたのは、私の油断と傲慢だ。認識阻害のお守りだけで、呪詛師が手を出せないとたかをくくっていたのだから。

 

 私は私のエゴのために、仇討ちをする。


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