ざわっと何かに見られた感じがして、慌てて周囲を見渡す。
眠気が吹っ飛んだ。しばらくして、恐る恐る警戒を解くと同時、携帯に着信がきた。
『3万円相当の占メールが当たりました! 占い結果をお読みください!』
「これ、前に何気なくクリックしたら最悪の占い結果だった奴……?」
先程の気配の後では、宣伝というよりは、何かの罠に思えた。だが、メールに呪力は感じない。そっとクリックする。
『対の最強は殺し合いの果てに共倒れとなる。親友を暗闇の箱から救いたければ、〇〇神社にいる死にかけの子犬二匹を××村と△△村までそれぞれ送り届けて、痛めつけられた籠の鳥を合わせて3匹探させなさい。彼らを見つけたらすぐに戻って、拾えた小さな命の数と同じ日数、彼らと閉じこもって災いの嵐をやり過ごしなさい。決して敷地外から出てはダメ。それで2番目の嵐は凌げるでしょう。マリオネットの主に警戒なさい。糸はいつでも貴方を狙っている。貴方が乙女を天使にせずに死なせた故に。対の最強は互いにしか倒せぬ故に。……この占いは人に見せてはいけません。助けになったら、お気持ちをお願いします』
は? 対の最強……親友って、悟のことか?
〇〇神社にいる死にかけの子犬? 籠の鳥? 意味がわからない。
私は悟に即座に電話をする。
『傑、何? 任務中なんだけど』
「あ、いや。嫌な予感がして」
『は? こんな雑魚、万が一もねーよ』
言われて、私は電話を切り、神社を検索してその神社へ行く事にした。
初めて、任務をサボってしまった。
「瀕死の子犬二匹……帳が貼られてる? 犬ってまさか人か!」
帳を破って、強大な呪霊と相対する。
「夏油さん! どうしてここに!?」
「下がれ、灰原、七海!!」
ギリギリ灰原を突き飛ばして助けられた。
失敗したら死んでいた。灰原と七海を下がらせる。
でもこいつ、私にとっても強いっっっ
「二人とも頼む! この呪霊は私に任せて、××村と△△村で籠の鳥を3羽見つけてくれ! 鳥じゃなくて人かもしれない!」
「なんですかそれ!?」
「そうしないと悟が困るらしいんだ!!」
「夏油さんを置いては……!!」
「良いから行ってくれ!」
「行こう、七海! 夏油さんを信じよう」
二人を見送り、ありったけの呪霊を出す。
「帷が破れません!!」
「何!?」
そして、否応なく3人とも産土神と戦闘に入り……次に気がついた時は、悟に抱き上げられていた。
「さ、とる」
情けない所を見られてしまった。
「産土神は鎮めた。3人ともすぐ高専に連れていく」
「でも、私は行かなければならない所があるんだ」
「後でな」
「急がないといけないんだ」
「腕が吹っ飛んでるんだぞ!」
そして、悟は有無をいわせず、私達を連れて行った。
硝子から治療を受けて、傷を塞いでもらう。
「眠れ、傑。村には人をやる」
「駄目だ、灰原と七海に行ってもらわないと」
「五条さん、僕らいけます」
「我儘言うな、傑」
「何かあったらすぐ連絡しますから」
それから一日。すぐに、傷だらけの幼児が3人、連れられてきた。
「虐待された子が3人。これでいーのかよ、傑」
「うん、良かった……5人とも、助けられた。後は、この子達と、灰原と、七海と、五日間呪専から出ないで待たないと」
「何を待つんだよ。良い加減、話せよ傑」
「人に話しちゃ駄目なんだ」
「俺にも関わりあるって聞いたけど?」
こんな明らかにガチな占いに、逆らうつもりはなかった。
「ごめん、悟」
「ほんとだよ。良い加減、寝ろよ。五日といわず、半月は休んどけ」
私は頷き、眠る。
気がつけば、一週間経っていた。
幼児達に纏わりつかれながら、メールを見て、悩む。
なお、この子供達は私が面倒を見る事にした。呪専でサポートしてくれるというし、このまま放り出すのはあまりにも無責任だ。
占いサイトの名前で検索すると、知る人ぞ知る、コアなファンの多い占い師のようだった。
ただし、何度も占うと災いが降りかかるということで、本格的な占いは多くても二回までしか占えないらしい。何かの縛りだろうか。あの気配は呪力を感じなかったけれど……。
二度目の嵐。一度目の嵐は、やはり理子ちゃんを死なせた事だろうか。
乙女を天使にせずに死なせた。その罪で、狙われるという事だろうか。
天元様の同化が出来なかったことで、私と悟に敵ができたということだろうか。
占いサイトを見てみる。占いの意味は、問うてもわからないのだという。
何か、大いなる意志のお告げだからとのことだった。どうやら宗教系らしい。
とりあえず、命を救われたのだから、3万円は振り込む事とした。
幼児達を撫でながら、占いの依頼について考える。
二度目の占いは、よく考えるように書かれていたからだ。
マリオネットの主について聞いておくべきだろうか?
悟が暗闇の箱に閉じ込められる、これをするのはきっとマリオネットの主人だろう。
最強を倒せるのは最強だけ。私は、悟の隣に立てているという事だろうか。
今、私の腕はないから、もう最強ではないだろうか。
悩んだ末に、占いなんてなくて当たり前なのだから、ないよりマシくらいに考えようと開き直った。
大体、常に狙っているなんて占われたら気にしてしまう。
これを聞かずして何を聞くのだ。
丁寧なお礼文と共に、占いの依頼をメールする。
相手は十中八九呪術師だろうが、念の為詳細は伏せて、腕は失ったけど小さな命は5つ救えた旨を書く。
ダメもとで、会ってみたいとも。
意外な事に、返事はイエスだった。
失ったのが左腕だとしたら、運命を変えた代償だろうとも。
本当に左腕なのでびっくりした。
とにかく、私は会う事になった。