「悟。なんのことかわからないだろうけど、私の良心の為に謝らせてくれ。ごめんっ!!!」
私は深々と悟に頭を下げる。
「自分の事ばっかりでごめん! 硝子も! でも主に悟、本当にごめん!!」
鬱で発狂した挙句、殺させるとか!
百鬼夜行を起こすとか!!
死体を盗まれて封印に使われるとか!!!
酷いのが、迷惑を掛けないようにします、と言えないことだ。
私の運命を覗き見た際、大いなる存在の目を借りたんだけど、これって完全に外法である。
呪霊の力を借りるよりも悪い。ヤバイ知識を持ち込みやがって、とは師匠に言えない。
その恩恵に預かる私も同じ穴の狢。ただ、それ以上に流出させるわけにはいかないから、私は何も言えない。天元様の事も言えない。言えるわけがない。そもそも、理子ちゃんを助けたいって言い出したのは私なんだし、これは私の罪で、自業自得だ。悟は巻き込めない。巻き込んじゃってるけど。
「理由も明かせない謝罪に意味はねーよ!」
「わかってる。それでも謝らずにいられないんだ……」
「じゃあ、なんでも一ついうこと聞けよ」
「うん、悟は2個、硝子は1個、事情を話す事と命が関わる事以外だったらなんでもいう事きくよ。縛る」
「は!? 傑、ちょっとこの前から変だぞ」
「わかってる。多分、これから奇行が増えると思う。ごめん」
「なんなんだよ、マジで」
そして、私は修行を始めた。
魔術の勉強はくっっっっっっそお金が掛かる。
でも、後輩二人は悟や私の精神を削る為に狙われる可能性があるらしい。
なので、多少の散財は仕方ないよね……。
精霊魔法は宝石に閉じ込めた精霊にお願いをする。
魔法は、師匠から貰った魔石を使って詠唱と魔法陣。
師匠の魔石はもうこちらでは手に入らないし、宝石は言うまでもなく高価だし、精霊は例えば水の精霊は流水に晒したり、土の精霊は普段土に埋めたり、火は燃えないように気をつけつつ火に晒したり、風は換気が必要だし、手間が掛かる。
大いなる存在の力を借りた術はというと、これがかなり面倒だった。
まず、部屋のベッドは何重にも布を下げて、植物の鉢植えをかなり買った。
深淵なるものを覗く者、また深淵からも覗かれる。
ようは、大いなる存在に力を借りていることを気づかれれば、その存在から、意識を向けられる。
ちょっと気づいた程度のことでも、凄まじいプレッシャーとなるらしい。
それが、普段のみならず、寝てる時もトイレの時もずっと続く。
力を汲み出して、目立てば目立つほどそれは強くなる。しかもここは異世界。興味を引きやすいかもしれない。そうなると、強いプレッシャーに24時間耐えなくてはならない。
師匠の真っ黒な目の隈は、それが原因なんだそうだ。
あと、人間を捨てるのに大量の宝石が必要らしい。
私はメンタルが弱いから心配と言われた。実際の運命では折れてるんだし、反論できない。
勉強と精神修養の修行もしないとな。
正直に言おう。
とても……とっっっっっても楽しい!!!
魔法だよ!? 呪力とは全然違う。それは、呪霊には通用しないけど……でも呪力と混ぜたりなどの創意工夫がとても楽しい。
できる事の幅が凄く広がった。ああ、でも上層部には言えないな。いずれバレるだろうけど。
最悪、逃げる事になるかもしれない。
それはそれで仕方ないね。逃亡準備もしとこ。
私は、とても忙しくなった。
「夏油さん。何してるんですか?」
「傑、ぜーんぜん教えてくれねーの。最近、デートばっかだし。聞いても無駄無駄」
「あー、それなんだけど。お守り作ってるんだ。悟と硝子と、灰原と七海、ついでに伊地知にもあげるよ」
「お守り? 呪具ですか?」
「そんな大したものじゃないよ。でも気休めにはなるかなって」
「良いんですか? 大事にします!」
「ありがとうございます」
「無くしたら言ってね。また作るから」
「……傑、悪い宗教に嵌ってない?」
「あ、ばれた? でもまあ、迷惑は掛けないようにするよ」