「いいか、傑。こういう神様とか正直碌なもんじゃねーぞ! 触らぬ神に祟りなし!」
「知ってる」
「大抵こういうのひでー死に方するし」
「でも呪術師ってそうでしょ? じゃあ変わらなくない?」
「傑はそんなのに頼らなくてもつえーだろ」
「……私は弱いよ。悟とは違うんだ」
なにせ、未来で折れてるのだ。それはもうポッキリと。
「なんだよ、それ。俺達二人で最強じゃんか!」
「それなんだよね……。私が弱いくせに強すぎてごめんよ、悟。いっそ死んであげられたらって思「は?」」
ぐっと私の襟首を掴んだ悟は、それを放り投げて、ギロっと輪廻さんを見た。
「お前が傑に余計なこと吹き込んだのか」
「傑くんは、神様の力で自分の未来を見ちゃったんだよ」
「嘘くせ〜」
「確かに、厳密には未来じゃないんだけどね」
「は?」
私が言うと、悟は意味がわからないと首を傾げた。
「並行世界線の私をざっと見たんだけど、大体折れてる。引っ張られそうになったけれど、その分並行世界の私達の気持ちは理解できたかな。間違いなくあり得た私だった」
「ちゃんと話せ、傑」
「話さない。私は呪術師に向いてなかったって所だけわかってくれればいいよ」
「そんな事ない!」
「ある」
喧嘩になるというところで、夜峨先生が引き離してきた。
「……ちょっと待て、傑。つまり、その神様? の力で、並行世界の自身を見通したということか」
「そうです」
「それで、不都合な未来を見たから変えた」
「そうです」
「これからも、そんな物に頼っていくつもりか」
「師匠はイレギュラーで、並行世界にいないので、もう未来は見通せません」
「そうか。彼女の占いについては多少調べてある。二回以上占うと不都合とはそういうことか」
「後は、あまりさっきの神に注目される事のないように、ということですね。一度注目されすぎると、閉じこもって毎日同じ生活をして興味を削ぐ『禊』を何十年もしないと発狂するので」
「でも、逆に言えば、未来は変えられるってことだろ。わかってる相手に負けるタマじゃねーだろ。お……俺もいるし」
「うーん」
実は虎杖の母に接触を試みている。だが、既に逃げた後だった。
私が占いで未来情報を得たらしい、と知ってすぐである。
あれほどフットワークが軽い上に深謀遠慮の持ち主、そして警戒心が強い。
無理じゃない? それに、いずれバレてしまうのだ。なにせ、当の本人が気づくことだ。
「悟には申し訳ないけど、私もう、詰んでるんだよね。それこそ外法に手を染めてどうにかなるかどうか、というか」
最悪師匠みたいに転生して術式を捨てるという方法もあるが、その場合、次も術式や呪力を得られるかという問題があり、一般人になって仕舞えば悟の親友を名乗るのは誇りが許せなかった。
「だから! どうして話さないんだよ、話せよ!! 俺に、親友を助けさせろよ! それとも、そんなに俺が信用できないかよ!」
「悟……私も君を助けたい」
「は? あーもう! じゃあ、絶対誰にも話さねーって縛るから!! 夜蛾センも! いいよな!」
「そうだな。その後の対処は対処で考えよう」
「まあ、これだけ意味深な事を言ってやっぱり言わないはないか。傑くん」
「わかりました、師匠」
「「師匠!? 生贄じゃなくて!?」」
「流石に幼女を、というより他人を生贄にはしないよ……」
「自分はするのかよ」
「うん」
悟がぎりぎりと私を締め上げてくる。心配なのはわかるけど、これ以上は私も反撃するよ?
「悟。実は、天元様の依頼、失敗したろう?」
「ああ」
「あれで天元様、進化してさ。10年後には呪霊操術、通用するようになっちゃうんだ。それで私、多分現時点でも最悪の呪詛師に狙われていてね。その事もあって、確実に逃がしてもらえそうにないんだよ。死体を操れる上に反転術式をマスターしてるから、死に逃げも難しいんだよね。ちなみに10年後に私の死体を利用することで日本、特に渋谷が壊滅する」
悟と先生は撃沈した。
あっ 私の命と日本の未来を天秤にかけて苦しんでる顔だね、それは!