その青年、鬼   作:WATAHUWA

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第10話

後日シエルは千滋と少女の正体以外のことを女王に報告した。

 

薬が日本裏社会の者にバレていたこと。薬は日本裏社会では禁忌の品で、見つかったら必ず作った者、飲んだ者を殺さないといけない。薬を処分しないといけないこと。でも日英関係を壊さないよう黒幕を殺さず、捕虜を人体実験される前に救出した等、事件解決に協力してくれたこと。千滋がその代わりとして主原料を忘れさせ、薬、研究成果を処分した事をだ。

 

 

その少女は秘密裏に棲み処へ帰ることができ、千滋はと言うと…

 

「うん。良いのが出来たな」

 

厨房で大量の餡子を作っていた。なぜ餡子を作っているのかと言うと

 

「本当に申し訳ございません。坊ちゃんが日本菓子を食べたいと言うから」

「いやいやこれくらい大丈夫だ」

 

実は昨日、菓子大好きなシエルが日本の菓子を食べたいと言ったからだ。でも材料がここにあるわけない。なので劉の表の会社(貿易会社崑崙(コンロン))で小豆を仕入れ(劉がサービスとして量多めにしてくれた)、今日作っているのだ。

 

「ところで何を作るんですか?」

「んー。作るのは……」

 

ドガアアアアァァァン!!!

 

「「!?」」

 

扉が爆発した。

 

「なんだバルドか!?それともメイリン!?いやフィニか!?」

 

バルド、メイリン、フィニの誰かがやらかしたのかと思った千滋。しかしだ。

 

「こんにちはー。ファントムハイヴ伯爵と日本人いますか――?」

 

Wチャールズことグレイとフィップスだった。

 

「誰だこいつら!」

「彼らはチャールズ・グレイ卿とチャールズ・フィップス卿。女王陛下の秘書武官兼執事です。」

「あーなるほど」

 

セバスチャンの説明に千滋は納得。確かに服装に上品さがあるからだ。

 

「通称Wチャールズ!よろしく日本……」

 

しかしグレイは千滋の傍にある餡子に釘付けだ。

 

「………。」

 

その様子を見た千滋はスプーンで餡子を一掬い。それをグレイの前で動かす。グレイはそれに合わせて動いた。確実に欲しがっている

 

「………後でおやつとして出すから」

「ホント!?やった♪」

 

「とりあえずお二方。扉の修理をお願いします。」

「すまない。すぐに取り掛かろう」

 

セバスチャンに言われ、グレイとフィップスは扉の修理を始めた。

 

「千滋さん。お菓子大量に作りますよ。グレイ伯爵はかなりの大食いですので」

 

真剣な表情で言うセバスチャンに千滋は「え、どれくらい?」と聞く。そんな彼にセバスチャンは答えた。

 

「小腹が空いたと言って寸胴鍋の中身すべて食べるほどです」

 

千滋は思わず無言で目の前の寸胴鍋を見た。

 

 

ー応接室ー

 

「それじゃ気を取り直して日本から来たセンジ・フバだ。上流階級英語は上手くないからどうしても雑になってしまう。そこは勘弁してくれ」

 

シエルの隣で挨拶する千滋。Wチャールズは「別にいいよー」「慣れていないのは仕方がない」と言ってくれた。

 

「それでここに来た理由は?」

 

シエルの問いにグレイは答える。

 

「これを日本人。つまり千滋に渡してだってー」

 

そう言って差し出したのは手紙だった。

 

「見てもいいか?」

「どうぞ」

 

千滋は中身を読んだ。シエルは少々心配そうに見る。

 

「大丈夫。仕事が忙しくて直接会えないから手紙になってしまったこと、日本に迷惑かけたことへの謝罪と事件解決に協力してくれたことへの感謝だった。後日、ヘイグが怪しい薬を作って人体実験していたことを必ず新聞に出すと書いてある」

「そうか」

 

おいたもバレてなかった。とりあえず今回はお仕置き無しである。すると

 

「失礼します。」

 

今日の午後のお茶を用意したセバスチャンが現れた。

 

「本日のおやつはアズキと言う豆を甘くしたアンコを円形のカステラで挟んだ日本菓子、ドラヤキです。お茶は我がファントムハイヴ家家令、タナカお気に入りの緑茶をどうぞ」

 

そう説明したセバスチャンは4人の前にどら焼きと緑茶を出した。

 

「それじゃあ三人とも食ってくれ。西洋の菓子も美味いが日本の菓子も美味いぞ」

 

そう言って千滋はどら焼きを素手で持ち上げる。パンのようにちぎってではなく、そのままかぶりつく姿に驚きつつも千滋の真似をして三人も食べ始めた。

 

「……美味いな」

 

千滋の言う通り日本の菓子も美味いと思ったシエル。

 

「何これおいし――♪豆ってお菓子に出来るんだ!」

 

日本の菓子初体験のグレイはご機嫌よく食べる。

 

「沢山作ったからお土産にどうぞ。女王様と一緒に食べてくれ」

「やった!」

 

「アンコとやらの作り方教えてくれるか?」

「ああ。後で教えるよ」

 

自分も作ってみたいのか餡子の作り方を教えてほしいとお願いするフィップス。こうして日英関係に亀裂が入らずに済んだ。

 

数日後

 

「千滋さん元気でねぇ!」

「お別れ寂しいですだよ!」

「体に気を付けろよってダンが言っている

「また一緒に料理してぇな!」

「……ほっ」

 

千滋が日本へ帰る日になってしまった。汽車の窓から顔を出す千滋に別れを惜しむ使用人たち。タナカも寂しそうだ。

 

「おれだって寂しいさ。いつか日本に来い。その時は主と歓迎するよ」

 

千滋も寂しそうに応える。

 

「千滋。今回の件、協力感謝する」

「貴方のお陰で早く終わりました。ありがとうございます」

「それはこっちのセリフだ。二人ともありがとな。シエル、これを渡しておく」

「?」

 

セバスチャンを通じて渡されたもの。それは一枚の紙。

 

「これは?」

 

紙に書かれていたのは日本語と英語で書かれた住所だ。

 

「俺が住んでいるところだ。もし日本で困ったことがあったら訪ねろ。「俺たちは一度交わした約束は守る」からな」

 

鬼たちは義理堅い種族のようだ。

 

「分かった。覚えておこう」

 

そう言っているとだ。

 

ジリリリリリリリリリリリ!!

 

出発の時間になった。

 

「じゃあな皆!!本当に楽しかったぞ!!」

 

「「「「千滋(さぁん)!!!」」」」

 

こうして千滋を乗せた汽車は港がある町へ向かった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「千吾郎様!千滋!ただいま帰りました!!」

「おお!千滋!!」

 

長旅を終え、千滋は千吾郎の下へ帰った。

 

「それで作っていたやつは病気で苦しむ患者の為、英国人皆のために新薬の研究をしていると言っていました。まったく変若水を治療薬にするとは馬鹿な奴です。原材料の事を忘れさせるために暗示を掛けました。殺していないので日英関係に亀裂は入っていません。女王陛下はそいつの悪事は必ず新聞に出すとのことです。原材料にされていた鬼は捕まえられていただけで悪事に協力していませんでした。なので逃がしました。」

「そうか。今回の任務よくぞ頑張った」

「お礼は女王の番犬と呼ばれる貴族に。裏社会の秩序と呼ばれる彼らがいなかったらまだ時間がかかっていました!」

 

「なるほど。その者たちが来たら必ず協力してやるんだぞ」

「はい!」

 

 

 

 




これでおしまいです!今まで読んでくれた人たちありがとうございます!
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