フリッツ・ヘイグが三人の前に現れた。
「お前がフリッツ・ヘイグ?」
千滋はヘイグに聞く。だって写真のヘイグは笑顔に対し、目の前のヘイグは悪の親玉のような表情だからだ。
「ああ、そうだが?お前よくも私の研究成果を壊すとは…いい度胸だな」
千滋の破壊行動にヘイグはブチ切れ寸前だ。
「ふん。貴殿の行動で女王陛下は憂いているのにな」
シエルの言葉にヘイグはハッとする。
「まさか女王の番犬!?」
やはりシエルの事を知っているようだ。
「シエルの家がどんな存在なのか分かってるくせに手を出したのか」
「人間は馬鹿な者がいますからねぇ」
千滋とセバスチャンは呆れた様子でヒソヒソと小声で話す。
「じょ、女王の番犬ならば陛下にお伝えください!!私フリッツ・ヘイグは病気で苦しむ患者の為、英国人皆様のために新薬の研究をしているのです!怪我も病気もすぐに治る!!そんな魅力的な「黙れ」ひい!?」
ヘイグの傍にはいつの間にか来た千滋。千滋はヘイグの首に刀を当てながらドスの利いた声で言う。
「病気で苦しむ患者の為?英国皆の為?嘘つけ。お前今までの奴らの様子を見てわからないのか?銀で苦しむ。血を欲しがる。灰になる奴もいるんだぞ。どこが患者や英国皆のためになるんだよ。お前が薬の主原料を手に入れて、それで薬を作っている時点で色んな奴を殺すために作ってるんだよ!!」
「そいつの言う通りだ。女王陛下からの手紙にはまるで吸血鬼のようだ。辺りに出回っているあげく日本に密輸されているせいで日英関係に亀裂が入ると憂いている。貴殿はこの国を裏切っているんだ。」
千滋とシエルの言葉にヘイグは怯えていく。
「た、確かに灰になるやつが居るがそのままの状態だからだ。私がしっかり改良すれば「おやおや。まだ言っているのですか」
まだ言うヘイグにセバスチャンも呆れる。
「この薬は人間が扱うのは無理なのです。諦めた方がよろしいですよ」
「あ、諦めることが「いい加減にしろ!!」
バキ
「グハ!!」
千滋に殴られた。
「セバスチャン。こんなバカを縛る奴を探してくれ。シエルは蝋燭と火をつける奴を頼む」
「分かりました」
「ああ」
千滋に言われたものを探すセバスチャンとシエル。少しして
「あったぞ」
「これならいいですね」
「ありがとな」
二人は蝋燭、マッチ、鎖が長い手錠(おそらくは人体実験被害者を押さえつけるための物)を持ってきてくれた。千滋はさっそく手錠でヘイグをグルグル巻きにする
「ぐぁ」
「さてと」
蝋燭に火をつけた千滋はそれをヘイグに見せる。
「何するんだ?」
「父上直伝暗示術だ。」
千滋は説明する。
「本当なら今すぐ殺さないといけないんだが、こいつは英国人。殺したら間違いなく日英関係に亀裂が入る。最悪、生麦事件や薩英戦争のようになりかねないからな。だから暗示で主原料を忘れさせるんだ」
【生麦事件とは当時、日本でとても偉い方の行列に騎馬の英国人が乱入し、その失礼な行動に怒ったお供の日本人たちが彼らを殺傷した事件の事です。この事件の処理は大きな政治問題となり、そのもつれから日本と英国との間で薩英戦争という戦争が勃発しました】
「なるほど。女王陛下も日本との戦争を嫌がっていますからそれが最善でしょうね。………坊ちゃん見ました?千滋さん、私情を挟まず、最善の行動をしていますよ?坊ちゃんも見習わないと」
「う…うるさい」
実はとある事件の犯人の言動にシエルは激昂。銃撃した。更に報告を偽装したため、それに気づいた女王から全然笑えないお仕置きを喰らったのだ。
「それじゃ暗示やるぞ。二人は聞こえないよう耳を押さえてくれ」
言われた通りにシエルとセバスチャンは耳を押さえる。それを確認した千滋は暗示を開始した。
「や、止めて…止めてくれ!!」
鎖でグルグル巻きにされながらも拒否するヘイグ。当然千滋は「止めないに決まってるだろ」と一蹴した。