その青年、鬼   作:WATAHUWA

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第9話

しばらくして虚ろになっていくヘイグ。暗示が効いて来たようだ。

 

「よし、終わったぞ。これで主原料は分からなくなった。変若水は作られないぞ」

「そうか」

「それでは人体実験をされている方々を探しに行きましょうか」

 

次は囚われている人たちの救出だ。怪しい所を探す三人。しばらくして…

 

「ああ!助けに来てくれたのか!!」

「よかったぁ!!」

 

牢屋に入れられている十数人の男女を見つけた。彼ら曰く海外から連れてこられた奴隷だそうだ。人体実験にピッタリである。

 

ギギギギギギギギギ

 

「さて、みなさんどうぞ」

 

強引に牢屋を開けたセバスチャン。男女は引き気味に出てきた。するとだ

 

「あ!そうだあの子も助けないと!」

「そう言えばそうだな!!あんたらあの子も助けてくれ!!」

「あの子?」

「誰の事だ?」

 

シエルの問いに男女は答える。

 

「違う牢屋に私たちより前に捕まっている子が居るのよ!」

「俺たちを閉じ込めた奴の声からして血を抜いているんだ!」

「お願いだ坊主たち!助けてあげてくれ!!」

 

「分かった。その牢屋、どの方向にある?」

 

千滋の問いに男性は「もっと奥の方だ」と言った。それを聞いた千滋は奥へ走った。

 

「千滋!?」

「皆さん、外へ逃げてください。坊ちゃん行きますよ」

「わぁ!?」

 

シエルを抱えたセバスチャンは千滋を追いかけた。少しすると千滋の姿が見えてくる。

 

「千滋さん」

「やっぱり追いかけてきたか。セバスチャン、お前ならもう分かっただろ?変若水の原材料」

「ええ。血ですね」

「血ぃ!?」

 

シエルは変若水の色がまるで血の様だと思っていたが本当に血だったとは思わなかったようだ。

 

「そしてその血は…」

「だ…誰?」

 

 

いつの間にか奥の牢屋に到着した三人。そこには千滋と同年代の英国人少女がいた。

 

「こ、来ないで!!」

 

怖い目に遭ってきたのだろう。怯えながら少女は叫ぶ。

 

「千滋。この女がそうなのか?」

「ああ。そしてこの子の正体は」

「千滋さんと同じく鬼ですね?」

 

変若水は西洋の鬼の血を薄めて出来た物なのだ。

 

「じゃあなんでこいつは此処から逃げないんだ?鬼なんだろ?」

「牢屋をよく見てみろ。」

 

 

千滋に言われ、牢屋を見るシエル。床とベッド以外は全部銀を塗られていたのだ。

 

「西洋の鬼は弱点が多いからな。捕まえやすいんだよ。」

 

そう言って帽子を取る千滋。

 

「大丈夫だお嬢さん。俺たちは味方だ。見てみろ」

 

少女は千滋を見る。すると千滋の髪は白銀、瞳は金色に変わり、額からは二本の角が現れた。

 

「す、姿が変わった」

「これが鬼本来の姿なんです」

 

その姿に驚くシエル。セバスチャンは教える。そして自分と同じ鬼だと分かった少女はと言うと

 

「う…うわああぁぁん!!!」

 

安心したのか大泣きだ。

 

「セバスチャン開けてくれないか?」

「分かりました。」

 

ギギギギギギギギギ

 

千滋が牢屋に入ると自分の帽子と外套を彼女に被せる。

 

「銀に触れないよう被ってろ。立てるか?」

 

そう言って千滋は手を差し出す。帽子と外套を被った少女は千滋の手を借りながら立ち上がる。やっと自由になれた。こうして異常薬品密輸事件は幕を閉じた。

 

 

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