帰ってきたらD×Dだった件   作:はんたー

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魔国にようこそです

 木場side

 

 

 

 

 

 眩い転移光りに包まれた僕達は、今までの転移魔法とは少し違う感覚に覆われる。目を開けると、そこは石造りの建物の中だった。

 所々にある装飾品が異様な雰囲気を醸し出している。ここが、異世界なのか? 

 

「……ここが“基軸世界”……なのか?」

 

「はい。ここじゃあ実感わかないでしょうし、取り敢えず外に出ましょうか」

 

 イッセー君は僕達が転移した魔法陣とは、また異なる魔法陣を指さしながら言う。イッセー君はそのまま魔法陣の上に立ち、何やら機械を操作しながら魔力を込めている。

 

「皆も早く来いよ!」

 

「い、今行くよ……」

 

 イッセー君に促され、僕達はまた別の魔法陣の上に立つ。これは“拠点移動(ワープポータル)”といって、この世界の独自の転移魔法陣なんだそうだ。確かに、悪魔が使う転移魔法陣とは少し違う感じがするね。

 皆とともに、僕達は再び転移する。そこは、誰かの家みたいだ。

 

「ここは……?」

 

「ここは俺の持ち家だよ。こっちにいたときはこの家でミッテルトと一緒に住んでいたんだ」

 

 イッセー君の言葉に一瞬の静寂があたりを包む。部長達はワナワナと震えながら、家の中を見回している。

 

「……二人きりですって? なんて羨ましいっ!」

 

「ま、うちの方が付き合いが長いっすからね♪」

 

 部長達が涙目になってミッテルトさんを睨みつける。それを見たミッテルトさんは自慢気に胸を張っている。

 そんな皆の様子に呆れながらも、イッセー君は窓を開ける。そこには────

 

「うおっ!?」

 

「これは……」

 

「な、何よコレ!?」

 

 皆が驚愕の表情を見せる中、イッセー君達は得意げに僕たちを見つめる。

 僕達が見たのは、向こうの世界では考えられない光景だ! 

 小猫ちゃんのように、獣の耳が生えた獣人らしき種族、オークのような見た目の種族、肌が緑色の異種族、翼を用いて空を飛ぶ人達、水路の中を泳ぐ人魚のような存在、そんな中に普通の人間がごく自然に溶け込んでいる! 

 誰も、そのことに疑問を抱いていない……これが、この世界の日常の光景だというのか!? 

 驚く僕たちを尻目にイッセー君はクスリと笑い、手を広げる。

 

「ようこそ皆! 多種族共生国家────“魔国連邦テンペスト”へ!」

 

 イッセー君の言葉とその光景に、僕達はただただ圧倒されるだけだった。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 イッセーside

 

 

 

 

 

「じゃあ、私達はこれで失礼するよ。仕事も残ってるわけだしね」

 

「こっちは暇じゃないからね……じゃ、そういうことで」

 

 そう言いながら、カレラさんとウルティマさんはそれぞれの職場へ戻っていく。片やこの国の検事総長、片や最高裁判長。二人共仕事が忙しそうだからな……まあ、それにしては迷宮でよく見かけるけど……。

 

「……では、妾たちも一先ず本国(ルベリオス)に戻らせてもらおう」

 

 ルミナスさんはそう言いながら、指をスナップさせる。すると、部屋の中に豪華な装飾の“転移門”が現れ、中からルイさんとギュンターさんが出迎えてきた。

 

「お迎えにあがりました。ルミナス様」

 

「姫、どうぞこちらへ……君もだ黒歌。色々と報告を聞きたいのでな……」

 

 突如現れた強者二人を前に、部長達は警戒しながら後ろに下がる。アザゼル先生やセラフォルーさんも、その凄まじい魔の力に冷や汗をかいているみたいだ。

 

「うむ……行くぞ、黒歌」

 

「はいにゃん♪ あ、今回の件をヒナタ達にも伝えないとだから、また後で合流するにゃんね」

 

 そういいながら、門をくぐり抜け、ルミナスさんと黒歌さんもルベリオスへと帰還した。それを確認した部長は汗を拭い、問いかける。

 

「イッセー、今の人達は……?」

 

「ルミナスさん配下の“三公”のルイさんとギュンターさんです。黒歌の同僚でどちらもロキなんか相手にならないレベルの力を持つ吸血鬼ですよ」

 

「……なるほど、あれ程の手練れが多くいるとなると、やはりここは面白そうだ」

 

 神祖の生存が確定した今、ルミナスさん達も対策を練るのに忙しいんだろうな。ヴァーリがなんか言ってるが、俺は気にせずに、俺は自分ちの扉に目を向ける。

 

「じゃあ、俺達も行きますか……」

 

「うん。えっと、この世界の魔王様に会いに行くんだっけ?」

 

 ドアノブに手をかける俺に木場が質問してくる。

 

「ああ。この“ジュラ・テンペスト連邦国”の国主にして、魔王様でもあるリムルに会いに行くのさ」

 

 木場の質問に答えながら、俺は扉を開け、皆に視線を向ける。そこには、ソファーに顔を埋める部長や朱乃さん、クッションを大事そうに抱きしめるアーシアに小猫ちゃんの姿があった。何してるんだ皆? 

 

「……欲を言えば、もう少しイッセーの家(この家)でゆっくりしたいけど、時間も有限だし早めに行ったほうがいいかもしれないわね」

 

「……残念」

 

 部長達は何やら名残惜しそうにしつつも、切り替えて俺の意見に賛成する。今は学校も長期休みでもなんでもないし、滞在日数も限られてきそうだからな……。まあ、数日くらいなら別に休んでもいいんだけどさ。

 取り敢えず外に出て、道中を楽しみながらリムルの自宅に行くことにした。

 初めてのテンペストに皆は興味津々のようだな。特にミリキャスは目茶苦茶目を輝かせている。

 

「すごいですね、イッセー兄様! たくさんの種族の方々が一緒にいますよ!」

 

「まあな。何しろ、テンペストはあらゆる種族が集う国とすら言われてる場所だからな」

 

 少し興奮気味なミリキャス達に俺は自慢気に答える。

 今までずっと冥界で過ごしてきたミリキャスにとっては何もかもが新鮮に映るのだろう。

 冥界では、様々な種族が転生した“転生悪魔”は多くいるだろうが、種族の多さならばテンペストのほうが遥かに上だからな! せいぜい驚くがいいさ! 

 

「……それにしても、本当に色んな種族の方がいるんですね」

 

 周囲の光景を見ながら、ガブリエルさんはぽつりと呟く。

 

「多種族共生国家……凄まじいモノだな。俺達が知ってるエルフやドワーフなんかも見かけやがる」

 

「両種族とも、私達の世界では滅多に表に現れないというのに……それに、あの人達はゴブリンですかね? それにしては、凶暴性がかけらも見当たりませんが……」

 

 皆もその街並みに驚きながらもキョロキョロとあたりを見回している。

 思ったとおりだ。やはり、多種多様な種族が共に暮らしている国は、アザゼル先生達には信じられないみたいだな。まあ、向こうだとまだまだ和平交渉ができていない神話や種族が多そうだし、無理もないか。

 

「そ、そういえば、この世界の魔王様って、どんな人なんですか?」

 

「そうだな……超がつくほどのお人好しだな。それでいて、カリスマ性もあるし、俺の命の恩人でもあるし……俺が心の底から尊敬してる男の一人だよ」

 

「ほぅ、人誑しのお前がそこまで言うか。これは会うのが楽しみだな」

 

 ギャー助の言葉に答えると、アザゼル先生は笑みを浮かべてそう呟いた。誰が人誑しだ誰が。それは俺よりもリムルにこそ相応しい称号だと思うぞ。

 そんなことを考えていると、屋台の付近で何やら見覚えのある影が見えてきた。

 

「あっ! イッセー! 久しぶりっす!」

 

「おっ! ゴブタ!」

 

 そこに串カツを食べているゴブタを発見。ゴブタも俺に気づいたらしく、こちらに近付いてくる。

 

「久しぶりっすねゴブタ」

 

「……ねえ、イッセー。この……人? ……は誰なの?」

 

「ん? イッセー、誰すかこの人達?」

 

 部長は困惑しながらもゴブタが何者なのかを尋ねる。

 ゴブタもゴブタで初対面の部長達を怪訝に思ってる様子……いや、部長達のおっぱいばっか見てやがるなコイツ。まあ、ゴブタらしいといえばらしいか。

 

「コイツはゴブタ。この国の幹部の一人で、警備隊の隊長をやっています。……彼女たちは俺の向こうの世界の友達と魔王様達だよ」

 

「い、異世界の魔王すか!? あ、自分“狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)”隊長のゴブタっす! よろしくっすね!」

 

 ゴブタは驚きながらも皆に自己紹介を済ませる。部長達も軽くゴブタと挨拶を交わしている。

 

「……これが幹部なのか?」

 

「そこまで強そうには見えないぜぃ?」

 

 ヴァーリと美猴は訝しげにゴブタを値踏みしている様子だ。まあ、ゴブタは存在値で言えば2万そこそこしかないし、強そうに見えないのは仕方ない。だが、コイツの強さは数値では測れない。実際は凄まじいセンスを持つ天才なうえ、ランガさんと融合することでヤバい力を発揮するとんでもない奴なんだけどな……。

 

「……で、ゴブタは何でここに?」

 

「どうせサボりっしょ?」

 

 辛辣なミッテルトの言葉にゴブタは目に見えて慌て始めた。

 

「や、ヤダな〜、オイラがサボったりするわけないじゃないすか」

 

 そう言いながら、ゴブタは下手くそな口笛を吹いてそっぽを向く。これはサボりだな。

 

「……あとで先生に怒られても知らないっすよ……」

 

 ミッテルトは侮蔑の念を込めてゴブタをじーっと見つめている。それに対してゴブタは凄く居心地が悪そうだ。ミッテルトとゴブタは共にハクロウさんの元で修行をした仲だからな。こういうやり取りを見ると、昔から常にサボろうとするゴブタに苦労していた様子を思い出すぜ。

 

「あ、そうだ。ゴブタ、リムルどこにいるか知ってる?」

 

 リムルのいそうな場所は結構限られてるけど、今はこちらに住んでいるわけでもないし、すれ違いになられても困る。俺はリムルの居場所をゴブタから聞いてみることにした。俺の質問にゴブタは少し考え、思い出したように答える。

 

「あ、さっき執務室に行ってたっすよ。一緒に遊ばないかと誘ったんすけど、書類仕事が多いらしくてシュナさんに連れ去られてたっす」

 

「……お前やっぱりサボリじゃねえか……まあいいや。わかった、ありがとなゴブタ」

 

 俺はゴブタからリムルの居場所を聞き、取り敢えず別れる。ゴブタは気付いてなかったけど、近くに気配を消して何かを探しているリグル隊長の気配がしたし、あのまま残ってたらかなり面倒くさい事になっていただろう。触らぬ神に祟りなしだ。

 

「じゃあ、早速執務館に向かいましょうか」

 

「ええ。よろしく頼むわ」

 

 俺の一言に皆は頷く。俺はそれを確認し、執務室に向かって歩き出した。

 

「イッセー、これ凄く美味しいぞ!」

 

「本当ね! タレが凄く甘いわ!」

 

「わぁ! このトマトジュースとっても美味しいです!」

 

 道中、美味しそうな屋台があったので、皆に買ってやるととても好評だ。この国の料理は本当に美味いからな。こうして誉められるとこっちも嬉しくなってくる。

 そこで、ルフェイがアイスを食べながら、興味深そうに屋台の調理風景を観察している様子が目に止まった。暫くそうしていると、ルフェイはポツリと呟いた。

 

「……それにしても、ここは本当に魔力に溢れていますね。先程の屋台も魔法で火を起こしてるように見えましたよ」

 

 なるほど。確かに、向こうの世界の魔法使いには興味深い光景だったかもしれないな。何しろ、向こうの世界の魔法とこちらの世界の魔法は異なる部分も多々ある。先程の屋台の人が使っていた魔法なんかも、地球の魔法体系とはまるで違うしな。

 

「まあね。一応、電気も普及してるけど、この世界は簡単な魔法を学ぶくらいならハードル低いし、魔法を使える人は結構いるんだぜ」

 

「悪魔の術式とも北欧の術式とも異なっている……自らの魔力を使っているのではなく、周囲の大気に満ちた魔力を利用しているんですね。こんな画期的な術式があるだなんて……」

 

 ルフェイとロスヴァイセさんはこちらの世界の魔法技術に興味があるみたいだな。折角だし、後で教えてみるのも面白いかもしれないな。

 

「よくわからないけど、すごいってことかしらね?」

 

 父さんと母さんは俺が渡した通貨を使って結構いろいろなものを買っている。そもそもこの人達は向こうの魔法とこちらの魔法の違いも知らないだろうから、あまり大差ないと考えてるのかもしれないな。

 

「やっぱりここの料理は美味しいな。あ、セラちゃんも食べる?」

 

「あ、ありがとうなの……」

 

 父さんは串カツを買って、セラに渡す。串カツを貰うセラは少し浮かない表情だ。やはり自分のせいで巻き込んだことを気にしているのだろうな。父さんと母さんは気にしないと言っていたけど、こればかりは仕方がないことだろう。でも────

 

「そんな顔すんなよ。セラはセラなんだからさ」

 

「……でも、またあのときと同じようなことが怒るかもしれないし、もしもアーシアお姉ちゃんの時みたいに暴走しちゃったら……」

 

「大丈夫、その時はまた俺が止めてやるよ。それに、あの時みたいなことが起きても大丈夫なように強くなればいいんだよ」

 

 セラの正体が魔神だろうが関係ない。テンペストにだって、魔神みたいなのはいくらでもいるし、何かあったら俺達が止めればいい。それを聞くと、セラは何かを決意したような面立ちになり、涙を拭う。どうやら吹っ切れたみたいだな。

 

「……私、強くなるの。お父さんとお母さんを守れるように……頑張ってみるの!」

 

「おお、頑張れ!」

 

 俺はそんなセラの姿に微笑ましく思い、そっと頭を撫でてやった。

 

「ところで目的地まではあとどれくらいなのですか?」

 

「あともう少しですよ……ん?」

 

 会長の疑問に答えながら、俺達は歩み続ける。すると、執務室の目前に見覚えのある人影を見つける。

 美しい桃色の髪に純白の二本角。絹でできているであろう美しい着物を着た可愛らしい女性が笑顔でこちらを出迎えてくれている。

 

「お久しぶりです。イッセー様、ミッテルトさん。お元気そうで何よりです」

 

「あっ! シュナ様!」

 

「シュナさん、久しぶりです」

 

 そこにいたのはテンペストの“巫女姫(かんなぎ)”シュナさんだ! ミッテルトの裁縫、料理の師匠であり、リムルの“真なる秘書”として名高い妖鬼の姫様! 相変わらず上品な佇まいと清楚かつ可憐な雰囲気が醸し出されてるぜ! 

 

「まあ、シュナちゃん! 久しぶりねえ!」

 

「お二方もお久しぶりです」

 

 シュナさんは礼儀正しく俺の父さんと母さんに挨拶をしている。それが終わると、今度は部長達の前に立ち、深々とお辞儀をした。

 

「はじめまして、異世界の皆様方。私、テンペストの“巫女姫”シュナと申します。魔王リムル様がお待ちですので、皆様の案内を責任持っていたしますね」

 

「……ああ。よろしく頼むよ」

 

 少し驚きながら答えるサーゼクスさん。サーゼクスさんはどうやらシュナさんの力を見抜いてるみたいだな。シュナさんも“守護王”に匹敵する力を持つ実力者。サーゼクスさんと戦ってもいい勝負するだろう。

 そんな存在を配下にしてるってだけでも、サーゼクスさんからすれば恐ろしく感じるのかもしれないな。

 

「では、こちらへどうぞ」

 

 シュナさんの案内の下、リムルの部屋の前にやってきた。扉は質素なものでできており、素朴な雰囲気を出している。

 

「……ここに、この世界の魔王様が」

 

「……ヤバい、緊張してきた」

 

「フッ、楽しみだな……」

 

 それぞれが期待だったり緊張したりするなか、シュナさんはノックをして扉を開ける。

 

「リムル様。お客様がお見えになりました」

 

「ああ。ご苦労様、シュナ」

 

 シュナさんがこの部屋にいる主のねぎらいの言葉に嬉しそうに頬を緩める中、皆は真っ直ぐに正面を見据えていた。

 そこには回転椅子があり、窓の隙間から差し込む陽の光を浴びながら、椅子は回転し、正面を向く。

 そこには────丸く、青いぷよぷよとした物体が鎮座してあった。

 皆があっけにとられる中、青い物体は警戒を和らげるよう、優しい声で言う。

 

「はじめまして、俺はスライムのリムル。悪いスライムじゃないよ」

 

 懐かしのネタをぶっこむリムルに対し、皆は……

 

「「「「す、スライム────────!?」」」」

 

 驚愕の叫びで答えるのだった。




今年最後の投稿です。
書き溜めするまで投稿しないつもりでしたが、折角なので完成している話を投稿しようかなと思います(と言っても二話だけなんですけど……(^_^;))。
と、いうわけで年始めにもう一話だけ投稿します。お楽しみにどうぞ
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