イッセーside
「ギィだって!?」
「ということは、この人がイッセー君に力を与えた……」
「……はい。この人が、原初の赤にして、この世界で最初に魔王を名乗った最も古き魔王……“
俺の言葉にみんなは驚愕の視線をギィさんに向ける。自分たちの大本となった原初にして最古の魔王……皆からすれば、畏怖の対象になるのだろうな。
「あらあら、イッセーさん。私の紹介はしないのかしら?」
そう言いながら、ヴェルザードさんは優しそうな笑みを浮かべて訪ねてきた。だが、その笑顔が逆に怖い! 俺は慌てて皆に紹介をする。
「で、この人はヴェルザードさん。俺の師匠のお姉さんにして、“創造神”ヴェルダナーヴァの妹さん。ありとあらゆる全世界における最強の白き竜……“白氷竜”と呼ばれる最強のドラゴンの一人です」
「最強の……白き竜……だって?」
俺の言葉に思わずと言った感じに目を見開くヴァーリ。そんなヴァーリに対して、ヴェルザードさんは温和な態度を崩さずににこやかとしている。
そんな二人を意に介さず、ギィさんは俺のことをしっかりと見据えている。これは……
「聞いたぜイッセー。お前、俺の力を使ったらしいな?」
やっぱりそれですよねぇ! ギィさんから、無様さらしたら許さん的な感じのお言葉をもらったと言うのに、思い切り無様晒しましたもんねぇ! 俺、生きていけるのかな……? そんなことを考えてるのを察したのか、ギィさんは呆れながらも呟いた。
「別に怒ってるわけじゃねえよ。仮に俺の力を使っておいて何一つ成せずに戦闘で負けるなんて無様晒したんなら魂ごと焼却するが……感じた限りだと、そういうわけでもねえだろ」
どうやらギィさんは世界や時間が違っていても、俺がこの力を発動したということをなんとなく察することができていたみたいだ。まあ、エスプリの“見識者”もユニークながら、世界や時間軸をも超越する力を持っているし、ギィさんならば不思議でもなんでもないか。
「……それでも、使い所を誤り、敗北を招いたのは違いないですよ」
あの時に増援が来る可能性があるというのは予見できたこと。なにせ、相手の勢力の全体図もわからないのだ。あれが残存する全ての戦力なわけがないんだ。わかっていたからといって防げるものでもないけど、そんな状況下で俺は頭に血が上って何も考えずにあの力を発動させた。その点は反省すべきものだ。
そんな俺の謝罪に対し、ギィさんは不敵な笑みを浮かべ、威圧感を霧散させる。
「そう警戒するな。お前のそういう潔い所、嫌いじゃあないぜ」
ギィさんはどうやら俺を処罰するつもりで呼んだわけじゃあなさそうだな。少し安心したぜ。
「……それに比べてうちのぼんくらときたら」
ん? そう言いながら、ギィさんは斜め下の方向へと目線を向ける。俺もつられると、そこには“原初の緑”のミザリーさん。なんだか少し呆れている感じの表情だな。そして、目線をさらに地面のほうに向けると……
「うぅ……なんでこの私がこんな目に……」
「あ、青原さん!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
「……」
そこにいたのは“青原雨葵”というメチャクチャわかりやすい……もはや隠す気ないだろと突っ込みたくなるような偽名を名乗っていた“原初の青”ことレインさんだった。
レインさんは大粒の涙を流しながら、大理石の床の上を正座している。何をした罰なのかは聞くまでもない。間違いなく、メイド業をサボって異世界で遊び惚けていたことに対する罰ですね。ハイ。
「……なるほど、お前らが異世界の悪魔ってやつか。おい、近寄るなお前ら。それはそいつの自業自得なんだからな」
ギィさんは今気づいたとでも言わんばかりに部長達に釘を刺す。それを聞いた部長達は冷や汗を流し、顔を青くしながら足を止める。
皆成長したな。ギィさんは
この程度の実力にビビるようであれば、そもそも相手にする価値がない。重要なのは、ギィさんの隠蔽をかいくぐり、この人の真の力を一端でも感じ取れるかどうかだ。そして、その観点でいえば、部長たちはギィさんの力を見抜いたことになる。
底がまるで見えない圧倒的かつ暴力的なまでの闇の力の一端を。だが、これは驚くべきことだ。ギィさんのこの隠蔽はかなり緩いとはいえ、解析特化のユニークスキルでも持っていない限り、現時点の部長たちが見抜けるものではないと思っていたんだが……それだけ、部長たちの察知能力が高まっている証だ。感心感心。
「ほう? 意外にやるものだな。だが、今こいつに手出しすることは許さんぞ」
「……は、はい。わかりました」
本能的にギィさんに逆らってはいけないとわかっているからこそ、部長は何も言えない。ただただ可哀そうな眼でレインさんを眺めているだけだ。
そんな中、レインさんは何やら俺に目配せをしてきた。なんだ? と一瞬思ったが、冷静に考えれば俺はレインさんととある契約をしてるんだった! 今、魂になにやら束縛的なものを感じたから思い出したぞ!
……深呼吸して覚悟を決める。仕方がない。ぶっちゃけ滅茶苦茶怖えけど、全てはおっぱいのため! やるしかねえぇぇぇぇぇぇ!
「ま、まあ落ち着いてくださいよギィさん」
「あん?」
「レインさんも反省してるみたいですし、ここいらで許してあげてもいいんじゃないですか? 見た感じ、もうかなりの時間正座させているでしょう?」
「流石イッセーさん! いいことを言いますね! やはり持つべきものは
レインさんは目をウルウルさせながら、感謝感激といった様相で俺を見ている。正座しながら。
「……これが、原初の悪魔だというのか?」
ヴァーリももはや、レインさんのことをこれ呼ばわりだ。それでいいのか“原初の青”。だが、ギィさんは何やら怪訝そうな顔で俺の顔をじーっと見ている。その瞳には呆れや驚嘆、いろいろな感情が込められているようだ。
「……怪しいな。おい、ミッテルト」
「あ、はい。イッセーはレインさんのおっぱいと引き換えにギィ様に怒られたレインさんを助けるという契約を結んだんすよ」
「「ちょっと、ミッテルトさん!?」」
まさかの裏切りに俺とレインさんは口を揃えて叫ぶ。オイオイ、やめてくれ! これがバレたらギィさん絶対にレインさんを許そうとしないし、俺としても命を懸けた甲斐がなくなってしまう!
「なるほどな。お前らしいといえばお前らしい」
ギィさんは呆れながらも何やら思案する。すると、なにかを思いついたらしく、あっさりとレインさんを開放した。
「俺はお前を気に入っている。そのお前の頼みというのであれば、レインの咎を許してやろう」
この発言には流石のレインさんも目が点になるくらい驚いている。しかし、やがてニヒルな笑みを浮かべ、すくっと立ち上がった。
「ふう、流石に十時間以上ずっと正座させられるのはキツかったですね」
レインさんは本業のメイド業に戻ろうと、そそくさミザリーさんの隣に立とうとする。しかし、ギィさんはそれを許さなかった。
「待てよレイン。どこに行くんだ?」
「? 何を言うんですか、ギィ様。私は貴方様のメイドとしての責務を全う……」
「その前にやることあるだろ?」
「やること?」
ギィさんはいい悪戯を思いついたといった感じの不敵な笑みでレインさんを見ている。対してレインさんは何やら嫌な悪寒を感じているらしく、冷や汗をかいているようだ。
「俺はな、イッセーに免じて許すと言ったんだ。ならば、悪魔として“契約”は遵守するべきじゃないのか?」
ギィさんのその言葉にレインさんは顔を青くする。しかし、ハッと何かを思い出すと、やれやれと言ったふうに異空間から何かを取り出した。
「やれやれ、仕方がありません。ハイ、これを揉ませてやりましょう」
そう言って彼女が取り出したのは、肌色のボールだった。持ってみると、何やらふにふにしててとても柔らかい。何だこれ?
「これは私の乳の弾力を再現したもの……私の断片を使っているため、これも立派に私の乳と言ってもいいでしょう。好きなだけ揉んでくださいな」
「……」
こ、この人……こんなもので俺の魂を束縛しやがったのか!? た、確かに柔らかくて目茶苦茶気持ちいいけど、これがおっぱいかと言われるとなんか違う!
「さあ、これで万事解決……」
「んなわけねえだろ」
そこでギィさんが笑みを浮かべながら、丸いボールを一瞬のうちに焼却する。手のひらで蒸発したにもかかわらず、一切の熱を感じない絶技に驚きながらも、俺はギィさんへと視線をむける。
「こいつは“契約”なんだろう? ならば、悪魔らしく筋は通すべきだぜ」
「……えっと、マジで?」
レインさんは冷や汗描きながら、顔を赤くする。ギィさんはそれにかまわず、指をスナップさせると、最上位拘束魔法を発動させ、レインさんの四肢を拘束した。レインさんは慌てて脱出しようとするが、ギィさんの拘束だ。簡単には抜けられそうにない。
「な、何をなさるのですか! ギィ様!?」
「よし、イッセー。今がチャンスだ。思う存分揉みしだくがいいぜ」
そうか。ギィさんやはりレインさんの事を許してはいないのだ。多分、正座よりも衆人環視の中で胸を揉まれることで生まれる羞恥のほうがより罰になると判断しての事なのだろう。現にレインさんはメチャクチャ抵抗している。
「ギィ様。いくらなんでも、それはやりすぎなのでは?」
「そ、そうよ。なんだか少し可哀そうになってきたわ」
流石に見てられないと感じたのか、ミザリーさんとイリナが抗議の声を出す。特にミザリーさんはレインさんのことを妹のように思っているからな。止めようとするのも無理はないな。
あと、イリナが抗議するのは少し意外に感じた。悪魔の皆は原初の惨状にどう反応していいかわからない中、天使のイリナは怖がりながらも抗議するあたり、すごいと思う。
だが、その程度の講義でギィさんは止まらない。
「駄目だ。流石に今回はやりすぎだ。少しお灸をすえてやらないと、こいつは何度でもやるぞ。それに、ミザリーはともかく部外者が口をはさむなよ」
ギィさん相当苦労してそうだな。今回ばかりはさすがに看過できないってことか。まあ、無許可で異世界行の転移門を使用し、何日も遊び惚けていたわけだし、無理もないか……。
「ちょっと! そこで諦めないでよミザリー! もっと頑張って私を助けて! 向こうの悪魔の皆様も! 私常連なんだから、頑張ってよ!」
「そうは言われましても……」
部長達も流石に困惑気味だ。常連かつ命の恩人ではあるものの、この状況下でどうすればいいのか悩んでる様子。なにせ、相手は異界の魔王。下手に動けば外交問題にまで発展する可能性まである。だからこそ、部長達は口出しできないのだ。
味方がいないと悟ったレインさんは顔を真っ赤に染め上げながらもふっきったのか叫びだす。
「くっ、し、仕方がありませんねぇ! ええ、わかりましたよ! 私に二言はありません! さあ、揉むなら揉みなさいっ!!」
……脳が追いついてきたぞ。え? 本当に揉んでいいの? レインさんの性格をよく知ってる俺はどうせのらりくらりとはぐらかされるんだろうなと諦めていたんだが……え? マジで!? やべえ、テンション上がってきた! あの原初の悪魔、レインさんのおっぱい! その形状はもはや芸術品と呼べるほどの形に大きさを持つ至高のおっぱいだ! やべえ、鼻血が出てきた……。
というか、ミッテルトは……予想外の展開に白眼向いてる!? し、しかし、これはチャンスだ! この機を逃せば、原初のおっぱいなんて金輪際体験できないかもしれない!
「で、では……」
「ええ! さあどうぞお構いなく!」
俺は思い切ってレインさんのおっぱいに手を出した!
むにゅん。むにゅむにゅぅぅぅぅ。
「……んっ」
俺の指の動きとともに、レインさんはわずかに声を漏らす。
弾力性! 柔らかさ! 質感! どれをとっても一級品だ! やばい、なんか涙が出そうなほど心地いい! これが原初のおっぱい! 惜しむらくは布越しであるという点だ! というか、布越しでこれって、実際に触れたらどれほどの……。
「そ、それ以上は駄目っす!」
バシィィィィィンッ!
「ふげぇ!?」
ミッテルトは久々に木刀を取り出すと、容赦なく俺の頬をひっぱたきやがった!
吹き飛ばされた俺はそのままミザリーさんの元へと飛んでいく! よ、避けてくださいと思ったのも束の間。ミザリーさんは拳に高密度な魔力を集中させ……。
「はぁぁぁぁっ!」
ドゴォォォォォォンッ!
「ぐはっ!?」
「イッセーさん!」
思いきり俺を床に殴りつけた! 痛ってえぇぇぇぇぇっ! 今のかなりマジな奴だった! 下手したら死んでてもおかしくないレベルだった! アーシアは慌てて俺に駆け寄り、俺の傷を癒し始める。
やばい、メチャクチャ痛い。これ、痛覚を情報として叩き込んでるな! それもすさまじい精度で! アーシアの回復で傷事態は治っているけど、痛みが全然引く気配がねえええええ!
「ぐすっ、汚されちゃいましたぁ」
「大丈夫ですか、レイン? とりあえず報復はしましたけど……」
「ハハハッ!」
ああ、ミザリーさんはレインさんを妹のように可愛がっているからな。いや、気付いてはいたんだよ。揉めば揉むほどミッテルトとミザリーさんの眼が凄まじいことになってるの。
でもさ、仕方ないじゃん! あのレインさんのおっぱい! 一度揉み始めれば、止めることなんか不可能なんだよ! ギィさんは大爆笑してるし収拾つかねえよ!
「あー、笑った。やっぱりお前は面白えわ。レインにもいい薬になっただろう。お前達もレインが迷惑かけたな」
ギィさんは部長達にそう言いながらワインを飲み干す。その言葉に対して、部長達は慌てて言葉を返す。
「いえいえ、青原……じゃなくて、レイン様には色々と貴重なものを仕入れさせてもらったりと、お世話になっております」
貴重なもの……主に玩具とかプラモ関連だけどな。まあ、結構な金になってるみたいだし、部長達には迷惑なことはあまりないんだよな。
「全く、レインちゃんにも困ったものね」
ヴェルザードさんはお菓子を食べながら笑みを浮かべる。一口お菓子を口に入れ、茶を飲み干した後に、彼女は視線をヴァーリの方向に向ける。
「……ところで、先程から私を見ているけど、何か御用なのかしら?」
ヴァーリの奴。やっぱりヴェルザードさんに興味津々みたいだな。先程から茶番劇には目もくれず、ずっとヴェルザードさんを見ながら獰猛な笑みを浮かべている。
暫し二人の視線が交差する。やがて、ヴァーリは瞠目し、口を開いた。
「……なるほど。これが最強の白き竜……か。オーフィスやグレートレッドともまるで違う。そもそも戦いになるイメージがまるで沸かないな」
そりゃそうだ。そもそも向こうの世界にヴェルザードさん相手と戦いが成立する存在がいるのかどうかの時点で疑問だ。ヴェルザードさんと戦える相手なんて、それこそ八星魔王か竜種くらいなものだろ。もしくは原初とゼギオンさん? 少なくとも、俺が知る限りでは向こうの世界にヴェルザードさんと戦いを成立させられる存在はいないと思うし。
「……だが、それでも俺は挑戦してみたい。最強の白き竜の力を肌で感じてみたい」
「あら? じゃあ、後で少し手合わせしてみるかしら?」
その言葉にヴァーリは獰猛な笑みを浮かべながら、頷いた。
オイオイ。何考えてんだコイツ?
「ヴァーリがそういうのなら、私も付き合いましょう」
「最強の白き竜……どれほどのものか気になるぜぃ」
「フフフ、何人でもいいわ。相手になってあげましょう」
アーサーと美猴もヴァーリに続き、ヴェルザードさんと手合わせ宣言を行う。対してヴェルザードさんは特に気にもせず、余裕の表情……いや、当たり前だけどさ。
それを見て思った。馬鹿じゃないのコイツラ? いや、マジで。まあ、気にするだけ馬鹿馬鹿しいか。
俺は好戦的な
まだ章終わりまで書けてないけど、ある程度書き溜めできたので、再開します。
取り敢えず、週1投稿