イッセーside
「なるほど、つまりこの人達は……」
「異世界の先生の仲間……及び、重鎮の方々ということですか」
「そういうこと。ちゃんと挨拶しろよ」
俺の言葉に皆はオカルト研究部の面々と向き合い、一人一人が自己紹介を始める。
「初めまして。八重垣
最初に自己紹介をしたのは八重垣姉弟の姉“愛”だった。彼女達は母親が向こうの世界の上級悪魔で、特に愛は母親の力を強く受け継いでいる。その力はこのクラスの中でも上位に入る実力者だ。
「俺は八重垣フィオって言います。よろしくお願いします!」
次に自己紹介するのは愛弟のフィオ。ヴェルドラ流闘殺法の使い手であり、向こうの世界の人間が父親だからか、俺達と同じく神器所有者でもあるのだ。
「初めまして。ファルメナス王国から来ました。“ミーム”です」
「“セツナ”と申します。出身はラージャ小亜国です」
「この二人はそれぞれの国のお姫様なんだぜ」
俺の言葉に部長達は驚いたように二人を見つめる。ミームとセツナはそれぞれテンペスト同盟国である“ファルメナス王国”と“ラージャ小亜国”の姫であり、二人共凄腕の剣士にして魔法使いなんだよな。
「初めまして。
「アカヤです。イッセー先生がお世話になっております」
次に桜姫とアカヤの兄妹だ。二人共ベニマルさんの子どもであり、鬼の力を引き継いでて凄まじい潜在能力を持っている。
「これが俺の受け持ちだった
「「「「問題児ってどういうこと!?」」」」
俺の発言に皆が一斉に突っ込みを入れた。実際、こいつらは問題行動を率先して起こすわけでもないし、他のクラスの人たちとの仲も良好だったりする。ただ、天然なところや面倒ごとに巻き込まれることも多々あるし、何より問題となっているのが、同年代に比べると明らかに突出しすぎているのだ。
だからこそ、リムルから直々の命令で俺が面倒みることになったわけだしな。結局のところ、こいつらも
「……八重樫……それに、その銀髪は……」
「ん? どうかしましたか? サーゼクスさん」
「……いや、何でもないよ」
何やらサーゼクスさんの様子がおかしい。何かあったのかな? 何やら考え事をしているサーゼクスさんを眺めていると、セツナがちょんちょんと指で俺に呼び掛けてきた。
「イッセー先生、今回はどれくらいここにいられるんですか?」
「……そうだな。多分、三日から……長くても五日くらいかな?」
別に学校が長期休みの時期でもないし、それ以上休むと誤魔化すのが面倒な気がする。
「じゃあ、その間に必殺技とか教えてくれよ!」
「……お前のその必殺技に対する情熱は何なの?」
フィオは目を輝かせながら拳を振るモーションをしているが、正直何を教えろと? まあ、必殺技とまではいかなくても、色々技は教えてやるけどさ。
「……ところで、先生。この人たちって新しい恋人候補か何かなの?」
「ぶっ!?」
そこで愛がとんでもない爆弾落としやがった! 何言ってるんだコイツ!?
「恋人候補……ウフフ」
「あらあら、皆にもそう見えます?」
「うう、イッセーさんと恋人……」
「……どうなんでしょうね?」
「ああ。まあ、愛人とかでも構わないがね」
「あわわ、そ、そんなんじゃないわよ! イッセー君とはあくまで幼馴染よ!」
愛の言葉を聞いたオカ研の面々は何やら顔を赤くしたり、笑みを浮かべたり、少し戸惑ったりと多種多様な反応を見せている。というか、ゼノヴィアさんは何を言っちゃってるの!? しかも、愛のその発言に便乗するように、生徒たちが口を揃えてきた。
「やっぱりね。そうだと思ったわ」
「まあ。確かに、イッセー先生ってそういう人多そうだもんね」
「さすがですね」
お前ら何を言ってるんだよ!? 確かに思い上がりじゃなければ皆が俺を憎からず思ってくれてるのかもしれないとか思う時もあるけどさ、それがマジなのかはわかんないじゃん!
「う~ん、よくわかりませんが、イッセー先生はモテモテってことですか?」
本当にそうなのかはわからないけどね。皆単に俺の反応に面白がってるだけなのかもしれないし。
「いや、あれはマジだと思うっすよ」
ミッテルトがすげえジト目でそう言ってきた。そうなのかね……? もしそうだとしたら滅茶苦茶嬉しいけど、その場合俺はどうすればいいワケ?
「……まあ、筋はちゃんと通せばいいんじゃないですか? 父さんと母さんたちが正にそうなんだし」
最後に口を開いたアカヤの真面目な(?)発言に俺の思考は加速する。た、確かに今や語り草ともなっているベニマルさんのように筋さえ通せばいいのかもしれないよな!? いや、もし俺の思い違いだったら!? もしかしたら断らるかもしれないし、何よりミッテルトにぶっ飛ばされるかもしれない! いや、ミッテルトも筋さえ通せばいいとか言ってるし、いいのか? そもそも筋を通すって何すればいいんだ?
……堂々巡りになりそうだから、とりあえず置いておこう。そもそも、本当にそうなのかはまだわからないわけだし、これで間違ってたら滅茶苦茶恥ずかしいことになるしな。
「……それで、わざわざこの人たちを連れてここまで来た理由は何ですか? ただ紹介しに来ただけ……ってことはないでしょう?」
流石鋭いな。アカヤのこういう面はベニマルさんそっくりだ。確かに、紹介しに来たって点も間違いじゃないけど、俺がみんなをここに連れてきた理由はもう一つある。
「……アカヤは部長たちのこと、どう思う? お前達とどっちが強い?」
「え?」
俺からの突然の問いかけにアカヤは動揺しながらも部長達を見つめる。アカヤはベニマルさん同様相手の力量を測る確かな眼を持っている。解析系のスキルを持ってるわけじゃないが、それでもかなりの精度だ。
「……強そうとは思うけど、俺達のほうが上だと思いますね。何となくですけど、実戦経験が少ないように感じます」
そう。部長は確かに数多の戦いを乗り越えてきたけど、総じてみると、やはり命がけの実戦経験は少ないように思える。だからこそ、同格か少し格上の奴らとぶつけてさらに実践経験を得ようと思ったんだ。そのための相手として、こいつらがちょうどいいかもって考えたわけだ。
「あら? いうじゃない」
おっと。どうやら部長に聞こえていたみたいだな。部長は一回り年下の子どもにそんなこと言われて流石に少しカチンときた様子。でも、その目に油断は一切ない。アカヤ達の実力がどれほどのモノかはわからないけど、少なくとも油断ならない存在であることくらいは見抜いてるのかもしれないな。
「じゃあ、戦ってみます? オカルト研究部とSクラスで……」
俺自身、今のこいつらの力を見てみたいしな。去年の段階でこいつらはかなりのものになっていた。少なくとも、ライザー眷属程度なら一蹴できるであろう強さを持っているのだ。あれから一年たったわけだし、多分かなり強くなってると思う。今のオカルト研究部の特訓相手にはピッタリだ。
「……ああ、そういうことですか。なんていうか、イッセー先生って意外にスパルタですよね」
何を言うか。ハクロウさんやソウエイさんに比べればかわいいもんだと思うぜ。
「……イッセー君の生徒……一筋縄ではいかなそうだね」
「……でも、負けません」
「フフフ、それはこっちのセリフです」
木場と小猫ちゃん、シンシヤも状況を理解したらしく、かなりやる気だ。それを見た部長は改めてアカヤと向き合うと、好戦的な笑みを浮かべた。
「いいでしょう。確かに、タダの子どもじゃなさそうだけど、そう簡単に負けるつもりはないわ」
「お手柔らかにお願いしますよ」
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「先生。俺、正直いきなり過ぎてついていけねえんだけど?」
「イッセー先生が唐突に変なことするのは今に始まったことじゃないでしょ」
「まあ、いいんじゃない? 私もイッセー先生の仲間がどれくらい強いのか興味あるし!」
困惑半分ワクワク半分の生徒達とオカルト研究部の皆を連れたって、俺達は“迷宮”へとやってきた。
皆は最初に来た迷宮に戻ってきたことに怪訝そうにしながらも、辺りをキョロキョロ見回している。
「ねえ、イッセー。ここって最初の場所よね? そもそも、ここはなんなの?」
「ここは“
「目玉? 此処がか?」
俺の言葉にアザゼル先生は目を丸くしながら訝しげにしている。まあ、信じられないのも無理はないだろう。
「まあ、お前が言うんならそうなんだろうが、一体どんな施設なんだ?」
「そうですね……一言だと難しいけど、お金稼ぎや戦闘訓練、最新鋭の研究など、様々なことをしている施設ですね。テンペストの最終防衛ラインでもあるんですよ」
「そのとおりよ! 何せ、この私が作った迷宮だからね!」
瞬間、よく通る声が反響して響き渡る。声のした方向を見ると、淡い光を放つ小さな妖精の姿があった。
部長達はその妖精を見て、首を傾げている。まあ、いきなりだとそうだよな。
「えっと、貴方は?」
「フフフ、よく聞いてくれたわね。我こそは偉大なるオクタグリャッ!」
……噛んだな。何だかいたたまれない空気が漂う中、妖精は恥ずかしそうにゴホンと咳払いをした後、改めて皆に宣言をした。
「我こそは偉大なる……」
「紹介するっす。この御方は魔王様の一人、ラミリス様っす」
「ちょっと!? ミッテルト、邪魔しないでよね!」
ミッテルトの紹介に皆は驚いたようにラミリスさんを凝視する。ラミリスさんはそんな皆の反応に満足したのか、胸を張って偉そうにしている。
「こ、この妖精さんも魔王様なんですね」
「……だが、あまり強そうには見えないな」
「ちょっと、何よアンタ! さっき来た白いのといい失礼ね!」
「あん? ヴァーリのことか?」
「そうそう。さっきまでここで戦ってたのよ」
「ここで? 本当かよ?」
まあ、ヴェルザードさんと戦うならそりゃ来るよな。どうやら先程まで戦ってたみたいだ。皆は感じられないようだが、俺は何となくその痕跡を確認できる。というか……。
(ヴァーリと美猴、アーサーの魔力の残穢はわかる。でも、ヴェルザードさんの魔力の痕跡が殆どねえんだけど!?)
ヴェルザードさんの魔力の跡が殆ど感じられねえ! そもそも戦闘の痕跡が殆ど残ってない時点でおかしいんだよな……。解析特化の究極能力持ちじゃなきゃ見抜けねえぞ。どんな精度で魔力制御を行ってるんだか……。ヴェルザードさんホント底知れねえな。
「まあ、いいだわさ。ていうか、アンタ達何しに来たの?」
「あ、ああ、修行ですよ。まずは
「ふぅん。いいんじゃない?」
ラミリスさんは特に気にした素振りも見せず、適当な感じだ。
「じゃあ、皆。戦う前にこの腕輪をつけてくれ」
「「「「はーい!」」」」
既に何度も迷宮で訓練している子ども達は慣れた様子で腕輪を付ける。対して部長達は何やら怪訝そうに腕輪を見つめていた。正直、いきなりつけろと言われても反応に困るのだろう。
「ねえ、イッセー。この腕輪は何なの?」
「これは“復活の腕輪”。ラミリスさんが制作したアイテムで、その効能は────死からの復活です」
「……は?」
「死からの……復活?」
皆は俺と腕輪、そしてラミリスさんを交互に見ながら呆然としている。そんなことあるわけないといいたげな感じだ。
当然だ。死はどんな生物にも訪れる絶対の変化。一度死ねば復活することなど通常では不可能。魂と肉体を確保すれば復活することもあるかもしれないけど、そんな事できるのは限られてるだろうし、腕輪をしているだけで死を回避できるだなんて信じられるわけないもんな。
「まず、このアイテムを説明する前にラミリスさんの力を簡単に説明します。ラミリスさんは“
「ラミリス様の迷宮では、生死すら思うがまま。仮に迷宮で命を落としても直ぐに生き返ることができる。それを利用してここでは文字通り、命を懸けた実践的訓練を何度でも行うことができるんすよ。ただ、迷宮内にいる全ての生命をリアルタイムで認識できるわけじゃないんで、目印として使うのがこの腕輪。これを着用していれば、迷宮内ではラミリス様が認識していなくても、直ぐに生き返ることができるっすよ」
俺とミッテルトの説明を理解した皆は驚愕の眼でラミリスさんを見つめる。それを見てラミリスさんはご満悦のようだな。
「……なるほど。ルミナス・バレンタインにリムル・テンペスト、ギィ・クリムゾンに比べて威圧感らしきものが殆ど感じられないと思っていたが……それほどの力を持つなら魔王にふさわしいと言えるかもな」
「ちょっと! どういう意味よ!?」
「ちなみに、この迷宮は周囲の物を内部に格納することもできて、その気になれば街を丸ごと格納なんてこともできるんすよ」
「マジかよ……最終防衛ラインってのはそういうことか。これは思った以上にヤバい力だな」
アザゼル先生はそう言いながら、感心したようにラミリスさんを評価する。アザゼル先生は気付いているな。この力が戦争でいかに凶悪な物と化すのかを……。サーゼクスさんとグレイフィアさんもこの力のヤバさを悟っているらしく、かなり鋭い目つきになってるな。ちなみに当の本人は威圧感を感じられないという言葉に腹を立てつつも、自分の力を褒められて喜んでる様子。
「当然よ! 何せ、“八星魔王”最強のアタシの力なんだからね!」
「ただし、死からの復活はあくまで迷宮内だけです。そこを勘違いしないようにお願いしますよ」
俺の言葉にオカ研の皆は神妙な顔つきで頷いた。
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木場side
僕達はこの地下迷宮にて、イッセー君の教え子であるという子ども達と向かい合っていた。
イッセー君からは、この迷宮では死んでも自動的に復活することができる。だから、最後まで全力で戦えと言われたけど、子どもが相手だと、そんな気分には中々なれないね。
(……いや、イッセー君がそこまで言うからには、何かがあるんだろうね)
そう考えながら、僕は改めてイッセー君の生徒達を見つめた。
「よーし、頑張りますよ」
「ああ。イッセー先生の友達……どんな感じか楽しみだぜ」
「油断しないでよフィオ。前にそれでハクロウ様に痛い目見せられたんだから」
「じいじがそんな事するか? あの人目茶苦茶優しい人だぞ?」
「私、一度も怒られたことないですよ……」
「……アカヤと桜姫がいる場所だけでしょそれ……鬼よあの人」
「でも、それって愛ちゃんとフィオ君が自分から行ったんじゃ……」
「いつもニコニコしてるだけだし本当に強いのか試してみるとか言って、見事に玉砕してたもんね。妥当よ妥当」
「セツナもミームもうっさいわよ!」
イッセー君の生徒たちは何やら談笑をしているようで、こうして見ると年相応の子どもにしか見えないな。
────でも、直ぐに僕はその考えを改めた。
「さあ、いきますよ。皆」
シンシヤ様の鼓舞と同時に子ども達は一斉に僕達に向かいあう。そこで感じたのは紛れもなく、歴戦の戦士の風格だった。
油断すればあっさりと負けるかもしれない。
そんな考えが思わず頭によぎるほど、眼の前の子ども達は一切の隙を見せない洗練された構えと魔力を醸し出していた。
部長も僕と似たような感想を持ったのか、思わずといったふうに苦笑いをしている。
気持はよく分かる。少なくとも、“英雄派”の構成員やライザー眷属とは比べ物にならないほどの威圧感。それを僅か十歳くらいの子どもが放ってるんだから、そんな気持ちにもなるだろうね。
でも、こっちも負けるつもりはない。僕は聖魔剣を握り、これから始まる闘いに備えるのだった。
EP 24万0869
種族 蛇鬼
加護 リムルの加護
称号
ユニークスキル
思考加速、空間掌握、炎操作、雷操作
エクストラスキル
ベニマルとアルビスの娘にしてアカヤの妹。父の炎と母の雷を継承しており、炎と雷を掛け合わせることで電気を帯びた炎を作り出すことも可能。
また、アルビスの眼も継承しているが、制御が難しく、暴走を引き起こしたことがあり、制御が可能となった現在も片目を隠している。
眼の暴走を引き起こしたことで、クラスから孤立し、Sクラスに入り、その際最初にフィオに話しかけられたことがきっかけでフィオを想っている。しかし、過去のトラウマと内気な性格が相まり、中々勇気が出せないでいる。
戦闘以上に周囲を見回し、策略を練ることに長けており、模擬戦では相手の強みを潰しながら相手を追い詰めていく。
【挿絵表示】
ミーム
EP 17万0023(魔人化+5万)
種族 人間
加護 なし
称号 ファルメナスの姫
エクストラスキル 魔人化
ヨウムとミュウランの娘でファルメナス王国の姫。かつて冒険者であり、王となったヨウムの英雄譚に憧れを抱いており、将来は冒険者として世界を回りたいと考えている。
ヨウムからは朧流、グルーシスからはユーラザニア流剣術、ミュウランからは様々な魔法を学んでおり、接近も遠距離も可能なオールラウンダー。ただし、本人は近接を好んでいる。
三つの穴を持つ穴開きの短剣を愛用しており、相手の相性を見て宝玉を埋め込み、属性を変化させる。武器に宝玉を嵌め込む技術が上手く、接近戦闘中でも気付かれずに嵌め込める特技を持っている。
エクストラスキルの魔人化はミュウランの魔人の血を表面に出したもので姿が変貌するが、本質的には人間のままである。
【挿絵表示】
セツナ
EP 22万9684
種族 半人半鬼
加護 毒姫の加護
称号 ラージャの姫
ユニークスキル
金剛身体、筋力強化、狂戦士化
自己再生、魔力感知、治癒、異常回復
ヒイロとトワの娘でラージャ小亜国の姫。トワの王族の責任感とヒイロの鬼の力を引き継いでおり、鬼の妖術と格闘術、他者を癒やす力を持つ。
金が尽きて衰退した国の歴史から、鉄鉱石の輸出だけでは心許ないと考えており、テンペストで学問を学び、ラージャを発展させることを夢見て日々努力している。また、同じ姫であるミームとは親友同士で共に魔術や剣術を切磋琢磨することが多い。
二つのユニークスキルを持っており、“強靭者”は身体能力を底上げすることに特化。“献身家”は他者の傷や状態異常を治すことができるなど、回復に特化している。
【挿絵表示】