イッセーside
俺とミッテルトはサーゼクスさん達と共に迷宮内にある一室に移動していた。そこはかつて、ティアマットさんとヴェルグリンドさんが闘いを行った際にも使ったモニタールームであり、此処から皆の戦いを鑑賞するつもりだ。
「お兄ちゃんの生徒……何だかとっても強そうなの」
先程合流したセラも興味津々といった感じでモニターを眺めている。ちなみにセラは先程まで父さん母さんと一緒に外泊用の施設を選んでいたところだ。俺の家は基本的に二人で住むこと前提の建物だから、流石に大人数は泊まれないからな。近場の宿泊施設を選んでもらっていたわけだ。
「しかし、中々楽しみだな」
「そうっすね。皆かなり強くなってたし、どんな戦いになるか楽しみっす」
俺自身、生徒達がどこまで強くなってるのか知らないし、部長達もコカビエルに“禍の団”、そしてロキ戦を経て大分強くなったし、面白い戦いになりそうだ。
「……それにしても、ガキの頃のヴァーリを思い出すな。アレは既にとんでもない使い手になってるだろう?」
「ああ。傍目で見ただけでも、各々が上級悪魔を超えるほどの力を持っているように見えた……リムル陛下の娘であるシンシヤという少女に至っては、最上級悪魔に匹敵……いや、それ以上かもしれないな」
「正直驚きよね。とても十歳くらいの子どもとは思えないわ☆」
「そうですね。ミカエル様が見たら天界にスカウトしようとするかもしれないくらいですわ」
見ただけでそれに気付くとは流石はサーゼクスさん達だな。あのくらいの年代の剣也も相当だったけど、アカヤ達も負けてはいないと思うんだよな。まあ、シンシヤは流石に例外中の例外として……だけど。
「イッセー兄様はどっちが勝つと思うんですか?」
「……正直俺もわからねえ。EPの上なら生徒達の方が僅かながら勝っているけど、それイコール強さってわけでもねえからな」
「いーぴー? 何ですか、それ?」
ミリキャスは首を傾げながら尋ねてくる。見ると、アザゼル先生達も俺の方を向いている。そういえば、まだ存在値の概念先生達に話してなかったな。
「EPっていうのは、“EXISTENCE・POINT”の略で、魔素や身体能力を数値化した上に、装備している武具の含有エネルギーを加味したもの……簡単に言うと、魔力と身体能力を数値化したものっすよ」
「ああ、そういえばお前強さを数値化できるとか言ってたな」
アザゼル先生は思い出したように言う。その言葉にサーゼクスさんは少し考えた後、俺に話しかけてきた。
「……イッセー君。リアス達のEPとやらはどれほどのものなんだい?」
「……そうですね。一般的な上級悪魔で大体EPは1万から10万ほど、それを踏まえたうえでこんな感じですね」
リアス・グレモリー
EP 16万9666
姫島朱乃
EP 15万2263
木場裕斗
EP 16万3586(聖魔剣+5万(最大))
塔城小猫
EP 24万2992
アーシア・アルジェント
EP 4万6358
ゼノヴィア
EP 12万1365(デュランダル+10万)
ギャスパー・ウラディ
EP 4万8568(赤龍帝の血+15万)
紫藤イリナ
EP 11万3333
ロスヴァイセ
EP 18万1260
俺は用紙に書き出したそれをこの場の者達に開示する。それをサーゼクスさん達は興味深そうに眺めている。
「ふむ、並の上級悪魔で10万……それを踏まえると、リアス達は相当強くなっているのがよくわかるね」
「武器を装備すると数値も変動するのか。こりゃ面白いな」
数値の上だと一番強いのは小猫ちゃんだ。何せ、小猫ちゃんは黒歌とツーマンセルで修行してるからな。仙術の腕も上がっているし、一番伸びている印象だ。逆にアーシアとギャー助は魔力は上がっているけど、やはり身体能力の伸びが少ないためこの中では一歩劣る感じ。まあ、アーシアの結界魔法はこの中でもトップだし、ギャスパーも神器の力があるから一概にも言えない。やはり、重要なのは数値じゃなくて
ちなみにゼノヴィアはデュランダルの真価をまだ引き出せていないので、デュランダル込みでも20万ほど。本来“伝説級”であるデュランダルの真価を発揮すれば、更に上がるんだけど、それはまだこれからの修行次第だな。
「まあ、さっきイッセーも言ってたっすけど、数値の上では微妙に子ども達が勝ってる感じっすね」
「あいつら全員EP20万超えてるからな……でも、それくらいの差なら闘い方次第でどうとでもひっくり返せるよ」
まあ、シンシヤが出張らなければの話だけどな。シンシヤが本気になれば部長達では手も足もでないだろうけど、シンシヤもいきなり本気を出すようなことはしないだろう。部長達もメキメキと実力を上げている現状、どちらが勝つかはわからないだろうな。
「まあ、どっちに転んでもいい経験にはなるだろうな」
これを機に部長達もレベルアップしてほしいもんだな。
そう思いながらも、俺は眼の前のモニターから目を離さずに、教え子と仲間の闘い模様を見送った。
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木場side
「相手は子どもといえどイッセーの教え子……油断せずに行くわよ!」
「はい!」
「私にとってはこれが初陣になりますからね。子ども相手でも容赦はしませんよ」
部長の鼓舞と共に僕達は気合を入れる。この場にいるのは部長と僕、朱乃さんに小猫ちゃん、アーシアさんにゼノヴィアとギャスパー君、そして天使である紫藤さんと新しくグレモリー眷属入りしたロスヴァイセさんだ。
ロスヴァイセさんにとっては、これがグレモリー眷属としての初めての戦いとなるからか、気合が入っている様子だ。
「どういう作戦で行く?」
「取り敢えず、アカヤ君とシンシヤはまずはじっとしてて。まずは私達で様子見しましょう」
「確かに……お兄様とシンシヤ様が出てしまっては割と簡単に終わってしまいますの。まずは私達がやりますの」
「そうか……わかった。じゃあ、最初の方は皆に任せるよ」
「わかりました! でも、誰か一人でもピンチになったと思ったら、私達もでますからね」
「フフフ、大丈夫だよ。私達だって強くなってるし、あれくらいたいしたことないわ」
「愛ちゃん……それフラグじゃあ……」
どうやら、シンシヤ様とアカヤ君は序盤は参加しない方針のようだね。見ればわかる。あの二人は別格だ。特に、シンシヤ様は途轍もない波動を放っている。正直、かなり助かるよ。
『じゃあ、準備はいい? それじゃあ、はじめ!』
ラミリス様の言葉と同時に数人の子どもたちが一斉に飛び出す! 凄まじい速度だ! 並みの“騎士”では追いつくことができないほどの速度を、まだ十歳程度の子どもが出しているだなんて……。
「行くぜ!」
そう言いながらフィオ君は何もないところから二丁の拳銃を召喚し、引き金を引く!
ドゴォォォンッ!
解き放たれた銃口からは、それぞれ別の属性の攻撃が解き放たれた! 片方からは水。もう片方からは雷の弾丸が放たれたのだ! 二つの属性の魔弾は交差し、一つの塊となって僕たちの元へと襲い掛かる!
「ここは私が!」
ロスヴァイセさんは北欧の術式からなる多属性の魔方陣を展開し、フィオ君の魔弾を迎撃する。それでも相殺はでいなかったが、減速には成功し、その隙をついてロスヴァイセさんは悪魔の羽をはばたかせて宙へと舞う。お返しとばかりにフィオ君に向けて炎、水、雷、氷といった属性の魔法を放った。
「うおっ? たくさんの属性の攻撃かよ!」
そう言いながら、フィオ君は拳銃から発せられる水流を地へと向ける。さながらフライボードのように、水流に乗って宙へと浮かび上がり、雷を放つもう片方の拳銃をロスヴァイセさんに向けた。
「させませんわ!」
バヂィィィィィィッ!
放たれた電撃を朱乃さんは“雷光”で迎撃する。二つの拮抗した電撃は中空で激しいスパークを起こし、やがて大きな音を立てて霧散した。
「……その銃。神器ですわね?」
「そうだよ。“
“雨龍の雷銃”……。アザゼル先生の持っていた神器の資料で見た覚えがある。雨を司る高位の龍“印旛沼の竜”の魂が封じられたというドラゴン系の神器だ。見ての通り、二丁一対の神器であり、雨雲を自在に操った印旛沼の龍の二属性を自在に操ることができるとされている。話には聞いていたけど、朱乃さんの雷光と拮抗するほど強力なのか! ……いや、あの銃の真に恐るべき力は水と雷を融合させた一撃だと聞いている。ロスヴァイセさんの多属性の魔法でも完全には防ぎきれていなかったそれは、明らかに朱乃さんの力を上回ってるように思えた。
「油断大敵だよ!」
そこに、ミームちゃんが二本の短剣を持ち、僕に突っ込んできた。
「油断しているつもりはないよ」
僕はすかさず聖魔剣で対応する。短剣と聖魔剣は拮抗し、何度も何度も鍔迫り合いを繰り広げる!
キンッ! ギィンッ! ガギィンッ!
……凄まじい剣技だ。まだ僕のほうが上だけど、ゼノヴィアと比べても、そこまで差はないかもしれない。
「さすが先生のお仲間だね! じゃあ、こういうのはどう!」
「っ!?」
魔力感知に反応が! 僕はとっさに飛びのき、翼を用いて宙へと舞う。見ると、さっきまで僕がいた場所が液状になっているようだった。危なかった。もしあのまま応戦していれば、間違いなく足を取られていた。
「“液状化”を見切られたか……流石に一筋縄ではいかない、ね!」
ミームちゃんはそう言いながら、二本の短剣をさながらブーメランのように僕に投げつける! 僕はそれをよけると、ミームちゃんは壁伝いに先回りして短剣を受け止め、その遠心力と落下の速度を力に変えて強烈な一撃を叩きこんできた!
「グルーシスおじさん直伝、“
ドゴォンッ!
くっ、なんて強烈な一撃だ! ゼノヴィアに匹敵するパワーだぞ!? 僕は耐久力特化の聖魔剣でそれを受け止め、何とかはじき返した!
「私のとっておきだったんだけどな……やっぱりイッセー先生のお仲間なだけはあるね」
「そっちこそ、イッセー君の教え子なだけはあるよ」
一瞬とはいえ、ゼノヴィアに比肩するほどのパワーを感じるとは、末恐ろしいね。
「……でも、真にパワー担当は私じゃないわよ」
「え?」
瞬間、背後から何者かが僕に武器を振りかぶっているのを感じた。
「危ない、木場!」
そこにゼノヴィアが滑り込み、デュランダルを用いてそれを受け止めるが……。
ズゥゥゥゥンッ!
「くっ……」
受け止めた瞬間、地面がめり込み、凄まじい衝撃があたりを襲った! ゼノヴィアも歯を食いしばり、耐えているが、その表情からは余裕が感じられない。
「はあっ!」
「っ! がはっ!?」
その隙をつき、下手人はゼノヴィアの腹に蹴りを入れる! ゼノヴィアはとっさに防御しようとしたが、耐えきれずに吹き飛ばされてしまう!
「大丈夫!? ゼノヴィア!」
吹き飛ばされたゼノヴィアを受け止めたイリナはゼノヴィアに心配そうに問いかける。ゼノヴィアは問題ないと言うと、着地をするが、脇腹を痛めているらしく、顔を歪ませている。
「今回復しますね」
「助かるよ。アーシア」
アーシアさんが防御結界を貼りながらゼノヴィアさんを回復させる。下手人────セツナちゃんは獲物の薙刀を構えながら、アーシアさんの結界を破壊せんと向かっていく!
「……させません」
そこに小猫ちゃんが駆けつけ、セツナちゃんに向かって拳を放つ。それに応対するかのように、セツナちゃんも拳を握りしめ、小猫ちゃんに向けて放った!
ドゴォォオオンッ!
二つの拳が克ち合い、凄まじい衝撃音が鳴り響く! 既に小猫ちゃんは既に“猫又モードレベル2”になっており、パワーもそれに呼応して上がっているはず。それなのに、結果は互角だった。なんてパワーなんだ!
「……凄い力ですね。黒歌さんの妹さんというだけはあるようですね」
「……この感じ……ユニークスキルとかいうやつですね」
「はい。ユニークスキル“
チカラジマン……確かに、そう呼ばれるだけのパワーがあるね。あの状態の小猫ちゃんと張り合うだなんて……いや、それ以上におかしいのは、小猫の仙術が聞いていないことだ! 何度か拳を打ち合っているけど、小猫ちゃんはその度に気を送り込んでいるはずだ。それなのに、セツナちゃんは何ともないかのように薙刀を振るっている。
「……これもユニークスキルですか?」
「ハイ。“
つまり、彼女は二つのユニークスキルを持っていることになるのか! そういえば、ミッテルトさんも二つのユニークスキルを持っていると聞いたな。つまり、セツナちゃんはミッテルトさんと同じ手合いということになるのか!
「……でも、完全に治せるわけじゃない……」
「っ! ぐっ!?」
そう言うと、小猫ちゃんは拳に魔力を込め、強烈な一撃を叩き込んだ! セツナちゃんはそれを薙刀で防御するも、後方へと吹き飛ばされていく!
「……多分、治す速度と削れる速度なら僅かにこっちが勝っている」
「流石に黒歌さんの妹さんですね。でも、負けませんよ!」
再び拳と薙刀の激突音が響く中、紫藤さんの放つ光の槍と桜姫ちゃんの錫杖が交差する!
「やるわね! でも、ここから先は行かせないわよ!」
紫藤さんの後方には、回復の要であるアーシアさんの姿がある。アーシアさんは身を守る術こそあれど、実戦という面ではまだ力不足だ。だからこそ、紫藤さんとゼノヴィアがそれをカバーするつもりなのだろう。
「そうですか……ですが、こちらとしても押し通らせていただきますわよ。なにせ、あの回復要員であろうお姉さんがかなり厄介そうですからね!」
桜姫ちゃんの言う通り、ゼノヴィアはすでに完全回復して戦線に復帰しようとしている。あの回復速度を見れば、彼女がアーシアさんを厄介だと思うのも無理はないだろう。
桜姫ちゃんは錫杖に魔力を込め、炎と電撃の魔法を嵐のように織り交ぜながら、自らも接近戦を仕掛けてくる。
対して紫藤さんは光を盾のように頭上に浮かべ、降り注ぐ魔力を防御しながら槍を振るい、錫杖と拮抗する。どうやら桜姫ちゃんは空を飛ぶ術を持っていないようで、天使の翼で中を舞う紫藤さんが有利そうだ。だけど、それでも倒しきれない辺り、相当高い技術を持っているね。
「こっちも負けてられないわね!」
僕もミームちゃんを相手に剣戟を再開させる。それを弾き飛ばし、僕は上空にいる人影に声を掛ける!
「今です! 部長!」
「滅びよ!」
「「「「!?」」」」
そこに隠形法で姿を隠していた部長が乱戦の中、圧縮させていた“滅びの魔力”を解放する。それを見たイッセー君の教え子たちは即座に場を離れようとするが……。
「いかせませんっ!」
「なっ! コウモリ!?」
「あれは……邪眼の類!?」
ギャスパー君が神器を用いてそれを防ぐ! イッセー君の教え子たちはギャスパー君の邪眼がどういうものか知らないながらもなんとか防ごうとするが、あれは簡単に防げる類のものではない。完全に停止させることはできなかったが、それでも一瞬の足止めには成功した!
「い、今ですっ!」
「ええ、チェックメイトよ!」
部長は即座に高密度の滅びの魔力を動けない子ども達に放った! イッセー君曰く、この迷宮という場所では死ぬことがないという話だ。正直言うとまだ少し信じられないけど、彼女達が先程から普通に殺しに来てる感じがするし、何よりイッセー君はこんな洒落にならない嘘は絶対につかない! だからこそ、部長も滅びの魔力を開放することを決断したのだ! 子ども相手に大人げないかもしれないけど、これで決まるはず!
────だが、その予想は裏切られた!
「“
解放されようとしていた滅びの魔力に一本の弓矢が当たる。瞬間────
パァァァァァンッ!
「なっ!?」
滅びの魔力はまるで解けるように、一気に霧散した! どういうことだ!? 滅びの魔力はあらゆるものを消失させる力! 弓矢が当たったところで弾ける性質のものではない。むしろ、当たった瞬間弓矢を消滅させるだろう。それなのに、どうして……
「どうかしら? 私の弓矢は」
「……どういう絡繰かしら? 私の魔力を逆に消滅させてしまうなんて」
そこに現れたのは弓矢を携えている八重樫愛ちゃんの姿だった。愛ちゃんはドヤ顔でどうやって滅びの魔力を消したのかを説明する。
「これぞ、私のお母さんの一族に代々伝わる固有能力“無価値”の力よ。対象の特性を一時的に消し去ることができるの。本当は生き物にしか使えないらしいけど、先生と修行したお陰で弓矢で当てた魔力弾なんかも“無価値”にできるのよ!」
僕は愛ちゃんの言葉に啞然とした。“無価値”だって? 僕達はその能力をよく知っている。
レーティングゲームの絶対王者。“
「……そういえば、イッセーは私達の世界の存在がこちらに迷い込むことがあると言っていたわね……つまり、そうことね」
「? なんの話?」
「なんでもないわ。こちらの話よ」
部長はそう言いながら、滅びの魔力を。再び展開し、それを放つ! 対して愛ちゃんは弓を携え、魔力で矢を形作り、それを放ち部長の魔力を相殺する!
「無価値の力だけじゃない……物理的に破壊力を秘めている矢を織り交ぜているのね」
いくつかの矢が部長の魔力をすり抜け、部長に向かって進んでいく。それを部長が回避すると、後方の壁に深々と突き刺さる。当たれば無事じゃ済まない威力だ。
部長の言葉に愛ちゃんは何やら意味深な笑みを浮かべ、更に弓矢を放つ! それを見た部長は通常の弓矢と考えたらしく、障壁を展開する。だが、矢が当たる直前に部長は目を見開き、回避する!
「……これは、聖なる力!?」
何と愛ちゃんが使ったのは聖なる力だった! 愛ちゃんは聖なる力を込めた弓矢を再び携え、自信満々に説明する。
「ええ、そうよ! これはお父さんに教えてもらったの! 凄いでしょ! お父さんとお母さんも驚いてたんだから!」
驚くのも無理はない。悪魔の力と聖なる力を同時に行使するなんて、僕の聖魔剣を除けば聞いたことすらない!
(……いや、そういえばミッテルトさんも聖なる力と魔の力を同時に使っていたっけ?)
もしかしたら、こっちの世界では聖魔両方の力を使うものは他にもいるのかもしれないね。どっちにしろ、今は答えは出そうにない。わかったことは愛ちゃんは僕達悪魔にとっての天敵だということくらいだ。
ドゴォォォォォォンッ!!
「っ!?」
「がはっ!?」
その時、何かが僕を横切った! 見ると、ロスヴァイセさんがボロボロになって地に伏している姿がそこにあった! ロスヴァイセさんはまだ戦えそうだが、その表情からは余裕が感じられない。
振り向くと、そこには銃ではなく、篭手をその手に宿したフィオ君の姿があった。
「くっ、それは……」
「……バランスブレイカー」
「その通り! これが俺のとっておき……“雨龍の雷銃”の禁手“
そう言いながら、フィオ君は篭手を掲げ、拳を構えた。まさか、十歳で既に禁手に至ってるだなんて……。確か、あの神器の禁手は二丁の機関銃になる“
ズンッ!
「くっ!」
衝撃音と共に小猫ちゃんが苦悶の表情を浮かべながら後方へと下がる。見ると、セツナちゃんは額から鬼のような角を出しており、それに伴って力も更に上がっているように見える。
「……鬼の類……ですか?」
「はい。お父様が妖鬼でして、私もその力を受け継いでいるんです。だから、こんなこともできます!」
そう言うと、セツナちゃんは片手で印を結び、途轍もない炎を開放する!
「
「っ!」
小猫ちゃんはそれを上手く躱し、カウンターでセツナちゃんに拳を放つ。それをセツナちゃんは薙刀で受け止め、逆に重い蹴りを小猫ちゃんに叩き込む! “戦車”の力を持つ小猫ちゃんもその強烈な一撃には思わず苦悶の表情を浮かべる。
「流石はセツナね。私もそろそろ本気出しますわよ! 天使のお姉さん!」
「えっ! うわぁ!?」
バチバチィ!
紫電と共に、桜姫ちゃんの姿が変貌を遂げる。頭から伸びる二本の角に、爬虫類を彷彿とさせる鱗……なにより、隠れていた片方の眼が大きく揺れ動いている。その瞳はさながら蛇のようだった!
「いきますわよ!」
「えっ!? 嘘! 翼が!?」
紫藤さんは驚愕の声を上げる。なんと、紫藤さんの天使の翼が光を失い、みるみる石化していくのだ! あれは、神話のメデューサに近い能力なのか!?
「“
邪眼……ギャスパー君と同じく、かなり厄介な力だ。紫藤さんは石化した翼を収納することなく、歯軋りしている。天使であることに誇りを持っている紫藤さんにとって、証である翼を封じられるのは相当許せないことだろうからね。
「デュランダル!」
「おっと!?」
治療を終え、戦線に復帰したゼノヴィアがデュランダルを構え、ミームちゃんに突撃する。
デュランダルの危険度を察知したミームちゃんは“気操法”で短剣に魔力を込めるが、それで防げるデュランダルではない。そのまま短剣は砕け散り、ミームちゃんは慌てて間合いを取った。
「うわあ。私のこの武器、一応“
ミームちゃんはそう言うと、砕けた短剣を放り投げ、異空間から別の短剣を取り出した。
先程の短剣とあまり違いはなさそうだけど、何やら妙な穴が空いてるのが見て取れる。ミームちゃんは穴に何やら宝玉らしいものを嵌め込む。すると、短剣は自ら炎と風を纏い始め、ミームちゃんはそれを僕達に向かって構えだした!
「これが私の“
そう言いながら、ミームちゃんは自らの肉体を変化させる。三つ目の瞳に魔の力を漂わせる紋様が浮かび上がると同時に彼女の力が増幅する。勝負はこれからのようだねを僕とゼノヴィアはそれを悟り、改めて武器を構え直した。
八重垣
EP 28万1056
種族 悪魔
加護 ミリムの加護
称号 ベリアルを継ぐ者
魔力 無価値
エクストラスキル 聖魔掌握
“忘れられた竜の都”出身の少女。フィオの双子の姉。性格は勝ち気で天真爛漫。両親共に地球出身の異世界人であり、愛は悪魔である母親の血を色濃く受け継いでいるらしく、母方の特性である”無価値“の魔力を弓矢や短剣などに変換して戦う。無価値の弓矢は当てた物質や魔力弾の特性を無効化できる力を持つ。また、聖魔属性を操るエクストラスキルを持っており、ミリム・ナーヴァを信仰しているため、神聖魔法を行使することも可能。シンシヤとアカヤを除けば子ども間では一番強い。ミリム・ナーヴァと竜の都の料理人であるステラに憧れを抱いており、いずれはステラと共に料理人として活躍したいと考えている。
名前の由来はマナフィから。
【挿絵表示】
八重垣フィオ
EP 20万0006
(
(“
種族 人間
加護 ミリムの加護
称号 龍を宿す者
神器 “雨龍の雷銃”、禁手“豪雨龍の機雷篭手”
“忘れられた竜の都”出身の少年。愛の双子の弟。姉とは違い、人間としての側面が強い。姉と同じく勝ち気な性格をしており、イッセーに強いあこがれを抱き、アカヤと共に”ヴェルドラ流闘殺法“を学んでいる。神器は印旛沼の龍が封じられているニ丁拳銃のドラゴン型神器“雨龍の雷銃”であり、銃で牽制しつつ拳で殴るのが元々のスタイル。禁手は銃が篭手へと変化する“豪雨龍の機雷篭手”。雷と水を拳に纏わせることができ、篭手に仕込み銃が付与されている為、中距離の強みも失っていない。ただし、水や雷といった特性を無効化してしまう姉とは相性が悪く、模擬戦ではボコボコにされるらしい。夢はイッセーのような強い男になることらしい。
名前の由来はフィオネから。
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